O1-8 コンディショナルトランスジェニックマウスを用いた遺伝子機能解析

荒田 悟 1、城戸 達雄 2、鈴木 隆介 2、細野 知彦 1、黒木 登志夫 3、 塩田 清二 2 (1昭和大学 共同施設 組換えDNA実験室、 2昭和大学  医学部 第一解剖学教室、 3岐阜大学)

【目的】ポストゲノム世代に入り、遺伝子の機能を個体レベルで解析することの 重要性が高まっている。特に、ニューロンとグリア細胞が相互に密接に関わり合 う脳組織、組織培養の困難な生殖細胞などでは、in vivo解析は必須である。そ こで、我々はCre-loxPシステムを用いたトランスジェニック(Tg)マウスの作製し て、精巣および脳において遺伝子発現を制御するモデルマウスの検討を行ってい る。ここでは、精細胞のアポトーシスに関与が示唆される精巣特異的脂肪酸結合 タンパク質遺伝子(PERF15)の機能解析をこのモデルで検討したので報告する。

【方法】pCALNL5ベクター(東大医科研・斎藤博士より恵与)にラットPERF15cDNA を組み込んだ発現系を用いてTgマウスを作製した(LNL-PERF15 Tg mice;line#7 & #17)。また、精母細胞特異的なPgk2プロモター(金沢大・中西博士より恵与) にCre cDNAを繋げた発現系を用いてPgk2-Cre Tg miceを作製した。この両者を 交配して得た雄double Tg miceについて解析した。

【結果と考察】EGFPレポータ ーマウス(阪大・宮崎博士より恵与)を用いてCre Tgマウスの評価した結果、こ のモデルでは精母細胞以降に遺伝子発現が起こることが確認された。そこで LNL-PERF15 Tg miceの解析を行った結果、Pgk2-Cre transgeneを持つduble Tg マ ウスでは両line(#7, #17)ともにPERF15トランスジーンを持つ精子数が著しく減 少した。また、double Tg miceの精細管ではearly elongated spermatidに形態 異常が認められ、減数分裂以降の精細胞の選別にPERF15が関与する可能性が支持 された。一方、雄double Tg mice由来の胚ではPERF15 transgeneをもつものが 半数以上得られた。これは、PERF15 transgeneを持つ精子数の減少と矛盾する結 果であるが、PERF15は精細胞の選別とともに、精子の受精過程においても何らか の役割を果たしている可能性があると考え、さらに検討している。