O1-12 Real-time PCR を用いたマイコプラズマ検出法の開発

石川 陽子 1、小酒井 貴晴 2、森田 初恵 1、斉田 要 2、小松 泰彦 1、 岡 修一 1、増尾 好則 1,3 ( 1産業技術総合研究所 特許生物寄託セン ター、 2産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門、 3NEDO)

マイコプラズマは培養細胞における代表的汚染微生物の一つであり、培養細胞 に与える影響は深刻でありながら、通常の培養過程で発見することが難しい。マ イコプラズマ検出法としては、現在、直接培養法、DNA蛍光染色法及びPCR法等 が知られている。しかしながらいずれの方法においても、結果を得るまでに時間 がかかる、観察に経験を要する等のデメリットを伴う。今回我々は、real-time PCR 法を用いた迅速かつ確実なマイコプラズマ検出法を開発した。Real-time PCR 法 のメリットとしては、(1) 遺伝子の増幅反応をコンピュータ画面上でリアルタイ ムに観察することができ、迅速に結果が得られる (2) 電気泳動等の必要がなく、 手技が極めて簡便である (3) 96穴プレートを用いることにより一度に多検体処 理が可能であること等が挙げられる。本研究では、培養細胞汚染マイコプラズマ として主に検出されるマイコプラズマ7種及びアコレプラズマ1種を特異的に検 出することを目的として、23S rRNA 領域を標的としたプライマーを作製した。SYBR Green I を用いたインターカレーター法によりreal-time PCRを行った結果、検 出に要した時間は約100分であり、従来のPCR 法に比して大幅に短縮することが できた。検出限界はマイコプラズマDNA 100 fgであった。次に、本方法の有効性 を調べるため、汚染細胞凍結チューブにおけるマイコプラズマの検出を行った。3 継代培養を経たDNA蛍光染色法によって陽性であると判断された17検体につい て、保存チューブの細胞より直接DNA を抽出して試料としたところ、本方法にお いても全例でマイコプラズマが検出された。上記試料のうち1検体は汚染程度が 極めて低かったが、1日以上培養後にアッセイした結果、より確実な検出が可能 であった。これらの結果は、本方法が培養細胞におけるマイコプラズマ汚染検査 に充分有効であることを示すものである。