【勝田班月報・6807】
《勝田報告》
 4NQOのphotodynamic actionについて:
 ウィルス発癌の場合には、細胞内にT抗原の存在とか、ウィルスの種類によっては、感受性のある細胞をあとから添加してウィルスを再生産させる、などの技法によって、変異細胞のなかに、ウィルスの“爪痕"を証明することができる。化学発癌の場合にも、何かそれに似た証明法ができないであろうか、という目標で、この間からいじっているのがこの問題である。 細胞:RLC-10株(正常ラッテ肝細胞)
 培養法:短試、静置直立(光を照射する関係から)、37℃
 4NQO処理:1回のみ。培養2日后に3.3x10-6乗M、30分間、37℃にて
 照射:4NQO処理后、いろいろの時間をおいてから、3650Åの光で、120分間室温で照射した。  これ以外の時間は、細胞はすべて箱に入れて暗黒で加温していた。
[結果](図を呈示)
 Controlとあるのは、4NQOも光も与えない群で、8日間に約25倍の増殖を示している。
 2日后に4NQOで処理し、すぐに光で照射した群は、4日后には2,000/tubeに細胞が急減してしまった。
 4NQO処理のあと、2日后に光で照射した群はやはり細胞がこわれて行った。
 4NQO処理の4日后に照射した群では、細胞数の減少はみられなかったが、無照射(4NQOaloe)に比べれば増殖が抑えられた。
 照射した培地を加えるだけの処理では、対照とほとんど差がなかったが、4NQOを光で処理して2日后に与えた群では、4NQOのcytopathic effectが激減し、対照よりちょっと低いだけの増殖曲線で4NQO aloneの曲線よりはるかに上回っていた。討論は次の班会議にまわす。

《佐藤報告》
 (図表を呈示)ラッテ肺細胞に4NQOを投与した実験系図と、その発癌動物の詳細を記した表です。4NQO 10-6乗M(4〜6hr)を頻回処理した群の4匹が発癌した。No.125は前回スライドをお目にかけたもので上皮性の性格で一応形態的に円形細胞癌としておきます。No.128は肉腫、一部癌細胞の性格を示す。No.129は繊維肉腫。No.145は癌肉腫で一部に腺管形成の部がある。
 以下にExp.7株細胞に4NQOを投与した動物で更に3匹腫瘍を形成したものの表を示す。

《三宅報告》
 京大放医基堀川博士からゆずられたL細胞について、4NQOのDNA合成への影響をしらべた。4NQOをあらかじめアルコールに10-3乗Mに溶かして、冷暗所に保存しておいて使用に際し、Mediumに希望の濃度にうすめた。AutoradiographyにはH3-TdR 1.5μc/ml、60分間のflashlabelingをした後に、メタノール固定、後サクラNR-M2によるDipping、L細胞では1週間の露出、ヒト胎児Fibroblastでは3週間露出を行った。
 結果:L細胞は、ヒト胎児皮膚由来のfibroblastにくらべると、4NQOに耐性をしめし、10-6乗x5Mで細胞の変性など形態上の変化を全くみることができなかった。L細胞とヒト胎児細胞での4NQOに対する反応を示す(表1を呈示)。表2は4NQO 5x10-6乗Mを入れたMediumで所定の時間、L細胞を培養し、時間后正常のMediumに戻して、直ちにH3-TdRのflash labelingを行ったものである。前回報告したヒト胎児皮フfibroblastではG1-blockを思わせる切れこみがグラフの線上にみられたが、L細胞にはそれがみられない。しかし、Lにもその可能性がある事実は、前表の10-5乗Mの作用時にL.I.は2時間をすぎると降下している。表2では5x10-6乗Mであるから、この濃度をあげるとG1-blockのカーブがえられたかも知れない。また表でみる通り、L.I.は対照より4NQO作用群の方が高い。これはS期に存在する細胞の数の増加、すなわちS期の延長と考えられる。同時に一方でGrain count(核あたりの銀粒子の数を20核について数えた、その算術平均)をしてみると、4NQOの作用群に減少がみられる。DNA合成と抑制と考えてよいであろう。
次にColcemid(1.5x10-7g/mlのfinal concent)で、MitosisをおさえてM期の細胞の蓄積を検索した。(表を呈示)染色はMay-Grunwald Giemsa、M.I.は1000個の細胞の中の分裂像をもって測定。するとControl(plating後48時間目)ではM.I.は2〜5%であるのに4NQO作用群では、M期への流入が明らかに阻害される。G2-blockが行われていることを知ることができた。
 次に4NQO 10-6乗MとH3-TdR 1.5μc/mlを同時に投与してcumul.labelingを行ってL細胞をしらべてみると、(表を呈示)4NQO群で各phaseは延長がみられた。この時間の延長は4NQO10-6乗Mでも、略々これと同じ結果が得られた(次回に報告の予定)。
 以上をまとめてみると。
(1)L細胞は人胎児皮フのfibroblast(Diploid)に比して4NQOに対し耐性を示す。
(2)ヒト胎児にみた、前回に報告したような明かなG1-blockはみられなかったが、濃度をかえて実験をくりかえせば、出現の可能性は否定出来ない。
(3)S期の延長が(S期にある細胞数の増加)がみられる。
(4)TGの延長がある。それはS、G2、G1の延長による。

《高木報告》
 前報に引きつづき実験経過を報告する。 
 1.4NQO
 1)NQ-6(RL-2 cells)
 5x10-7乗:4NQO除去後20日目に認められたfociは差程大きくならず、他の部のセンイ芽細胞様な残存細胞が増殖を示して来たので、4w後にTD401本から1本に継代した。11日目にガラス面全面をおおう程度に増殖(confluent sheetではない)したので3代目に継代、現在まで特に形態的に変化なく、ホーキ星状の細胞が殆どである。
 2x10-7乗:4NQO 8回処理群は細胞の増殖なく培養を中止した。7回処理群は処理後45日間に3回継代したが、殆ど現在増殖を示さない。この培養もホーキ星状の細胞が主である。継代後fiberの形成はなくなった。
 対照:現在9代目であるが、増殖は殆ど止った状態である。
 2.NG
1)N-11(RL-2)
 10μg/ml:細胞の増殖なく培養中止
 5μg/ml:細胞の増殖なく培養中止
 1μg/ml:NGを7回作用せしめた実験群では、現在8および9代目を継代中であるが、対照は殆ど細胞の増殖を示さないのに対し、可成り良好な増殖を示している。しかし位相差顕微鏡でみた範囲では形態的には変化をみない。
 なおNG-4(月報No.6711)の細胞は現在なお継代中であるが、薬剤除去後7ケ月をへた本年4月末頃から増殖がよくなり、細胞の異型性、核小体の大きい感がつよくなった。対照の増殖はあまりよくない。現在標本作製中である。
 NGを細胞に作用せしめるには、mediumのpH、時間、濃度と云った問題をさらに検討する必要がある。
 2)NQ-7(RT-7 cells)
 10-6乗:処理後生じたColonyはあまり大きくならず、他の残存細胞が次第に増殖したので50日目に継代、継代後fiberの形成はないが培地は粘稠である。細胞の増殖はあまりない。形態的に対照と差はない。
5x10-7乗:処理後colonyの形成なく残存細胞が増殖して来たので、30日目に継代、増殖はあまり良くなく、fusiformの細胞が主である。
 2x10-7乗:7回処理群は処理後22日に継代、増殖はよくなかったが、18日後に再び継代、1wで大体confluent sheetになったので、そこで再び5x10-7乗Mの4NQOを2時間作用せしめた。この度はcell damageなく4日後に継代したが、今日迄形態的に特に変化はない。
培地中にNQ 2x10-7乗M 3日間作用せしめたものは薬剤除去後1w目に継代、その後も7〜10日の間隔で継代し、その間3倍程度の増殖を示している。
 対照:7〜10日で2倍程度の増殖を示すspindle-shapedのfibroblastである。

《梅田報告》
New born ratのliver gragmentsをroller tubeにはりつけ一定期間roller drum cultureすると、ratの年齢によりDAB 1μg/ml投与例でcontrolと差が出ることは、1965年の勝田先生の報告、佐藤先生の報告に詳しく記載されている。 勝田先生等は、このことをDABがproliferation-inducing effectを持つとされて解析されて居られるが、この間に起る細胞内での生体高分子合成能の変化、あるいは合成パターンの移動を検討することはDABの発癌機構の解析へのone stepとして重要なことと思われる。その目的で以下のかなり大規模なpreliminary experimentを行ってみた。結果は完全に失敗に終った様であるが、technicalの面で皆様の御批判、suggestionを得たい。
 材料と方法:勝田先生のところからJAR2のone litterを得て、生后6日、10日、15日、20日に一匹宛殺し、liverを剔出し、explant法によるroller tube cultureを15本作製下。毎回6本を実験群としてDAB 1μg/mlを加え、6本は対照群としてcontrol medium(LD+20%CS)を加えroller drum cultureを開始した。残りの3本はcontrol med.に1本宛0.1μc/ml H3-TdR、0.5μc/ml H3-UR、1μc/ml H3-Leuを加え、1時間incubateし組織片を洗滌後rubber cleanerではがし、テフロンhomogenizerでhomogenizeし以后型の如くcold PCA、アルコール列、エーテルで処理して、PCA-insoluble fraction(DNA、RNA、蛋白等の高分子分劃)を得た。培養した6本宛のtubeは、3乃至4日后medium changeして、そのあくる日実験群、control群の各3本をとり出し、1本宛H3-TdR、H3-UR、H3-Leuを加え、incubate后、上と同じ様に処理して、PCA-insoluble fractinを得た。更に6乃至7日、又8乃至9日でmedium changeし、9乃至10日目に残った3本宛の実験群、control群のtubeに対し、同じ処理を行った。
之等fractionはformic acidに溶解し、2 portionに分けた後、formic acidをとばし、再びprecipitateを得た。一方はdiphenylamine法によるDNA定量を行い、他方は10%KOH 0.2mlに溶解后、5mlのBray liquid scintillation cocktailを加えBeckman liquid scintillationcounterでradioactivityを計測した。
 結果:各tubeのexplantとしての全組織量が少く、DNA量は比較的少くて、定量は一部不正確となった。liquid scintillation countは、HeLa細胞等では5000cpm前后摂り込む筈のprecurssorsを投与したのに、100cpm前后しかcount出来なかった。以上の様なわけで不正確きわまりない計算であることは承知であるが、一応dpm計算を行い、とり込みをμgDNA量で割算して各値を比較してみた(表を呈示)。各点が各1本のtubeからの値であることもあり、このdataから結論は引き出せないが、生后20日肝を剔出して1時間の摂り込みを行った時、DNAもRNAもproteinも少量しか合成していないのは興味深い。その他technicalに、DNA定量法の改善、radioactive precurssorの投与量の検討、更に実験を10日で打ち切ることなしに、2週間或は3週間培養して充分細胞が増殖した時点での摂り込み実験を行った方が良いのでないか、等を目下考えている。

《山田報告》
 in vitro培養における変異株細胞の表面構造を検索するために、医科研勝田先生の培養された正常ラット肝細胞RLC-10及びなぎさ培養により変異したラット肝細胞RLH-5、またラット腹水肝癌AH-7974培養株を用いて、その細胞電気泳動度(E.P.M.)の測定を開始しました。その第一報を書きます。
 細胞は物理的に撹拌して硝子面よりはがして、浮游細胞液を作り、これをcylindrical chamberを用いて、直接そのE.P.M.を測定。用いた電流量は2mA、24v/cmです。その結果次のごとくになりました。
 (細胞電気泳動度の分布図を呈示)図で明らかなごとく、正常細胞RLC-10のE.P.M.が最も低く、その泳動度のばらつきが少く、ラット肝癌細胞AH-7974が最も高く、RLH-5が両者の中間の成績を示して居ます。
 この三者の細胞にそれぞれシアリダーゼ(細胞表面荷電を担う物質の一つであるシアル酸を特異的に除去する酵素)処理を用いますと、図の太い線で囲んだ部分のごとく変化しました(シアリダーゼ30単位/メヂウムml.、pH5.6、M/10醋酸緩衝液、37℃30分)。
 AH-7974はこのシアリダーゼ処理によりそのE.P.M.は著しく低下し、RLH-5は殆んど変化せず、正常肝細胞のE.P.M.はむしろ増加しました。
 以上の成績について次のごとく考えて居ます。細胞が悪性変化に伴い、その表面荷電量が増加すると云う従来の知見は、この正常肝及び肝癌の成績と全く一致します。
 変異株ではあるが、ラットに復元しても腫瘍死を起こさせないと云うRLH-5株が、正常細胞と癌細胞との中間の性質を示すことも従来の知見と矛盾しません。むしろ、この表面の性質から逆に両者の中間的性格であることを示すとさえ思われます。
 ラット肝細胞のE.P.M.がシアリダーゼ処理によりむしろ増加すると云う成績の解釈ですが、この細胞は非荷電物質が表面に被覆して居るか、或いは、シアリダーゼ処理により表面荷電の配列に変化が起こると考へるべきか、極め手はありません。しかしラットの肝細胞を鋏で細切して細胞浮游液を作り、同様の処理を行ってもやはり、むしろ泳動度が増加するという自験成績があり、またこの報告もあります。従ってこの培養された肝細胞の成績は全くの偶然ではありません。この現象に類似のものとしては、マウス移植性腹水卵巣癌HGT(この癌細胞の発育は極めて遅く宿主マウスの生存日数は40〜50日で、そのE.P.M.も悪性細胞としては異常に低い系統です)があります。この癌細胞はhyaline物質を産しており、明らかにhyaline物質がその表面を被覆していると思われます。この癌細胞をシアリダーゼ処理すると、そのE.P.M.はむしろ増加します。この知見を考へ合せますと肝細胞にも何か被覆して居るのでないかと考へたくなります。RLH-5細胞はシアリダーゼ処理により、そのE.P.M.の変化は殆んど変化しませんから、シアル酸依存荷電は少ない様に思います。
 Fornesterにより、培養腎繊維芽細胞と、これにポリオーマウィルスを感染させて腫瘍化した繊維肉腫を比較すると、後者のE.P.M.は高く、シアル酸依存荷電量が多いと報告されていますが、AH-7974の成績はこの成績と一致します。この知見を一般化するためには、なお多くの検索が必要だと思ひますが、若しこれが腫瘍一般の原則であるとすると、RLH-5は悪性腫瘍ではないと云うことがはっきり云へると思ひます。(腹水癌でもそのE.P.M.が高くシアル酸依存荷電量が多いと云う報告はたくさんあります)
 更にこの問題について順次検索して行きたいと思ひますが、このシアリダーゼ処理以外にカルシュームイオンの細胞吸着性の多寡により燐脂質依存荷電量を半定量的に測定出来ると云う基礎実験を行って居ますので、この方法を用いて燐脂質依存荷電の面からも併せて考えて行きたいと思って居ります。

《藤井報告》
 培養ラット肝細胞がadultの正常ラット肝組織の抗原群のいくつかを失うらしいこと、および変異をおこした培養ラット肝細胞が新しく抗原を獲得するのではないかという示唆を、microplate法によるdouble diffusionで得たのですが、今回は沈降線によらず、抗原−抗体反応を、免疫学的反応の中では最も鋭敏な反応系に属するimmune-adherence(IA)を用いて、培養ラット肝細胞とその変異種の抗原解析を予備実験的に行ないました。
はじめに、IA-反応についてですが、この反応は抗原(G)-抗体-(A)補体-(C)と反応が進むと、その反応複合体(GA-C')に霊長類の赤血球が粘着する現象で、反応系によっては0.0005μgA6Nの微量の抗体も検出出来ます。
 このIAを用いて、(1)培養ラット肝細胞が抗ラット肝組織ウサギ抗体と反応する抗原を失っているかどうか、(2)変異した培養ラット肝細胞は新しく抗原性(例えば癌の)を獲得することがあるのかどうか、を検討するのが目的である。
 Ex.062168:培養細胞におけるImmune-adherence
 培養細胞:医科研癌細胞学部・高岡博士より供与されたRLC-10、RLH3、RLH4、RLH5、AH130(JTC-1)、および培養AH7974細胞。これらの細胞、約10万個が、培養ビンのままで抗原抗体反応の観察を容易に実施しうるようにした短かい小角ビンに培養された。
培養1日でIA反応を行なった。
 抗血清:(1)抗ラット肝ウサギ血清(FR-51)、洗滌ラット肝組織細胞を数回注射して得た血清(-20℃保存、非働化はしていない)。(2)抗7974ウサギ血清、AH7974細胞1000万個を2回、3週おきに皮下に注射し、第2回注射后8日に採血した血清、抗体価(凝集素価)不明。
 補体:モルモット血清を5%容量のラット肝細胞で2回、ラット赤血球(packed cellsとして)で1回、人O型赤血球で3回、氷水中に冷して自然抗体を吸収し、后25,000rpm 30分間遠心して溶解したstromaを除去した。IAには1/20に稀釋して用いた。約150C'H50/mlを有する。 人O型赤血球:IAの指標細胞。O型の人赤血球を生食水で洗い(2回)さらにdiluent(KGVB++)で1回洗った上で2%浮游液(4億個/ml)としたもの。
 反応液:TC-199・、培養細胞を洗って后に加う。 KGVB++・veronal bufferにGelatin(0.1%)、Ca++(0.001M)、Mg(0.0005M)の他にKCl、glucoseを含む。
 IAの方法:
 1.培養ビンより充分に培養液を除去・・ビンを倒立して1分位立てておく。
その后TC-199、0.25mlを静かに入れる。
 2.稀釋抗血清0.25mlを加え、37℃恒温器中に20分置く。この間数回かるく振盪する。抗ラット肝組織ウサギ血清は1/10稀釋(KGVB++液で)。抗7974細胞ウサギ血清は1/5稀釋を用いた。 3.反応后、C'、1/20稀釋0.25mlを加へ、時々振盪して37℃、30分おいた后、
 4.人O型血球浮游液(2%)0.1mlを加え、よくしかし静かに振盪しながら37℃30分反応させ、 5.倒立顕微鏡下にIAがおこっているか否かを判定する。この際、培養細胞に粘着していない、非反応赤血球を除くため、1〜1.5mlのKGVB++液をビンに注ぎ、培養ガラス面を上にして洗滌液を流出させるようにして、これを5回くり返した。
 成績:培養細胞にIAがおこり、培養細胞に人赤血球が粘着しているときは、赤血球はビンを振っても、離れるようなことはない。反応がつよいときは1ケの培養細胞の周、あるいは上に赤血球がとり囲むようにして並び附着しており、多くは1ケの培養細胞に1ケの赤血球が附着している。判定は、便宜的に++++、+++、++、+、-とした。培養細胞の場合、ガラス面に附着している細胞を数えることが、私としては不馴れなので、今回は大凡その判断でIAのおこっている細胞の多寡より判断した。
 1.RLC-10に抗ラット肝抗体とC'を加えたときは、非常につよいIAがみられた。細胞の変性破壊が著明である(写真を呈示)。RLC-10に抗ラット肝抗体を加えC'を加えないときは、IAは殆どおこっていない(写真を呈示)。
 2.RLH-3、RLH-4、RLH-5の変異株では、抗ラット肝抗体とC'附加において、IAは極めて弱くみられるのみ(±)。これらの細胞は抗7974抗体とC'附加の場合、弱いながら抗ラット肝抗体の場合よりつよくIAがみられるようである。
 3.JTC-1(AH130)、培養AH7974細胞は、細胞の洗滌の折りに流出したものの如く、ガラス面の細胞は極めて少なく、IAもこれら残った細胞には殆んどみられなかった(表を呈示)。
以上の成績から
 1.IAでは培養ラット肝細胞は抗ラット肝組織抗体と反応する。即ち、培養ラット肝細胞RLC-10は、adult rat liverの抗原を保持している。以前microdiffusionでみたところでは、この組合せでは沈降線が出ず、抗ラット肝抗体−成ラット肝組織間にみられる5本の沈降線が消失していた。
 2.変異株のRLH-3、-4、-5等は、抗ラット肝抗体に対してIAをほとんどおこさない。すなわちRLC-10の示すIA反応が失われる。これらの細胞が抗癌抗体(抗AH7974)に弱く反応するかに見えるが、これは、更に追免疫したウサギの抗AH7974抗体を得た上で確かめたい。
 3.培養ラット肝癌はガラス壁への附着がよわく、操作中洗い流されてしまったので、結果はむしろ不明である。これらの細胞はガラス壁よりはずした細胞について、試験管内で反応を試みる予定である。

《黒木挨拶》
 “最後”の月報どうもありがとうございました。今まで5年間に恒って勉強させて頂いたことを深く感謝しています。
 僕の学問形成のもっとも大事な時期に、先生の班に入れて頂き、学問の厳しさ、科学的思考法、実験の技術、そのすすめ方を教えていただいたことは、僕にとって大変幸運なことであったと思っています。それは、一つの研究室の中に閉じこもっていたのでは到底得られない貴重なものでした。
 月報を書くことにより毎月一回自分のdataをまとめ、考えなおすという“習慣"もつきました。その月報という“regel"がなくなることは“更年期"にも似たさびしさです(と想像しています。更年期を経験したことがないのでよく分らない)。
今後も班で得た数々の「教え」を生かして精一杯頑張る積りです。今後上京の折は先生の研究室に遊びに寄らせて頂きたく思います。その折りは、宜敷く御指導の程お願い致します。

編集後記


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