【勝田班月報・編集後記】
6701:◇皆さんにお世話になったインドのDr.C.V.Bapatも1月2日羽田を発って帰国しました。皆さんによろしくとのことでした。 ◇去年はもう目の廻る1年で、論文は一つも書かず、しゃべることだけ31回もしゃべったので、今年は名古屋の総会へも行かず、ひたすら書く年に決めました。落着いて仕事もせっせとやります。◇今月は月報の原稿が仲々こないので心配していましたら、〆切の日までに約半分、翌日位に残りが全部着きましたので、ほっとっしました。
《巻頭言》
月報創刊80号記念号
皆さん、新年おめでとう御座います。1967年!
この年は我々の班にとって非常に記念すべき年になりそうな予感がします。発癌機構というものについて、何か一つの糸口がつかめる年になりそうな兆を感じます。しっかり頑張って悔いのない一年にしましょう。
今月号は我々が研究チームを作って月報を発行しはじめてから80号目です。考えてみると7年近く経ったわけです。その第1号を開いてみると、これは1960-6-17に発行され、
勝田 甫、遠藤浩良、高野宏一、奥村秀夫、高木良三郎、伊藤英太郎の6人でかいています。この号において既に培養内発癌実験の計画が色々と記載され、次の第2号では発癌実験の成果の発表のとき共同の総題名をつけることが決められています。以降の各号をくってみますと本当に感慨無量です。そして質的にぐんぐんと上ってきたことを沁々感じます。我々はよく力を合わせて努力してきたものです。この過去における向上ぶりから推して、今年度はきっと何か生まれるという確信が出てくるのです。
DAB、3'-Me-DAB、なぎさ、そして4NQOと歩んできた跡をふりかえることは、今后の進路を決める上に非常に有効です。そしてそれらの知識を整理しながら前進しなくてはなりません。班員の内で4NQOを最初に培養に用いてみたのは高木班員でしたが、昨年は黒木班員がこれの非常に有望らしいことを見出してくれましたので、今年はなるべく多数の班員によって追試確認や色々の検索、とくに発癌機構の研究への展開など、分担して進めたいものです。またDAB、3'-Me-DABの仕事も、せっかくあそこまで行ったのですから、今年はもう少し括めることを考えるのと、これまた発癌機構の問題にまで結付けられるように努力したいと思います。
では皆さん、今年こそ一層頑張りましょう。
6702:◇冬型の天気で、東京では来る日も来る日も晴天です。去る1月中で雨が降ったのは2回位でしょうか。異常乾燥です。実験小動物には温度や湿度が問題だと云われますが、一年中恒温恒湿という生活、刺戟のない生活が動物にとって果して本当に良いかどうか。そんなに弱いのなら天井うらや床下のネズミはとうに居なくなっている筈ですね。樹木も適当に剪定した方が良い花が咲くとされています。当研究室のラッテ、JAR系はF25〜
26のころ、仲々子供が育たなくなって、この系も中断かと思われましたが、その后なんとかまた続きはじめ、いまF28が四匹生まれています。廊下の隅でも純系はできる(やる気があれば)という証拠の一つです。 ◇本日をもちまして小生は満49才になりました。この年になるともうお目出たいなんて思われなくて、停年まであと11年しかない、一体どの位の仕事がその間にできるだろう、なんて悲しくなるのが落です。しかし何とかその11年の間に癌だけは片附けたいものです。力を合わせてぜひ一刻も早く解決するように努力しましょう。それには1月1月、1日1日を大切にしなくてはならないと痛感します。 ◇窓の向うで新館の建築が進んでいます。我々は2階を占領する予定ですが、もはや2階の天井までコンクリをうち終って、今日は板囲いを外しはじめたところです。4月末までにはほぼ完成の予定ですから、5月6月は引越しで大変だろうと想像しています。地下1階、地上4階で、上から、癌体質学研究部、制癌研究部、癌細胞学研究部と癌関係が入ります。
6703:◇この班会議は久振りに面白い班会議でしたね。今后はときどき顧問の方々の
Reviewみたいなこともお願いするのも良いと思います。次回は5月のTC学会の前日がよいか次の日がよいか、御意見をきかせて下さい。
6704:◇伝研の門のわきの桜もつぼみが開きはじめました。今ごろは名古屋へお出かけの人も多いでしょう。こちらは今年はなるべく出歩かぬことにして、仕事をやっています。◇今月から我々の研究部に新人の助手が入ります。大阪市立大の医学部を卒業し、インターンと国家試験をすませてから、名大の動物の大学院に入り、修士から博士コースに入って、この三月に卒業した、香川努(つとむ)君という人です。名大では発生学を、特に電顕でやってきました。早速五月の班会議から活躍すると思いますが、どうぞよろしく、おねがいします。 ◇昨秋ICCCでも手伝ってくれた教養理3の2年生が二人、春休みにやってきて、安藤君について色々の細胞のDNAの定量など嬉々としてやっています。矢張り若い人がいてくれると、学生さんたちにも良いと、つくづく感じます。 ◇窓の前で新館の建築が進んでいます。4月一杯で完成で、あと手直しが少しあって、5月中旬には引越しでしょう。第7回の班会議は新館で開けると思います。しかし建築とは、何やかやと、実に手のかかるものですね。高岡君は目下“Operation
Hikkoshi”を練っています。
《巻頭言》
新年度の発癌研究の展開法
いよいよ今月から新年度に入ります。ふりかえってみると、1昨年、昨年と、我々はずいぶん良い成果をあげてきました。そして今年度こそ念願の“発癌機構の解明”に入りたいものです。
そのためには、この辺でよほど想を練って、良いアイディアに基いたスマートな方針で研究を進める必要があるでしょう。これまでの問題点を充分に分析して、objection-freeの仕事をしなくてはなりません。
まずいちばん大きな難問として“淘汰か変異か”があります。これを明確にするための方法としては、純系クローンを用いるのと、目の前で正常細胞が癌化するのを把握する(映画などで)のと、いろいろな手が考えられますが、もっと他にもきっと良い方法があるにちがいありません。殊に材料として全胎児のような雑多な混合集団を用いている場合には、Gotlieb-Stematskyらの推測するように、各種の正常細胞の“干渉”によって、不良細胞が混在しているにも拘らず、その増殖と悪性化が抑えられているかも知れない。これは大いに有り得ることであるし、発生学的見地からも、それはそれとして大きなテーマになります。ですから我々としては、たとえ株でもよいから(但し悪性でない)単一種の、しかもなるべく純粋の細胞集団を扱うべきでしょう。
機構ということを考えるのは、そこにやはり変異を前提としているとも云えますが、直接そこを攻めてみるような、分子生物学的手法に近い実験も考えるべきでしょう。しかし人工的変異の場合には、よほどきれいな細胞標識の選定が必要となります。つまりマーカーです。
Hybridizationの仕事にもやはりマーカーが問題になりますし、如何にその効率を高めるかも大切な命題です。
とにかく、これから12カ月、最后の突撃のつもりで頑張りましょう。来春の培養学会のシンポジウムには、我班のメムバーによる“培養内化学発癌”を考えていますので、それも考慮に入れて、お互にしっかり頑張りましょう。
6705:◇次の班会議のお知らせがおそくなってしまって申訳ございません。今回は三宅班員と堀川班員がお世話をして下さって、関西医大における培養学会のあと、大津のビワ湖畔の良いところで開催させて頂くことになりました。前夜から泊りがけで“百酒騒鳴”かも知れませんが、研究協力者の方々もぜひ御参加下さい。詳細は(図を呈示)右の通りです。泊れる人数に制限がありますので、参加、不参加とも堀川班員に至急御連絡下さい。◇5月1日〜3日にかけて岡山の佐藤班員のところへ行ってきました。2日に講演をしたのですが、うちの香川君“何の記念の講演ですか”“記念?ホイなら3日の魚釣のための記念講演ヤ”どうも香川君が入室して以来、関西辨が導入されて変になりつつあります。とまれ、好天に恵まれて5月3日は瀬戸内海で実に気持の良い釣の一日を舟の上ですごしました。何年ぶりかの解放気分でした。もっとも高岡君が魚の上あごの皮一枚にハリをかけてつったりするので、仲々真の解放にはなりませんでしたが。まあ今回は遠目がねを逆に覗く光景はありませんでした。 ◇第6回の班会議の議事録で6月号の月報を作りますが。月末近いので、必ず抄録をそのとき御持参下さい。写真は12枚以上。 ◇新館の建築が週また週とおくれどうも本当に引越せそうなのは6月らしいですが、あまり覗きに行って文句を云うので“ここ当分はペンキ塗りだから来ないでくれ”なんて云われました。しかし行ってみると必ず不備なところが見附かるのですから、建築というものは厭がらせにやっているようなものですね。
《巻頭言》
変異か淘汰か:
最近培養内発癌実験において、発癌剤その他の作用が果して真の変異を起させているのか、それとも初めから混在していた悪性ないし準悪性の細胞を淘汰しているのか、ということが国際レベルで問題にされている。これは非常に重要な問題であり、生体内における発癌の機構にも、胎児では初段階、成体では第2段階の経過として、一応考慮に入れてよい現象である。それにも拘らず実際に研究に従事する者は、その点に虚心坦懐に疑問をおいて実験を組立てようとする者が少く、大部分は、何とか変異させたことを証明しようと、いわば初めから色めがねをかけて実験をおこない、しかもプランを立てている。これでは万一そのような事実が起っているとした場合、その事実を見逃してしまう危険性がある。我々は常に事実に忠実でなくてはならないが、我々のグループでも、一人くらい逆の目を以てこの点を追求してみようとする者が現われてもよいのではあるまいか。
Leo Sachsの仕事がこのごろ相継いで発表されているが、それらに共通していることは、ハムスター胎児の細胞を用いており、対照群がいずれも増殖しなくなってしまうこと、仕事がどれも実にきれいすぎることである。生体内の細胞、特に胎児の体細胞に、たえずどの位にVariantsが生まれているか。これは重要な問題であり、これまでも色々な報告が発表されている。しかし残念なことに、どうもまちまちの結果が記載されており、これなら、と全幅の信頼をおける報告がみられないようである。これは一つには技術的困難さが障害となっていると思われるが、Gotlieb-Stematskyらのようにハムスター胎児組織をexpelantで培養するとmalignantにならないが、細胞一個一個バラバラにしてcoloniesをつくらせるとtransformしたのが出てくる。従って、はじめからmalignantないしsub-malignantの細胞が混在していて、ただ周囲の正常細胞によって増殖が抑えられているにすぎないのだ、という知見が出てくると、これはEmbryonal
developmentの問題とも関与し、あらためて、このNormal
cell group内の解析の重要性が再び浮び上ってくることになる。以前の報告と同レベルでなく、精密な且信頼度の高いデータを出すためには、まず技術的に数レベル上の方法をとらなくてはならないので、今からじっくり考えてみる必要があるのではなかろうか。
6706:◇実に立派な会場での班会議でしたね。とくにおどろいたのはそのサービス振りで、出来る限り目立たず、しかも必要にして充分なサービスをきちんと行届かせた、奥床しいelegantなものでした。まことに学ぶべきものがありました。◇6月2日に九大へ行ってセミナーをやりましたが、その夜高岡君(TC学会の表現によればQueen
of Tissue Cultureと呼ぶべきか)が、高木君御一統のもてなしで遂に飲みすぎてのびるという一幕がありました。この16年間に4度目ぐらいでしょう。稀有なる現象で、翌日高木大先生にブドー糖の静注を受けたことも御報告しておきます。 ◇新館は下水の配管がうまく行かず、いまだに引越にいたりません。皆これまで狭いのに我慢をかさねてきたので、まさに“待ちきれない”といったところです。 ◇伝染病研究所も70余年の歴史をふりきり、廃止となり、6月1日から医科学研究所が“創設"されました。どうぞよろしくおねがいします。なお電話内線は、小生は255、256、培養室は257となりました。
6707:◇雑用に明けくれた1月でした。新館の最后の仕上げ手直しと、最も頭を悩ませていた“OPERATION
HIKKOSHI"。そしてそのあとの整理。しかしとにかく我々は非常に作戦がうまく立ててあったので、毎日予定の150%のスピードで水際立ってスマートな引越をすることができました。もうこの頃は落着いて、仕事を再開しはじめたところです。外は炎天下というのに5mmのガラスを隔てて空調の部屋でこれをかいているのも乙なものです。こんどの班会議のとき建物をお目にかけましょう。 ◇今月号はどういう風の吹きまわしか、頁の中途で終るような報告を送ってきた方が多かったので、御らんのような順送りの変な編集になってしまいました。班会議のときはあとに討論が続きますから中途でやめたかき方でも結構ですが、ふだんのときは出来得る限り頁一杯にかくようにつとめて下さい。雑誌の編集の練習にもなります。 ◇では次の班会議のときを楽しみに・・・。
6708:◇暑いさなかですが皆さんお元気ですか。班の研究費が近々配布されるという通知がきました。おそらく、15、16日頃には皆さんの方へ発送できると思います。入手なさったらすぐそのための別個の銀行預金口座を作って入れて下さい。即日拂出してもかまいませんから、必ず口座は一旦作って下さい。 ◇千葉大の安村君が帰ってきました。相変わらず元気ですが、以前より少し角がとれたようです。口の方も仲々元気です。とりあえず若干の研究費を差上げて班に入って頂きたいと思いますが、如何でしょうか。 ◇8月4日は当室の無菌祭で、関係者約30人の方においで頂き、最后は夜1時半ごろになりました。17年前はじめて第1号の培養を開始した日で、この日は例年、培養者の体内から滅菌する日です。私は例によって12時ごろから寝てしまいました。しかしまあよく呑んだという感じのした日でした。
6709:◇ようやく暑さも去って皆さんも張切り出されたことと思います。今月末の班会議が楽しみです。我々も昼は涼しくて夜家へ帰ると暑くてねられず参りましたが、これでどうやら内外同温でホッとしています。◇Drs.Heidelberger
& Paulを囲んでのmeetingは、小人数だけに、しかもうるさいのを集めただけに、活発に討論も出て良い会でした。夜のパーティになったら“もう英語は沢山だ”という御仁もあらわれましたが・・・。
Dr.Heidelbergerが日本人の顔を一人一人指さしながら、その名前を正確に云い当てて行ったのにはおどろきました。失敗は、日本人の演者の多くが指定時間の2倍近く(或は以上)しゃべったことで、こういうことは外国では通用しませんから呉々も今后は心して下さい。◇千葉大の安村君が帰国され、この9月10日には横浜大の梅田君も帰国されますので、今度の班会議に出て頂こうと思っています。
《巻頭言》
Informal Meeting on Cancer and Tissue Culture:
国際生化学会で来日した米国のProf.C.Heidelbergerと英国のProf.John
Paulを囲んで、在京の関係者および班員の一部で、ごく内輪の小さい会合をひらきました。プログラムと参加者のリストは本号の終末の方に綴込んであります。
Dr.Heidelbergerは、chemical carcinogenesisの場合には、i)真のtransformationであるか、ii)selectionであるか、iii)activation
of latent virusであるか、を区別しなくてはならないと前おきし、それらを明確にするため色々の試みをおこなったことを話しました。Virusの関与を否定するためには、cell
homogenateを色々な細胞の培養(CPの有無)や動物にいれてみるとか、電顕(粒子の有無)、免疫学的検査(高度の抗原性の有無)が必要であるとし、chemical
tumorsでは、或tumor cellsをX線で殺して動物に接種し、多種の生きたtumor
cellsをあとから入れてもrejectされない。12種しらべたがcross
reactivityがなかったことをあげました。(動物の脚に生きたのをうえ、後に脚を取去って別のtumorを入れてみる手も言及しました。)
彼の最近のexp.でmouse prostateのorgan cultureを1w.
1γ/mlのMCAで処理し、cell cultureに移すと1w.でpiled
upしたcoloniesができる。さらに1w.后これをかきあつめて無処理マウスに106コ宛入れるとtumorsができたそうです。全過程5wだとえばっていました。対照は107コ宛、X線処理マウスに入れたがtumorができなかった由です。
Dr.Paulは最近癌の研究所に移り、癌研究のまっただ中に押込まれたが、まだ癌のことは何もやっていないと、分化の話をしました。マウスのbone
marrowのexplant cultureで、erythropoietinを与えるとhemoglobinの産生が、24hr位をピークとしてきわめて促進される事、材料に用いるマウスの胎生期の如何によってこの実験に適不適があること、polyomaで変異させた細胞のm-RNAも正常のとhybridizationでは差がないことを話しました。
6710:◇今月号は月報発行がすっかりおくれてしまいました。仕事に追われ放しで、手が廻らなかったのです。来月号はちゃんと出しますから至急原稿を送ってください。これと折返し位におねがいします。 ◇今年の癌学会では組織培養がずい分沢山報告されていました。質の上ではピンからキリまでですが、培養内の発癌の仕事もずい分良いところまで来たという気がします。今后3〜5年間には相当のところまで伸びられるのではないか、と感じました。第3日のシンポジウムでは生化学者たちが“発癌の系に最適な細胞を細胞屋が作って、沢山にふやし我々に渡せ”なんて虫の良いことを云っていました。あきれた奴らですね。生化学者といえば面白いのは杉村君で、2/3以上のスライドが組織像の写真で、それも堂々としゃべっていたのですから、初めての人はきっと病理屋だと思ったことでしょう。 ◇第9回の班会議は、TC学会の前日にひらきますが、同日午後3時よりTC学会の委員会が開かれる由で、高木、堀川、奥村の三氏がそちらに廻られますので、三氏の報告はそれまでにすませ、以后もなるべく早く切上げるようにしたいと思っています。
6711:◇秋ともなるといやどうも学会ばかりで、全く落着けないですね。少し学会をボイコットする必要があるかも知れません。 ◇小生の高校後輩で、また当研究室の第1号研究生であった大石雄二君が、デンバーからひょっこり帰ってきて、この19日にまた米国に帰ります。12年5月ぶりで、東京の道の混むのには、すっかりおどろいていました。デンバーを訪れる日本人は大抵彼に世話になっているので18日夕のTC学会懇親会には招待したいと思っています。
《巻頭言》
最近不愉快なこと:
最近日本組織培養学会の機構を改変しようとする動きがある。しかしその狙っている点は、簡単に云えば二つに絞られるらしい。その一つは、会員入会資格制限の緩和であり、もう一つは会長をおこうということである。
組織培養学会ができたのは十年以上前のことであるが、そのときの主旨は、ありきたりの学会ではなく、形式よりも内容に主体をおいた会にしたい、ということであった。そして討論、意見の交換に重点をおき、またそれ故にこそ、あまり低いレベルの質問で時間を空費することをおそれ、会員資格に制限をおいたのであった。その后、いつの間にか、会員以外でも出席できるようになり(このこと自体は悪いこととは思わないが)、ついにはその枠も外されようとしている。以前に木村一派が、この学会をありきたりの学会にしようとして大いに運動したことがあった。我々は、形より内容ということで、あくまでたたかい、そして遂に勝つことができた。こんどは第二回目の試練である。研究者の人生の目的は立派な研究成果をあげることである。その努力がいとわしくなったとき、その自信がなくなったとき、人はややもすれば形にすがろうとする。何とか口実を設けて、抜殻だけを見かけの良いようにしようとする。日本の組織培養レベルが国際的にみて立派な成長をとげ、且世界をリードしかけているような現状に到達できたのは、やはりこの“実をとる”方向への努力の成果ではなかろうか。日本の培養研究が高く評価されるのは、会の運営法、制度その他のためではない。あくまで、そこで発表される成果が信頼のおけるものであり、価値ある内容のものであるからである。殻を見かけよくしようとする前に、何故中味を大切にしようとしないのか。会員はなぜもっとエリート意識をもたないのか。なぜ愚昧な輩にまどわされて殻を追おうとするのか。
私はこれまでの日本組織培養学会の歩んだ道は、世界に誇れる立派なものであり、これを改変する必要性は毛頭ないと信じている。改めるべきのは、殻にすがろうとする不逞の輩に踊らされて、研究に専念すべき中堅層の研究者が、下らない機構いじりに心をまどわせ、時間を空費していることであろう。情けない次代のヤツバラである。喝!
6712:◇あわただしい秋が、あっという間にすぎて、師走の風が吹きはじめました。振返ってみると、またもや学会、学会とふり廻されたような秋でした。情けないことです。病理学会などはサボってしまいましたが、何とか、本当に有意義な学会だけに出席して、あとは時間を節約するようにしないと、一生の間、学会に出るために生きているような始末にもなりかねません。 ◇来年度から研究費の配布の審議を二重システムにするということと、あとの報告の検討を厳重にするということをいま学術会議や文部省で検討中なので、来年度の申請の用紙がまだ廻ってきません。それだけに、来たら大あわてで書かなくてはならないと思います。皆さん何とぞ御協力下さい。
《巻頭言》
微生物株センターについての紹介:
学術会議では将来計画委員会が色々の計画を立てて文部省に勧告しているが、そのなかの一つとして、微生物株を保存、供給するセンターを作る計画があり、細胞株もそれに含むということで、勝田が微生物株センター設立準備小委員会の委員の一人に任命された。これは推薦は日本組織培養学会ということになっている。ところでその第1回の会議が11月10日午后に学術会議で行われたが、席上、勝田は微生物株だけでなく、細胞株の保存も本気で加えるつもりならば、〔微生物株・培養株・センター〕とか〔培養生物株センター〕とか両者を兼ねた名称にすべきことを強く主張し、名称の検討については次回(1月末頃)に討議することになった。また阻止この規模についても、微生物関係が6部門、その他が3部門、培養細胞部門が1部門で、しかもその構成が教授級1、助教授級1、助手級2、雇員、技術員3、というのでは細菌よりはるかにgeneration
timeの永い培養細胞の維持供給は不可能であることを強調したが、全般的な雰囲気として、学術会議が、或はその長期研究委員会がどこまで本気でこの案を推進させようとするのか、非常に疑問に感じられた。