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ヒトメラノーマ細胞の遊走能におけるVEGF-VEGF受容体系の機能
小泉 浩一、林堂 安貴、吉岡 幸男、新谷 智章、浜名 智昭、北
野 尚孝、越智 康、岡本 哲治
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 先進医療開発科学講座 分子
口腔顎顔面外科学)
Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)-VEGF受容体系は腫瘍性血管新
生を介して固形癌の増殖・浸潤・転移に重要な働きをしていると考えられている。
我々は、ヒトメラノーマ細胞株(SK-MEL-28, CRL1579, G361, HMV1, HMV2, MM)
においてもVEGF受容体が発現されていることを、125I-VEGF165を用いた受容体
結合試験およびRT-PCRを用いたflt-1、KDR遺伝子の発現により明らかにした。
これらのことから、VEGFはメラノーマにおいてパラクライン系を介した血管新生
促進に加え、オートクライン機構を介した浸潤・増殖に関与している可能性が考
えられた。そこで、ヒトメラノーマ細胞の浸潤・増殖におけるVEGF-VEGF受容体
の機能について解析した。 メラノーマ細胞の遊走能をBoyden Chamberの変法に
て検討したところ、VEGF165はケモタキシス及びケモキネシスを誘導することが
明らかとなった。また、この細胞遊走促進活性はVEGF受容体のチロシンキナーゼ
阻害剤によって抑制された。さらに、flt-1のisRNAアンチセンスオリゴを
SK-MEL-28細胞に導入したところ、同細胞のVEGFに依存した細胞遊走能のみなら
ずintrinsicな遊走能及び増殖能も完全に抑制された。 以上の結果から、ヒト
メラノーマ細胞の運動および増殖は、Flt-1を介してオートクラインあるいはパ
ラクライン的に制御されている可能性が考えられた。