【勝田班月報・6802】
《勝田報告》
A.L・P3細胞の増殖に対する4NQO類の影響:
L・P3細胞はL株(C3Hマウス皮下センイ芽細胞)の亜株で、合成培地DM-120内で8年以上継代培養してきた細胞です。薬剤の作用をしらべる上に、純合成培地の方が良い場合もあると考え、一応4NQO類の影響をしらべてみました。
培養法:簡易同型培養法(短試・5°静置・37℃)
培地:DM-120に発癌剤を添加。1日おきに同じ培地で交新。
発癌剤の溶かし方:[培養2日后に添加]
4NQO−これまでに報告した法と同じ。薬剤10-2乗MにDMSO原液でとく。あとの薬剤の稀釋に従い、DMSOも稀釋されたことになる。他の薬剤も上のとき方に従おうとした。
6-Chloro 4NQO−ところがこれをDMSOでといたら、大きなフワフワした沈澱が生じ、溶けそうでなかった。アルコールで溶いてみたが、これも溶けない。仕方がないのでSaline
Dにsuspendし、培地で稀釋したところ、実験の使用濃度ではどうやら溶けたと思っている。これは作用結果から見ても、そう思われる。
結果:(表を呈示)表に記したように、2日TC后にはじめて添加し、以后2日毎に換えて行くと、4NQO、6-Chloro
4NAOの場合は、10-5乗Mではっきりと抑制が示された。以下の濃度では大体添加量に比例して抑制した。
6-Carboxyl 4NQOでは、これと傾向が少し異なり、10-5乗Mでも増殖抑制は見られたが、inoculum
sizeより日と共に細胞数はふえ、9日后に10-5Mでも約7倍近い増殖を示した(これは水溶性であるが、わざとDMSOを等量加えた)。
これらの結果からみると、6-Chloro 4NQOの場合、果して期待通り溶けていたかどうかという問題があるが、どうも毒性は少いように思われる。果して発癌性と細胞毒性とは並行するものであろうか。
全体の傾向からみて、L・P3細胞はラッテセンイ芽細胞にくらべ、4NQOに対する抵抗性はたしかに強いように見える。これ以外にもセンイ芽細胞による抵抗性の相違は、我々は見出している。
《黒木報告》
In vitro transformationにおけるtransplantation
antigen又はsurface antigenを調べる目的でいくつかのpreliminary
exp.を行ってきました。
1)X線照射、制癌剤によるattenuated cellsの移植
2)移植腫瘍の除去
3)謂る結紮解放法
4)血清によるcytotoxic test
5)血清によるcolony inhibition test
6)mixed cultureによるgrowth inhibition
7)membran immuno fluorescence法。などが考えられます。
In vivoで4NQOによりinduceされたtumorの培養細胞NQT-1を用い、1)、3)をまず試みてみました(表を呈示)。なお、2,500r、2,000r、1,500r照射細胞をそのまま100万個SCに移植したときには、tumor
growthは全くみられない。500r照射ではlatentが30日位にのべてtumorを作る。1,000r照射細胞は誤ってtubeをわってしまい、exp.できず。
結紮開放法
北大病理groupの結紮開放法をattemptした。この方法は輪ゴムでtumorを24時間しばり、necrosisにおちいらせてから、challengeすると高い抗体化が得られるというものである。(表を呈示)この方法は輪ゴムのしめ方がむつかしく、4回まわしたのではすべてのtumorがとれてしまい、2回ではnecrosisにならない。
以上の如く、目下preliminary exp.の段階でつまづいています。
《堀川報告》
培養哺乳動物細胞における紫外線障害回復の分子機構の研究(3)
過去2回にわたる月報報告において、紫外線照射された培養細胞の障害回復に関する実験結果を報告してきました。つまり、紫外線に対して感受性株のマウスL、ブタPS細胞には、Thymine
dimer除去機構(暗回復能)は認められないが、紫外線耐性株のEhrlich細胞には不完全ながら(UVで生成されたthymine
dimerの約30%を除去し得る)自己のDNAからthymine
dimerを酸溶性分劃に放出除去する能力のあることを述べてきました。こうした暗回復機構というのは、毎度述べるように紫外線で照射された細胞を暗所に保っておくと酵素的にDNAからthymine
dimerを切出し除去し得る能力を言うのであって、文字通り暗回復酵素の存在が問題になる訳です。
今回は光回復機構の検索と4NQOに対する障害回復能について培養細胞で行った仕事の結果を報告します。
1)紫外線障害からの光回復機構の検索
光回復機構は暗回復機構とはまったくの逆で、紫外線照射された細胞を照射直後に強力な光(波長400mμあたり)で処理するとphotonの存在下で光回復酵素が働き、紫外線で生成されたDNA中のthymine
dimerが、monomerのthymineに切断され正常なものにかえるという一連の機構をいいます。現在までのところ、前記の3つの細胞株に光回復機構が存在するか否かを断言できる段階にはありません。それは紫外線照射後強力な光で処理するとcellsuspensionの温度が急速に上昇するため温度の因子が多分に結果を左右する訳です。しかし培養細胞に光回復機能がまったく無いと云うのも早計であり、そうかといってbacteriaのあるstrainでみられる光回復能のようには顕著ではないというのが現在までの成績です。 2)4NQOに対する障害回復能(耐性度)の検索
化学発癌剤としての4NQOの作用機序が、紫外線のそれと非常に類似しているというデータがこれまでbecteriaを用いた実験から報告されている。ところが上記のL、PS、Ehrlichの3種の細胞について、4NQOに対する耐性度を比較した結果の概略を示すと図のごとくなる(紫外線に対する線量−生存率曲線と4NQOに対する濃度−生存率曲線の図を呈示)(どの細胞も10-6乗M濃度の4NQOまで実験を行ったが図示されていない部分はいづれも生存率は0%となる)。
この実験系では4NQOは指定の濃度で培養期間中培地内に入れっぱなしの状態である。ある一定時間処理して後は正常培地にもどすという実験は現在進行中。
この図からわかることは紫外線の結果と4NQOの結果は必ずしも一致しない。つまり紫外線に対して最も感受性株のPS細胞が4NQOに対しては最も耐性現象を示すことがわかる。このことをどのように解釈するか。(1)紫外線障害からの回復機構は4NQO障害からのそれとはまったく異ったものである。とするか、(2)bacteriaと異ってmammalian
cellsの場合は細胞膜、細胞内成分の構造的複雑さから4NQOの透過性または取り込み量が異ると考えるか、それにしても(3)3種の細胞株でもし4NQOの透過性に差異があり、それが障害の大小に直接結びつくというような結果になると、4NQOでの発癌実験に際して動物、個体は勿論、組織、細胞レベルにおいて発癌率に差異が生じてくるのは当然であろう。
いろいろのことを思いつくままに書きならべてみたが、現段階ではいづれも作業仮説であり、最終的な結論は今後の実験に待たねばならない。
《高木報告》
1.4NQO及び4HAQO添加実験
1)NQ-2(月報6708、rat thymus株細胞に対する4NQO
10-6乗M/ml添加実験)
月報6711で報告した移植実験は、現在実験群では移植後4ケ月を経過したが腫瘤の発生は認められない。目下尚継代中であるがin
vitroでは対照の細胞に比し、よりfibroblasticでcriss-crossが認められる。new
born rat入手次第、再度移植を試みたいと思っているが、最近ratが仔を生まない。
2)HA-1移植実験
Wistar King A ratの生後3〜4週のものを使用し、実験群ではHA除去後76日目(継代4代目)の細胞100万個を5疋へ、また対照群では培養開始後95日目(継代7代目)の細胞100万個を2疋へ、それぞれ皮下に移植した。現在まで約8週間観察したが腫瘤形成を認めない。
3)HA-2(月報6712)
2ケ月間観察を続けたが、細胞の増殖なきため実験を中止した。
2.NG添加実験
1)NG-4移植実験
生後3週のWistar King A ratを使用し、実験群はNG除去後70日目(継代4代)、対照群は培養後100日目(継代7代目)の細胞をそれぞれ100万個各2疋へ移植した。7週を経過した現在なお腫瘤の発生を認めない。
2)NG-7
事故のため実験中止。
3)NG-8
Wistar King A rat(生後4日目)の胸腺細胞、培養開始後24日目継代2代目のものを使用した。NG濃度は10μg/ml、25μg/ml、添加方法は以前の実験と同様に行った(表を呈示)。現在までの処、特に細胞の形態的変化に気付かない。
4)NG-9
上記の継代3代目の細胞を使用、NGは最終濃度25μg/mlとなる様に添加した(図を呈示)。NG添加後多くの細胞はガラス壁より脱落したが、NG除去後約10日目にfocus様の細胞増殖を認めた。目下継代中であるが増殖はあまりよくない。