【方法】 ウシES様細胞の樹立は、体外成熟、体外授精、体外発生培養した8〜 9日目の胚盤胞期胚を用い、無血清培地(血清アルブミンおよび数種の細胞成長 因子を含む)とコラーゲン薄膜プレートを使用し行った。樹立細胞の未分化性は、 アルカリフォスファターゼ活性、テロメラーゼ活性、Oct-4遺伝子発現、SSEA-1 抗原発現を調べることにより行った。
【結果および考察】 胚盤胞期胚より内部細胞塊(ICM)-rich分画を分離し、コラ ーゲン薄膜層上に注射針で軽く押しつけて固定し培養すると、培養開始後3〜4日 目で細胞の伸展と活発な細胞増殖が観察され、培養13日目には数千個レベルの細 胞数に達した。樹立細胞の未分化性を検討した結果、アルカリフォスファターゼ 活性、テロメラーゼ活性、およびOct-4遺伝子発現において陽性が確認され、 SSEA-1抗原発現においては陰性であった。これらの結果は、樹立されたICM由来 未分化細胞はES細胞の特徴を持つ細胞であることを示唆している。また、本研究 において確立した無血清培地-無フィーダ細胞培養システムは、ウシ以外の動物種 のES細胞の樹立・培養に適用できる可能性がある。