【勝田班月報・6902】
《勝田報告》
 RLH-5・P3について:
 これはRLC-9(正常ラッテ肝)株の亜株のまた亜株である。RLC-9はJAR-1系F24生后5日♀ラッテの肝を1965-7-21に培養に移してできた株であるが、'65-12-6から平型回転管で“なぎさ"培養をはじめ、'66-1-18からは円形管にかえ、'66-9-19から再び平型管で“なぎさ"にし、'66-12-25に変異細胞が現われてRLH-5と命名された。'68-10-15その一部(継代24代)を無蛋白無脂質の完全合成培地DM-120内に移したところ、すぐに増殖が起った。この系をRLH-5・P3と命名したが、'68-12、継代4代のとき染色体をしらべると、RLD-5より少しモードが低くなっていた(図を呈示)。
 細胞の形態は細胞質突起を長く伸ばし、L・P3にやや似ているが、4NQOと光に対する感受性を'69'1-13(継代5代)にしらべると、4NQO単独でもかなり阻害を受ける点でL・P3とは異なっていた(図を呈示)。現在継代6代で酵素学的に肝と同定できないかと検索を計画中である。
《佐藤報告》
 *(1)教室で飼育している呑竜ラッテの正常核型、とB-4の染色体にみられる多型について報告します。
 呑竜系ラッテは1949年に佐藤隆一医博(浦和市・日本ラット株式会社)が市販の白ネズミの雌雄2匹を兄妹交配し、以后系統的に育成したもので、1959年にF20に至り、その後は拡大繁殖に移し市販されました。その際、一部はなほ兄妹交配を続行し、今日F42にまでなっています。
教室の動物は1961年に実中研から購入し、交雑により繁殖させて使用していましたが、1965年以後は専ら兄妹交配して現在に至っています。
 発癌過程を染色体上でキャッチするにはまず用いている実験動物の正常核型を充分に把握しておく必要がありますので、呑竜系ラッテの正常核型を今一度調べ直した次第です。 呑竜ラッテの正常核型については吉田俊秀先生(1965)が既に報告されていますが、染色体の分類と命名法はどの方法によるのが最も簡単で分析しやすいか、又光学顕微鏡レベルでどの程度まで個々の染色体を同定識別することが出来るか等を考慮しながら調らべました。結果は(核型の図を呈示)、分類はKurita,Y.et al(1968)の方法に従ひ、42本の染色体を動原体の位置によりA、B、Cの3つに分類し、各グループ内では大きさの順に並らべて、大きいものから順に番号をつけ、個々の染色体を分類、命名しました。
 正常核型についてはB-4以外は吉田先生の報告と略一致しましたが、B-4には多型がみられました。即ち(1:ST・ST。2:T・T。3:ST・T)の3種類あります。(表を呈示)。又この表は1967年の11月から1968年の4月までの間に生れた27腹の動物につき、各腹毎に♂♀各1匹づつの染色体を調らべ、それらのB-4型につきまとめたものです。同腹のものは全て同一の型を示しました。3:の型のものはわずか1腹にすぎませんでした。
 動物の尾を切って培養し、その培養細胞から染色体を作成して、その動物のB-4の型を確認しておいた上で1:と2:との型の動物を交配してF1を作り、F1の染色体を調べたところ、いずれも3:の型であった。従ってB-4にみられる多型現象はartifactでなくgeneticalに明瞭なpolymorphであることが確かめられました。
 扠て当教室のものの対照として同じ系の純系動物ではどうかと考えて、日本ラット株式会社で育成している呑竜ラッテの純系動物の核型を調らべる機会を得ました。これらの動物は現在F40以上になっておりますが、今迄に一度も細胞遺伝学的検索をしていないそうです。(皮膚移植では93%だそうです)
 調らべた動物はF40代の一腹とF41代の一腹だけですが、その結果は核型全般については教室のものと大差はありませんでした。B-4についての結果をまとめてみますと、下記の如くです(表を呈示)。
 F40代のものは性別に関係なく1:と3:の型でF41代は2:と3:の型で、いずれも分離比は1:1でしたので、F40代の両親(F39)は1:と3:のどちらかの型であり、F41代の両親(F40)は2:と3:のいずれかであることが推定されます。(調べたF40とF41は異腹の系統だそうです)。
 以上呑竜系ラッテのB-4の多型について、当教室のものと日本ラットKKのものを比較して考えてみますと、当教室のデータでは4年近く兄妹交配しており、27腹中3:のheteroの型を示したものは1腹にすぎず、他は1:及び2:のhomoの型となっています。実験的に3:の型を作ることが出来ることから考えて、STとTは対立遺伝子と考えられ、20代以上も近親交配をつづけると、ST・Tの如きheteroのものは減り、SSやTTの如きhomoのものが優勢を占めると考えられますから、日本ラットKKの純系動物のデータで3:のheteroの型が非常に多いのが理解出来ません。
 呑竜以外の系でB-4のshort armにsatelliteを有しているもの、いないものがあるという報告は文献上2〜3あり、今度の呑竜での所見と最もよく似た報告はBianchi,N.O. & Molina,O.(1966)がRattus norvegicusで発見しております。B-4のPolymorphismにつきその意義や成因について全く解ってはいませんが、今後の研究に待ちたいと思います。
 話が前後しましたが、正常核型の中で光学顕微鏡レベルで形態のみから個々の染色体を同定識別する場合に、識別可能な染色体はB groupの4対とC-1及びYのみです。染色体上で正二倍体であるという確認は前記の5対とYの同定による外にないとはお粗末な次第です。
 *(2)前号で難波が報告したようにRLN-25の4NQO 10回処理のものが発癌し、腹水型の腫瘍を形成しましたが、その后20回及び25回処理のものも現在外から小腫瘤を触れる程度になって来ています。これから残りのものも次々とtakeされるものと思われます。次号ではそれらの腫瘍の染色体分析の結果をまとめて報告出来るものと考えます。

《高木報告》
 前回の月報でNG-4を移植したWKAratの中生残した3疋すべてにtumor(Sarcoma)を生じ、相前後して行った剖検の所見を報告しました。そのtumorの組織学的所見について、はじめにsacrificeしたNo2.ratはfibrosarcomaと思われますが、他の2疋No3.No1.ratに生じたtumorについてはsarcomaは間違いないが、なお種々の染色を行ってみる必要があり、はっきりしたことは現在申せません。PAS、Masson染色など行ってみようと考えています。電顕用の固定もしてあります。これらのtumorは再培養、移植など行いましたが、今回は再培養の所見につき報告します。
 No2.rat tumor:周辺部のnecrosisの少い部分をとり細切後plasma clotなしでガラス面に附着せしめ、LH+Eagle's vitamine+10%calfserumで培養を開始しました。なお培養途中からこれに、glutamin、pyruvateを加えました。growthはおそく、約7日〜10日後からround cellのmigrationがおこり、その下にしばらくしてfibroblast-like cellsのgrowthをみました。fibroblast-like cellsはtumor cellと思われるものとfibroblastの2種からなり、共にgrowthしておりましたが、2代、3代と継代して行く中にtumor cellsと思われるものがdominantになり、現在はほとんどすべてtumor cellsと思われます。
 現在growthはさかんで1週に1回は必ずtransferしなければなりません。round cellとこのtumor cellとの関係ですが、あるいは同じものかと云う気もしています。と申しますのは継代してしばらくはnetworkを作るtumor cellと思われるものの増殖があり、この時はrund cellは数はわずかで、cell sheetの上にのっている感です。しかし培養日数がたち、tumor cellsがpile upしてきますと、その様な箇所にはround cellも集まってpile upしてきます。それとround cellとtumor cellと思われるfibroblast-like cellとの間に移行型と思われる様な、つまりround cellの両極にcytoplasmがのびてガラス面に附着している様な細胞も見あたるからです。なお観察をつづけます。
 No3.rat tumor:2番目にsacrificeしたNo3.ratのtumorは、大きかったため写真をとったり、移植をしたりしております間に時間がたち、培養を開始したのがおそかったためか、growthは不良で、培養10日目頃からround cellsのmigrationがおこり、その後さらに10日位してfibroblast-like cellsのgrowthがおこりました。培養開始後約7週間の現在bottleはきれいなfibroblastで、その上にごく少数のround cellが附着しています。
 なおround cell丈を集めて継代したものも現在少数のround cellが浮游し、またfibro-blastと思われるものがわずかに生えています。
 なおNo3.rat tumorを生後3週間のWKAratの腹腔内に移植したところ、その中の1疋に“いもずる"の如くつらなった数ケのtumorと、血性のascitesを20日後にみとめました。solidtumorは、細切して培養したところ、やはり同様なround cellとfibroblast-like cellの、growthをみましたが、このfibroblast-like cellは増殖おそく、colony状のgrowthを示しており、何となくreticulum cellを思わせる形態ですが核小体の大きいことなどやはりtumorcellであろうと思います。10mlの血性ascitesはそのまま培地でうすめて100,000/ml cellsを4mlずつpetri dishで培養しましたところ、round cellの増殖はあまりはっきりしませんが、4週間をへた現在なお浮游しており、それらを集めて継代したところです。なお、1つのpetri dishにはfibroblastとreticulum cell様の細胞(tumor cellか?)のoutgrowthがみられます。
 No1.rat tumor:12月31日に培養を開始しましたが、これもgrowthはきわめておそく、1週間後よりround cellのmigrationがおこり、約2週間後からその下にreticulum cell様細胞のgrowthをみました。現在round cell丈のbottleとreticulum cell様の細胞がcolony状に生えて、その上にround cellが附着したbottleとあります。その中の1本をとり継代してみましたが(細胞数を多目に)あまりgrowthはよくない様です。他のbottleはいましばらくrefeedをつづけて様子をみることにしています。
 以上これまでに行いました再培養の概略を報告いたしました。文章にかきますと中々細胞形態の表現が思うにまかせず、あるいは不適当な表現もあるのではないかと思います。次回月報ではこれらの写真を供覧いたす予定でおります。なお移植の成績につきましては、班会議で報告の予定です。再現実験はinitial changeを認めた段階で特記すべきことはありません。 

《山田報告》
 昨年暮より、いままで検索した成績を再確認することと、発癌過程における表面構造の変化を検索し始めました。その成績を書きます。
 岡大病理株のうちで自然に発癌したと云う株RLN系の電気泳動度についてはNo.6809、No.6811号に書きましたが、その成績のうちで、長期培養株はRLN-38であり、後者はRLN-36でした。両者は全く同一の性質を有するとのことですが、改めてRLN-36について培養株と、そのラットに復元した後の再培養株について比較しました。その細胞電気泳動度の状態は、(以后それぞれに図を呈示)、図のごとくで前回のRLN-36及びRLN-38を用いた場合と全く同一でした。即ち自然に癌化した株ではその電気泳動度は低く、ノイラミダーゼ(従来と同一条件)処理により殆んど変化せず、腫瘍再培養株の電気泳動度は高く、しかもノイラミダーゼ処理により有意の泳動度の低下をみました。この成績より、自然癌化したRLN-36株のうちで悪性化している細胞密度は少く、腫瘤形成により悪性細胞が選択されるものと考える様になりました。
 次ぎに同じく岡大株で4NQOにより発癌したと云うExp7-2と云う株(ラッテ肝細胞)について培養株と、腫瘤再培養株の電気泳動度を比較しました。この株は、No.6809に報告したExp7-1と極めて類似の条件で悪性化し、その性質も似て居るとの事です。
 悪性化した細胞株についてはExp7-1と同じく悪性型のパターンを示しましたが、対象の株は正常のラット肝細胞の電気泳動のパターンを示さず、むしろ変異型を示しました。即ち、ノイラミダーゼ処理により泳動度は増加しませんでした。
 Exp7-1とExp7-2の違ひを次回の会合で伺いたいと思って居ます。
 また生体内でDABを与えた後に培養して癌化したと云う株(ラット肝細胞)d-RLA74、d-RLH84について前回と全く同じ条件でくりかへし電気泳動度を検索した所、前回と殆んど同じ結果を得ました。
 悪性化したCQ42株の細胞形態
 CQ42をラットに復元した所、腫瘍が発生したにもかかわらず、株全体の細胞形態は復元前後において全く変りがないと云うことですので、CQ42株のうちでどの細胞が悪性化したかを検索する意味で写真撮影式電気泳動装置を用いて、その電気泳動度と細胞形態を検索してみました。CQ42株と、その腫瘤再培養株について検索し、そのうちで電気泳動度の速いものと遅いものとにわけてみました(写真を呈示)。しかし、こうやって分類しても泳動度の速いものと遅いものとの間に形態学的な特徴を見出すことは出来ませんでした。
 CQ42株の悪性化細胞密度は少いと思われますが、悪性化した細胞の形態は悪性化しない細胞のそれとは大差がないのでせうか?。
 ラット肝細胞(RLC-10)の電気泳動度の6ケ月間に於ける変化:
 昨年の夏にRLC-10の電気泳動度のパターンを検索しましたが、6ケ月後に再び検索しました所多少変って来ました。前回はその泳動度が単一で揃って居り、ノイラミダーゼ処理により著明に増加しましたが、今回は多少の泳動度のバラツキが出て、ノイラミダーゼ処理による泳動度の増加がやや減少しました。しかし他の株にくらべてまだ正常肝細胞方に近い型を示して居ます(図を呈示)。
 4NQO投与直後のラット肝細胞の電気泳動度の変化:
 4NQO投与後の電気泳動度の経時的変化を、検索し始めました。今回は3.3x10-6乗Mの4NQOを30分間、ラット肝細胞(RLC-10)に接触させた後に、メヂウムと交換した後の5日間の変化を検索しました。結果は(図を呈示)、4NQOの接触後2〜3時間後に一時僅かに電気泳動度は増加し、その後5日まで漸次低下する様です。それぞれのノイラミダーゼ処理後の泳動度をしらべますと、接触直後(2〜3時間)ではむしろ泳動度は低下しますが、その後はこの処理によって変化なく、5日目に再び低下を示して来ました。その意味づけは更に検索してから考へたいと思ひます。   (悪性化したラット肝細胞ではノイラミダーゼ処理で少くとも0.1μ/sec/v/cmの低下をみます。)

《安村報告》
 ☆Soft Agar法(つづき)
 1.CQ-42細胞(正確にはCula-TC):前々号の月報(No.6812)での報告でこの細胞をSoft agarでColony形成させることができなかったとのべられた。そのご、この細胞系から液体培地でえられたepithelialのcolonyを2コ、ステンレススチールのカップで拾われ、かりにQ1、Q2と名付けられた。
 今回の実験でこのQ1、Q2細胞をSoft agar中でColonyをつくらせることに成功した。(結果を表で呈示)。結果をすこし大げさにP.R.しますと、Ratの細胞で化学発癌剤でin vitroで発癌したものがSoft agar中でcolonyを形成する能力をもっていることが(たぶん初めて)立証されたということです。
Q1からの拾われたcolonyは5コとも増殖中であり次回の実験でSmall colony、Large colonyのdissociationのrateをしらべることができよう。Q2からは10コひろわれたが、そのうち1コのみが増殖中である。このことはQ1は2xconc.の培地であるのに反して、Q2が1xconc.の培地であるために、colony形成数は多いが個々のcolonyの性状がわるく、large colonyがひとつもなかったことと関係があると思われる。Q2からmassと集めたcolonyはTD40ビンで増殖する。Q2からのcolonyには死んでいたのがまざっているということだろう。
 以上のことがらから、培地条件を考えにいれると、このSoft agar法をつかって、化学発癌剤で処理してから時期を追って調べることによって、発癌細胞をcolonyとしてひろいあげることができそうである。今回の実験はまだその前段階であるにすぎない。というのはCula-TCはnormalのRLC-10を4NQOで発癌した細胞系CQ42、つまりRLT-1をratに接種してえられたtumorの再培養系Cula-TCであるからである。前々号の月報で、Soft agar中でcolonyをつくらなかったのもCula-TCであった。今回の実験で異るのは前回のCula-TCからえられたEpithelialのColony Q1、Q2が出発材料になっていることである。このことは、Tumorからの再培養中にはまだまざりものがあって前回では失敗したのかもしれない。今回の実験材料はpureといわないまでも(つまりクローンではない)、homogeneousの細胞集団から出発したので、うまくいったのかもしれない。次回からの実験では、ぜひoriginalの動物通過してないCQ42、つまりRLT-1をつかってSoft agarでColonyをつくらせたい。
 2.予備段階のもう1つの実験で前号の月報(No.6901)でのべられたCQ40(正確にはCulb-TC)の系で今回Colony形成にやはり成功したことをお伝えしたい。しかし、培地の関係で日水のmodified Eagle MEMの1xconc.のものを使用したので、large colonyはえられず細胞の性状はあまりよくない。次代に増殖するか?。

《梅田報告》                                   ここ一年間、各種化学物質の性質を調べるにあたって簡易培養法を行う必要にせまられ、Toplin等のPlate Pannel法(Merchant等のHandbook of cell and organ culture 2nd Ed.に出ている)を利用してきた所、いろいろ応用すると便利な点も多いので今回はその方法を紹介します。一度班会議でもお見せしたDisposo-tray plastic製と、丁度それにびったり入る15mm位の円形カバーグラスが主役です。
 (1)毒性試験:まずDisposotrayをUV照射滅菌する。別に乾熱滅菌した円形カバーグラスを各々のCup内に入れる。
 毒性が皆目わからない物質の場合は、half logで100、32、10、3.2μg/mlの4濃度を調べることにしている。先ず、水溶性の物質は直接mediumに200μg/ml液を、水溶性でない物質はDMSOに10mg/mlの割に溶解后mediumで50倍に稀釋し、200μg/ml液を作る。通常medium 2.96mlにDMSO液(10μg/ml)0.04mlを加えて作る。次にmedium 0.5mlに試験液を0.23mlを順次加えるDilutionを直接cup内で行う。
 別にCell suspensionを作っておき、(HeLa細胞の場合は50万個cells/ml液)、1〜2ml用のCornwallの分注器でCup内に0.5ml宛滴下する様に分注し、plateをガラス板でcoverし、CO2incubator内で培養する。CO2incubatorがない時は、セロテープまたサランラップでも良いそうですが、そんなものを使って完全にsealして培養します。3日后にカバーグラスを取り出し、salineで洗ってCarnoy固定し、H.E.染色を施し、一枚のスライドグラスに各物質についての4枚宛を並べて封じます。
毒性の判定として肉眼的(ここらへんが大ざっぱすぎると云う批判もあると思いますが)或は顕微鏡下で補助的に次の基準で記載します。
 0.controlと同程度の細胞増殖を示すもの。
 1.controlより明らかに増殖率が減じているが、まだ細胞数は増加したと思われるもの。
 2.細胞障害があって増加は見られないが細胞が植えこみと時と同数位残存しているもの。 3.強い細胞障害像を示すが、まだ少数ながら細胞の残存しているもの。
4.完全に細胞毒性に働き、細胞が残っていないもの。
以上を必要とあれば、0.5、1.5等のこまかい所まで記載する。わかり易く図示する時は、障害度 0.1.2.3.4.を各濃度に対してplotして、障害曲線とする。さらに本法の改良点はカバーグラスも染色してあるので、細かに細胞障害の形態を顕微鏡下で観察し、記載を足すことが出来る。
 この結果を基礎として、更にdilutionを変えたりして適当な濃度を選び、Cell countによる増殖カーブを画く様にする。
 (2)H3摂り込み実験への応用:本法によると黒木さん記載の月報6712号にのっているDNA、RNA、蛋白合成に及ぼす各種薬剤の検査は、時間的に簡便で且つしごく経済的である。先ずHeLa細胞の場合は125,000cells/ml液を作り、カバーグラスに0.2ml宛を正確にのせる。表面張力でcell suspensionが山もりになり、外に流れないのを利用し、そっとCO2incubator内で培養を開始する。1日后細胞がカバーグラスに定着したのを待って、mediumを0.7ml加える。更に1日培養して、各種物質の試験濃度の10x concentrated液を作り、その0.1mlを加える。ここでmediumとして計1mlとなり、試験濃度となる。良く振って培養を始め、培養を止める1時間或は30分前に、H3-TdR1μg/ml、H3-UR 5μg/ml、H3-Leu 10μg/mlの0.1mlをす早く足して、時間がきた時に、カバーグラスをSaline wash、固定后Cold PCA処理を行う。カバーグラスはWindowless gas flow meterでそのままCountし、以下の如きcountが得られる。(controlのばらつき) H3-TdR:7971、7902、7801、7871cpm/5'。H3-UR:14537、14095、14392、14018cpm/5'。H3-Lew:3212、2971、3356、3308/cpm/5'。必要ある場合は、この円形カバーグラスをスライドにはりつけ、Autoradiographyを行い、grain count迄その材料で行える。
 以上ですが、日本人的感覚として、disposableと云うのが気になって、このDisposotryを重クロム酸液につけてみました。驚くことなかれ、全く平気で、最近は使用后何回も重クロム酸液で洗い使用しています。

《堀川報告》
 培養哺乳動物細胞のDNA障害と修復機構(10)
 4-NQOで細胞を処理すると、X線照射の場合と同様にDNAのSingle strandの切断が誘起される。しかも、こうした切断は処理および照射後細胞を37℃でincubateすると、経時的にrejoining(再結合)するが、これについてはすでにこれまでの月報で報告してきた。またこうした結果の意味するものは、本来細胞は外界から受けたあらゆる障害に対して修復し得る能力をもつ、つまり防御機構を保持していることも示唆するものである。
 然しこうしたDNAの切断とその再結合能という現象でみたDNA障害修復機構は、その過程は勿論のこと修復機構自体も把握されていない。従ってわれわれは、5-bromodeoxyuridine(5-BUdR)を用いて、こうした観点から細胞のDNA障害修復機構の解析を進めている。5-BUdRは数年前にわれわれも実験に使用したことのあるchemicalで、放射線感受性増感剤として知られており、すでにアメリカやわが国の一部の研究室では、このchemicalを用いて癌の放射線治療を行なっているところでもある。
 5-BUdRはthymidineのanalogueであり、thymineとおき代ってDNA中に取り込まれることが、これまでの実験で証明されている。また5-BUdRが、細胞内DNA中に取り込まれた結果生じる放射線増感の機構としては、(1)5-BUdRを取り込んだDNAはBrとリン酸基間でelectrostaticrepulsionが起こるため、DNA分子全体として不安定になるのが増感作用の機序であろうとするSzybalskiらの説と、(2)放射線照射により生じた細胞の障害修復系(おそらく酵素レベルの修復過程)が5-BUdRによって阻害されると考えるLettなどの考えがある。
 5-BUdRの使用は以上のような仮説のいづれが正しいかも証明するためにも、さらには障害修復機構を解析するためにも非常に興味がある。培養細胞を10μg 5-BUdR/mlと、5μg2-aminopterin/mlの存在下で培養すると、細胞の分裂に伴い(勿論5-BUdRの存在下では細胞のgeneration timeは正常培地にある細胞の夫よりも延長される)、semiconservativeなmodelに従ってDNA中に5-BUdRは取り込まれる。従って、5-BUdR存在下での培養時間に依存して放射線による感受性が増強されることがコロニー形成法で確認された。一方、X線照射後の細胞を5-BUdRで処理しても感受性の増強現象は認められない。こうした結果は、上述の(1)の可能性を示唆するが結論はこれだけでは出せない。1月はこうした仕事のための基礎実験や4-NQO処理によるDNA double strand scissionの誘起、並びにその再結合能の検討という段階に留まっている。次回からこれらについてはっきりした結果を報告出来ると思われる。
《藤井報告》
 AH130と正常ラット肝細胞の抗原の相異
 最近microplateを使ってのdouble diffusion in agarの基礎的な手技に幾分の工夫を加えてから、沈降線形成の再現性がよくなりました。何を今さらと云われさうですが、そこで新しい抗血清で表題のような解析をあらためてやってみました。結果は以前に報告したことを裏づけたことになり、きれいな沈降線として出ています。
 抗血清として、AH130、AH7974、AH109A、AH7974の培養系等に対するウサギ抗血清を(それぞれ一次免疫、二次免疫血清)つくりましたが、沈降線形成の上からは、抗AH130ウサギ血清の二次免疫のもの(FR80、080968)以外は充分抗体価が上っていないようです。
 Exp.010769.G3.:
 抗原として:(A)AH130細胞の0.5%Na-deoxycholate-PBS抽出物、原液は600万個cells/mlに相当する濃度、(B)正常ラット肝組織の0.5%Na-deoxycholate-PBS抽出物、原液は500万個cells/mlに相当。
抗血清として:(1)ウサギ抗AH130(FR80.090869)、(2)ウサギ抗ラット肝抗血清(FR51、52) Microplateのwellに抗原液、抗血清を充し(0.02ml)、3日間冷所(4℃)で放置、plateを外した後、生食液中で洗滌、2日間、乾燥後1%アミドブラックで染色する。使用寒天はDifcoの0.2%Na-deoxycholate-PBS(DOC-PBS)にとかした。(それぞれに図を呈示)
 FR51、52(抗ラット肝血清)が、ラット肝抽出液との間でつくった沈降線をL1、L2、L3と名づけ、FR80(抗AH130血清)がAH130抽出液との間でつくる沈降線をA1、A2と名付ける。
 L1線はFR51、52とAH130との間の沈降線L1'とspurをつくっており、正常肝抗原の一部がAH130にもあることがわかる。しかしL2、L3はAH130には欠けている。
 一方A1線はAH130、正常肝の双方にふくまれる抗原による沈降線であることが示されるが、A2はAH130にもにある抗原によるもので、正常肝500万個cells/mlにもないが、AH130では抗原の1/4濃度1500万個cells/mlでも鮮明に出ている。
この実験では、AH130と正常肝抽出液の濃度を上げ、AH130では(A 1/1)を10の8乗cells/mlとし、ラット肝では(B 1/1)を2000万個cells/mlとした。またFR51、52血清、FR80血清が、ラット肝、AH130に対してつくるそれぞれの沈降線の関係、異同を検討した。
Exp.011469のD1、D2とも抗原液、抗血清の配置は同じであるが、D1ではDOC抽出液作製直后に使用し、D2では、7日間、4℃保存后い用いた。
 仮に沈降線を名付けて、FR51、52とラット肝抗原間のものをL1、L2、L3、L4とし、FR80とAH130間の沈降線をA1、A2、A3とする。
 D2の沈降線についてみると、A1-lineはAH130とラット肝抗原に共通に存在する。A2-lineはD1において、正常肝と交叉するがAH130特有の抗原を示すように見えたが、D2においては、FR-51、52(抗ラット肝血清)がAH130に対してつくるL1'-lineと、不明瞭ながら連がるようにみえ、AH130とラット肝に共通する抗原による沈降線と思われる。A3-lineはこのdiffusionの結果からは、抗AH130血清が(FR80)、AH130に対してのみ示す沈降線であり、ラット肝には見当らない。
 この結果からみると、保存した(DOC中で7日間冷所)抽出液の方が、沈降線の分離が良い。
D1で、AH130特有とみえたA2-lineが正常肝にもかすかに存在することが示唆された。これは該当抗原が、AH130に多く存在し、正常肝に極めて少ないことを示唆している。
抗AH130血清(FR80)がAH130のみに示す沈降線が使用抗原量を変えることによって、A2-lineと同じような結果を示すかどうかは今后の検討にまちたい。
癌細胞と正常細胞(同じ系統細胞)の抗原の差というものは、量的な差がかなり大きいのではないかという感じがふかい。

《安藤報告》
 A)H3-4HAQOと培地DM120との反応
 月報No.6812に報告しましたように、4NQOでL・P3細胞を処理すると短時間の間にH3-4NQOは親水性化合物にかえられる。この反応がいかなる反応であるかについては種々の可能性があるが、次のように考える事は最も妥当な考えの一つと思われる。すなわち、4NQOが細胞の酵素系によって4HAQOに還元され、このものが、それ自体、あるいは他の低分子物質と反応し、親水性化合物となる。この後の反応は4HAQOの反応性と考え合せるならば、非酵素的とも考えられる。この可能性をテストするためにH3-4HAQOと培地DM120を37℃、2時間、細胞なしに反応させた。H3-4HAQO-HClを10-4乗Mになるように、DM120 50mlに少量のDMSOにより溶解する。4HAQOは中性で不安定なため、直ちに着色をはじめ37℃、2時間後には黄色となってしまう。凍結乾燥後、少量の稀HClに溶かしセファデックスG15カラムで分劃する。
 (結果図Aと、以前に報告した4NQOでL・P3細胞を処理した培地の分劃図Bを呈示)。OD230パターン、異なる部分は23-30、46-50、120-130分劃、それでも相互の対応関係がわかる。放射活性パターンについては、A図の45分劃のピーク及びその肩がB図の1、2に、56分劃のピークが3aに、120-140の山がやはりB図の130-150分劃の山に対応するように思われる。したがって4NQOと細胞の反応生成物の少くも一部は、4HAQOと培地の(あるいは4HAQO自身の中性に於ける)反応生成物と見る事が出来そうだ。この点を確認するためには、更に各放射活性ピークの対応関係を種々のペーパーで調べなければならない。
B)H3-4NQO由来の親水性化合物は再びL・P3細胞に取込まれるか?
 H3-4NQOはL・P3細胞により親水性化合物に代謝される事、そして培地中に放出される事が観察されたが、この化合物はfreshなL・P3細胞に取込まれうるか否かをテストした(安村班員の疑問に対する回答)即ち、10-5乗M H3-4NQOでL・P3細胞を37℃2時間培養した培地DM120を無処理のL・P3細胞に与え時間をおってそのとりこみを調べた。(表を呈示)結果は酸不溶性分劃へのとりこみはH3-4NQOの同濃度に於ける値の15〜20%程度である。一方酸、可溶性分劃へのとりこみは、1〜2%であった。この結果から次のように結論出来ると思われる。一たんL・P3細胞によって変化を受けた親水性化合物は細胞にもはや殆どとりこまれない形となっている。
 C)コールド4NQOで前処理されたL・P3細胞は新たにH3-4NQOをとりこむか?
 L・P3細胞にH3-4NQOを与えると、4NQOha急速に細胞にとりこまれ、高分子成分と結合する。この時のkineticsは30分以内にlevel offしてしまうようなカーブだった。この事実は、細胞内の4NQO代謝物の結合部位が30分以内に飽和してしまい、もはやそれ以上の結合する、又は細胞内にとりこむ能力が細胞にはなくなってしまっている事を示しているのであろうか。これを実験的にたしかめるために次のような実験を行った。
 L・P3細胞をcold 4NQO(10-5乗M)で37℃ 2時間前処理する。この細胞に培地替えすることなく、H3-4NQOを10-5乗Mに加え、その後、時間をおってとりこみを調べた。(表を呈示)
 結果は、酸不溶性分劃、可溶性分劃いずれの中へのとりこみもcontrolの場合と殆ど同じkineticsを示した。いいかえるならば、細胞の4NQOのとりこみが30分以内に止るのは、細胞のとりこみ能の低下によるのではなく、培地中の4NQOが化学的に変形をうけ、4NQOそのものがなくなってしまったためである事を示している。

《三宅報告》
 1.H3-MCA-Benzolを37℃の孵卵器中でBenzolをとばし、これをDMSOに溶かしてその1滴中に2μcのMCAが入ったものをMedium 1.5mlあたり1滴、2滴、次に3滴といれたもので、1時間L細胞に作用せしめたもの、次に1滴入れたものについて作用時間を1時間〜6時間まで延長せしめたもの、次に2滴入ったMediumについて2時間作用せしめた3群を、Sakura NRM2、露出2週間、FDIII(6分間20℃)で現像したが細胞中にGrainは見なかった。
 2.d.d.系マウス胎児皮膚を1968年6月中旬にトリプシン処理后培養を始め、その後トリプシン処理をさけて、継代を行わず、同一の瓶中で培養を続け、その間細胞はシートを作り、剥脱しという現象をくりかえしたが、1969年1月末、それを継代して、細胞をふやし、d.d.に戻さうとしている。培養開始后7ケ月と10を要した。細胞は、fibroblasticなものと上皮様にみえる2群から出来ている。継代後の増殖は速やかでない。(写真を呈示)


編集後記


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