S1-1 ヒト羊膜細胞の多機能と羊膜由来幹細胞について

桜川 宣男 1、横山 安伸 2 (1東邦大学 医学部 SRL代謝病再生医学寄付講座、 2(株)エス・アール・エル  顧客サービス部)

羊膜は羊水に接して子宮を裏打ちしている一層の細胞膜であり、羊膜上皮細胞層とその下層の羊膜間葉細胞層 からなる。発生学的には胚盤葉上層が2分して、栄養膜細胞層に隣接する細胞から羊膜上皮細胞(hAECs)が形成 される。我々はhAECが多機能、即ち種々の生物活性物質(acetylcholin, catecholamin, neurotrophic factors,activin, noggin, albumin, erythropoietin)を合成・分泌する機能を保持していることを報告してき た。そしてパーキンソン病モデルラットの脳内にhAECを移植し、症状の一過性の改善を認めた。またムコ多糖症 VII型のモデルマウスの脳内に遺伝子導入羊膜上皮細胞を移植し、脳内のムコ多糖の蓄積の消失を観察した。この ようにhAECはDDS (drug delivery system)として利用できる可能性を示唆した。一方、ヒト羊膜間葉細胞(hAMCs) は原始線条が陥入して形成される中胚葉細胞から発生し、いわゆる胚外中胚葉から由来する。我々はhAMCsに神 経プロジェニターの性質を保持する細胞の存在を見つけた。 マウス骨髄細胞を用いて、Hoechst 33342波長を暗 く発現している細胞集団が高い幹細胞活性を持つことが証明され、SP細胞と呼ばれている。最近、我々は羊膜間 葉細胞由来のSP細胞の分離・培養に成功した。そして増殖は極めて良好であり、報告されているヒト骨髄由来の SP細胞とは異なるphenotypeを示した。さらに未分化細胞維持に重要なOct 4およびその下流遺伝子の発現を証 明した。 これらの細胞はインフォームドコンセント施行して入手した胎盤より調整される。従って倫理的に問 題が少なく、供給は無限である。さらに本細胞は免疫学的に幼弱であり同種移植可能な細胞である。これらの利 点を生かすならば、レデイメイド型の再生医療が可能となる。