【方法と結果】細胞は、正常ヒト表皮角化細胞を用いた。KGM培地中で培養後、X 線照射を行い、照射終了後から3-8時間で細胞を溶解し、RNA抽出をしてDNAチ ップ法で解析した。その結果、約120種類の発現変動する遺伝子が見いだされた。 そのうちの約30%がヒト表皮角化細胞で発現誘導あるいは増加型であった。その 中には、既知のアポトーシス関連遺伝子、細胞周期制御関連遺伝子、細胞増殖を 制御するサイトカインやDNA修復に関与する遺伝子等が含まれていた。次いで、 変動した遺伝子については、電離放射線によるmRNAの発現変動の時間依存性、及 び、線量依存性を正常表皮角化細胞と正常表皮線維芽細胞についてノーザン法に より調べた。その結果、両方の細胞で変動する遺伝子に加えて、表皮角化細胞の みで顕著に変動する遺伝子が得られた。他方、DNAチップ法で変化が認められた 遺伝子でも、ノーザン法では確認できない遺伝子があった。現在、ノーザン法で 変動が確認できた遺伝子については、順次、培養細胞や実験動物を使用して遺伝 子機能の解析を進めている。