【勝田班月報・6304】
《勝田報告》
A)最近は医学会総会シンポジウムの準備のため、発癌実験に余りてをつけられませんでしたが、そのわずかの内の又若干について拾いますと、
Exp.C38:15日Rat 1963-3-2培養開始。第13日成績:Cont.1/4。DAB
1μg/ml 1日間 2/4。DAB 1μg/ml 4日間 3/4。
DAB 0.1μg/ml(今日まで) 3/4。3-27(第25日)全部Subculture。Subculture后の成績は、1月后位でないとはっきりしないが、実験群では、現在colonyを作り、どうやら生えている模様。(添加1、4日は佐藤班員のデータとは逆になりました)
RLD-1株の染色体数は、新しい標本作製法で再検討をおこなったところ、42本が断然多く、42%。42±3は95%。他のDAB株についても検索中。
B)ラッテ正常・腫瘍細胞の相互作用
4月1日に発表したスライドをここに掲げます。詳細はいずれまたの機会にします。
《堀川報告》
1)培養細胞における貪喰性と形質転換(癌化)の試み(V)
正常L細胞が、Ehrlich細胞核やSpleen細胞を貪喰した際、どの程度L細胞が喰い込んだEhrlich細胞やSpleen細胞のDNAを利用し得るかを知るため、予備実験としてまずSpleen細胞を1μCH3-thymidine/ml内で24時間incubateすると、低率ではあるがSpleen細胞のDNA206μg中に37918countのH3-thymidineがincorporateする.この全DNAを培養液に加えてL細胞を24時間培養するとこれらL細胞のDNA153μg中に7092countのactivityが検出出来た。すなわち培地に加えたSpleen細胞のDNAのうち約1/5がL細胞のDNAにとりこまれたことが分る。現在はEhrlich細胞核DNAをlabelすることにより同様の実験をやっているが、これらがはっきりするとL細胞内に喰い込まれた各種細胞のDNAの利用度が比較的明確になると思う。
2)放射線と5-Bromodeoxyuridine(5-BUdR)を併用して発癌をねらえば面白いのではないかと云う結果を最近得ました。
これは神戸医大の青山氏との協同実験で得た結果で、たとえば(図を呈示)L原株細胞は63本の所に染色体のピークがあり、これから得たγ線耐性細胞(Lγ)では44本の所にピークが移ることはこれまで度々報告して来たが、このLγ細胞を更に63日間10μgBUdR/mlの存在下で培養すると、染色体の分布はばらばらになって全くピークは見られなくなりました。BUdRは突然変異を誘発する作用があると云うことが最近の遺伝実験で多くの人により報告されている点からみて、今後このような系をprimary
cultureに応用して発癌実験をねらえば面白いと思い現在計画中です。
《杉 報告》
golden hamster kidneyのprimary cultureにstilbestrolを作用させる実験をくり返しています。
まず作用させるdoseの問題ですが、10μg/mlで8日間作用させると培養12日目頃は組織が黒ずんだ様で出てきた細胞間に丸い間隙がみられ、薬剤によって障碍をうけたという感じですが、18日目頃になると細胞間に間隙を有しながらも上皮様細胞団が多く出てきます。これに比し対照群では上記の如き細胞団は稀には見出されるが殆んどなく、繊維芽様細胞が主に見られます。doseを1μg/mlにすると両群の間にこれ程はっきりした差が出ません。それで10μg/mlのところを現在重点的にやっていますが、この細胞間間隙を有する上皮様細胞団が果して盛んに増殖し得る細胞かどうかは疑問で、これをsubcultureすると今までのところどうもうまくいかない様です。又hamster
ageを比較的若いところ(今までの実験ではかなり老齢即ち3〜8ケ月位のところを使っており、ここで若いというのは2ケ月前後のところです)を使うと、対照群の方にも、実験群より少いが上記の様な、但し細胞間隙を有しない上皮様細胞が、老齢のものを使った時より余計に出てきます。10μg/mlを作用させて出てきたこの様な細胞を一応本命の細胞と考えていたのですが、これは一寸した培養条件の変化ですぐに落ちてしまう様にも思われ果してこれを本命の細胞と考えていいものか疑問です。もし細胞間隙を有する上皮様細胞団が作用薬剤の高濃度のための障碍をうけているものとすれば、或は1μg/mlを長期間くり返すか、10μg/mlをもっと短期間作用させるのがいいかも知れません。形態学的な観察のため、たんざく培養も並行して行っていますが、これには上記の上皮様細胞がきれいに生えず詳しい観察が出来ていません。又細胞が復元出来る程大量に生えず継代していると段々少くなってまだ株化したものがありません。これは動物の日齢が高いためとculture
techniqueに問題がありそうです。只、生後20日以内位の若いhamsterですと、kidneyは極めて小さいので大量に培養するのがむつかしいかも知れません。結局現在のところ、上記上皮細胞団の解明を中心に実験をすすめる予定です。
《黒木報告》
今年度からメンバーに加えて頂くことになりました。よろしくお願い致します。
現在までやって来た仕事を列記してみますと、(1)吉田肉腫少数細胞の培養。(2)少数細胞の移植性(マウス腹水肝癌、乳癌の少数細胞移植性を純系及びF1マウスを用い検討→札幌の病理学会で発表)。(3)乳癌の病理組織学(C3Hの繁殖成績、乳癌発生率、組織像、転移像→昨年度・癌学会に発表)。(4)免疫(1:腫瘍免疫動物を組織培養を用いての分析、2:AdjuvantにYScellsを加えて移植性の検討)。
以上のうち、中心となったのは(1)で、その内容は大阪のSympos.で発表した通りです。そこで、今後どの様に仕事をすすめるかと云うことですが、現在ねらっているのは次の5つです。(1)YSの培養を出来る丈合成された培地で行うこと。(2)合成培地を用いてアミノ酸Vitaminの面から栄養要求をみなおしてみること。(3)α-keto酸の意味を分析すること。(4)継代中の細胞の変化を種々の面からテストすること(腫瘍性、染色体、栄養要求)。(5)少数細胞の培養を血液なしで、そのレベルまでもっていくこと(赤血球のpyruvateの他のco-factorと云うこと。及び無血培地のよる継代培養)。
以上の5つですが、夫々少しづつExp.を開始しております。今回は、α-keto
acidの定量について中間報告致します。
目的:(1)血液添加で培養した場合、培地中のピルビン酸放出は、本当に起っているか。(2)ピルビン酸は培養中に増えるのか、or
減るのか→ピルビン酸は何故よいかと云う問題の分析への手がかりの一つとして。(3)large
inoculationの場合ピルビン酸は培地に増えるか→スライドに出した仮説(3)の裏づけとして。
培養法:YScells 20ケ/tubeの時と同様、Med.LE50%、Bov.serum(whole)50%、0日、2日、4日、6日、8日、10日にMed.を定量。
定量法:α-keto acidとして定量。(1)培地を遠心后TCAで除蛋白。(2)除蛋白上清3.0mlに2.4dinitrophenyl
hydrazin液(500mg in 100ml of 2.0N HCl)0.7ml加え、25℃5min.反応。(3)1.5N
NaOH 2.0ml加え、10分后〜15分后あに520mμで吸光。
結果:(図を呈示)まだpreliminary exp.の段階ですが(YSを一緒に培養したDataなし)、(1)血液を37℃におくと培地中にα-keto
acidを可成り早期から放出していること、
(2)pyruvateそのものは37℃におくと10日間で半分近く分解されてしまうこと。の二つは明らかに出来ました。定量技術ももっと練習し、YSを培養したときのDataを得たいと思っております。
《伊藤報告》
医学会総会も終って、やっと落着きました。其節は皆様に折角お集りを願いましたが、充分な事も出来ず、申訳けなかったと思って居ります。
当教室も愈々今月から陣内教授が常任で来られる事と相成り、暫くは雑用に忙しい毎日になりさうです。まだ新しい研究体制がはっきりしないので、いささか落着きませんが、何れにしても小生としては、今の班員としての仕事が続けさせて戴ける確約を得てありますので、その点は安心して居ます。
先日の連絡会で一寸お話し申し上げましたラッテ肝細胞の採取法(Exp.Cell
Res.:ゴムを使ったhomogenizerを使用する法)を検討して居ます。homogenizerを試作させて、一応使用可能なものが出来それを用いて、ほぼ文献に記載されて居るのに近い細胞を得られる様になりましたが、尚培養可能の細胞を得る所まではいっていません。而し、充分望みはありさうですし何と云っても、一度に大量の細胞が得られる点、大変に魅力がありますので、更に種々の点考慮検討して、続ける積りです。そんな事で、今回は何等具体的なDataを御報告出来ませんが、次回連絡会の際には、此の方法についての何かお話しが出来る様にし度いと考えています。
《佐藤報告》
1)発癌実験
これまでの実験で呑竜系ラット肝←DAB1μg/mlで増殖の促進がおこる事、1μg/mlの濃度では与えられる日数が1日間、2日間、3日間と延長するに従って増殖の促進が弱まる事が確認された。DAB←ラット肝で増殖促進の作用が顕著に現われるのは呑竜系ラットでは生后15〜20日で1μg/1mlを1日間作用させた場合である。
株化を行なって後染色体パターンを検索した範囲では以下の項目が推定された。(1)6例のDAB株について一般的に染色体数は37〜40付近に集る。更にDAB投与日数が4日、8日、12日と延びるに従ってこの傾向が強い様に思われた。(2)メチルDAB
12日投与の一例はDAB投与群と明らかに異り染色体数は55〜70附近に現われた。(3)対照群は上皮系のもの二株及び箒星状細胞型の一株と出来た。前2者は染色体数が30〜42に及んでおり、それぞれのDAB実験株に比較すると37〜40への集約が少い。箒星状細胞株は42〜45附近に染色体数が集約されている。(4)ラット生后日数と染色体数の間には「42の染色体数の現われる率が生后日数の増加と共に高くなる」傾向が認められた。以上の結論から、
A)メチルDAB株の復元実験:
1963-2-11。生后1ケ月呑竜系ラット(前処置無し)。腹腔へ、TD40
2本分。10日后の腹水採取検査で多数の中型単球と少数の注入株細胞らしき物を認めた。18日后の腹水採取は少量の液しか取れなかった。細胞は極めて少数である。1963-3-17(第34日)殺す。腫瘍発生(-)。 1963-3-17。生后1ケ月呑竜ラット(レ線、400γ前処置)。ルービン3本、皮下接種。1963-3-19(第2日)死亡、所見なし(-)。
1963-3-26。生后2ケ月呑竜系ラット(レ線、400γ前処置)。ルービン3本、1600万、皮下接種。1963-3-31(第5日)変化なし。観察中。
B)他のメチルDAB株の設立と染色体数のパターン:
現在株化しているメチルDAB株C22M12と同時実験の亜株メチルDAB
4日。C22Mは現在7代まで継代4月末頃染色体検査の予定。継代中のものは、C38M24(メチルDAB
24日投与=後報)2代54日。C39M24(メチルDAB 24日投与=後報)3代37日。C39M12(メチルDAB
12日投与=後報)2代37日。
C)ラット肝、対照実験(DAB及びメチルDAB)株細胞にDAB及びメチルDABを10日乃至12日間再投与及び新投与した場合の染色体パターン:
現在まで、C8Contr.にDAB及びメチルDAB。C10Contr.にメチルDAB。C10DABにDAB。を夫々10〜12日投与して直ちに染色体パターンを検索した範囲では緒言に述べた傾向が軽度に認められる程度である。現在投与日数を増加中である。
D)メチルDABに→ラット肝の増殖促進及び株細胞の設立:
◇C38(1963-2-5=0日)。ラット日齢17日、第16日・対照1/5→2代。メチルDAB
4日 1/5。メチルCAB 12日 1/5。メチルDAB 24日
1/5→2代。
◇C39(1963-2-22=0日)。ラット日齢9日、第13日・対照4/4。メチルDAB
4日 4/4。メチルDAB 12日 5/5→2代。メチルDAB
24日 5/5→3代。増殖細胞数において12日、24日例が優勢。 ◇C40(1963-2-28=0日)。ラット日齢15日、第18日・対照2/5。メチルDAB
1日 5/5。メチルDAB 2日 5/5。メチルDAB 3日
3/5。メチルDAB 4日 2/5。
◇C41(1963-3-5=0日)。ラット日齢20日、第15日・対照2/5。メチルDAB
1日 4/5。メチルDAB 2日 5/5。メチルDAB 3日
3/5。メチルDAB 4日 2/5。
編集後記