1、皮膚ケラチノサイトの培養と培養表皮シート移植
橋本公二:愛媛大学医学部皮膚科学教室
培養表皮シート移植とは、小皮膚片を採取し、大量の表皮細胞を培養し、これを重層
化させて機能的な表皮を作成し移植する方法である。本治療法は表皮ケラチノサイト
の培養法を確立したグリーンによって臨床応用されるに至った。我々はMCDB153を基
本培地とした無血清培養法を用い、ヒト表皮ケラチノサイトを増殖させた後、10%FCS
を添加したダルベッコ変法イーグル培養液に変更し重層化表皮シートを作成している
。ディスパーゼにて表皮シートをプラスチック・プレートから剥離し、プラスチック
・プレートに付着していた面が創面を覆うように圧迫・固定を実施するが、この時支
持体としてベスキチンを用いている。
現在、患者自身の表皮ケラチノサイトを用いる自家移植を中心に先天性表皮水疱症、
下腿潰瘍、熱傷などの難治性潰瘍の治療に用いている。一度の採皮にて大量の表皮ケ
ラチノサイトが得られるため、液体窒素中で保存し繰り返し使用する細胞銀行システ
ムを採用しており、臨床的に満足すべき結果を得ている。しかし、さらに一般病院で
の使用を可能にするために、採取した皮膚片を4℃にて保存し冷蔵宅急便にて送付し
、作成した培養表皮シートを-150℃の超低温フリーザー中で凍結保存し、これを必要
に応じてドライアイス中にて冷凍宅急便にて送付するシステムの開発を行っている。
しかし、培養表皮シート移植普及の最大の問題点は高度先進医療などの医療システム
に如何に組み込んでいくかということに集約される。
培養表皮シート移植は、皮膚疾患の遺伝子治療の手段としても注目されており、この
点からは表皮ケラチノサイトのstem cell研究の今後の進展が待たれる。