【勝田班月報・6003】
《勝田報告》
A)サル腎臓細胞の栄養要求
成サルの腎臓細胞(皮質部、おそらく上皮細胞)のprimary
cultureについて、栄養的面よりみた基礎条件を検討してきたが、最もおどろくべきことは、成動物細胞、少くともこのサル腎臓細胞の増殖には鶏胚浸出液が不要であるということで、胎児組織細胞との間に高分子要求に判然とした区別のあることが判った。これによって、今后、成体と胎児の細胞の間の栄養要求も今后追求して行かなくてはならぬことがはっきり示されたし、鶏胚浸出液をマウスの皮下に接種してもそこにセンイ芽細胞の増生が惹起されぬ理由ものみこめたのである。
用いたサルは予研多ケ谷研究室より分与された成サルで、腎臓の皮質を細切し、トリプシン処理をおこなうが、多ケ谷研究室では冷蔵庫中で一晩処理する由であるが、我々は0.25%PBS溶液(DIFCOのtrypsin、pH=7.6)で、初め室温1時間magnetic
stirrerで処理し、出てきた細胞はすてる。次に15分宛かけて、遊離した細胞を氷冷中に保存し、3〜4回くりかえした后poolした細胞をまとめて遠沈にかけ塩類溶液で洗い、培養に用いる。培養法はsimplified
replicate tissue culture methodである。培養に用いた基礎培地は、牛血清5%、ラクトアルブミン水解物0.4%、塩類溶液(処方D)である。
1)牛血清の至適濃度・・・この細胞の高分子要求度は低く、5%血清が至適であった。この培地での7日間の増殖率は18倍。
2)Lactalbumin hydrolysateの至適濃度・・・血清のある場合も無い場合(PVP
0.1%加)もO.4%が至適で、7日間で前者では22倍、后者では5.7倍の増殖が得られた。
3)PVP(分子量70万)の至適濃度・・・牛血清5%存在下では0.1%PVP添加が最も増殖を促進し、7日間で16倍。無蛋白の場合にも0.1%PVPが至適で7日間で4.3倍の増殖をみた。
4)牛血清の透析・・・この細胞の増殖にはやはり内液が必須であることが示された。
5)牛血清蛋白至適濃度・・・上記の透析内液を各種濃度に培地に加えてみると、10%が至適であった。
6)PVPの血清蛋白置換率・・・0.1%PVP添加培地に各種濃度に牛血清透析内液を加えてみると、2%加えた場合に10%牛血清透析内液のみを加えた対照群と略同等の増殖率を示した。即ち、0.1%PVPの存在は必要とする蛋白の80%容を置換し得る能力のあることが判った。
7)Yeast extractの影響・・・培地にyeast
extract(DIFCO)を加えると反って増殖が抑制された。0.04%ではまだcontrolより少し劣る位であるが、0.08%では殆ど増殖が起こらなかった。
8)鶏胚浸出液の影響・・・5%及10%の2種に加えてみたが両群とも培養の初めから急速に細胞が破壊され、7日后には両群とも細胞数が0になった。これはラッテ腹水肝癌細胞に於て見られた現象と似て居り、鶏胚浸出液の存在を必須とする胎児細胞と、根本的に異なる点の一つであろう。そして、あるものでは20倍以上にも(7日間)増えている、ということは、この知見が確かなものであることを示していると思われる。
しかし生体のなかでは、この場合の培地と同じような組成の栄養物が体内を廻っている筈であり、してみると、生体内で増殖が滅多に起らないのに、この培地で盛に起るのは、ごくわずかな低分子物質が関与しているのかも知れない。低分子物質となればその解析、追求ははるかに高分子より楽であるから、成体細胞の増殖機構の解明は胎児細胞よりもきわめて容易に、近い将来に、なしとげら得るものであるかも知れぬ。しかしこの場合にあくまで考慮しなくてはならぬことは、生体内に於てのみ発現する抑制物質の存在の可能性である。また成体細胞のなかでは腎細胞が最も培養の容易な点よりみて、抗癌物質のin
vitroでの検定の際の、副作用の試験に用いるのに、この成体腎細胞のprimary
cultureが最も適しているのではないかと思われる。
B)サル腎臓細胞の無蛋白培地内株化の計画:
さきに屡々記したようにin vitroで長期継代中に正常細胞が腫瘍化してしまう一つの原因として、anaerobicの培養環境と、培地内血清蛋白の影響がかなり重要なものであろうと指摘し、初めから無蛋白培地を用い、しかもなるべく好気的な環境を与えることに依って、腫瘍化さない細胞株が得られるのではないかと推定し、サル腎臓細胞についてこれを試みているのであるが、7月4日に培養に移した細胞系が下記の如く今日までつづいて居り、盛に増殖をつづけて居る(率は低いが)ので、株化の見込は大きいと思われる。
第1代:昭和35年7月4日、三角コルベン2ケ(100ml1ケ及300ml1ケ)、TD-40瓶1本に培養した。300ml三角コルベンは7月18日に希薄のtrypsin溶液を用いて継代を試みたが、以后の増殖が見られなかった。EDTAはその前に試用してこれもうまくないことが判っていたので、以后の継代法はもっばらピペットの先でかき落し、それを軽くpipettingする法をとることにした。
第2代:(1)7月31日にTD-40瓶より、一部をかき落し短試2本へ(直立)
(2)8月13日 100mlコルベンより一部をかき落し短試2本へ(直立)
(3)8月22日 100mlコルベンより一部をかき落し短試6本へ(直立)
第3代:8月27日、第2代の(2)をTD-15・1本へ移す
上記のように初代の一部だけを落して継代しているので、初代もまだ残っているがかき落したあとにはすぐにまた細胞が増生してくる。継代した方がきわめて順調に細胞が増えている。無蛋白培地はPVP
0.1%+ラクトアルブミン水解物0.4%+塩類溶液
C)その他
サル腎臓の他に、ウマの腎臓についても血清培地と無蛋白培地で株化を試みている。また発癌実験に便利のようにJAR系ラッテの腎臓についても近日中に同様の試みをはじめる予定である。その他の細胞についての研究業績は次号に於て発表することにする。
《遠藤報告》
A)HeLa株細胞に対する各種ホルモンの影響の生化学解析(2)
前月の研究連絡月報で、HeLa細胞の増殖に対するAndrogen、Estrogen及びGestagenの影響をLeucineaminopeptidaseの面から調べてみたいということを述べました。
しかし前月の報告に関する限り、全く他人様の報告からだけ出発したspeculationで内心これでHeLa細胞にLeucineaminopeptidase活性がなかったら引込みがつかないなと心配だったのですが、先日伝研組織培養室で血清培地を用いて培養したHeLa細胞1500万個を頂き、そのhomogenate上清を基質(L-leucyl-β-naphthylamide)溶液とincubateし、遊離されたβ-naphthylamineを呈色させて比色定量するという通常の方法で予試験をおこなったところ、HeLa細胞は予想以上に強い活性を持つことが確認されました。Growing
ratの各種臓器については、すでに調べてありますが、その中で活性の強いものの一つである肝臓を上廻るほどであります。
現在の所想定した酵素活性の存在を定性的に確認しただけで、これが果してホルモンの処理によって変動するかどうかは今后の本実験によるわけですが、自分勝手なspeculationもさして間違っていなかったらしいと、ほくそ笑みながら9月以降の実験に腕を撫しているところであります。
B)HeLa株細胞の増殖に対する合成黄体ホルモン作用物質の影響
前月の報告のB-1)で、最近繁用されているtestosterone誘導体に属する合成黄体ホルモン作用物質がHeLa細胞の増殖に対してどんな影響を及ぼすかということは、臨床的にまで関連して興味ある問題であると述べましたが、伝研組織培養室ではここまで手がのばせないとのことなので、この面も私たちの所でやらせて頂くことにしました。
現在testすべき物質を集めて居りますが、すでに二、三手に入りましたので、これも9月から着手する予定であります。
[質問]私たちは血清として“日本薬局方・健康人血清(乾燥)”を使おうと思って居りますが、どんなものしょうか。
《高野報告》
A)培養細胞株の凍結保存
現在までに手持ち約20種の細胞株をほとんど全部凍結に移した。HeLaおよびKBのLh-人血清培地継代株は凍結したが、Lh-牛血清およびTPB-人血清継代株はまだなので、HEp#2と共に準備中。
a)マウス由来細胞凍結条件としてGlycerolの濃度については近々1ケ月目のdataをとる。 b)HeLaにつき100万個cellsを1mlの浮遊液として、容量2.5mlのアンプルに入れる場合と、0.5mlにして入れる場合とで、保存1ケ月目に両群それぞれ3本宛アンプルを開き、全内容を1mlの新鮮培養液に再浮遊し、角tube1本宛に分注して培養を開始した。融解−再浮遊時の生細胞算定(Nigrosinによる)では1mlの方が生細胞多く、培養4日后にEDTA処理で調整した浮遊液中の生細胞数も大体その傾向を維持した。
この4日后の浮遊液をそれぞれ角瓶1本宛に移し、培養続行中。4ケ月后のdataをとった上でなければ結論はでないが、1mlの方が保存良好ときまれば、操作上都合が良い。
c)凍結細胞の炭酸ガス-incubatorでの培養:従来凍結保存を終了し、細胞を再び培養に移す場合は上述の要領で行なっていたが、数種の株、殊に凍結時の細胞数がやや少なかったものや、アンプル数の不足で慎重に扱わねばならぬものについて、融解后4mlの液に浮遊し、それぞれ1枚宛のシャーレ(径6cm)に入れ、炭酸ガス-incubator内で培養した。増殖状態は以前の方法より良好な様であるが、定量的に比較してないので、再検討の要がある。
B)RAT LIVER由来細胞(JTC-6)のhydroxyproline産生(伝研組織培養室との共同研究)
No.6002に、細胞増殖に伴うhyproの産生は終始略一定値を保つ事実を再確認する一方、接種材料中のhypro量が高いことを報告し、trypsin処理の影響をしらべる必要を述べた。その后trypsin処理と機械的剥離とでhyproの含有量に余り差のないことを確かめると同時に、前回の接種材料ではNigrosin溶液と等量混合して材料中の生細胞数算定を行なった際の稀釋率を計算に入れるのを忘れた事実が明らかとなった。つまり前報の接種材料についてのHypro含量0.001μg/1000cellsは実際には0.0005μg/1000cellsが正しく、接種材料が特にHyproが高い訳ではなかった。(どうもお恥しいmistakeです。しかし実験中のprocessや時刻を如実に記しておくwork
sheet systemのお陰で誤を正せたのはせめてもです。自慢にもなりませんが。)
C)抗細胞免疫血清による細胞障害作用
a)抗マウス細胞(L)血清及び抗ラッテ細胞(JTC-6)血清のヒト細胞に対する作用をみるべくHeLaで準備中。以前のdataが確かならCPEは出現しない筈。
b)抗血清による細胞障害作用発現の経時的観察
保温装置つきの撮影セットができたのでJTC-6が抗血清で障害される経過を位相差で追究した。抗血清添加后同一材料を継続観察すると、形態的変化は約2時間后に出現しはじめる。独立して存在する細胞は収縮した后に爆発的に破壊され、細胞質物質が遊出する。他の細胞と密に近接した細胞は収縮しないまま内部構造が変化する。
抗血清添加后経時的にNigrosinを加えて観察すると、上記の収縮破壊される細胞は染色されるが、収縮しない細胞は2時間の観察では染色されなかった。収縮できない条件にある(恐らく単純に物理的な意味で)細胞の変化が細胞に及ぶのが遅延するためか、或は相互に接着した状態の細胞膜は透過性が変化しにくいのか(Nigrosinは本来細胞浮遊液に用いる)今后検討する。
(浮遊状乃至孤立した細胞の方が、壁面に伸びた細胞より表面が密になり易く、色素蛋白をとりにくいと思うのですが、どうでしょうか?)
D)培養細胞のToxohormone作用(癌研・大橋氏との共同研究)
これは以前からの継続(断続?)実験。HeLaの培養上清にToxohormone作用のあることは一応確かめたが、培養液対照殊にLact.hydro.が時によって不定の態度をとるので、中断していた。今后はHenleの小腸細胞を材料にヒト血清(20%)、Hanksのみの培養液で継代し、その上清を凍結保存し、測定材料を調製中。従来の肝Catalase法に替えて血漿鉄法によって測定する予定。
E)Ehrlich腹水細胞抽出物添加によるL細胞の悪性度の促進
Cancer cellの特殊成分、特にDNA・RNAによる正常細胞→悪性細胞transformationが実現すれば癌性変化の機序に一知見を加えるものであるが、正常→悪性の前段階として、或程度Malignancyを有すると認められしかもHost
rangeの狭いL株を材料としこれが同じマウス由来のEhrlich腹水癌の細胞抽出物(これも前段階としてcrudeのまま)によってtransformして、他系マウスに感受性を有する様に変化するか否か試みる。目下腹水を大量に準備中。
《奥村報告》
A)HeLa株細胞の遺伝学的性質
1)蛋白培地継代による・・現在まで各研究室で継代されてきたHeLa細胞の染色体構成を折にふれ検討してきたが、この細胞はまことに不安定きわまりないことが明らかになった。まず第1にHeLa細胞は染色体分布範囲が非常に広い。即ちばらつきが大きいことである。いずれの研究室のものでもhyper
diploidからhyper tetraploidまで分布して居る。第2、同じ染色体数をもった細胞群の中に幾種かの核型が存在していることが特徴で、このような現象は細胞遺伝学の立場から考えて、HeLa細胞を種々の実験に用いるのはあまり望ましくない。特に細胞の遺伝性と関連性のある研究は考慮を要する。従って若し用いる場合はPuckなどがしているように、Clone
formationをおこなって、性質の明らかな細胞群を実験対照とすべきであると考える。第3に伝研組織培養室で現在継代されている無蛋白培地でのHeLa株細胞は血清培地に比較してかなりばらつきが少くなっているので、我々の実験に供するに非常に意義深いと思う。
2)無蛋白培地継代による・・前々報ではHeLa株細胞の無蛋白培地継代による染色体数分布の範囲の狭小を報じたが、現在まで数回samplingして観察してきたが、やはりこの現象は維持されている。また血清培地で最も優勢を示していた細胞群が減少して、これよりも染色体数2〜3本減少した細胞群が無蛋白培地で最も高い増殖率を示してかなり安定してきている。ただ核型分析の結果からみると、染色体数が同じでも型の異なったものがL株細胞などよりはるかに多いようである。これらの核型の最終的決定を現在行っているので近い内に報告するつもりである。
B)サルの腎細胞の培養による染色体研究
今月から伝研で継代しているこの細胞の培養継代に於ける染色体の分析を着手しているが、現在のところmitosisがなかなか見当らないので専ら標本作りに懸命です。今まであまりサルの培養細胞の遺伝性を追究した仕事がないので、今后大いに張切ってやって行く決心です。次の号には分析結果をある程度報告できるものと思います。
《高木報告》
1)MY肉腫から抽出したDNP、RNP及びwhole
microsomeの培養細胞に及ぼす影響
前報につづきDNP、WMは28日間、RNPは18日間培養細胞に作用させ、最后の1週間は80%LYH+20%牛血清培地に戻して培養を続け、前2者は培養35日目、後者は25日目で固定しGiemsa染色を施して観察したが、形態的に著明な変化は認められず、DNPでは120μg/ml、WMでは85μg/ml以上、RNPでは93μg/mlにおいて細胞の生え方が疎となり、またfibrousな感が強く思われたに止まった。
以上の実験は培養5日后、即ち細胞が或程度増殖してから作用させたものであるが、第2回の試みとして、MY肉腫から抽出したRNAをマウス胎児皮筋組織の培養と同時に作用させた場合についてその影響をみた。
(1)RNAの抽出法は今回は次のごとく行なった。
1)細胞質蔗糖液を得るところまでは月報6001に記したのと同じ。
2)氷冷下にこれにトリクロール醋酸を6%になるように加えて、蛋白、核酸、脂質などを沈 殿させ、
3)その沈殿をアルコール、エーテルなどで数回洗って脂質を除く。
4)1M食塩水を加え、70℃に30分おきRNAを抽出。
5)抽出されたRNAをアルコールで沈殿させ、次いでエーテルで洗い、一夜吸収乾燥させて エーテル分を除く。
6)これらを再び蒸留水にとかしてRNA水溶液として用いる。
(以上の方法ではRNAが低分子化してtransforming
activityが失われるおそれがあるので、今后はフェノール法に変更する予定)
(2)培養法は前報の通りである。培養と同時にRNA
176μg/ml及び88μg/mlを培養液に加えてその影響を観察している。
培養7日目及び14日目では増殖した繊維芽細胞に著明な形態の変化は認められない。但しやはり前回の実験同様、細胞のfibrousな感が対照に比して強く、また176μg/mlにおいてより強く思われる。細胞の増殖状態は良好で、発育抑制作用は見られないようである。10日目にredosingしてなお観察中である。
繊維芽細胞は培養条件によりかなりいろいろな形態を呈するので、RNAのこれに及ぼす影響を見る場合、形態的な変化だけを求めたのでは判定が困難である。そこで免疫学的にもこの変化を追ってみたいと思って居る。発癌による細胞の抗原性の変化についてはさきにWeiler等による有名な仕事がある。即ち彼は蛍光抗体を使ってDAB肝癌の発癌状態を追求し、その過程に於て形態的な変化をきたす前にすでに免疫学的に正常細胞としての抗原性が失われることを報じ、さらにStilboestrolによるハムスターの腎臓癌についても同様のことを観察している。
培養したマウス皮筋組織の繊維芽細胞がMY肉腫からのRNAに影響されて何らかの免疫学的変化をきたし、元の組織の抗原性を失うことも考えられる。但しこれは無理にRNAなど作用させなくても、細胞を長時間in
vitroで培養しただけでも起り得るかも知れないが・・・。
対照を充分においた上で、1ケ月間MY肉腫よりのRNAを作用させた培養細胞に、もとのマウス胎児皮筋組織の免疫血清を作用させ、抗原性の変化が見られるか否か、蛍光抗体により追求してみたいと思う。目下ddNマウス胎児皮筋組織の免疫血清を作っている。
2)MY肉腫よりのDNPをddNマウスに注射した場合の影響
(1)まず試験的にMY肉腫よりのDNPをTyrode液にとかして45μg/0.4mlをddNマウスの腹腔内に3日間連続注射し、注射后4週間后白血球数をしらべたが(先述の如くMY肉腫の移植ではddNマウスに類白血病様反応が起る)。Tyrode液のみ0.4ml注射した2疋の対照マウスでは白血球数は不変であるのに対し、注射群の4疋中1疋にやや白血球の増加が認められた。
(2)そこで次に1群5疋のddNマウスに、ddNマウス正常肝より抽出したDNPのHanks溶液45μg/0.5mlを連続4日間注射して、他群5疋には前回同様MY肉腫より抽出したDNPのHanks溶液40μg/0.5mlを連続4日間注射して3週間白血球数の変動を観察した。なおこの各群には対照としてHanks液だけの注射群3疋宛をおいた。その結果正常肝DNP及びHanks液注射群では白血球数に変化はみられず、MY肉腫DNP注射群において5疋中1疋だけにやや白血球の増加(45,000)がみられた。
このやや増加を示した1疋が有意であるかどうかは疑問であるが、塩溶液にとかすとDNPは粗な線状沈殿となるため、濃度が不平等に注射されることも考えられる。そこで蒸留水にとかした均等のままの状態で45μg/0.3ml
4日間連続注射して観察中であるが、現在までのところ白血球数の増加はほとんど見られない。
3)免疫に関する研究
(1)JTC-4細胞ともとのWistar系ラッテの心臓組織との免疫学的なつながりを交互的に検討すべくラッテ心臓の免疫血清を作っている。JTC-4細胞はsuckling
ratの心臓から分離された株細胞であるから、まずsuckling
ratの心臓で免疫を試みたが、何せ小さいために思うにまかせず1回の免疫に15疋位使ってもなお不充分であった。そこでこの家兎は1回の免疫に止めて、別にadult
ratの心臓で免疫を開始した。即ち3疋のadult
ratの心臓を集めて乳鉢ですりつぶし、これに生理的食塩水を50%の割になるように加えてemulsionとし2,000rpm5分間遠沈してその上清1ml(蛋白含有量約10mg)に対して約1.5mlのFreund'adjuvantを加え、水中油滴の状態として家兎の臀部に筋注した。現在までに1週間おきに3回注射した。 (2)ddNマウス胎児皮筋組織の家兎免疫血清を作るべく、出産間近いマウス胎児8疋からできるだけ皮筋組織をきりとり、これをすりつぶして、これに50%の割になるように生理的食塩水を加えてemulsionを作り、その遠沈上清2mlを得た。これを2回に分け、1ml宛adjuvantと共に家兎の臀筋に注射免疫している。
編集後記