日本における研究用輸入ヒト細胞利用の現状

伊井一夫、小澤康之、浅香勲、下岡正志
(旭テクノグラス,サイテック事業部,ライフサイエンスセンター)



ヒト組織・細胞の研究資源としての取り扱いについて、日本組織培養学会を中心として、倫理問題も踏まえた取り組みがなされています。

しかし、基礎研究、安全性試験等のためにヒト細胞を利用したいとの研究者の要望は増加しているものの、日本においてこれに対応した供給体制を作るにはなお時間がかかると思われます。

そのため、研究用についての供給システムができている外国からの輸入ヒト細胞に頼らざるを得ないのが現状です。

当社は、BioWhittaker社[Clonetics(R)]の正常ヒト細胞システム(NORMAL HUMAN CELL SYSTEMS(Tm))を輸入販売していますので、(1)米国でのドナーからの臓器・組織提供の受け方、(2)当社の倫理・安全問題の取り組み、(3)使用される研究者への注意事項等について話させていただき、倫理問題・安全に充分留意した輸入ヒト細胞の研究使用をお願いするとともに、米国のシステムを参考に、日本社会に合った、ヒト細胞の供給体制の確立に役立てればと考えております。

  1. 米国では、臓器ドナーカードに移植、治療用途と並んで、医学研究、教育用途についても同意を求めうる形式になっています。また、病院のIRB(Internal Review Board)での認可を受け、インフォームドコンセントをもらったうえで研究用への自発的提供者を求める道もあります。この内容は、プライバシーに係わる部分を除き、公開されており、これが倫理性への監視、保証となっているようです。

  2. 当社では、ヒト細胞の輸入販売、社内での研究使用につき、倫理・安全面での審査を行う委員会を設けています。主眼目は、ヒト組織・細胞の提供者の人権(インフォームドコンセント、プライバシー)が供給元で守られていることの確認、また取扱者への安全確保が充分かを監査することです。

  3. また細胞製品には、倫理面、安全面での注意事項を独自に添付しています。しかし、最終的には、御使用される研究者の皆様に倫理面、安全面での責任をもっていただかざるを得ません。この点充分ご留意のうえ、御使用下さい。

Status of Use for Research of Imported Human Cells in Japan
Ichio II, Yasuyuki OZAWA, Isao ASAKA, Tadashi SHIMO-OKA
(Life Science Center, Scitech Division, Asahi Techno Glass Corp.)

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旭テクノグラス株式会社 サイテック事業部 伊井一夫
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