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ラット破骨細胞中の酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP)の変化
五十嵐 吉彦 1、間中 研一 2、清水 左門 1、松崎 茂 1
( 1獨協医科大学 生化学、 2獨協医科大学 医総研)
成熟した骨は破骨細胞と骨芽細胞によって常に新しく再構築されている。破骨
細胞は骨を吸収する役目を果たす細胞であり、血液多能性幹細胞を起源としてマ
クロファージ系列の途中から分化するとされている。最近、骨髄細胞にRANKL
(receptor activator of NF-κB) とM-CSFとを共に作用させると破骨細胞を分化
誘導できることが明らかとなった。分化マーカーは、骨窩形成のほか、酒石酸抵
抗性酸ホスファターゼ(TRACP)活性が通常用いられる。五十嵐は、ヒト血中TRACP
をヘパリンカラムによって5aと5bの活性ピークに分離できることを示し
(Igarashi Y. J Chromatogr B Biomed Sci Appl. 2001;757:269-76)、本研究で
はラットTRACP5a,5bの骨特異性の有無を検証することとした。【方法】成熟ラッ
トの肺、末梢血、脾、骨由来の各マクロファージならびに破骨細胞前駆細胞(OCPC;
壁着性骨髄細胞をEDTA処理し浮遊した細胞)について検討した。OCPCは分化過程
の変化を見るためにM-CSFと可溶性RANKLとで刺激し3週間培養した。細胞培養
上清をヘパリンカラムに掛け、塩濃度勾配溶出液のTRACP活性パターンを比較検
討した。【結果】1)ラットにはTRACP の5aと2種類の5bが存在した。血清は5a;
低、5b1;高、5b2;5b1の1/3ほど。末梢血と脾各由来マクロファージでは5aが
主、肺胞マクロファージと骨では5bが主であった。2)OCPCはM-CSFで刺激する
と5aがもっぱら上昇した。RANKLを併せると4日以内に5bが著明に上昇し、特
に5b1の上昇が見られ、骨と同様の溶出パターンとなった。3)RANKL刺激破骨前
駆細胞は多核化、骨窩形成を示した。【結論】OCPCはM-CSF存在下でRANKLの刺
激により骨内破骨細胞と同等の分化を遂げると考えられる。このときTRACP5b1が
破骨細胞分化形質として重要な意味を持つことが示唆された。