O2-12
肺傷害時のヒト肺微小血管内皮細胞と繊維芽細胞のウロキナーゼ型プ
ラスミノゲンアクチベータおよびその受容体と阻害物質の発現
高橋 君子、小林 克行、渡辺 治、岸 厚次、松岡 健
(東京医科大学 第5内科学)
ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)は細胞周囲のマトリックス
を分解し細胞の遊走を促進するとともに、種々増殖因子の活性化をすることで傷
害組織修復に重要なプロテアーゼである。われわれは肺傷害初期からヒト肺微小
血管内皮細胞(HLMEC)のuPA産生が増加し、一方ヒト肺繊維芽細胞は細胞表面の
uPA増加のみのとどまっていることを既に報告している。しかし、肺傷害から修
復に向かい正常のガス交換能力を回復するか、あるいは繊維芽細胞の肺胞腔内へ
の増殖が増大し次第に繊維化が進行するかのメカニズムは明らかになっていな
い。そこで、ヒト肺末梢組織からHLMECおよび繊維芽細胞を単離し、それぞれの
細胞の炎症性刺激によるuPA、その受容体(uPAR)および阻害物質(PAI-1)産生の変
化をそれぞれRT-PCR法、ELISA法、免疫染色法およびWestern blot法で比較し
た。炎症性刺激により繊維芽細胞のuPAR産生が増加しことに対し、HLMECでは刺
激の有無にかかわらずほぼ一定であった。繊維化の指標とされるPAI-1はいずれ
の細胞でも炎症刺激で増加し、uPAあるいはuPA-uPARとの複合体を形成していた。
さらに、uPA-PAI-1-uPAR 三者複合体は特に繊維芽細胞に顕著に認められた。HLMEC
は血管内腔を流れる血液の凝固阻止のために常にuPARを発現している必要があ
ると考えられるが、繊維芽細胞では炎症刺激によりuPARの発現量が増加し細胞表
面でuPAが繊維芽細胞自身の遊走促進や増殖因子を活性化し血管内皮細胞など周
囲の細胞増殖を促進することでに組織修復に貢献していると考えられる。また、
PAI-1が繊維芽細胞上で複合体を形成することで、uPA活性を抑制して自身の遊走
を制限するとともに繊維化の進行を調節している可能性も示唆された。