【勝田班月報・6804】
《勝田報告》
A)L・P3細胞の4NQO処理:
2月の班会議でL・P3細胞を4NQOで2回処理したあとの形態を供覧したが、その后も次のように4NQO処理をつづけてみた。
1967-11-23:細胞継代(平型回転管)。
12-17:4NQO処理(3.3x10-6乗M、30分間)
1968- 1-24:4NQO処理(3.3x10-6乗M、30分間)
2-21:これより現在まで、4NQO(5x10-6乗M)を培地に入れつづける。この時期に細胞は増殖をつづけていた。
2-29:継代。細胞の一部が死んできた。
4- 8:細胞のcoloniesが沢山形成され、ふえてきた(TD-40瓶1本にcolony100位)。 *L・P3の場合は4NQOに対する抵抗性が上ってくるのかも知れない。
B)ラッテ肝細胞株(RLC-10)の4NQO処理:
このseriesはケンビ鏡映画をとりつづけている。
1968- 1-18:細胞継代
2-26:4NQO処理(3.3x10-6乗M、30分間)
映画撮影視野内の細胞は全部死んでしまった。しかし生残りから増殖がおこった。
3- 9:4NQO処理(同上)。
やはり視野内の細胞は死んで、他の生残り細胞の内から増殖が再開された。
3-26:4NQO処理(同上)。こんどは視野内もあまり死ななかった。
*RLC-10も抵抗性が上昇するのだろうか?
*視野内の細胞が死ぬのは、癌センターの永田氏の云われる4NQOのphotodynamic
actionの為であろうか?
C)4NQO処理されたラッテセンイ芽細胞の好銀センイ形成能:
これまで既に月報で報告した4NQO実験での変異細胞の好銀センイ形成能をcheckした。判定は2ケ月間培養の銀染色によった。RLG株はラッテ肺、RSC株はラッテ皮下組織由来である。(表を呈示)表のように好銀センイ形成能の認められなくなった株がかなりあった。
《梅田報告》
今月から仲間入りさせていただくことになりました。月に一回、多少ともまとまったデータを出すことは私にはかなりむずかしい様に思えますが、せいぜい努力してみる積りで居ります。宜敷く御願い致します。
しかし早速今月分として御報告出来るようなものは無く恐縮しています。この月末、ラット新生児肝を勝田先生の方式にしたがって培養の試みを行って居りますが、なにせすべてが練習及びリピードの域を出ていません。これからも基礎条件を定めるための沢山の実験が必要なので、あわてています。私の実験の当面の目的は、新生児ラット肝片のローラーチューブ培養で生え出し得るラット齡がDAB投与により延長する勝田先生、佐藤先生のデータの理由をなんとかさがしてみたいことです。生える迄待っていては時間がかかるので、実験の方法として、H3-サイミジンの摂り込みなどが、DAB投与例とコントロール、更に癌原性のないAB投与で差が出ればと期待しています。以上御挨拶迄。
《佐藤報告》
◇ラット←4NQO実験(動物復元表を呈示)。ラット肝細胞の発癌。
動物No.49に肝癌の発生をみた。接種した細胞は培養日数413日、培地YLE、4NQO処理10-6乗Mで12回のもので、500万個cellsを新生児ネズミ腹腔に接種した。接種後205日で動物を死に至らしめた。剖検にて大網部、肝門部、腸間膜の部分に著明な腫瘍形成がみられ腹水はなかった。その組織像は肝癌の所見であった。
以上で4NQO→4ラット肝の悪性化は合計4匹となった。
◇ラット肝の培養(特にcloning)の基礎的条件の検索
ラット肝細胞を利用する発癌実験のために、肝実質細胞(出来得れば潤管構成細胞、膽管構成細胞の区別)のcloningによる検索を始めた。まづ従来使用して来たLD培地とYLE培地、Eagle培地及び199培地の比較検討を培養方法を変へて行って見た。(表を呈示)表はラット肝組織を従来の方法に従ってroller
tube cultureを行ったものである。+の下に記載された数字は一本の試験管に増殖して来た細胞の度合を示す。(+)の数字は合計である。この結果から見ると、LD及びYLE培地が略同程度の増殖を示し、Eagle、199の順で増殖率が落ちる。
(表を呈示)表は生后7日の♂ラッテを使用し、CO2incubaterでシャーレ(3.5cm)、3ml/シャーレに培養したものである。此で見るとEagle培地(千葉血清)が、Colony
formationにおいて他の3培地よりよい事が分る。
Colonyを形成する細胞の形態には6〜7種類が区別されるが、組織化学的にどの程度区別できるか検索中である。又継代できるかどうかについても目下検索中である。
(表を呈示)表はRLN-251株で(従来の通りで培養継代)現在121culture
daysのものについて実験的短試で各培地における増殖率を検討した。この結果ではYLE培地が増殖率が高いことが分った。従って閉鎖型での実験はYLE培地が有利の様に思われる。
《三宅報告》
ヒト胎児皮膚のFibroblastを用いて4NQOのCell
Cycleに与える影響をしらべてみました。(dd系、その他の動物については未完)。すなわち、前回の班会議の折、4NQOがG1の期に抑制的に働くのではないかという成績をえたためです。プロトコールの番号をそのままに、ここに記すことにします。
A)Exp.17(図を呈示)。これにCummulativeにラベルした所、次の価をえた。
Control(310) TG≒29hr.、TS≒8hr.。4NQO(311)TG≒58hr.、TS≒10hr.。
B)Exp.18(図を呈示)。この251の6代目、及び252の6代目培養についての細胞の状態については目下露光中です。が上記Exp.18の細胞については、G-3について(251)4NQO群、TG≒23hr.、TS≒7hr。Control、TG≒38hr.、TS≒6hr.をえ、表示しますと(図を呈示)。以上の実験から、4NQO作用后の短期間ではTGの延長がみられるが、作用后時間を経るにつれて、4NQO群ではCycleのspeed
upが認められる。その位相差像を示す(写真を呈示)。
《堀川報告》
培養哺乳動物細胞における紫外線障害回復の分子機構の研究(4)
化学発癌剤としての4NQOの作用機序、ならびにそれによる障害回復の機構が紫外線のそれと類似しているかどうかを検索するため、mouseL、ブタPS、Ehrlichの3種の細胞株について4NQOに対する耐性度を比較検討した結果を本月報のNo.6802に於いて簡単に報告した。また10-6乗Mの4NQOで30、60、90分間処理した後の3種の細胞株のコロニー形成能を調べた結果は、PS細胞のみが10-6乗Mの4NQOで30、60、90分間処理後にもコロニー形成能を持ち、他のLやEhrlich細胞ではこの程度の4NQO処理によってコロニー形成能は完全に認められない。
つまり紫外線に対して最も感受性株のPS細胞が4NQOに対しては最も耐性であり、紫外線に対して耐性で、しかも紫外線障害除去能力のあるEhrlich細胞などが4NQOに対して感受性であることが分かる。このことは我々が初めに予期した紫外線障害回復機構が4NQOの障害回復にも働くという考えを、まったくくつがえすもので、これらの間には何らの関連性のないことが分かった。(少くとも培養哺乳動物細胞に関しては。)
培養動物細胞株間の4NQOに対する感受性の差異のfactorとして、主として次の2つのことが考えられる。まず第1は、細胞株間の4NQO透過性の差異であり、第2は取りこんだ4NQOを4HAQOあるいはその他のderivativesにreduceさせる能力の差異にあると思われる。
勝田研究室から譲り渡されたH3-4NQOを使って3種の細胞株の酸溶性あるいは酸不溶性分劃内に取り込む能力を経時的(H3-4NQOを10-5乗Mの濃度に含む培地中でそれぞれ30、60、120、240分間培養した後の各分劃内えの取り込み能)に検索した結果は表の如くであって(表を呈示)、これらの結果から分かるように4NQO取り込み能は3種の細胞株間で大差なく、第1の可能性は否定される。むしろ細胞質容量の大きなPS細胞やL細胞が酸溶性分劃に4NQOを大量に取り込むことが分かる。またどの細胞株も培養時間と共に酸不溶性分劃に入る4NQOの量は漸次増えるが、一方酸溶性分劃では一度取り込まれた4NQOが時間と共に再放出されるようである。このことは勝田研究グループの報告したNo.6801号の結果と合わせ考えて興味がもたれる。いづれにしても第1の可能性を取り上げるよりも第2の可能性が、さらにはそれ以外の細胞株間の4NQOの無毒化能の差異を考える方が妥当のようである。
またこうした結果は或る面では4NQOによる発癌のさい、どの細胞にも同一の障害と変異を誘起させるのではないという可能性を示唆している。そして癌化の際のtarget
cellの存在を暗示させる。
《高木報告》
3月に新たにstartした実験を報告する。carcinogenは4NQO、NGを使用し、細胞は従来の如くWKA系rat
thymus cellと新たに同lung cellを用いた。
1.4NQO添加
1)NQ-3:RT-4(12月12日培養開始)8代目の細胞を使用した(図を呈示)。4NQOはHanks液で10-6乗M/ml、2x10-7乗M/mlに稀釋し、それぞれ2時間incubateした後、PBSにて3回荒井、Med.を加えた。10-6乗M/ml
2回添加で細胞はすべて変性脱落してしまったが2x10-7乗M/ml
2回では殆ど細胞にdamageがないため、継代后更に10-6乗M/mlを1回添加し、現在維持している。 2)NQ-4:1月31日培養開始した生后21日目のWKA
rat thymus cellの3代目に4NQO 10-6乗M/mlを2時間作用させたが、細胞は全部変性脱落してしまったので中止した。
3)NQ-5:RL-1(3月5日培養開始した生后4日目のWKA系ratのlung
cell)lungを摘出し、Pc200u/ml、SM 100μg/ml、Nystatin
100u/mlを含むHanks液中で約30分室温放置后、Explant法で培養を開始した。Med.はRTと同じくLHにEBMのVitamin
stockを1倍量加え、fetalCS 10%を添加して用いた。
(図を呈示)4NQOは同様に2時間作用させた。primaryより増殖してきた細胞はfibroblastであったが、4NQO
10-6乗、5x10-7乗M/ml1回処理にてfibroblastはすべて変性してしまった。しかしこれに代ってわずかに残存していたexplantよりepithelialな細胞がさかんに増殖をはじめた。目下経過を観察中である。
2.NG添加
1)NG-10:RT-6(3月5日培養開始した生后4日目のWKA系rat
thymus cell)3代目を使用した。NGはHanks液にて20μg/ml、10μg/ml、5μg/mlに稀釋して、それぞれ2時間作用させた。(図を呈示)NG
20μg/ml、10μg/ml、2回処理では細胞のdamageが非常に大きく、5μg/ml
2回処理でも半数程度の細胞が脱落してしまった。
今後は細胞が変性を起さない程度の濃度で頻回に作用させてみる予定である。
《黒木報告》
BHK-21細胞の寒天内増殖とBacto-peptone
先に記したようにBHK-21細胞は、Bacto-peptone存在下では、寒天内でcolonyを形成できます。このdataは従来までの所見とは一致しません。MacPherson達は、BHK-21はpolyoma
virusでtransformしてはじめてagar内growthをすること、それはcontact
inhibitionの喪失と関係あると述べています。
しかし、Bact-pepetoneの存在のもとでは“normal"BHK-21もgrowthするのですから、この問題はtransformationによって栄養要求性が変ったというように解釈すべきです。
すなはち『BP+,R-,A-,G-,S-,T- →polyoma(4HAQO)→BP-,R+,A+,G+,S+,S+,T+』(BP:Bacto-peptone
dependency。R:Random orientation。 A:polyoma
cell antigen。 G:Increased Glycolysis。S:Selective
advantage。T:Transplantability) (BPの他はStoker,M.:The
interaction of polyoma virus with hamster
fibroblasts.In :Virus,Nucleic acid andCancer
1963による)
このように考えると、BPの有効成分が知りたくなります。何故なら細胞のheritableな変化が栄養要求とはっきり結びついているというdataは少いからです(Eagleは最近Cysteineの代謝がtransformと関係しているというdateを出しています。Carcinogenesis
P617)。
Exp.576
BPの有効成分はアミノ酸ではないか、tryptose
phosphate broth(TPB)でもBPをreplaceできるか。BPなし培地、BP
0.1%培地、10%TPB培地、4xアミノ酸培地で寒天培地内コロニー形成能を比較した。(表を呈示)以上の成績から、BP中の有効成分はfreeのアミノ酸ではないこと、TPBでもある程度replaceできることが分った。
Esp.582
Bacto-peptoneのうち、どの位のmole wt.のものかを見当ずけるため、Sephadexによる分離を行いました。
column:26.4mmx40mm(Excel Column)
溶媒:Earle'BSSからNaHCO3、Glucoseを除いたもの
Sample:BP 10%、 3ml or 5ml
flow rate:30-60ml/h
1.G-25による分離
G-25によってBPをfractionateしたところ次のようなCurveを得た(図を呈示)。
peak 、 、 をBP 0.032%のO.D.280と同じ濃度(O.D.=0.56)に加え、その効果をみたところ、有効成分は明らかにpeak にあった。 でもcolonyはできるがsizeは小さい。(表を呈示)。
2.G-15による分離
G-25の有効fraction をあつめ、rotary evaporatorで約10xに濃縮し、G-15を通した。(図表を呈示)3つのpeakに分れる。このうち、有効なのは 3のみである。(現在BP
10%液をそのままG-15にかける方法でこのfractionの分離を行っている)
以上のように、BHK-21のagar内growthに必要なのは、Bacto-pepton中の比較的低分子のpeptideのようです。さらにDEAEなどのcolumn、paper
chromatographyで分ける必要がありそうです。
《山田報告》
少量細胞の細胞電気泳動度測定のための泳動管の改良
従来の細胞電気泳動度測定には四角型と丸型の泳動管が用いられているが、その測定には少くとも100万個前後の細胞を必要とした。従って培養細胞のごとく少数細胞を対象にして測定することは必ずしも容易ではなかった。
この点を改良するために泳動管の測定窓に直接少量の細胞を注入出来る装置を考案した。(図を呈示)図の示すごとく細いビニールチューブを測定窓に直接連絡して、ここから少量の細胞を注入して測定出来る様にした。
この改良により、少量細胞の細胞電気泳動度測定が可能になり、基礎実験によると、最低5000ケの細胞でも測定可能となった。しかし通常楽に測定出来る細胞量は2〜30000個の細胞が尚必要である。