石崎 勝彦 1、桑原 正樹 2、鳥橋 茂子 2、金井 克晃 3、國貞 隆弘 1
(1岐阜大学 医学部 組織・器官形成統御学部門、 2名古屋大学 大学
院医学研究科 分子細胞学分野、 3東京大学 大学院農学生命科学研究
科 獣医解剖学研究室)
マウス胚性幹細胞(mES cells)はin vitroで多種多様な細胞系譜へと分化誘
導が出来る全能性細胞である。我々はストローマ細胞株ST2を用いた共培養系に
より内側に単層円柱上皮と杯細胞等の消化管上皮特有の組織系を持ち、外側に自
発的運動の起源となるペースメーカー細胞を含む筋層組織系を持つ構造体を一個
のmES細胞から誘導する条件を見出した。今回、内胚葉特異的転写調節因子であ
るSox17の+/-ESと-/-ESを上記培養系において比較培養したところ+/-ESからは
低効率ながら誘導できる一方、-/-ESからは消化管様構造体を誘導することがで
きなかった。このことは我々の培養系が生体内で行われている消化管形成に類似
した形成過程を辿っていることを示唆するものでる。また、消化管は同心円状の
内側から粘膜・筋層・漿膜および外膜からなる。各組織系の区分けには上皮から
分泌されるSHH(ソニックヘッジホッグ)の濃度勾配が重要と考えられている。こ
のことに関しても我々はSHHの阻害剤であるシクロパミンを培養系に添加するこ
とで構造体誘導の障害となることを免疫染色で示唆することができた。以上の結
果から我々の分化誘導系は生体内で行われている消化管形態形成の良いin vitro
Modelであると考える。