O2-9 口腔扁平上皮癌細胞の浸潤増殖におけるインテグリンαvの関与

北野 尚孝、林堂 安貴、吉岡 幸男、小泉 浩一、浜名 智昭、岡 本 哲治 (広島大学 大学院医歯薬総合研究科 先進医療開発科学講 座 分子口腔顎顔面外科学)

インテグリンはαサブユニットとβサブユニットが非共有結合で会合するヘテ ロ二量体で、フィブロネクチンやビトロネクチンの細胞膜上の受容体として存在 し,細胞外基質蛋白への細胞接着や細胞遊走を制御している。特にインテグリン αVβ3は活性型MMP-2の細胞膜上の結合因子として癌の細胞膜上に活性型MMP-2 をとどめ、周囲の基底膜成分の分解を行っていると考えられている。今回、イン テグリンαV遺伝子導入による発現亢進が、口腔扁平上皮癌細胞の細胞外基質へ の接着と増殖に与える影響について解析した。さらにアンチセンス遺伝子導入に よるインテグリンαVの発現抑制が、口腔扁平上皮癌細胞の増殖に与える影響に ついても検索した。インテグリンαV高発現細胞はI型コラーゲンに対する細胞 接着が促進し、I型コラーゲン上での増殖能が亢進していた。またインテグリン αV高発現細胞はI型コラーゲンゲルへの浸潤能が亢進していた。これに対し、 アンチセンス遺伝子導入によるインテグリンαVの発現抑制は、扁平上皮癌細胞 の増殖能とコラーゲンゲルへの浸潤能を抑制した。以上の結果より、インテグリ ンαVは扁平上皮癌細胞のI型コラーゲンへの細胞接着を制御し、細胞増殖と浸 潤能を調節していることが明らかになった。アンチセンス遺伝子導入によるイン テグリンαVの発現抑制が扁平上皮癌細胞の増殖と浸潤能を低下させたことから、 インテグリンαVを分子標的とした扁平上皮癌の遺伝子治療の可能性が示唆され た。