O2-3 ウシ卵管上皮細胞に於ける不死化細胞株の確立

村田 健 1,2、小泉 さゆり 1,2、半澤 惠 1、安本 茂 2 (1東京農業大学 大学院 農学研究科、 2神奈川県立がんセンター  臨床研究所 分子腫瘍研究室)

【目的】細胞の不死化機構についてヒト細胞以外での知見を得る為、我々は今回 ウシ卵管上皮細胞にSV40LargeT抗原遺伝子及びhTERT遺伝子をリポフェクション 法により導入し、不死化細胞株の確立を試みた。又、その過程に於いてテロメア 長とテロメレース活性をそれぞれサザンハイブリダイゼーションとTRAP法によ って解析した。

【成績】SV40を導入したもので4系列、hTERTを導入したものでは2系列の細胞 系を得た。PDLは全ての系列で100前後と、で正常細胞の分裂回数を大幅に上回 り、現在も活発に増殖している。これらの細胞を顕微鏡にて観察した結果、OT+SV 系では形態の異常が観察された。OT+TERT系については正常細胞の形態と同様で、 異常は認められなかった。テロメア長を測定した結果、OT+SV系は全て23kb以上 と極度にテロメアが伸長していた。OT+TERTでは遺伝子導入時のテロメア長であ る6.0kbで維持されていた。テロメレース活性はOT+SV系ではテロメアが伸長し ているにも関わらず検出されなかったが、OT+TERT系には活性の存在が確認され た。

【考察】OT+SV系に於いてはテロメレース活性の発現なしにテロメアを伸長させ、 不死化させる機構、即ちAlternative Lengthening of Telomeres(ALT)が作用し ていると考えられる。OT+TERTについては、テロメレース活性の存在によってテ ロメアの短縮が停止した事から今後M1期やM2期による分裂停止が起こるとは考 え難く、不死化している可能性が高い。一般に上皮細胞をTERTのみにて不死化す る事は難しいと考えられており、この細胞は極めて稀少な例である。