O1-3
ラジアルフローバイオリアクターによる不死化ヒト肝細胞株
(OUMS-29)の3次元高密度培養
秋山 一郎 1、宮崎 正博 1、間阪 拓郎 1、森 将晏 2、細川 正清 3、
永森 静志 4、許 南浩 1 ( 1岡山大・院・医歯学・細胞生物、 2岡山県
立大・保健福祉、 3千葉大・院・薬、 4杏林大・医・総合医療)
肝移植におけるドナー不足の問題のみならず、薬物の有効性と安全性の評価系
を確立する観点からも、ヒト成体肝臓に類似するバイオ人工肝の有用性は高い。
今回、ラジアルフローバイオリアクター(30 ml型、エイブル株式会社)を用い
て、我々が樹立した不死化ヒト肝細胞株(OUMS-29)を培養した結果、細胞機能を
維持しつつ3次元高密度培養が可能であった。[方法] リアクターカラム(30 ml)
に直径0.6 mmの多孔質ガラス粒子を細胞担体として充填し、OUMS-29細胞を1×
108個播種し、HGM培地を循環させて1〜1.5か月間培養した。経時的に培地サン
プルを採取し、酸素とグルコースの消費量および細胞が産生分泌したアルブミン
量 (ELISA法)を測定した。また、CYP3A4酵素活性を求めるため、培地に50 μM
のテストステロンを負荷し、その減少をHPLCにより経時的に測定した。培養終了
後、細胞を固定して走査型電子顕微鏡(SEM)により形態観察を行った。また、回
収した細胞担体より抽出したDNA量から細胞数を推定した。[結果] アルブミン産
生量は培養1週目まで急激に増加してプラトーに達し、その後6週間にわたって
安定に維持された。培養30日目に行ったテストステロン負荷試験では8時間で
54%のテストステロン代謝を示した。SEMで観察した結果、細胞は多孔質ガラス粒
子の表面でシート状に増殖して重層化し、また担体の内腔でも増殖していた。酸
素とグルコースの消費量およびDNA量の増加率より、細胞数は8〜15倍に増加
したと考えられた。[まとめ] OUMS-29細胞はラジアルフローバイオリアクターに
よる無血清3次元高密度培養が可能であり、アルブミンを産生すると同時に重要
なヒト肝薬物代謝酵素であるCYP3A4の活性を発現する。従って、本系は医薬品の
安全性確認・効果判定のための薬物動態解析システムの開発に有用であると考え
られる。