【勝田班月報:6106】
《勝田報告》
A.肝細胞の培養と発癌実験
当室で純系化しつつあるラッテJARの肝臓実質細胞をまず4ニトロキノリン系の物と、更にDAB系とでin
vitro発癌させようという目的であるが、これまで成ラッテ肝のReplicatecultureをやったことがないので、まずその至適条件を決めるため、発癌実験の準備と併行して、Replicate
cultureもやる準備をすすめています。鶏胚心センイ芽細胞のときと同じように、肝組織片を細切してRoller
tubeにつけ、migrateしてくるのを集めて実験培養に入れるのと、組織片をaseなどでばらして直接実験培養に入れるのと、2法が考えられますが、成ラッテでは后者の方法ではかなり強力にaseを使わないと細胞が単離されてきませんので、やはり細胞に対する障害が強すぎます。そこで現在は前者の方法を用い、5日間(20%BS+0.4%Lh+SalineD)の培地で母培養し、aseを用いずにrubber
cleanerでかき落し、80と150メッシュを通しました。この方法でかなりきれいな肝細胞の単離ができましたが、どうも間質細胞のゴミが多くこれには困っています。第1回はyeast
extractやchick embryo extractの添加の影響をしらべています。次に発癌実験は、Roller
tubeにつけた肝組織片培養に4ニトロキノリンを加える実験をはじめました。4ニトロキノリンは水にとけないのでアルコールで10-2乗M液を作り、これをD液で稀釋し10-8乗M液を作りました。10-6乗M以上だとすぐ細胞がやられてしまいますので、10-8乗M〜10-9乗Mのレベルでまずやって見る予定です。滅菌はアルコールで処理することだけなので、その点はいささか心配なのと、使った器具などの後の処置をきちんとして、他の培養は勿論のこと、人間の手に触れたりしないようにしなくてはなりません。この薬品はきわめて作用が強く10-8乗〜10-7乗Mで1日で細胞に変化が起るからです。来月号の月報には色々と御報告するデータが出ることと思います。培地は第1回は上記の血清培地を用います。
B.サル腎臓細胞の無蛋白培地培養
昨年7月4日にサルからとってすぐPVPの無蛋白培地に入れた群が、はじめは少し増えていましたが、その后とんと増えなくなってしまいました。しかし面白いことに1年経った今日でもきわめて健康な外見を示し、生きつづけているのです。ですからこの培地による培養法は発癌実験に用いるのにまったく最適と云えると思います。何年生きつづけるか、とにかくずっと続けてみますが、現在培養はroller
tubeに2本と短試に5本あります。
今月は報告はこれだけです。この他伝貧ウィルスの仕事も若干ありますが省きます。高岡君がAppeで入院したり休養(ごく短期間ですが)していた余波ですが、たまにはこんなことも良いでしょうし、仕事を発癌に切換えるのに好適でした。無蛋白のsublinesが一時そのため具合が悪くなったからです。
《高木報告》
1.in vitroにおける発癌実験
agent:
1)AH-130腹水肝癌及び正常ラッテ肝より抽出したRNAをSeitzで濾過滅菌して用いる。
2)発癌物質としてDABをTween20にとかし、更にTyrodeにとかしたものを間歇滅菌して用いる。Stilboestrolは未だ入手出来ない。
細胞:
一応JTC-4細胞を用いる。追ってprimary cultureの細胞も用いたい。
培地:
agentを作用さす際にはPVP+LYT培地を用いる。但し、これでは細胞が長期間の培養に耐え得ないので、時に20%BS+80%LYT培地に戻して適当に継代しなければならない。
実験:
RNAを作用させ始めてから3週間位になるが、やはりPVP+LYT培地を用いるせいか、細胞の増殖は可成り落ちる様である。
またJTC-4細胞に作用させるDABの濃度を検討した処、大体0.1μg/ml位が適当と思われたので、この濃度で実験してみたいと思っている。一先ず2ケ月位間歇的にこれらのagentを作用させ、irradiated
ratに復元して対照とその成績を比較してみたい。
2.JTC-4細胞のウィルスに対する感受性
先にpoliovirus各型について感受性を調べてみたので、今回は日本脳炎ウィルス(G1株)について検討してみた。培養4日目の細胞を用い、培地をPVP+LYTで交換してこれに脳炎ウィルスを入れ、4日目毎にその培地の遠沈上清で次代の細胞に継代し、その都度マウスでウィルスのtitering(LD50)を行った。
その結果は(図を呈示)、大体4代、16日間に亙ってウィルスを維持することが出来た。対照の、細胞のない培地丈の中にウィルスを入れたものでは1代、4日後にはすでにウィルスは証明されなかった。なお細胞に予めcortisoneを作用さしめておいた場合に、細胞のウィルスに対する感受性に変化がみられるか否か検討するために先ずcortisone
acetateの諸細胞に対する抑制効果をみた。
その結果各濃度の細胞数は(表を呈示)、JTC-4細胞は200μg/mlでもやや増殖を示し、繊維芽様細胞であるに拘らずcortisoneに可成り強い抵抗を示すことが分った。
従って本実験には大体100μg/mlのcortisone
acetateを作用させて細胞を予め培養し、これにpoliovirusを入れてその感受性につき検討したいと思っている。
《高野報告》
培養細胞の動物への復元
細胞が悪性であることを確める最後の決め手は、今のところ実験動物への復元による増殖様式が悪性を思わせるものであり、更に宿主動物が腫瘍死をとげるに至って最終的に証明されることになります。勿論この場合でも確実に腫瘍死である証拠が必要です。
動物への復元の条件を予備的に検討する為、手許の細胞株を用いてマウス、ラッテ、ハムスターへの接種を行っています。動物への接種及び組織像の判定は同室の浅野正英君が分担。Foleyによって100万個接種すると正常細胞でも一応腫瘤を形成し、1万個で或る程度の発育を示すものが悪性であるという基準が示されていますが、未だ始めの段階なので細胞数は比較的多くし、動物にはγ線照射及びcortisone投与を施しました。
現在結果の得られたのは(表と写真を呈示)、a)HeLa(母培養)は之だけでは何ういう種類の細胞か判定出来ない像を呈しますが、他とは明らに異り、b)LI(changのliver)は細胞索状の配列を示して肝細胞らしい顔付きを見せ(PAS陽性)、c)JTC-6-d(JTC-6から分離したcolonial
clone)は血液腔を形成する傾向を見せて内皮細胞を思わせます。形態だけでの判別は不確かですが3者が3様の姿を見せることは事実で、もう少し種々の材料による検討を重ねようと思います。
接種の条件は、Co60γ線800rを照射したハムスターの両側頬袋に0.5mlづつの細胞浮遊液(細胞数は材料により異る)を接種後、25mg/mlのcortisone
0.3ml(1回量)週に3回皮下注射して適時観察(エーテル麻酔下に引出して観察)必要に応じて標本作製。
編集後記