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マウス不死化肝細胞IMHの樹立とIF3遺伝子
真野 博 1、前橋 はるか 2、和田 政裕 1、松浦 知和 3
(1城西大学 薬学部 医療栄養学科、 2東京慈恵会医科大学 生化学講
座、 3東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座)
我々が卵子から見出したIF3遺伝子は、組織特異的に発現し、成体マウスの卵
巣及び肝臓でのみ検出できる。肝発生において、IF3 mRNAは、マウスの肝発生が
始まる胎齢13日では検出できなかったが、胎齢16日から検出できた。肝細胞
は成体においても分化・成熟している。肝小葉内の肝細胞には、門脈域から中心
静脈にむかって機能・形態の上でheterogeneityを認め、門脈域近傍の肝細胞の
中には未分化な肝細胞が存在すると考えられている。そこで、肝細胞の分化度と
IF3遺伝子の発現・機能の関係を解析する目的で、IF3発現をマーカーとしてマウ
ス不死化肝細胞IMHの樹立を試みた。
温度感受性にSV40 Tag 遺伝子を発現する H-2K b-tsA58Tgマウスから、コラゲ
ナーゼ環流法を用い、肝実質細胞分画を調整し、5% FBSを含むASF104培地で
5% CO 2/空気33℃の条件下で培養し、コロニーを選択することで不死化肝細胞IMH
の樹立を行った。その結果、10系列のIMHを得ることができた。それぞれのIMH
に関して、肝細胞マーカーであるアルブミン(Alb)、レチノール結合タンパク質
(RBP)、HNF-3/HFH-4等およびIF3の発現をRT-PCR法で調べた。その結果、IMH1
とIMH2は、AlbやRBP mRNAを高発現し、成熟肝細胞に近い性質を示した。IMH5
〜10は、HNF-3/HFH-4やRBPは発現するがAlbを発現せず、肝小葉の門脈域に存
在すると考えられる比較的未分化な肝細胞に近い性質を示した。本研究の結果、
複数の分化段階の不死化肝細胞(IMH)を樹立することができた。この細胞を用い、
IF3遺伝子の発現を調べた結果、未分化な性質を示すIMHにIF3 mRNAを検出でき
た。
IF3は未分化な肝細胞で発現する遺伝子と考えられ、今後その機能を解明する
予定である。