【勝田班月報:6803:マウスにおける4NQO誘発染色体異常の系統差】
《勝田報告》
 A)L・P3細胞の増殖に対する4NQO、6-Carboxyl 4NQO、6-Chloro 4NQOの影響:
 純合成培地で増殖する細胞は、いろいろな意味でモデル実験に使い易いので、上記の3種類薬剤を10-5乗、10-6乗、10-7乗Mの3種濃度に培地に加え、L・P3細胞の増殖に対する影響をしらべ、今後のための基礎的データにした。
 結果の数値は前月号月報に記したので省略するが、大体いずれも濃度に比例して増殖を抑制した。10-5乗Mでは6-Carboxyl 4NQOの場合は抑えられてはいるが増殖が続いたが、他の2者は細胞が急速にこわされ、特に4NQOでは添加開始7日後には細胞数が0になってしまった。なお薬剤は隔日ごとの培地交新の際にも新しく等量加えた。
 B)L・P3細胞の4NQO処理と長期観察:
 1967-11-23:L・P3細胞を継代、12-17:4NQO 3.3x10-6乗Mで30分間処理し、1968-1-2再び同様の処理、1-31継代し、一部は染色標本作製、2-4さらに残りの一部を4NQO 5x10-6乗Mで30分間処理した。染色標本によると、核の異型性や断裂、micronucleiが認められた。(顕微鏡写真を呈示)
 C)H3-4NQO:
 H3-4NQOと細胞分劃への結合については既に報告したが、このSampleはradioactivityが低いので、新たに杉村氏の研究室で作ったH3-2methyl-4NQOをもらい、永井氏にpurityをしらべてもらった。今後の実験に用いる予定。
 D)DNAの“なぎさ”培養への添加:
 肝癌AH-130細胞のDNAを抽出し、これを“なぎさ”培養しているJTC-12株(サル腎)の培地に添加する実験を現在おこなっている。

 :質疑応答:
[勝田]L・P3はC3Hの皮下に復元すると結節を作りますが、しばらくすると消失します。こういう細胞を発癌実験に使ってよいかどうか、問題はありますが、takeされ方が上るかどうかをparameterにする他はありません。
[高木]復元接種された動物の年齢はどの位ですか。
[高岡]生後3週〜4週です。
[安村]接種細胞数はどの位ですか。
[高岡]1,000万個/mouseです。
[勝田]話は変りますが、最近、血清から雑菌が混入して困りました。ザイツ濾過では濾液に菌が出てしまい、シャンベランL3では菌が出ませんでした。
[安村]多分L型菌でしょうね。ペニシリン添加の方が増殖の早い菌があったりします。滅菌濾過は血清の場合シャンベランを使うのが一番確実ですね。無菌テストの方法についても問題があります。細胞と一緒にすると増殖が早くなる菌もあります。

《永井報告》
 §4NQO系発癌剤の純度を調べる(2)。
 前回(月報No.6712)には、4NQOの2標品につき薄層クロマトグラフィー(TLC)で純度を調べた結果、殆ど差がみられないことを報告した。また、H3-4NQOについても、H3が4NQOspotに局在していることを報告した。更に4NQOは化学的にかなり安定な物質であるらしいことを述べた。今回は、吉田班員から送られた検体を加えて、6検体について、TLCで、更に詳細に調べた結果について報告する。結論を先に述べると、2検体を除いた4検体に、4NQO以外の物質が存在することを、新しい溶媒系を使用することによって確認したことで、この相当量存在すると思われる不純物が如何なる生物学的意味を有するのかを検討する必要が生じた、ということである。
 『TLC PLATE』
Silicagel(KieselgelG,Merck);10x20cm
Solvent System:Ether-Benzene-Ethanol-Acetic acid(40:50:2:0.2、v/v/v/v)
 『検体No.と性状』
(1)第一化学製品4NQO;吉田班員より。全く効かないといわれているもの。(染色体の断裂をおこさぬもの)。
(2)中原製4NQO;吉田班員より。効く。
(3)Takayama4NQO;吉田班員より。効かない。
(4)勝田4NQO(最近使っている製品)。効力在り。
(5)勝田4NQO(旧い製品)。やや効かない感じ?。
(6)H3-2Me-4NQO(癌センター)
 これら6検体は、前報のクロロホルム・メタノール系(90:10、v/v)では、いずれも以前と同じく1ケのspotしか与えなかったが、この新しい溶媒系では、4NQO以外にX1、X2、X3の3ケのspotを与える。X2、X3は前報と同じもので、量的にも微量とみられる。しかし、X1は全く新たに出現したもので、定量はしていないが、(3)(4)(5)には10%は含まれているものと思われ、UV下での呈色具合では、4NQOと同系の物質のように思われる。(1)(2)ではX1の量は少なくなる。殊に(1)ではtrace量となる。(1)が全く効かないといわれているのは興味深いところである。H3-2Me-4NQOはone spotにまとまり、純度は相当よいものと今の段階の分析では云ってよいようである。H3-2Me-4NQOは癌センターでのペーパークロマトラジオスキャンでは、水飽和イソーアミルアルコールで幅の広いピークの乱れた像を与えたが、TLCでも、この溶媒系ではspotはまとまらず、長くのびて、溶媒としては不適当であることがわかる。
なお不純物の存在量については、(1)にはtrace量と云てよいが、(2)〜(5)の各々については確かなことは今のところ云えない。(図を呈示)

 :質疑応答:
[黒木]それぞれの製品について、動物での発癌性はしらべてありますか。
[高岡](4)勝田4NQO新は癌センターの杉村先生の所から発癌性があるものとして分与されました。(5)勝田4NQO旧は医科研化学研究部の香川氏から発癌性ありとして分与されたのですが、何しろ10年位前の事で現時点ではしらべてありません。
[勝田]吉田先生の所ではどういう方法で、効く効かないを判定して居られますか。
[森脇]4NQOを背中に注射して、10時間後の骨髄細胞を採って、染色体のbreakをみて、breakのあったものを効いたとしています。
[黒木]薄層クロマトでの分離テストと動物実験での発癌性を同時にしらべておく必要がありますね。

《吉田報告》
 マウスにおける4NQO誘発染色体異常の系統差
 DMBA、MC等の発癌剤の効果はマウスの系統によって差異があることが既に研究されている。われわれは4NQOのin vivoでの効果に系統的な差異があるかどうかを8系統のマウスを用い、chromosome aberrationを指標として調査したので予備的な結果を報告する。
 実験材料:
 C57BL/6、RF、SWM、AKR、A、BALB/c、C3HeB/Dr.、DD(以上8系統)いずれも生後3日目に使用。
 方法:
 国立癌センターの中原博士より提供された4NQOをPropyrene Glycol 0.5%、Gelatin 1%を含む生理的食塩水中に10-3乗Mの濃度にとかし、マウスの皮下に0.2ml(38μg4NQO)を注射した。染色体はコルヒチン1時間処理後骨髄細胞を用いて観察した。脾臓、胸腺についても観察をおこなったが、分裂像が少なくデータを得るにはいたらなかった。
 結果:
 4NQOの注射後の染色体異常の出現頻度を時間を追って計測した。(図を呈示)注射後10時間付近で異常が最高になることがわかったので、以後の実験ではこの時間に標品を作ることにした。また、この実験では72時間後までしらべたが染色体異常の高まりは10時間以後は現れていない。この結果は10時間で最高に達するような染色体異常をもった細胞はそれ以上分裂することできず、次の分裂に際して消滅してしまうことを示している。
 (4NQOのin vivo処理後骨髄細胞に観察された染色体異常の図を呈示)
 (染色体異常の頻度をマウスの系統別に調べた結果をまとめた表を呈示)
 異常をおこした細胞数の比率は各系統とも大よそ同じとみてよいが、RF、C3H、BALB/c系ではmultiple breaksが非常に多く観察されたため、細胞あたりのaberrationは他の系統よりかなり高いことになる。
 なお、% of cell with chromosome aberrationの増加に対するAberration/cellの増加をグラフに表してみたが、両者は大よそ直線的な比例関係にあり、4NQOによって異常をおこしやすい特定な染色体があるという可能性は少ない。

 :質疑応答:
[安村]対照として溶媒だけを接種しても染色体変異は起りませんか。
[森脇]見つかりません。
[勝田]2〜3匹を一群とした実験で23%と28%という数値は、ちがいがあるとみてよいのでしょうか。
[森脇]この場合はちがいがあるとは認めていません。
[堀川]X線を照射して骨髄に異常をきたすと、その異常は永い間残ります。今のお話では4NQOによる染色体異常は早くなおってしまうようですね。
[黒木]この異常は単に一過性の現象だと思います。勿論動物は殺さずにとってあるでしょうね。このあと何が起るかに興味がありますね。
[森脇]生かしてありますから、経過を追うことは出来ます。
[安村]AKRに異常が一番多いというのはウィルスと関係があるようですね。
[黒木]毒性と発癌性の問題とも関係づけてしらべると面白いと思います。例えば、6ca-4NQOのように毒性は少なく、発癌性のあるものの場合にも染色体異常が起るかどうか。
[森脇]一過性の異常は薬剤の毒性によるものであり、2、3年もたって出てくる異常は本当の発癌性によるものだなどということかも知れませんね。

《黒木報告》
 ハムスター胎児細胞の同調培養について
 Synchronous cultureを用いるtransformationの意義は改めて述べる必要もないと思います。この種のexp.は、私の知る限りでは、次の二つのみです。
 1.Basilico & Marin.Virology 28,429,1966.
 2.Green & Todaro ; in Carcinogenesis,a broad critique,559.1967.
 1.はBHK21/polyoma systemでG2のとき、もっともefficiencyがよいという(DNA・contentが高いため)
 2.は3T3/SV40 systemでG1、G2ではなく、S phaseにおいてtransformationするというもの(replicating cellular DNAとviral DNAのinteractionが必要)このpaperの原著はまだでていないようです。
Chemical carcinogenesisの場合はcarcinogenのtargetがDNA、RNA、Proteinのいずれともきめかねている現在なので、そのdataは非常に興味のあるところです。
 Synchronousの方法としては、excess TdR法を選びました。(Terashima法はcellの数、fibroblastであることからみてあきらめた)
 Exp.577
 2mM TdRを24h、及び24h(-15h休み-)24hの二種類の方法で加えた。細胞は培養11日のハムスター胎児細胞。
Samplingする前にH3TdR、1.0μc/ml 15min puls lab.、autoradiography:NR-M2,2wks。なお、Excess TdRのあとにmed.で3回洗った。
(図を呈示)24hrs1回処置は全く同調しない、24-(15)-24の2回処置法がLI、MIともに小さなpeakを生じた。
しかしこのdataではとても満足できないので、さらに処置法を考える必要がある。
そのためには、先ず、cell cycleの分析をはじめた。
 Exp.554
 培養6〜8daysのハムスター胎児細胞
 H3TdR、0.1μc/ml 20min. pulse lab. 以後1時間おきに(途中から2時間おきに)48hrs.サンプリング、NR-M2乳剤、4週間露出。(図を呈示) 比較的きれいなcurveが得られた。
 計算値:G1・3.6hrs.、S・7.6、G2・2.6、M・0.6、total・14.4=G.T.。G.T.は14.4時間、これはdoubling time 30〜40時間とは大きな差があり、growthに参加していないpopulationの存在を強くsuggestする。このdataはもう一度くり返して検討中である。
 このようにcell cycleが意外に短いことが分ったのでそれに合せてtreatmentの方針を改良した。
excess TdRを加えられると、S期のcellはそのままDNA合成をstopするという。従ってexcess TdRのtreatはG2+M+G1、休みはS時間あればよいことになる。
そこで、15hrs.-(8hrs.)-15hrs.というscheduleを作った。
 #583
 TdR 2mM、TdR 7.5mM、AdR 2mMの三者を用い、15-(8)-15hrs.で加えた。(TdR 7.5mMを用いたのは、2mMのTdRがDNA合成blockに不十分である可能性を考えたため、AdRはAdR処置にTdR-H3を加えることによりDNA合成を測定できる利点を考えた。)
 細胞は18mm cover slipeにうえこむ。
xcess TdR、AdRの洗いのとき、及び処置後のmed.には0.01mMのCdR HClを加えた。
H3-TdRは1μc/ml 30mim.pulse labelling。
 AutoradiographyはNR-M2乳剤、2wks露出、コニドールX現像、hematoxyline単染色。
 結果(図を呈示)
 DNA合成のsynchronyは20〜40%で低い。
 AdRがもっともよくDNA合成を同調させるが、cell damageも強くMIは上らない。恐らくRNA合成阻害のためであろう。
 今後の方針としては
1.TdR 7.5mM
2.treatmentの時間は15-(15)-15位にする。(DNA合成の下降は10時間すぎにみられるところから)
3.cell populationがこのexp.では少しく大きすぎた、そのためSynchronyが悪いと思はれる。population sizeを吟味することが必要
 以上を考えながら、synchronous cultureのtransf.に入るつもりです。

 :質疑応答:
[堀川]ハムスターの細胞の同調培養の場合ですが、cell countでsynchronizeのcheckをします。mitotic indexではinterphase deathのcheckが出来なくてかえって不正確になると思います。
[勝田]株細胞なら同調させられるが、黒木班員の初代培養の細胞では揃う方が不思議な位だと思います。
[堀川]それはそうですね。それから細胞に傷害を与えないという点では寺島法が優れていますが、細胞数が多くとれませんね。
[黒木]fibroblastsは寺島法ではうまくゆかないのではありませんか。
[安村]そうでもありませんね。L細胞でもフルクト細胞でも、振り方を工夫すれば寺島法でうまくゆきます。でも細胞の系によってどうしてもうまくゆかない系もあります。
[勝田]thymidineやコルセミドで処理して染色体の異常がおこりませんか。
[堀川]むつかしい問題ですが、少なくともコルセミドだけでは起こらない様です。とにかく今の所thymidineでDNA合成を揃えておき、コルセミドでM期に揃えるというやり方でかなりよい同調培養の成績を得ています。

《佐藤報告》
 ◇動物復元続き:(動物No.116〜121の復元表を呈示)
 ◇ラット肝の4NQOによる発癌続き
動物No.18に腹水肝癌が発生した。即ち5x10-7乗M4NQOを62日間、LD培地中に加え処理し、総培養日数326日目('67-7-1)に500万個の細胞を新生児ネズミ腹腔に接種したもので、'68-2-1に屠殺した。動物を死に至らしめるまでに約7月を要した。剖検すると、約50mlの血清腹水がみられこの中に多数の癌細胞島が浮遊していた。肝門部に大豆大の腫瘍形成があり、また腸間膜、大網部に米粒〜粟粒大の多数の腫瘍がみられた。
 ◇月報6801に記載したRE-5系の核型について現在までに判明した点を報告した。
 (1)Control lineについては染色体数42について調べた所、正常のdiploidと思われる細胞と、染色体のTelocentricの一本が不分離現象をおこして外見上Metacentricのchromosomeを形成した細胞が見られた。今後は41本及び43本の染色体を分析してTissue−cultureにおける染色体数移動に関係するかどうかを検討する予定である。
 (2)Neoplastic lineではlarge subtelocentricの異常染色体が現れた。本large subtelocentricの異常染色体は細胞によって大きさ、その他に多少の移動がみられた。Tumorよりの再培養にも同様のsubmetacentricの異常染色体が認められた。
 班会議報告のまとめ
(1)Rat Embryo cell line
 a)Tumorigenic capacityとmorphological malignant changesとは平行関係にある。
 b)悪性化する細胞は少くとも2種類ある様に思える。1つは細長い細胞質で濃縮した核をもつ、他の1つは大型の細胞で楕円形の傾向の核をもつ。
 c)動物復元の腫瘍像にも2つの悪性化細胞の性格がみられる。
 d)Malignant cellは重なり合う傾向は少い。
 e)悪性化細胞と正常細胞の比率は4NQO添加量の増加と併行して高くなるが、ある程度の添加量に達すると以後4NQO添加を停止しても悪性化が進展して行く様に思われる。
 f)5x10-7乗M濃度では余り効果がない様であって、10-6乗M濃度位がラッテEmbryoの場合適当の様に思われる。
 g)Control liverは今の所未だdiploid lineを保っている様に思える。
 (2)Rat liver cell line
 a)動物復元、3匹腫瘍(肝癌一例は腹水性腫瘍)形成。
 b)Rat embryo cell lineと異り、5x10-7乗Mの場合にも発癌している。
 c)培養細胞のmorphological changeと4NQO投与と余り並行関係がない。常に腫瘍形成能のない細胞が存在していて、腫瘍細胞だけが4NQO投与と共に優位になる現象が見られないとも云える。
 d)目下培養日数の少い所の凍結細胞を用いて実験をくり返している。
 ◇本年度の研究のまとめ
 培養条件で自然発癌し難いラッテ由来の細胞を利用して、その4NQOによる発癌を試み、どうやらラッテ細胞でも4NQOで発癌するらしいことが分った。即ち、ラッテ全胎児細胞と肝細胞との2系に於て、4NQOによる発癌がみられたことである。現在、この発癌の追試実験を行い、4NQOによるラッテ培養細胞の発癌モデルプランを作るべく努力中である。また、その発癌過程に於ける細胞学的変化や、4NQOの培養細胞に対する作用機構など検索している。

 :質疑応答:
[堀川]Markerの大きなmetacentric chromosomeは動物へ復元してtakeされた時の腹水中にもみられますか。
[増地]今後しらべてみます。
[安村]takeされたり、されなかったりする系で、takeされたものの再培養は再びtakeされますか。というのは一度takeされたものが、ずっと悪性だとすると、動物で悪性細胞をクローニングしたとも考えられる。つまり全部の細胞が悪性化していなかったということを意味していると考えられます。それから復元する細胞がはっきりしたmarkerを持っていれば仕事がやりよいですね。私の経験ではフルクトcellは合成培地で増殖出来る系でしたから、動物へ復元して出来たtumorを合成培地で培養してみれば、接種した細胞からのtumorかどうかがすぐわかりました。
[勝田]動物へ復元して3ケ月もしないとtumorが出来ないというのは、どういうことなのでしょうか。
[藤井]それから3匹復元したうち、1匹しかtakeされないというのも変ですね。
[難波]安村さんの言われたように、悪性化したのが一部の細胞で、数が少なかったのだとも考えられます。
[黒木]腹腔内でなく、皮下か、ハムスターのチークポーチに接種して、小さなtumorを作らせて、組織像をみると、悪性の度合がわかると思います。
[安村]悪性化した細胞でも、培養内で悪性度を維持出来るという確証はないのですから、悪性化したら、なるべく早い時期にクローニングする必要あると思います。それからtakeされた細胞も再培養してクローニングし、何コで動物にtakeされる細胞かをしらべておく方がよいでしょう。
[黒木]発癌剤をこんなに長期間入れつづける必要があるのでしょうか。もっとも動物実験では長期間与えないと発癌しない例が多いのですが。
[難波]処理回数や処理量がどの位まで減らせるかまだわかりません。
[黒木]抵抗性が出来ることを期待するなら長期間入れつづけるのも意味があるでしょうが、4NQOの場合抵抗性が出来ないようですから折角増殖しはじめた細胞が変異細胞であっても、次の処理でやられてしまう恐れもあるのではないでしょうか。
[勝田]この実験はもう少し再現性を高めなくてはいけませんね。

《高木報告》
 Cell cultureによるchemical carcinogenesisに関して過去1年間の実験結果をまとめてみようと思う。
 細胞は一貫してrat thymus cell(雑系及び最近はwistar king A)を使用してきた。chemical carcinogenとしては、4HAQO、4NQO、NGを用い、現在までに4HAQOにて4実験、4NQOにて2実験、NGにて9実験を行った。
 1)まず雑系(OSAMA)rat由来の株細胞(RT-1)を4NQO処理したが、濃度は10-7乗、10-6.5乗、10-6乗M/mlをそれぞれ作用させて、10-6乗M/ml処理群より処理後15日にしてtransformed fociを得、現在まで継代している。
 移植は同系rat new bornに処理後90日目に100万個の細胞を皮下に接種したが、触知できる様な腫瘤は形成しなかった。
 現在でもなおcontrolに比し形態的に明らかな差を認め、又growth rateでも1週間でcontrolの細胞が3〜4倍程度の増殖を示すに対し、処理細胞は6〜10倍の増殖を示している。 以後の実験は移植に関して有利な純系ratを使用することとし、しかも自然発癌の全く認められないWistar King Aより得たthymus cellを使用した。(培養順にRT-2、RT-3、RT-4と呼ぶ。)
 2)4HAQOを使用した実験は現代まで4実験行った。
 i)まずRT-2、2代目継代後3日目の細胞にfinal 10-6乗M/mlとなる様に滴下し、3日間放置したが、cell damageが全然なかったので、次いで10-5乗M/mlとなる様に滴下し3日間放置した。
 細胞はculture bottleの周辺部を残して変性脱落したが、薬剤除去後約15日にて肉眼でも明らかなfocusを2〜3ケ/bottle認めた。
 移植は薬剤除去後76日及び81日目にweanling WKA ratsの皮下へ100万個の細胞で行った。controlは同じく培養開始後95日目に移植したが、いずれも腫瘤は形成しなかった。
 その後継代と共に形態もcontrolとあまり変りがなくなってきた。又growth rateも1週間で3〜5倍程度とcontrolと差がない。
 ii)次にRT-2、継代6代目の細胞を用い、4HAQO 10-5乗M/ml2回添加及び5回添加(2日おきに)の実験を行ったが、処理後2ケ月間観察して細胞のgrowthが全く認められなかった。
 iii)新たに12月12日に培養開始したRT-4の3代目の細胞を用いて2実験行った。
 まず4HAQO 10-5乗M/mlを添加し、2日間放置したのち一群は直ちに3〜4万個cells/mlの細胞数でP3シャーレへ継代してみた。
 しかしこれはcell damageが大きすぎ、現在一枚のシャーレに1コロニーの細胞が残っているが、形態的に変化は認めない。
 更に残りの処理細胞を約15日間観察し、mitosisが認められる様になった所でTD-40へ40万個の細胞で継代した。これもやはりcell damageは強く、又生残った細胞のgrowthも現在のところあまりよくない。
 3)NG添加実験は現在まで9実験行った。
 最初の3実験はRT-1株細胞を用いて濃度の検討をしたが、25μg/ml以上では細胞が完全にやられてしまうし、1μg/ml以下では効果がなさそうであったので、以後は10μg/ml及び25μg/mlの濃度を使用した。
 又NGは4HAQOの如く失活し易いといわれているが、我々の経験ではMed.に混合して2日間incubateすると25μg/mlでは相当なdamageを細胞に与えることがわかったので、以後はMed.と混合してfinal concentrationを10μg/ml及び25μg/mlとなる様にして使用した。
 i)まずRT-2、3代目継代後4日目の細胞をNGで処理し、10μg/mlでは6日間、25μg/mlでは3日間放置した。
 25μg/ml処理群は約2ケ月間Med.を交換して観察したが、細胞のgrowthはなかった。
 10μg/ml処理群は薬剤除去後約20日で継代した。
形態的にはcontrolと比し、細胞のrandom orientationが認められ、transformationと思われたので、薬剤除去後70日目controlは培養開始後100日目にweanling WKA rats皮下に100万個の細胞を移植したが腫瘤は形成しなかった。
 ii)次に同じくRT-2、3代目継代後4日目の細胞にNG 25μg/mlを添加し2日間放置、その後Med.を交換したが、やはり細胞変性が著明で1ケ月間細胞のgrowthが全く認められなかった。
 iii)その後RT-2について5代目及び7代目の細胞を用いて、NG 10μg/ml及び25μg/ml添加実験を行ったが途中contamiにより中止した。
 iv)新たに11月4日培養を開始したRT-3の2代目、継代後13日の細胞を使用、NG 10μg/ml、25μg/mlを2日間2回計4日間作用させた。
 25μg/ml処理群にて継代2代目にfocus様細胞集塊を認めたが、その後継代中であるが、現在はcontrolと差はなく、又growth rateにおいても差がない。
 v)更にRT-33代目、継代後9日目の細胞にNG 25μg/mlを同様の方法で2日間作用させた。
 現在継代中で処理後約70日であるが、controlと比較して差を認めない。

 :質疑応答:
[黒木]NGについては、ハムスターの細胞にも加えてみましたが、変異細胞は出現しませんでした。適濃度の幅がせまいようですね。しかし、NGの場合、悪性化だけでなく分化の形もとる所が面白いと思います。
[堀川]NGの作用機序について、わかっているのですか。
[安藤]グアニンにつくということは、わかっています。
[堀川]胸腺とか骨髄から増殖してくる細胞は、培養3〜4日でpile upがみられます。何も処理しない場合にもです。
[勝田]fibroblastsもそうですね。そういう細胞の変異はみつかりにくいのではないでしょうか。

《三宅報告》
 今回は4NQOのDNA合成への影響をH3-TdRの取り込みからみようとした実験(あくまで予備実験)である。材料として用いたのはd.d.系マウス胎児皮膚、人胎児(14週)の皮フと腎である。皮膚は培養の第二代を、腎については初代の培養を用いた。腎を用いた理由は上皮性のものについての、取り込みを知りたいためで、鏡検に際し腎ではfibroblastを撰りわけることにした。培養液はEagle(アミノ酸、ビタミン4倍)のものと、2倍のアミノ酸ビタミン類にした時はPyruvate、Serineを添加した。H3TdR作用後、培養液で1回次いで生食で1回洗浄した。後エタノール固定、dipping、SakuraNR-M2、露出3週、現像5分DIII・18℃、Giemsa染色である。
 Exp.7:マウス胎児皮フ、2代目5日後のものにH3-TdR 2.5μc/ml 45分したのではL.I=35.3%。
4NQO 10-6乗M1時間及び2時間後では夫々29.5%、21.4%のL.I.であった。
Exp.10:ヒト胎児皮フ初代4日目 Cumulative lavelingで(H3-TdR 25μc/ml)L.Iは、3h.=23.7%、5h.=25.6%、6h=33.0%、14h.=42.3%、23h.=69.0%、26h.=70.4%。TG≒43h.。TS≒7h.。をえた。
 Exp.9:ヒト胎児皮フ初代3日目のもので4NQOの濃度をかえたものを作用させると、10-8乗MではControlと同じL.I.、10-5、10-4乗Mではlabelingは零であった。
 Exp.11:ヒト胎児の腎では、Exp.9のヒト胎児皮フより抵抗性がみられ、腎の上皮性細胞は10-7乗Mでは30%近くの%でControlと大差ないことを知った。
 Exp.11':前のExp.11の腎の上皮についてcumulative lab.を行い、TG、TSを求めると、L.I.は、1h.=33.1%、3h.=43.2%、6h.=44.6%、24h.=78.7%。この値からTG≒52h.。TS≒18h.と知った。
 Exp.13:ヒト胎児皮フの2代目3日目に、4NQO 10-6乗Mを入れ、経時的に、短ザク硝子を取り出し、H3-TdR 2.5μc/mlを45分間作用せしめて、L.I.をしらべると、(図を呈示)2時間までは、略々正常に保たれたL.I.は、3時間目に急激におちる。4NQOのDNA合成(Thymidineの取りこみ)は2時間を経てから出現する。(後註・合成阻害ではないか?)
こうした下降の状態をさぐって行くことが、これを解明する鍵となるであろう。
なお、transformさせえた細胞については、chromosome、H3-TdRの取りこみを追究中である。

 :質疑応答:
[黒木]G1からS期にはいる所を4NQOがブロックしている可能性が強いわけですね。
[三宅]そう思われますが、どうしたらはっきり証明出来るでしょうか。
[掘川]同調培養で取り込みをみればよいと思います。
[三宅]株細胞でないので同調培養はむつかしいのです。
[堀川]そうですね。それに初代培養の場合は培養日数がちがうと、ころりとちがうdataになったりして、解析にはむきませんね。
[安村]50%が同調しても、50%では同調培養という名前をつけるわけにいきませんね。初代培養で同調培養をやるのは少し無理ですよ。
[黒木]初代培養では再現性も少ないし、むつかしいですね。しかし株細胞を使っての実験の場合は、薬剤添加によって遺伝的なレベルでの変異が起ったのだというチェックをしなくてはなりませんね。
[勝田]H3-TdRの添加時間はどの位ですか。
[三宅]40分です。

《堀川報告》
 培養された骨髄細胞の移植によるマウス「骨髄死」の防護ならびにLeukemogenesisの試み(4)
 この研究シリーズ(3)においてわれわれはdd/YFstrain(生後31日)から得た骨髄細胞を70%TC-199+10%Tryptose phosphate broth+20%calf serumで培養した際、培養時間の経過に従って骨髄細胞の組成(種類)が急激に変って来ることを示した。しかしdd/YEstrainはgeneticalに不安定であり、この種の研究には適した系統ではないということで、以来NCとC57BL/6Jaxの2系統を用いて仕事を進めることにした。
 今回は本研究シリーズ(3)と部分的に重複した事象を報告する訳であるが、NCstrain(生後30日)から得た骨髄細胞を上記の培地で培養した際、その細胞組成(種類)が培養時間とともに次第に変化する。(表を呈示)
 培養直前にみられる骨髄細胞の多種多様性は培養5日目頃にすでに失われ、特定の細胞のみが大部分をしめるようになる。そして培養30日に至ってはこれらのうちのLarge mononuclear cellsが全体の96.5%をしめるようになることがわかる。
 一方このようにしてin vitroで5、10、20、40日間培養された骨髄細胞(40日培養のものでは大部分がLarge mononuclear cellsであると考えた方がよい)を同じNC系(60日齢)で700RのX線で照射された♂に5万個細胞づつ尾静脈から注入してやり、9日後に殺して脾臓表面に出来るコロニー数をカウントした。(結果の表を呈示)
 700R照射したマウスに種々の時間培養した骨髄細胞を静注してもcontrol(700R照射しただけのもので、骨髄細胞の注入なし)と何らの有意差を示さない。勿論この段階では全体としての実験例数も少ないし、結論を出すのは早計である。そしてこのようにin vitroで培養された骨髄細胞は脾臓表面に活発なコロニーの形成能力をもたないからといって、骨髄細胞が他の臓器や組織などに定着して増殖し、生物機構を果たし得る可能性も少ないときめつけることも出来ないだろう。なぜならばdd/YF系マウスを用いたわれわれの以前の実験で、すでに「骨髄死」を保護し、生存率を高めるというデータが得られているからである。
 今後はNCおよびC57BL/6Jax系統での培養骨髄細胞の脾臓コロニー形成能とか「骨髄死」保護能といった生物学的機能の検索を急速に進める予定である。

 :質疑応答:
[難波]細胞数はどの位まきますか。数をふやすとどうなりますか。
[堀川]Colonyを作らせるときは1,000コです。X線だと細胞数をふやしても同じSurvival curveがとれますが、4NQOではどうか判りません。
[安村]4NQO・10-6乗Mで生残ったColonyをとってまき直したらSurvival curveが変ってくるんじゃないですかね。
[堀川]判りません。この場合は薬剤を入れつづけていますからSurvival curveになりますが、短時間作用させてから細胞をまいたときはRecovery curveですね。
[勝田]4日間培養したとき、骨髄細胞は増殖するのですか。
[堀川]増殖します。はじめにコロニーができて、40日後にはびっしりのシートになります。
[勝田]染色体はしらべましたか。
[堀川]まだですが、予定はしています。L細胞ではSurvivalを助けないので、他の臓器、肝や腎などもやってみています。
[安村]私は脾をやったことがありますが、1,000万個入れると完全にSurviveします。
[勝田]胸腺などもぜひ入れてみて下さい。面白いと思いますから。
[黒木]脾臓の細胞がふえるようになったのは、どんな原因ですか。
[堀川]判りません。同じ様な条件だったのですが、ただ何となく・・・。
[藤井]Fibroblastsがふえてくると脾の細胞は駄目になるのですか。
[安村]Fibroblastsの方が増殖が早いからpredominantになってしまうので継代で稀釋されてしまうのです。何か撰択的な培地を考えればよいのですが。
[堀川]骨髄の面白味は、stem cellがあってそれが分化するということ、そして薬剤を作用させると分化しないでStemとして保持できるような系を作れるかも知れないという点ですね。
[安村]Ephrussiの処のは培養内でstemを保持していて、動物へ戻すと、軟骨その他ができる、というのがあるらしいです。しかし自分のやったのはどうも安定しないので、結局動物を使ってstemを保持していました。
[黒木]Sachsの仕事で、骨髄細胞を培養するとき、Feeder layerの細胞の種類をかえると、できてくるcolonyがちがう、というのがありました。
[堀川]はじめのころ出来なかった脾臓の培養が何となしによくふえるようになったのは何故だか判りません。
[勝田]Plating Efficiencyが100%とかいてあるのは、1,000コまいて1,000コ生えるのですか。
[堀川]いや、対象を100%としたので、実際は10%です。

☆☆☆昭和43年度研究計画☆☆☆
[勝田]次年度の研究計画について少し御相談したいと思います。考える材料を提供する意味で、私案をはじめに出します。
 1)培養内発癌系の確立: 次年度は班としては最後の年なので、何としてでも、少くともこれだけは仕上げたい。新鮮な細胞を使うのと、安定した株によるモデル実験と、両方を作りたいものである。
 2)材料の精選: 動物はラッテ、ハムスターを中心とし、なるべく純系動物の細胞を用い、できればCell cloneを使いたい。
 3)発癌剤: あまりあれこれ手を拡げずに、4NQO類、DABに絞りたい。
 4)観察: 発癌剤処理より、悪性細胞出現までの細胞の変化を、形態学的、生化学的、免疫学的にしっかり追って、そこに何らかの体系的知識を確立したい。
 5)その他の発癌要因: 放射線、細胞の核酸分劃、などによる悪性化もつづけて試みたい。
 6)発癌機構: この解明には、現在の時点では、株細胞を使う方が能率的と思われる。安定した、特性のあまり変化しない株を使って“機構”の方も研究する必要がある。これが当班の研究目標になっているのだから。
 私案は以上の通りでありますが、まず黒木班員の場合、transformationに3期を考えておられる。そのとき、M1期からM3期にかけて、悪性細胞がpopulationとして増えるのか、或は細胞自体の特性が変るのか、これはcolony法である程度見当がつくことなので、ぜひやってみてもらいたいと思います。
[黒木]それについてですが、M1期で細胞を一部凍結保存しておき、他は培養をつづけて、M3期に入ったら、その細胞で抗体を作り、M1期の細胞を戻して、抗M3抗体で検索することにし、Kleinのmembrane immunoflurescent法でしらべたいと思っています。
[堀川]M1とM3とでそんなにちがうのですか。
[安村]元来在ったものが増えるのか、徐々に変って行くのか、非常に鋭敏なcheckingなら有効ですが。
[黒木]理想的には、株でcloneがとれて、細胞数も一杯とれて、しかも細胞は正常でというのですね。
[安村]しかも容易に悪性化できてね。動物のspeciesとしては、ヒトはだめだから、マウス、ラッテ、ハムスター・・・というところですね。
[勝田]個体としても、胎児はだめです。早くnewbornに切りかえなくては。
[安村]素人にいちばん良い臓器は腎臓ですね。
[勝田]いやな予感ですが“mechanism"には余り入れないような気がしますね。
[堀川]Mechanismをやるには株が良いですね。primaryの必要はない。
[黒木]Lなど良いと思います。
[安村]いや、Lはむかし悪性だったという歴史があるから、あまりうまくないでしょう。寝た子を起しただけになるかもしれない。
[堀川]悪性化でなくとも、変異の機構はしらべて良いと思います。
[安村]癌の研究班である限り、やはり単なる変異だけではなく、悪性化をみる実験もやらなくてはいけませんね。
[堀川]復元した細胞の回収を図る方法として、diffusion chamberなどはどうですか。
[勝田]あれは入れられた細胞にとっては不利な環境だと思いますね。
[堀川]Ephrussiはhybridizationで色々面白いことをやっていますが、hybridizationを使うとgene levelでの遺伝形質の解析ができます。黒木班員の場合、変異細胞にmarker chromosomeがあると良いですね。
[勝田]speciesのちがう動物の細胞の間ならchromosomeのcheckingはできますが、さてそれでできた細胞はどちらのspeciesにtakeされますかね。しかし同じspecies同志ではchromosomeのcheckingはできないし・・・。
[安村]薬剤耐性株をまず作って、それをmarkerにする手もありますね。
[勝田]Hybridizationがうまく行ったとして、それで何が判るでしょう。片方が癌でhybridが癌を作るというのなら、生体での癌の発生には、まずはじめに癌細胞が1コ存在していなければならないことになります。
[森脇]Chromosomeの解析として、あるmarker chromosomeがあれば必ずtakeされる、というようなことがあれば、染色体と悪性との関係が判りますね。
[勝田]それは既にでき上った癌の解析で、発癌機構の解析にはならないでしょう。
[永井]核内の遺伝物質を追うことに全力をつくしても、それが発癌機構と直接むすびつくかどうか、問題がありますね。
[勝田]異常染色体が仮に見付かったとしても、発現していないgeneのことも考えなくてはならないし、gene levelの問題として扱わなければならないですね。
[森脇]ヒトの癌を数多くしらべて、癌のとき欠損しやすい染色体は判ってきつつありますが、それがなくとも癌細胞は増殖できる、ということにすぎなくて、これだけ揃っているのは癌細胞だとはいえないのです。
[勝田]岡山ではラッテのwhole embryoを材料にしないで、Fibroblastsを狙っているのならnewbornの皮下組織でも使うようにして、材料をなるべく単一種の細胞にするようにして下さい。肝の実験も、もっと実験例数をふやして、再現性をはっきりさせることと、処理回数をだんだんに減らしてminimumの量を明らかにすることも必要でしょうね。
[高木]私のところはラッテの胸腺(Fibroblasts)と胃を材料にしたいと思っています。
[勝田]高木班員や我々のところの実験はどうも薬剤のかけ方が弱すぎるように思われます。今後はもっと多く、長くかけてみる必要があるでしょう。
[安村]弱い濃度で生かさず殺さずでおく方が変異は起るのではないでしょうか。
[森脇]マウスBALB/C plasma cell tumorの場合に、生後1〜2月のマウスを継代に使いますが、あらかじめマウスにX線300r(BALB/CのLD50は500r)かけておき、その直後あるいは数時間以内にtumor cellsを接種すると、早くtakeされるようです。Cortisoneは効果がありませんでした。接種時のhostの状態が問題だと思います。
[勝田]L系の細胞を発癌実験に使うときは、たとえばC3Hマウス以外のマウスにもtakeされるようになる、という変異でも少しは役に立ちますかね。それから4NQOの作用機序についても、isotopeを使ってもっと突込んで行かなくてはなりませんね。ハムスター細胞の株で2倍体で悪性でないものはありませんかね。
[黒木]BHKも2nですがtakeされます。それから、AH-13は皮下に植えるとtakeされませんね。
[勝田]Lでもcloningすればtakeされないclonesがとれるかも知れません。
   

編集後記


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