【勝田班月報・編集後記】


6001:この月報は毎月1回発行します。毎月10日に原稿〆、15日に発行します。来月からは催促しませんから、これを一つの義務と考えて自発的にどんどん送ってよこして下さい。よこさない方は催促もしませんし、そのまま載せずに発行します。3回欠けた場合には研究に熱意のないものとして、来年度以后の研究費の申請には責任をもたないことにします。
 内容はどんなことでもかまいません。来月からはもっと質疑応答をさかんにしましょう。生の材料をぶつけて、討議しあうのです。今月の阪大・伊藤君の報告は少しお粗末でした。来月はもっと頑張って下さい。

6002:暑くなってきましたね。雑菌の入り易い梅雨時が終ってやれやれと云っても、次は酷熱の無菌室で、いつまで経っても組織培養屋に苦労はたえませんね。
 研究費の入ってくる日がちかづいてきました。前号にかいた注意をもう一回見なおして判らないことがありましたら、いまの内に御問合せ下さい。
 伝研の組織培養室に変り種があらわれました。印度のBaroda大学の理学部生化学教室の大学院学生(Ph.D.コース)のMr.H.P.Chokshiという人で、1年間滞在し、前半の半年は例のTissue cultureのteckniqueのtraining courseをやり、后半で何か骨の組織培養に関した仕事を1〜2やることになっています。いまDouble coverslip methodをはじめたところですが、割に器用で高岡君に手製のハンドバックをおみやげに持ってきたりしたほどです。皆さん友達になってやって下さい。非常になまりのある英語で、YesをYefと発音したり、threeがtreeになったりしますから、用心が必要ですが、人格はきわめて善良で、私より背が低く、顔もあまり黒くありません。おかげで大学院学生の梅田君まで“Yef"などといって川口嬢にいやがられています。
 今号では奥村君が第1回の“欠席”をしました。あと2回しか休めませんから御注意下さい。伊藤君のは少し長くなりましたね。しかし長いといえば遠藤君のは実に長くて、そういっては悪いけど、書く方はいささか閉口しました。あまり毎日遠藤君のばかり書いているので高岡君があきれたほどです。彼の文の途中で何回も大分かき損じがありますが、猛烈にねむい最中にかいたのでかんべんして下さい。一ぺんに沢山かかないで、この紙に2頁分位宛にして頂けるとこちらは助かります。そんなわけで若干今月は印刷発行がおくれました。御諒承下さい。
 伝研組織培養室で第1号の培養をはじめた日が、ちょうど10年前の8月4日ですので、その日を期して今年は記念会を目黒の香港園でひらきます。このグループの皆さんにも全部御招待状を出したわけですが、高木君は何しろ遠方なのでおいでになれないのは、当然とはいえ、大変残念です。なお来年からは同日を期して毎年恒例的に“無菌祭”を取りおこない、徹底的なアルコール消毒をいたすことにきめましたから、同志諸君の御参加をおまちします。

6003:◇今月はどうも大変発行がおくれてしまって申訳ない次第です。レポートをかくのに追われていたものですから、ついあと廻しになってしまいました。今年は台風が多いというので、停電、およびそれによるフラン器のstop、冷蔵庫の温度上昇などを恐れていたのですが、今までのところは東京ではその被害もありません。◇いよいよ研究費がお手許に届いたことと思います。若し未だの方があったら至急釜洞先生の方へ問合わせてみて下さい。あと半月か1月我慢すれば仕事に最適の気温となります。まあじっとがまんしましょう。◇今月は伊藤君欠席。

6004:班会議号で後記なし

6005:10月〆切15日発行がようやく軌道に乗ってきました。今月から各人に原稿を一定の紙にかいて頂くことにしたので編集者は全く楽です。今月号で遂に3回欠席者が現れてしまいました。次にその星取表を発表します。
 これまでの成績ではいちばんきちんと期日前から送ってくるのは九大の高木君です。
 組織培養学会(11月19日・土)の演題申込が終り、大体の見当がつきました。1)伝研と東大薬学との共同で「ホルモン」。2)川原春幸(金属のつづき)。3)大山(日本脳炎ウィルス)。4)林(東大教養学部)(植物細胞の浮遊培養)。5)小川(京大解剖)(組織化学)。
6)増田(京府大)(白血病)。7)新島(顆粒の運動)。8)堀川(L細胞の変異性と蛋白・核酸合成)。9)藤尾(TCによるしょうじょうばえの研究)。8)と9)とは同一時間内にやりますので、8人となり略良いところに落着いた由です。
 《巻頭言》
 国際対癌連合会議(UICC)が東京で開かれましたが、御承知のようにこれはclosed systemで我々は完全にshut outされたわけです。もっともやっていた内容が我々の興味をひくようなものは余りありませんでしたが、とにかくボス連が自分てちで理解できる範囲の分野について会合をひらいた、という感じで、それによって日本の明日を担う人たちに裨益させようという気持は全く無いようでした。将来我々がこのような会合をもつときには大いに考えてみなくてはならぬ問題であると思います。
 この会で我々としての拾い物は、Finlandのtissue culturistであるProf.Erkki Saxen(Dept.of Pathology.University of Helsinki,Helsinki,Finland)に逢えたことで、あの辺のtissue cultureの現況をきくことができました。Finlandは全人口が東京の1/2位で、湖と森の国。大学はHelsinkiとTurkuに各1つ宛あるだけの由です。欧州各国と全く同じようにtissue cultureはきわめて程度低く、彼自身もserumについて幾つかの仕事は出していますが、はじめprimary cultureでやろうとして旨く行かぬので、HeLaその他の株数種を使ったのだそうです。人間の血清を非働化さずに約1,000種位培養に加えてしらべ、或人の血清は増殖に良いが、ある人のは細胞が凝集したり、或はこわれたりする。しかし非働化するとそのようなことはなくなる。そして人に従って、その差別は何年も保持されるとのことです(Nature,184,1570-71,1959)。彼曰く「おれの血清を君のところの培養に入れて見たまえ。きっとこわれるよ。」 この凝集の問題は伝研の組織培養室での最近の仕事である「LP・1細胞を馬血清培地に入れると凝集をおこす、Lはおこさない」という知見と密接な関係があり、彼自身も非常に興味を示しました。彼によればそのFactorはlipoprotein
分劃にある(unpublished)そうです。そしてHeLaの染色体をしらべ、どんな人血清でも非働化すれば染色体数分布に及ぼす影響がないが、生のままだと分布が変るものと変らぬものとあると云います。そしてこれらの人血清の差は、血液型その他、これまでの各種の分類の何れとも一致しないと云うことです。この点は伝研での「非働化した人血清でHeLaの増殖を抑えるものと抑えぬものとがあり、それは血液型とは一致しない」という所見とよく一致しました。彼曰く「私は組織培養は趣味でやっている」。日本のtissue cultureのレベルの高いのに驚いていました。そのほかペルーのDr.O.Miro-Quesade,Jr.(Director
of)Instituto Nacional de Salud,Apertado 451,Lima,Peru.もこれから大いに所員にTCを奨励するといい、UICCの今回の会長(Dr.Khanolka)も同様で、何れも伝研TC-Lab.を訪問しました。

6006:◇今月は全員の報告が集まったのは何よりのことでした。もっと早く発行できたのですが、組織培養学会の報告を入れるために、わざとおくらせました。来月号が癌がすんでから発行の予定です。しかし年末ですから速達で送りましょう。
◇前報におかきしたように、秋の国際癌連合の集会で、会長をつとめた印度のDr.Khanolkaが当研究室を会期中に訪問されましたが、最近手紙をよこして、日本の組織培養学会はよくOrganizeされているので印度のTC研究者のactiveな者を会員にしてくれ、と云ってきました。今回の研究会で検討の結果、これを認めることにしました。つまり我々はアジアのセンターとして後進諸国の世話をして行こうという訳です。Bibliographyにも印度の部、タイの部・・・として入れて行けば良いわけです。そして数年先にはアジア綜合のTC学会をひらきましょう。それと、米国からはできない、中共での業績集を知ることにも一役買いましょう。
 《巻頭言》
 組織培養研究界の将来
 組織培養が生物系の科学研究界にとって重要な役割と意義を持ってきたことは、今日ほどのことは未だなかったし、今后はますます必須の研究法としてその重要性を増して行くと思われるが、我々はどのような方向にむかい、どのような態度で進んで行ったら良いであろうか。
 他の領域と全く同様に、組織培養研究界で最も大事なのは“研究者の育成”であると考えられる。立派な器具や施設は金さえ出せば即座にととのえることが出来る。しかし研究者、ことに組織培養の研究者は、大ぜいのなかから、特に素質の適したものが、長い間かかってきたえられなくては一人前にならない−というところに最大の特徴があろう。その意味で我々は自分自身の研究を遂行するのと同時に、時代に立つべき若い研究者の教育ということも、たえず念頭から離してはならない。
 幸にして日本の組織培養学界の現況は、かなり広汎に各分野に浸透し、研究者の数もアメリカに次ぐ多数が得られて居る。高い塔をきずくには、ピラミッドのように広い底面が必要である。しかし同時に、皆どんぐりの背くらべでは仕方がないのであって、この班に加入しているようなメムバーに期待されるのは、より高い塔の尖端をきずく役であろう。なかでも、どこの国へ出して見せても恥かしくないような、つまり国際的にも一流の代表選手を、せめて10人生み出すことであると思う。10人といえば少なすぎるように思われる。しかし本当にしっかりした研究者がせめて10人居れば、これは相当なものであり、それにひきずられて一般の水準もぐんと高くなること疑がない。そして、そのなかの1/3位は
ノーベル賞級の仕事をどんどん出さなくてはならぬ。日本に於ては、私はこれは可能であると思う。それにはどうしたら良いかというと、やはりお互同士よく連絡をとりあって研究すると共に、見込のありそうな若い研究者を、伸びれるだけ伸ばしてやることだと思う。それにはたえずその目であたりを見廻していなくてはならないし、必要なときには自分を犠牲にしても便宜をはかってやらなくてはならない。しかし若い人たちがぐんぐん育ってくれれば、こんなうれしいことはあるまい。
 編集後記に記すように、日本の組織培養学会もいよいよ外国の世話をしてやらなくてはならぬような状態に立到ってきた。そしてアジア・ブロックを代表して国際的な役割を果して行かなくてはならないのである。ぼやぼやして居てはならない。そうした責任を果すためには、何といっても我々自分がしっかりした研究を次々と生み出して行くことが最大の途なのである。大いに頑張ろうではないか。

6007:今号はだいぶおくれてしまいました。御承知のように学会がずっとつづき、しかもその後始末やら何やらでこんなになってしまいましたが、来月から少し宛回復したいと思いますので、至急“年頭所感”でも何でも送って下さい。
 研究費の予算をそろそろ使い切るころと思います。使ってしまったら、3月迄待たないで適宜に銀行口座をしめ、釜洞班長からの通知のような書式をととのえて(証拠書類を添え)班長宛に直接送って下さい。
 2月27日に班の合同報告会がありますが、その前日に釜洞班の会合があります。必ず出席して下さい。26日には各人の1年間の仕事を20分位でしゃべれるようにスライドを用意し、且ガリ版か何かで約20枚宛位のプリント(何頁でもかまいません。最初に分担課題をかくこと)を作ってきて出席者に配って下さい。別刷もウィルス関係の方にどうぞ。文部省への報告には一般に別刷はつけないようです。

6101:今号は本年度年頭所感ということで書いて頂きましたが、色々のが集まって、たまにはこういうのも面白いですね。ところで小生この間から少し不眠症にかかりかけ、いささか神経衰弱の気味です。と申しますのは、Chokshi君の親玉Prof.C.V.Ramakrishnarが1月20日横浜着の船でやってきまして(7月間Australiaに滞在しての帰途に寄ったのです)、4月中旬迄当研究室にたむろし、共同の研究をするのと共に、あちこちの研究室を訪問して歩こうという訳ですが、これがまた逢ってびっくり、大変な先生なのです。見かけはやせぎすの黒っぽい人ですが、英語は標準型のをきれいにしゃべります。しかし、そのしゃべる、というのが一旦しゃべり出したら、もうとどまるところをしらない有様で、他人のいうことなど殆んど耳にも入れません。昨夜もついに小生は“お前はいまに舌癌になるぞ"といってやりました。とにかく他人の気持などおよそ察しようともしないので、小生は朝から晩までとっつかまり、自分の仕事が一寸も能率があがらず、従って上記のような状態になったわけです。Enzymologistで、DPNの代謝などやって来ました。2月4日(土)午后2時から伝研の会議室でその話と、もう一人、頂度ぴったりの相手として、京大の解剖の小川君にしゃべることをたのみました。好相手でしょう。その場の有様を想像してお楽しみ下さい。勿論おいでになれる方はどうぞ。
 研究費を使い終った方は適時どうぞその後始末を早目にして下さい。こちらに送って下されば点検した上で釜洞班長の方へ送ります。では2月末にお目にかかるのを楽しみに。

6102:◇東京は乾燥し切った日が続き、消防車がかけ廻っています。寒冷前線の吹き出しも未だありますが間遠くなり、例の悲しくなるような冷たさはもはや減っています。これと一緒に1月末に申請した来年度の綜合研究班の申請書のコピーをお届けします。報告書をかくとき必要になりますから保存しておいて下さい。今月はどうも集まりが悪かったですね。1月号を出したばかりだから安心したのでしょう。それからこれは訂正ですが、前号の号数をうっかり6104とかいてしまいました。今すぐ引張り出してNo.6101と訂正しておいて下さい。
 ◇例のチョクシ君がこのごろ少しホームシックにかかったらしく、しょげています。それでも7月上旬の船の切符を買ったので少しは落着いたようですが。一つには例の教授が来て、たえず命令されてかけまわり、疲れ果てたのかも知れません。
 ◇風邪がはやっていますね。皆さんも気をつけて下さい。小生も昨日の朝やられまけましたが、充分にアルコール消毒をして、今日はもうすっかり元気になりました。では26日にまた。

6103:◇また少し原稿の集まり方が悪くなってきたので編集者は困っています。毎月10日〆切を何卒お忘れなきよう、おねがい申し上げます。
 ◇今月号は今后の参考のために次頁に文部省の綜合研究班の予算の使い方についての注意書が手に入りましたので、そのコピーをつけておきました。それから先月の報告会での報告書が各人に1冊宛分残りましたので同封いたします。何かに御利用なさりたいことも今に出るかも知れぬと思いまして。
 ◇東京はすっかり春めいて参りました。日ましに暖かくなり、小雨が降りつづいています。桜も早く咲き出すかも知れません。
 ◇昭和35年度の決算報告の済んでない方は至急に済ませて釜洞先生のところへ速達で送って下さい。証拠書類に順序に番号をつけ、一覧表の備考欄にその番号を附記しておくと良いです。

6104:◇愈々良い季節になってきましたから、皆さんも大いに頑張って居られることと思います。今月から堀川君にも登場してもらうことになりました。誌面も大分活気付きます。しかし今月の欠席の多いのにはおどろきましたね。次号からはきちんと10日〆切で、たとえ1頁でも良いですから何か送って下さい。サボル癖がつくと、もうとまらなくなってしまいますから。
 ◇本日を以て、彼のうるさい奴、Prof.Ramakrishnarが横浜から出航、帰国の途につきました。昨日は集談会で話す筈だったのをすっぽかし、小生にも挨拶もせずに帰って、それきりです。印度人というのが大体そういうもので、Chokshi君みたいのは例外なのだそうです。どうも小生が助手の癖に、教授たる彼にむかって“Sir"もつけないで話すということも気に喰わぬ一つであったようです。他の人の例をひいてほのめかしていました。
 ◇英国のロンドンの或化学会社の研究室にいる男が、自分のところではいくら
fibroblastsの株を作ろうとしても皆Collagenを作る能力を失ってしまうが、お前のところはどうしているかときいてきましたから、ついでに高木君の株のことを附記してやったら、ぜひそれを分けてくれとの註文です。高木君の承諾をえましたので近い内に送り出す予定です。国産株の輸出第1号になるわけです。
 ◇臨時ニュースを申上げます。高岡君が急性虫垂炎になって昨日27日夜伝研に入院しました。あの体質ですから、なるべく手術をしないようにと、クロマイを1日2グラム宛のみ、冷やしていますが経過は良い様です。自発痛消え圧痛も軽少になりました。ご心配なく。 《巻頭言》
 研究と研究班
 今年度は文部省の大研究班制が解散になり、癌という特別の枠でなく一般と同様に取扱われ、且各班の規模も小さくする−ということは皆さん既に御承知のことである。そして我々もその線に沿って我々だけで申請したわけであるが、案外今度は通る可能性が強いと思われる。しかしここで呉々も注意しておきたいのは“我々自身が何とかして癌の問題に突破口を開きたい、だから研究費が欲しい”のであって、間々見受けるように“申請が通ってしまった、だから何かやることはないか、何かやらなくちゃならん”などという輩と一緒にされてはたまらんということである。我々は、我々の力を買って、そこに国民の税金の一部を投入してくれた、その信頼に少しでも余計に応えられるように、本気で努力しなくてはならないと思う。これまでは上にあげた例の様な連中が多すぎた。だから今日まで癌の研究は禄に進歩しなかった、とも云えるし、他の分野でも同様である。我々は自分から、そこに突破口を開かねばならぬという責任感を強く持たなくてはならない。事実、国内を見廻してみて、若し我々がやらなかったら誰ができるであろうか。我々がのろのろしていれば、その分だけ日本の研究の進行は停滞するのである。
 研究費をもらえようが、もらえまいが、とにかく我々の場合には研究をどんどん進めなくてはならない。勿論もらえればそれだけ進捗は早められるが、あくまでこれは副次的な問題である。従って今年度の研究計画と各自の分担を決めるため、次のように今年度第一回の研究連絡会を開き、早急に今年の新計画に全員が突入する態勢を取ることにした。頂度関西で開かれる組織培養学会が土曜日(5月13日)なので、その翌日の午前をつかって、阪大伊藤君の御世話で、同大学医学部の癌研で開きます。全員の出席を期待します。

6105:◇愈々共同研究が号報1発スタートを切った訳です。考えてみれば過去1年間釜洞班に大半の班員が入れてもらって、共同研究の下地をよその班で作らせてもらったような結果です。やはりこうしてまとまるには、どうしても1年位の基礎期間が必要のようですね。
 ◇仕事は大体この夏までにできるだけのピッチを上げることにしましょう。研究班の最后的決定にはあと数週かかるという噂をききましたが、いわば確定申告のようなものを出す関係上、各班員仮に15万円として購入予定の物品名、数量、単価、合計価を至急に表を作って班長のところへ送って下さい。大体全部消耗品がよく、硝子器具類、薬品類、動物類と三大別して下さい。
 ◇皆さま、何卒来月の10月〆切をお忘れなく。
 ◇高岡君の虫垂炎が再発。とうとう明19日午前に切ることに決まりました。いまクロマイと氷嚢で保たせています。これであとは安心して飲めるということでしょう。まるで組織培養学会のためにその準備と出席期間だけ退院していたようなものです。

6106:◇愈々夏がやってきましたね。つまり癌学会の〆切も近づいた訳です。皆さんも大いに張切ってやって居られることと存じますが、本当に今度は班が承認されてよかったですね。癌関係の班は合計19通ったそうですが。これまでのように合同の報告会や報告書を出そうとして、吉田さんが班長になり、各班長が班員となった綜合班をもう一つ作って100万円もらい、この金をその費用にあてようとしています。
 ◇高木君の株は6月6日北極廻りの欧州行日航機第1便に島津夫妻と一緒に乗ってロンドンに無事行きました。TD-40瓶2本をふんぱつし、Bagの中で冷やされて行きました。
 ◇Chokshi君が6月17日夕、浜発のVet-Nam号で無事帰国の途につきました。我々も皆で送りに行き、最后にシルクホテルの屋上から船の真白な姿が岬の蔭に消えるまで望遠鏡で見送りました。何とか病気らしい病気もなしに送り返すことができて、全くほっとしました。
 ◇阪大久留外科から内地留学の高井新一郎君も6月上旬に半年振りで帰阪されました。伊藤君の研究室も一段と活気が上がることと思います。気を合わせて大いに頑張って下さい。
 ◇九大第一内科の高木良三郎班員はこんど講師になられたそうです。どうもこの班での最初の“汚点”ですね。今月号の巻頭の辞をかき直さなくてはならなくなりました。
 ◇東大小児科から留学中の古川利温君は無事に練習コースを終了されましたが、当分こちらに残って一緒に白血病の研究をつづけています。高井君の居なくなったあとの、最高の頑張り屋になりました。

6107:◇第1頁にお知らせしたように愈々第2回の研究連絡会をひらきます。文部省からは正式の通知は先般参りましたが、金の方はまだです。中旬には、と思っていたのですが、この発行にはとうとう間に合いませんでした。しかし近い内には届くと思います。連絡会の日は皆さんの御都合が仲々マッチせず段々変ってしまって申訳ございませんでした。 ◇来週の7月20日には癌関係19班の班長会議があります。若し重要なことが決まりましたら臨時号を出してお知らせします。月報の8月号は連絡会での報告をのせますから原稿は要りません。但し走りがきでも結構ですから、そのとき要旨を1部持参して下さい。月報にかくとき間違のないように参考にしますから。
 ◇Chokshi君は無事印度についたそうです。皆さんによろしくとのことです。こんどはマラヤからきたいというのがありますが未だ決定しません。
 ◇今月号は原稿を寄せて下さる人が少くてがっかりしました。しかしまあ半分のメンバーでも発癌に手をつけて下さっていれば、かなり所期の目的は達せられるかも知れません。研究の進展について来年度以降は漸次メンバーの入れかえを実施したいと思いますから頑張って下さい。
 ◇東京はかなり暑くなって皆うだっています。東大の医学部の学生がいま6人きています。Max.のときは7人でした。この混雑ぶりを御想像下さい。梅田君は7月一杯で横浜に帰る予定です。市立大の病理に組織培養室が作られたそうですので。内川君は悠々とやっています。高岡君も元気です。
 《巻頭言》
 発癌の次は−
 Personal communicationの項に報告したように、正常細胞をin vitroで癌化させることは案外近いところまで来ているかも知れない。各人が色々の方法でやって夫々その結果を他の人が自分の方法の改良に応用し、能率を上げて行くと、1年間には相当幅広い発癌研究が展開されるかも知れない。このようなことは、これまでの研究結果にも研究態勢にもかって無かったことで、世界的にも俄然注目されるようになるであろう。大いにこの1年間を頑張り通すことにしよう。
 ところで若し動物に復元接種して癌化していることが証明されたとしたら、次に何をするかを考えておかなくてはならない。大別すると、癌化した細胞がもとの細胞とどこがどんな風にちがうか、をしらべることと、次に癌化して行く過程で、どんな風に変って行くかを追跡すること、さらにできれば(時間的に、という意味ですよ)癌化の機構は何であるか、を解明すること、この三つに分けられるのではあるまいか。
 まず第1の、正常細胞と癌細胞の比較であるが、これまでの癌研究の多くはこれに費やされて居り、その方法が参考にはなるが、しかし主に形態学的研究ばかりで、肝腎の生化学的研究では未だこれが癌の特性だ、ということがはっきり把握されていない。これはこれまでの生化学的検索法があまりにgrobeで、fineな差違をつかみ得ないことが最大原因であると思っているが・・・。例のmalignolipinにしても、ドイツの研究者の手によってではあるが、予想していた通り追試されて、相当激烈な表現で反証されている。しかし我々のように同一sourceの正常細胞と、それから癌化したものとを比較する場合には、案外特異的なものを早く拾えるかも知れない、という気もする。そうした基礎に立って第2の問題も追跡されることになろう。第3は相当な難問であるが、これもまた我々の特異的
teckniqueで案外面白いことになるのではないかと秘かにほくそえんでいる次第である。とにかくこういう問題も発癌の次に待っているのだ、ということを承知していろいろと考えておいて頂き、その内話し合いたいと思っている。

6108:◇暑いさなかに皆さんお集りを頂いて本当にありがとう御座いました。着々と大きな歯車のまわり出す準備がととのえられて行くのを、皆さんの御業績から感じました。 ◇次の報告会は秋の組織培養学会の翌日と決まりました。御承知おき下さい。
 ◇高野班員が予研を去って今秋、米国Pfeizer製薬会社のLab.に行かれる由。同君なら米国永住も平気でしょうが、研究者がどんどん外国へ流れ去るのは、日本の医学会にとって誠に残念なことです。班の方は入れちがいに帰国される山田君に入って頂きたいと思いますが、皆さん如何ですか。
 ◇前号で、高木班員がこの班最初の汚点で講師になられた、とかきましたが、実はこんどは小生が第2の汚点になってしまいました。まだ正式発表にはなりませんが、8月1日附で助教授になりました。どうぞよろしく。

6109:◇この夏は暑さも稀に見るきびしさだったが、何と今月の原稿の集まらないこと、情ない思いです。Neuesがなければ何か面白そうな文献の紹介でも何でも出来そうなものです。月1回、こんな紙ぴら1枚もかけないでは自ら、班員たる義務をつくせないから辞める、と告白しているようなものです。
 ◇阪大の台風禍はまことにお気の毒です。あっという10分もたたぬ間に天井まで泥水が来て、データを持出すだけがやっと、培養瓶は水にプカプカ浮いていたそうです。しかし高井君の株は何とか助かったようです。水が引いたあとも雑菌が多くて困ることでしょう。気を落さないでしっかりやって下さい。人間の真価は逆境のときに発揮されるものですから。
 ◇九大第一内科では11月25日、26日が開講記念日なので、第3回連絡会を11月末か12月初めにしてくれ、との高木君の申出ですが、どうしましょうか。殊に阪大の方は如何。
 《巻頭言》
 研究班の在り方
 最近色々な文部省科学研究班に出席してみて、つくづく感じることであるが、班とは名ばかりで、実体は各個研究の似たようなテーマの者をかり集めたのに過ぎないといった類が多い。いや、殆んどがそれかも知れない。甚しいのは1年間にたった1回、それも癌の合同報告会の前日にはじめて全班員が集まった、なんて班があるのだから誠に恐れ入る他はない。数カ月前も癌関係の班長会議に出席したが、この連中は果して本気で癌をやっつけようと思っているのだろうか、とすら考えざるを得なかった。
 癌はこれまでの多くの病気に比較して、数オーダーも上の厄介な病気で、研究費欲しさにちょいとやっつけ仕事で片附くような、そんな生っちょろいものではない。
 我々はすでに現在癌学界でのボス連の研究能力と将来の研究成果には見限りをつけた。あの連中には絶対に癌を征伐できない。我々第二線が頑張らなければ、と云っていたら、何時の間にか、我々が第一線に押出されてしまった。まことに情けない第一線であるが、そうなったらしかし我々にも大きな義務が生じる。何も今迄なまけて居た訳ではないが、ここで心をぐっと引きしめて“俺は一体、癌をやっつける気があるのか、無いのか”本気で自問自答してみることにしよう。
 癌は大物である。しかし我々が真剣に生命をこめて研究したならば、決して手に負えないものではあるまい。何とか、次の代まで持越して災らわせないで、我々の代に片附けたいものである。
 他人の班を笑うけれど、我々の班にも最近中だるみが見えてきた。(新しい班の班長としての責任から一言しておきますが、真剣に癌と面をつき合わせて勝負しようとしない、その日限りのやっつけ仕事ばかりやっている人は、来年度はお世話しません。)少くとも我々の班だけは、日本刀を抜合わせた真剣勝負の気魄を持ち続けたい、と切願する。
 10月の癌学会、11月の組織培養学会を控えて忙しい日々ではあるが、それらの題目の奥に、我々が一生向って行くべき大きな相手のあることを片時も忘れる訳にはいかない。
 今年度もいまや半ばをすぎようとしている。その間どれだけの仕事ができたか。今年度の終りになって忸怩たるもののないよう、残りの后半には一層の努力をつくして、当初の目的に邁進しよう。

6110:◇相不変月報報告の集まりが悪く、しかもおくれてくるので困っています。来号からは必ず10日〆切を守って下さい。◇高野君は10月30日午前10時の日航機で米国に“帰られ”ます。人には色々な考の人もあるので仕方ないでしょう。

6111:◇今月の原稿の少いのにはおどろきました。はじめて以来でしょう。伊藤班員のは先月号に間に合わなかったのをくり入れただけですから、本当に送ってきたのは高木班員だけ、という次第です。そんなもの書かなくったって、仕事をしていれば良いんだ、という考もあるかも知れませんが、一つの班としてまとまって仕事をしようとする以上、毎月きちんと報告書(それもこんな紙ぴら一枚の)を送るのは班員として当然の義務だと思います。しかも今月号は夢みたいなことをかいてくれ、という号で、何も結果が出ていなくても、夢位はかけるでしょう。また考えてもいないんなら癌の研究でござい、なんて研究費をとる資格もない訳です。
 ◇その内来年度の研究班の申請をする季節がやってきますが、来年度は少し趣を変えて、全部同格の分け方をせず、A、B、C、の三つのランキングを作ったらと考えて居ります。A班員は、この班の目的に応じた培養実験をやる人、Bはそれに関連のある仕事をしている班員、Cは班員とは呼べませんが、研究の進展に応じて臨時に共同研究に参加する人です。如何ですか。
 《巻頭言》
 欧州組織培養学会との学会演者交換
 御承知のように現在世界中で大きな組織培養の学会といえば、American Tissue CultureAssociation(最近発展的解消をしてCellular Biologyの学会になったと云われるが)と、
European Tissue Cultur Clubと日本組織培養学会の三つであるが、最近フランス・パリにある癌研の組織培養ウィルス研究部部長のDr.Georges Barskiが塩野義製薬研究所の開所式に招かれて来日し、伝研にも数回来訪した。そのとき“日本組織培養学会からのAnnualBibliographyを受取っているか"と聞いたところ、“やあ、実はそれなんだ"と話がはずみ初め、“日本の組織培養界が一丸となって実に活発によくやっているので、刺戟されて我々も大いにやろうということになり、目下オランダのLeidenにいるDr.Gaya(このスペルは不確か)が中心になって新体制の準備をととのえている。我々の方は毎年春学会を開いているが、ついては日本の組織培養学会と毎年1人宛演者の交換をしようではないか。君が一つ正式に私宛にその旨の手紙をかいて呉れれば、国際的財団に私がかけ合って、その位の旅費は工面させることにしよう"という話になった。勿論結構な話であるから早速手紙の方は書いたが、同時に米国のNIHのDr.Eagleの処へもその旨を知らせ、米国と日本の間でもやらないか、と申込んだ。うまく行けば欧州の方は1962年の春からでも可能になろうが、日本へ招く時機はやはり東京で開いている秋の方が良いのではないかと私考する。なお、数年前Glasgowで開かれたのは彼の話によれば、Internationalではなく、米国と欧州との合同の学会にすぎなかった由で、次回は1963年に米国のどこか小さな町で開かれる筈だとのことである。日本としては、そのときには是非代表選手を送りたいが、何と云っても一番問題なのは旅費であろう。旅費の工面に走りまわらなくてはならぬ、という点では日本は未だ未開国に入れられるかも知れない。私の意見としては、毎年ちがった人を送りたいが、野球の選手のように後位打者になるほど打撃が弱いのでは困りものであるから、後続者に困らないように、しっかりした研究者を育てることが、この点でも必要になってきた。皆さん御覚悟は如何ですか。

6112:◇第3回連絡会号をかき終ってやれやれです。ちょうど右手をいためていましたので、気をつけたのですが、ずい分変な字になってしまったところもあると思います。不悪。 ◇予研の高野班員が米国へ行ってしまいましたが、入れ代って山田正篤君が帰ってこられました。仕事の計画にもよりましょうが、来年度には班に入ってくれると思います。まともなtissue culturistとして渡米したのは彼が最初でしょうから、彼の見聞記でもかいてもらって、我々の見たいと思っていたところ、知りたいと思っていたところを、ずばりと聞かせてもらいましょう。
 ◇当室のMemberが大分ふえていますので御紹介しておきましょう。Basal mediumとして、小生、高岡、鬼沢、ですが、あと半月位で放医研の関口豊三君(Biochemist)が助手として正式に加わる予定です。核酸の酸可溶性分劃などの仕事をやってきた人です。そのほか、大学院学生の内川君の他に、東大放射線科の菱沢君が入ってきました。2年間居ますから当室の大学院生みたいなものです。あと実習生として3月迄が、京都府立医大・微生物の谷野輝雄君(講師)、5月迄が東邦大森田内科の田口譲二君です。東大小児科の古川君は多分3月迄居られると思います。相不変白血病の基礎的データをあつめています。
 ◇では皆さん良いお年をお迎え下さい。
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