AW-3 アクチビンAによる顎顔面軟骨誘導

福井 康人 1、古江 美保 2、明石 靖史 1、浅島 誠 3,4、岡本 哲治 1 ( 1広島大 院 医歯薬学総合 先進医療開発科学講座 分子口腔医 学・顎顔面外科学、 2神奈川歯科大学 口腔生化学、 3SORST 科技振 興事業団、 4東京大学 院 総合文化研究科 環境科学生命系)

アクチビンAは両生類胚において強い中胚葉誘導能を示し、初期胚の予定外胚 葉領域(アニマルキャップ)未分化胚細胞から濃度依存的に胚の腹側から背側の 中胚葉組織を誘導できる。さらに、アクチビンA処理後1〜4時間のアニマルキ ャップを、未処理アニマルキャップ二枚で挟み込むアニマルキャップサンドイッ チ培養法により、アクチビンA濃度および処理後時間に依存して、頭部から胴尾 部構造が誘導される。以上のことから、アクチビンAと未分化予定外胚葉領域を 用いる実験系により、正常胚における発生を in vitroで再現することが出来る と推測される。しかし、中胚葉組織の中でも軟骨は高度に分化した組織で、これ までアフリカツメガエル未分化胚細胞から軟骨への分化は報告されていなかっ た。そこで、アクチビンAと未分化予定外胚葉領域を用いて顎顔面軟骨の誘導を 試みた。その結果、アニマルキャップを高濃度のアクチビンA で処理後、1時間 後に未処理のアニマルキャップで挟むアニマルキャップサンドイッチ培養を行っ たところ、培養7日目でアルシアンブルー陽性の軟骨様細胞や軟骨性組織が explant内に誘導されていた。同explantにおいて、前方外胚葉由来組織に発現 する Xenopus Distalless 4 ならびに頭部腹側に限局して発現する goosecoid の発現が見られた。 以上のことから、前方腹側間葉系細胞に由来する顎顔面領域に相当すると考え られる軟骨、すなわち、顎を in vitroにて誘導したことが示された。この誘導 法は、細胞分化のみならず発生におけるパターン形成をも再現し、顎顔面領域に 相当する軟骨を選択的に誘導できることから、脊椎動物の顎顔面発生の解析、再 生医療への応用に有用なモデル系であると思われる。