秋田 正治 1、清水 茂一 2、野崎 善弘 2、横山 篤 3、黒田 行昭 4
(1鎌倉女子大学 家政学部 管理栄養学科、 2株式会社富士バイオメデ
ィックス、 3神奈川生命記念財団研究所、 4国立遺伝学研究所)
【目的】 本学会第73回大会(2000年、岡山)において、ビスフェノールA(BPA)
は100ppmの濃度でラット培養胎児にアポトーシスを主体とする強い毒性を生じ
ることを明らかにした。一方、ビスフェノールA(BPA)にブロム(Br)が4個結
合したテトラブロモビスフェノールA(TBrBPA)は難燃剤として高層ビルなどに
使用されているが、毒性については検討の余地はあるとしながらも、比較的弱い
との見解がなされている。しかし、BPAとよく似た構造であることから、BPAと同
様に内分泌かく乱作用について検討が進められている。われわれも2年前より培
養胎児を用いて検討を進め、ラット培養胎児においてTBrBPAは100ppmよりも1ppm
という低い濃度で強い形態異常を生じることが確認された。そこで今回は、TBrBPA
を1ppmおよび100ppmで処理した培養胎児について組織学的解析を行いさらに検
討を進めたので報告する。
【方法】 ラット胎齢11.5日目の胎児を母獣より取り
出し全胚培養を行った。TBrBPAは1ppmおよび100ppmを培養液中に培養2時間後
に加えて48時間培養を行った。そして培養終了後、胎児を固定し組織学的に解析
を行った。
【結果・考察】ビスフェノールA処置例では、全身性のアポトーシスに
より組織構造の崩壊が認められたのに対して、TBrBPAの1ppmおよび100ppmで処
理した培養胎児では、いずれの器官・組織においても組織学的には明らかな変化
は認められなかった。また、胎盤および卵黄嚢についても異常はみられなかった。
このことからTBrBPAは個々の細胞レベルで影響を与えるのではなく、組織や器官
の形成メカニズムに影響をおよぼす可能性が示唆された。