マウス毛のうの形態形成機構
許 南浩:富山医薬大・医
組織構築の分子機構は、発生時の形態形成過程でその最もダイナミックな姿を現す。
従って、形態形成過程を解析することは、細胞の高次機能を理解するために非常に重要
であるが、哺乳類の発生は子宮内で進むため、その過程を経時的に観察したり操作した
りすることはこれまで困難であった。
我々は、12ないし13日齢のマウス胎児皮膚を器官
培養することによって、生体内と同様な毛芽(毛のう原基)の形成と表皮角化細胞の多
層化・角化を培養内で再現した。この培養系にEGFを添加すると、毛芽形成が特異的に阻
止された。すなわち、哺乳類の形態形成の一部を経時的に観察し操作することが可能に
なったわけである。
さらに、アデノウイルスベクターを利用して、培養皮膚組織中にあ
る細胞に、ほぼ100%の効率で遺伝子を導入・発現させることもできた。
表皮という二次
元平面上の毛芽の分布パターンを詳細に観察すると、その決定には特異な分子機構が働
いていることを推察させる。器官培養というやや古典的な培養法と分子生物学的手法を
結びつけることによってどのようなことが明らかになろうとしているか、ということも
含めて議論したい。
abstruct received by e-mail on March,10, 1997
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