AW-2
進展刺激による平滑筋細胞高発現蛋白質 Hic-5 の細胞内局在変化
金山 朱里、野瀬 清、柴沼 質子
(昭和大学 薬学部 微生物薬品化学教室)
細胞のインテグリンを介した細胞外基質(ECM)への接着は、増殖、分化、生存、
発生などに重要であることが知られている。Hic-5は Paxillin 類似のLIM 蛋白
質で、繊維芽細胞2次元培養系では細胞接着斑に存在し、細胞表面での接着性の
制御に関与していることがこれまでに示されている。最近Hic-5 は,大腸、子宮
および血管などの平滑筋細胞に高発現していることが明らかとなった。これらの
臓器は共通して高度の伸展、収縮性を有しており、臓器を取り巻く平滑筋細胞は
常に細胞形態や接着性の変化にさらされていると考えられる。このことから、本
研究では平滑筋細胞の主機能である伸展、収縮に注目し、細胞伸展システムを用
いてフィブロネクチン上の細胞に伸展刺激を与え、間接蛍光免疫染色法により
Hic-5 の細胞内局在変化を観察した。細胞としては、分化型平滑筋細胞分子マー
カーであるSM22αを高発現しているマウス胎児繊維芽細胞を用いた。細胞に毎分
60回の伸展刺激を2時間与え続けた結果、通常は細胞接着斑に局在する Hic-5
が、ストレスファイバー上に移行していた。また、Hic-5 の各種変異体を用いた
解析から、伸展刺激下でストレスファイバー上に局在するために、Hic-5 の C末
側に存在する4つのLIM ドメインのうち、2、および3番目のLIM ドメインが重
要であることが示された。LIMドメインは、転写因子や細胞骨格蛋白質などの様々
な機能を持った蛋白質に存在することが知られている。Hic-5 と Paxillin の LIM
ドメインは、アミノ酸レベルで68%と高い相同性を有しているが、Paxillin で
は細胞伸展刺激によるストレスファイバーへの局在変化は観察されなかった。現
在 Hic-5 のストレスファイバーへの局在変化のメカニズムとその意義について
検討中である。