S2-5 研究開発型バイオベンチャーの事業戦略

祖父尼 俊雄 (株式会社ノバスジーン)

バイオの分野では、医療、食品、農業、水産、環境など、幅広い分野が対象と なっている。医療では、創薬(探索)、前臨床試験、臨床試験、市販後調査など、 様々なステージがあり、また、現在最も注目されている遺伝子治療や再生医療と いった切り口もある。さらに、技術を中心とした事業戦略も取りうる。ここでは、 一塩基多型(SNP)タイピングと遺伝子発現プロファイリング(マイクロアレイ) を主体とした事業戦略の一例として、(株)ノバスジーン(NGI)の事業戦略を紹 介する。NGIは、2001年2月にオリンパス光学工業(株)と三井情報開発(株) との合弁により研究開発型ベンチャーとして設立された。その後、三井物産(株) が資本参加している。オリンパスで培われた高精度の測定技術と三井情報で培わ れたIT技術を融合し、NGIではSNPタイピングと発現プロファイリングの受託解 析サービスを行っている。NGIで得られる顧客ニーズの情報を基に、オリンパス では測定技術の開発・改良を、三井情報では解析ソフトの開発・改良を行い、両 社で開発した新たな技術をNGIに導入するという循環型の技術革新を進める戦略 である。NGIの独自技術としてDNAプライマー・プローブ設計ソフトがある。こ れはその生物種のゲノム背景データを全て活用するもので、特異性の高いプライ マー・プローブの設計が可能であり、設計サービスのみの受託も行っている。SNP タイピングも独自技術である1分子蛍光検出法を用いており、SNPタイピングに 用いるSSP-PCRに必要なプライマーの設計にもこの設計ソフトを多用している。 さらに、この設計ソフトを利用して、標的遺伝子に特有のオリゴプローブを設計 し、オリゴマイクロアレイの製造・販売を行っている。新たな独自技術としてDNA コンピュータの開発を行っており、目下発現プロファイリンのための実用化を進 めている。このような独自技術を中心とする事業展開および今後の事業戦略につ いて紹介する。