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長期継代培養で観察されたSTRピークの変化と染色体構成の変化との
関連性:HeLa AGクローン株を用いたFISH法による解析
北條 麻紀 1、安田 留菜 1、田辺 秀之 1、高田 容子 1、榑松 美治 1,2、
増井 徹 1、水沢 博 1 ( 1国立衛研 変異遺伝 細胞バンク、 2ヒュー
マンサイエンス振興財団)
細胞バンクでは、各種ヒト由来細胞株の個別識別を目的としてSTR(Short
Tandem Repeat)領域の多型性を利用したSTR-PCR法をルーチンに行っている。
STR-PCR法ではゲノム中の9座位のアリルのタイピングを行い、全ての座位のデ
ータを0と1で表示させ、それを連結したデジタルデータセットを個々の細胞株
のSTRプロファイルとした。これを用いて任意のSTRプロファイル間の一致率を
EV(Evaluation Value)値として算出している。現在までに通算468ロットのデ
ータを分析し、16件のクロスコンタミネーションを明らかにした
(http://cellbank.nihs.go.jp/)。昨年の本大会において、我々は長期継代培養
により、STRプロファイルが変化する例を報告した。特にHeLa細胞の亜株である
HeLa S3とHeLa AGにおいて、長期継代培養に伴いSTRピークが漸進的に増大す
る変化が顕著に観察された。
本研究では、HeLa AGの5番染色体長腕上に存在する2つのローカス(D5S818
とCSF1PO)に着目し、STRピークの増大が染色体構成の変化とどのように関連す
るかを検討した。D5S818ローカスでのピーク[11]とCSF1POローカスでのピーク
[9]は、いずれも第1週目から第11週目にかけて増大する変化が起こり、しかも
ピークの増大の仕方が並行していた。5q領域をプローブとしたFISH法によりHeLa
AGの細胞集団には、そのコピー数が異なるいくつかのサブグループの存在が判明
していたので、HeLa AG細胞のクローニングを行い、サブグループの単離を試み
た。各クローンをFISH法により5q領域の性状(コピー数、形態とその頻度)に
よりタイプ別に分類し、現在、それぞれのクローンのSTRピークのデータを集積
し、両者を組み合わせて解析中である。