O1-7 ヒトプレB細胞株を用いた高効率ジーンターゲティング

曽 彩玲、小山 秀機 (横浜市立大学 総合理学研究科 木原生物学研究所)

【目的】ジーンターゲティングは、逆遺伝学による遺伝子機能を解析する強力な 武器である。しかし、マウスES細胞とトリB細胞由来DT40のように、高率よく ターゲットできるヒト細胞株は見い出されていない。ヒトについて、そのゲノム 情報、各遺伝子cDNA、遺伝子産物や抗体など、研究に必要な情報と資材がもっと も整っている。したがって、ヒト細胞をターゲティングして遺伝子破壊株が容易 に得られるならば、ヒトの遺伝子機能をより詳細に解析することが可能になる。 我々はブルーム症候群の原因遺伝子 BLMを標的としたジーンターゲティングを行 い、プレB細胞由来のNalm-6株が高いターゲット効率を示すことを見い出したの で報告する。

【方法】ヒト BLM遺伝子断片にハイグロマイシン耐性(Hyg r)遺伝子、またはヒス チジノール耐性(His r)遺伝子を組込み、ネガティブ選択としてジフテリア毒素A 遺伝子を付加した2種類のターゲティングベクターを作製した。このベクターを 細胞へ導入し、24時間後にそれぞれの選択薬剤を含むアガロース培地に植え込み、 2-3週間培養しコロニーを形成させた。生じた薬剤耐性クローンを分離してゲノ ムを調製し、サザンブロットとPCR法により BLM遺伝子座がターゲットされたク ローンを選別した。

【結果】野生型Nalm-6株にHyg rベクターを導入し、生じた薬剤耐性クローン168 個をサザン解析したところ、14クローン(8.3%)が BLM遺伝子の1コピーがターゲ ットされたヘテロ変異株であった。次に、ヘテロ変異株にHis rベクターを導入し、 生じた薬剤耐性コロニー274個についてPCRとサザン解析を行ったところ、 BLM 遺伝子が2コピーともターゲットされたホモ変異株を5クローン(1.8%)取得でき た。また、他の遺伝子座についても同様の結果が得られた。以上より、Nalm-6株 はターゲティング効率の高い細胞株であると考えられる。さらに、取得した BLM ホモ変異株の性状についても報告する。