細胞接着因子カドヘリンの自己免疫と皮膚疾患
天谷雅行:慶應大・医・皮膚科
約200年前より皮膚科領域において、強固な表皮細胞間接着が障害され略全身に水疱を形成し死に至る重篤な疾患が、天疱瘡(pemphigus)として記載されていた。1960年代に、この細胞間接着障害は表皮細胞表面蛋白に対する自己抗体が病因に関与していることが示され、1990年代に、自己抗体の標的抗原がクローニングされた。天疱瘡抗原は、細胞間接着に重要な役割を示すカドヘリン分子群に属するデスモグレインであることが判明し、天疱瘡の病態は抗カドヘリン自己免疫性疾患であることが明らかになった。
抗原蛋白のcDNAが単離されたことで、分子生物学的手法を用いて、精製度の高い抗原蛋白を大量に産生することが可能となった。組換え昆虫細胞を用いるバキュロウイルス発現系により、本来の抗原蛋白の三次元構造を保持した組換え蛋白が産生された。この組換え蛋白を詰めたカラムに天疱瘡患者血清を通すと、表皮細胞接着障害を誘導する病的活性を除去できることが新生仔マウスを用いた疾患モデルを用いて示された。このことにより、従来の血漿交換療法が血清中に含まれる血清蛋白をすべて除くのに対し、病的自己抗体のみ特異的に吸収除去できる抗原特異的血漿交換療法が理論的に可能であることが示された。さらに、組換え蛋白を抗原としたELISA法は、従来のヒト皮膚の凍結切片を用いた蛍光抗体法に比べ、より簡便で、特異度・感度の高い診断法であることが示された。
abstruct received by e-mail on March,12, 1997
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