AW-1
ヒト肺微小血管内皮細胞における炎症性サイトカイン誘導 uPA への
dexamethasone の影響
小林 克行、高橋 君子、中村 博幸、松岡 健
(東京医科大学内科学第五講座(霞ヶ浦病院))
urokinase-type plasminogen activator (uPA) は、細胞外基底膜の細胞線溶や
細胞の遊走、増殖を促進することで組織修復やリモデリング、血管新生の一端を
担っている。今日までの我々の研究でヒト肺微小血管内皮細胞は他臓器血管内皮
細胞よりも多くの uPA を発現、分泌し、炎症性サイトカインである IL-1β と
TNF-α によりその mRNA の発現を誘導されることが明らかになっている。今回
我々は、これらの機序を解明するためにヒト肺微小血管内皮細胞において
dexamethasone が uPA 発現にどのような影響を与えるかを検証した。
肺癌手術より得られた正常肺末梢部分よりヒト肺微小血管内皮細胞を分離培養
し (medium 199 cotaining 20 % newborn calf serum、10 ng/ml bFGF、100 IU/ml
penicillin、 and 100 mg/ml streptomycin)、confluentとなった細胞を使用し
実験を行った。まず、ヒト肺微小血管内皮細胞 を dexamethasone 添加無血清培
地で4時間インキュベーションし、その後、1 ng/mlとした IL-1β、TNF-α 添
加無血清培地を加えた。サイトカイン刺激前,刺激12時間及び24時間後の上清
を回収し、ELISA 法にて uPA 量を測定し、刺激前、刺激4時間後に RT-PCR 法を
行った。その結果 dexamethasone は IL-1β、TNF-α によって誘導されたヒト肺
微小血管内皮細胞から分泌される uPA および uPA mRNA 発現を抑制した。これは
dexamethasone が肺の組織修復、リモデリング、血管新生を抑制している可能性
があることを示唆している。