【勝田班月報・6210】
《勝田報告》
A)発癌実験:
先月号に報告以后の実験の結果を記載する。組合せはすべて正常ラッテ肝とDAB。1962-10-9現在である(表を呈示)。
C-21、C-22の頃はRatの手頃のがないため、実験をやらぬよりはダメ押しでも、とこんな老齢のを使い、生えの悪いことを再確認した。その后また生れてきたので、Exp.C23からは若いratを使いはじめた。C23、C24ではきれいに有意の差が出ている。C25は2群作って、第1群はこれまで通り4日間DABを与え、第2群は半分の濃度でずっと継続的に与えることにした。C25、C26ははじめてまだ日が浅いので、増殖には至らない。C26は形態学的観察のために、Roller
tubeにタンザクを入れ、その上に植片をのせて培養した。
DABを短期間隔で反覆与える実験は、C23でおこなっている。各周期10日間、つまり4日間DABを与え、6日間休み、また4日間と、これを繰返す。現在第2回目が終ったところであるが、2回目をかけなかった群と差が見られるに至っていない。
[復元接種]先月より3回おこなった。
1:1962-9-22: C6(2-4培養開始)の実験群を1月のratの門脈に約100万個注入したが、現在までのところでは変化は認められない。これはいわば予備実験で、門脈への注入法のコツが若干判った。
2:9-28: C17(7-9開始)の実験群細胞を約10万個、1月ratの大腿皮下に接種。これも今日までのところ変化がみられない。
3:10-5: C17は7-27にも生后4日ratの脳内に約10万個注入して腫瘍を作らなかったが、ここでまた10万個を7月ratの門脈に注入。まだ数日しか経っていないが、今のところでは手術の経過も良好で、ratは生きている。今后は段々と若いratの手術になれるように努める予定。
B)Parabiotic culture:
C6の実験が株化したことは前号にかいたが、それを使って、正常肝との間にAH-130のような特異的相互作用を惹起できるかどうか、parabiotic
cultureでしらべた(表を呈示)。 この株を仮にRLD-1と呼んでいるが、結果は上の通りで、RLD-1の増殖率は7日間で約4.6倍、正常肝とのparaでは約6.1倍と、明らかにparabioticでは促進されている。しかし正常肝の方は殆んど抑制も促進も受けない。つまり一方的な作用だけで、AH-130のときのように、積極的に正常肝を阻害する、という作用が見られない。別の考え方をすれば、細胞レベルでは悪性とは云えないらしい、といういうことである。なお念のために正常肝同志をparabioticでしらべてみると、これは全く、単独培養と同じように相互作用のあらわれは全然認められなかった。つまり“RLD-1"は正常肝とはちがっているが悪性細胞にはなっていないらしい、ということである。RLD-1の染色体数は目下しらべているところであるが、38〜40本というところが多いようである。(Ratの正常数は42本)
C)Lactalbumin hydrolysateの製品むら:
最近三光純薬で小分けして売ったControl No.3126の製品がどうも細胞によくないらしいのでreplicate
cultureでしらべた。#1491は前からの良いものである(表を呈示)。
製造元は勿論NBC社。L・P1、L・P4の何れに於ても#3126は細胞増殖が悪い。そのあと輸入された#3136は元封のままのポンド瓶であるが、L・P4でしらべると、#1491よりもむしろ良い位で、これなら安心して使える。なお、#3126でも細胞の硝子面への着き方には変りはなかった。以上、為御参考。
D)正常・腫瘍細胞間の相互作用−特にカタラーゼ活性に及ぼす影響について:
Parabiotic cultureした正常肝とAH-130について、夫々のカタラーゼ活性を定量した。夏休に学生がはじめたものを、関口君がひきつづいて精密にしらべてくれているのである。概略の結果はPara-cultureにより明らかに正常肝のカタラーゼ活性は激減する。AH-130の方はほとんど変化しないか、ときに(どういう訳かは今后の問題であるが)少し増える(表を呈示)。
なお予備的実験として、肝homogenateを4℃24時間保存して活性を測ってみたが、これは変化がなかった(15.7→14.0、7.2→7.1の程度)。また同一肝材料を培養とともに追うと、0日(12.7)、1日TC(6.1)、2日TC(5.3)、4日TC(2.8)と明らかに低下して行った。
《高木報告》
1)発癌実験
前報にのべた◇C12、◇C12'及び◇13の実験で一応periodを打つ積りであったが、培養17〜18日目に中検廻転培養のaccidentにより、夜中に温度が60℃に上昇し、ためにこの培養は一挙に駄目になりました。
誠に残念です。この実験は渡米しましても、若し許されるならばつづけてみたいと思っています。なお前につづき
◇C9
1)11日目に2代目に継代したものでは、4代継代後34日目に更に5代へと3本から1本に継代しました。しかし細胞増殖は次第に悪くなり、現在F細胞がかろうじてtubeにくっついている程度です。
2)14日目に2代目に継代したものでは、4代継代後26日目に5代へと6本から4本に植つぎました。これも現在細胞増殖は不良です。しかしこれらの実験で、兎に角Stilb、作用群において明らかに対照群より細胞の増殖がよく、長期間継代出来たことは注目に値すると思います。
2)その後、HeLa、FL、Chang肝、JTC-4、JTC-8及びL細胞の家兎免疫血清について、ラッテ、正常ヒト及び癌患者O型、馬の血球を用いて凝集反応を行いました。
これを総括すると次の如くなります。
免疫血清\血球正常人O型 癌患者O型 馬 ラッテ
マウス
抗HeLa 3 7 0 1 1
抗FL 5 7 0 1 1
抗Chang 6 7 3 2 0
抗JTC-8 5 7 0 1 1
抗JTC-4 1 0 4 2
抗L 0 0 0 3
ここに血清稀釋は20倍に始って倍数稀釋で5120倍まで行ってあり、表に示す数値は、免疫前家兎血清と免疫後家兎血清とを用いて、各血球が凝集を示した試験管の本数の差を示すものです。
大体3以上を有意とみてよいのではないかと思います。大体においてspecies
specificityを示している訳ですが、ここで問題となる処が2、3あります。
まずJTC-8細胞が人O型血球に対して有意の凝集を示していることであります。JTC-8細胞は本年4月より6月にかけて家兎に免疫を行い、免疫終了直後6月に行ったtestでは、人血球を凝集しておりません。これが本当だとすると血清がstock中に変化(?)したと云うことになりますが・・・、もう一つ考えられることは、私共の処で培養中にhuman
originの株細胞とcontaminationをおこしたか・・・と云うことです。この血清が当然凝集をおこすはずの馬血球に対して陰性であったことは、この後者の可能性を示唆するものかも知れません。いずれにせよ、もう一度伝研からJTC-8細胞を頂いて検討してみたいと思います。
次に気付いたことは、大体同一条件で実験したに拘らず、一般に癌患者の血球の方が正常人血球よりも高いtiterを示していることです。そしてその差(titerの)はHeLa免疫血清>FL免疫血清>Chang肝免疫血清となっております。勿論この一回の実験ではまだものは云えない訳ですが、今後更に実験を繰返して若しこの様な事実がconstantに示される様であれば、注目すべきことではないかと思います。更に正常動物血球と共に担癌動物血球をも用いて比較検討してみたいと思います。
また抗Chang肝血清が馬血球に3程度の凝集を示しているが、これは更に吸収試験の必要性を物語っているものとも思われます。
以上もの足りない月報ばかり書いて来ましたが、一応今月を以て中止させて頂きたいと思います。私のする仕事が少しでも班員各位の御役に立つ様に渡米後も頑張りたいと思います。皆様の御健闘を御祈りいたします。今後共よろしく御願いいたします。
《佐藤報告》
実験の計画、ラッテの増殖等漸くピッチがあがって来ました。8月一月間の休養が事故其の他で延びていらいらしていました。以下従来の実験のつづきと計画完了のものについて記載いたします。御批判下さい。
A)発癌実験
◇C26(1962-9-22=0日)ラッテ生后29日
此の実験は前回からの疑問であったDAB液の調整の方法がDAB実験の結果に及ぼす効果を見るために始めた実験群のNo.1である。
a)DAB調整は1962-8-15にDABを100μg/ml含むD塩類(0)と月報6207勝田保存液 を作った。 b)実験群は1)勝田保存液 よりDAB
4日投与。 2)同じく8日投与。 3)保存液より当日始めて血清加
DAB 4日投与。 4)同じく8日投与。 5)対照。 使用した血清はすべてY.78。
c)結果 第7日 組織片からの遊走が2)に於て最も著明であった。
第11日(1962-10-3)いづれのものも未だ明瞭な上皮様細胞は見られない。
d)考察 ラッテの生后日数が少し古い点、観察日数が未だ浅い点が考えられます。
1962-10-5 生后20日のものが出来ますのでもう一度実験を行います。
◇◇◇DAB実験に伴ふ継代によってかなりの細胞株が出来ると思ひます。それらの内には形態がかなり異ったものが見られます。現在の処では上皮様の肝細胞(E)と箒星状の細胞(漿膜?)(S)と繊維芽細胞様(F)とが徐々に株化しています。主目的である復元に使用したいのですが増殖率が悪いことと継代に際して消失細胞が多いので復元は未だ2回(いづれも陰性)4匹しか行っていません。継代だけは続けてなんとか細胞の種類を区別して見ます。 DAB発癌に関する私見及び計画
勝田班長の云われる様に此のあたりで一度よく考えて見ることも無駄でなかろうと思います。1)従来の仔ラッテによるDAB実験が増殖誘導効果を示すという点で癌化の第1歩であることは間違いないと思います。有意差を高める方法は血清添加の問題、DABの作用期間や動物の生后日数や系統に従って増殖する細胞の種類まで明かとなりつつありますが、復元の方法は大きな問題です。最近になってマウスのC3H乳癌から増殖に成功し、その形態からは乳癌であると考えられる夫々独立系統の三株が元の純系であるC3H及びC3HZbへの復元が何れも未だ不可能である、という実験を私の研究室の野田君が示しました。この問題は色々の事が考えられますので簡単には解決できないと思っていますが、この事はDAB→肝で若し其れが癌化していても復元が不可能かも知れない可能性をも暗示しています。この問題の解決の手段としては、DAB実験群細胞をラッテの非働化しない高濃度の血清をLDに添加して駲化淘汰する方法があると思います。最近呑竜ラッテの老いたものがかなり出来ましたのでこの方法を実験に移します。此の実験は上記の理由と、勝田さんの実験C#13ラッテ20%血清で増殖が起らない点及び今春3月から行っているJTC11細胞ウサギ血清(非働化しない)駲化によるウサギ接種が反応を現わし始めた点も一つの理由です。
2)この問題は現在の段階でやるべきかどうかと思いましたが、外科の大学院がおりますので一応計画を組みました。成熟ラッテの再生肝と仔ラッテの(生后20〜25日)の肝のDABに対する反応を従来の方法で比較して見ようと考えています。
編集後記