【勝田班月報・6307】
《勝田報告》
A)発癌実験:
(1)これまでラッテの出産が少し低下していたので新しいスタートはほとんどありませんでしたが、最近調子が出はじめましたから、また近い内に再開できます。しかしその前に継代第2代での増殖が何とかよくなるような培養条件を見付けておきたいと思い、RLD-10株('63-2-23開始)(C37のDAB群)を使い、7日間TCでcell
countingで、次のようなテストをしましたが、今までのところでは未だ何も良い結果は得られていません。Basal
mediumは(20%Calf.S.+0.4%Lh+D)です。
1)Glucose濃度のeffect (RLD-10:第4代)
0.1%、0.2%、0.4%と3種をみましたがほとんど差なし。
2)Pyruvate添加のeffect (RLD-10:第4代)
0.01%、0.005%の2種ですが、反って抑制されます。
3)Rat liver extractのeffect (RLD-10:第5代)
(1:1)に、生后約1年のラッテの肝をsalineでextractし、これを50%と考えて、培養培地中に0.05%、0.5%の2種加えてみましたが、濃度に比例して著明な増殖抑制が認められました。もっと若いageのラッテで、且もっと低濃度でやってみる必要があるかも知れません。
(2)復元試験。'62-11-15開始した群のRLD-7株細胞の染色標本をこの5月末にはじめて作ってみたところ、いままでのRLD、RLCの各株と全く異なり、核に大小不同が多く、しかもその核がギザギザやクビレやらあり、細胞質の中に千切れているところも見られます。そこでこの細胞のふえるのを待って、この6月6日に、生后3wのラッテの脳内に約100万ケ宛入れてみました。ラッテは2匹でCO60とコーチゾンで前処理してあります。しかし今日までのところでは2匹とも至って元気なものです。復元法としては、経過が見やすい点で前眼房などがいちばん良いかも知れませんね。
(3)ウィルス・テスト。上記のRLD-7株ですが、どうも細胞の変化がおかしいので或は、latentのvirus
infectionがあるのではないか、そしてDABとSynergismによってあのような株の変化(或は癌化)をひき起すのではないか−と考え、RLD-7細胞を5回凍結融解し、その遠沈上清を、Atypismもいちばん少く、細胞質のきれいなELD-1株の#5の培養に10%に加えてみました。2日后に染色標本を作ってみましたが、変化は何も認められないので、renewal(4日目)のときまた10%加え、今日5日目ですが、7日目にまた標本を作ってみます。
(4)Parabiotic cultureテスト。さきにRLD-1をno
renewalで何回もselectした結果、4nにpeakをもつcell
lineのとれたことを報告しましたが、このRLD-1(4n)株がmalignantか否か、正常ラッテ肝とのparabiotic
cultureでしらべたいと思い、8日ラッテの肝のprimaryと静置でしらべました。しかし結果は陰性で、(表を呈示)肝は平気、RLD-1(4n)はむしろ抑えられ気味となりました。なおRLC-1と正常ラッテ肝との組合せも調べてみました。Growingnormal
cellとはどうかの再確認の意味もあるのですが、RLC-1も反って抑制されてしましました。
B)腹水肝癌各型の培養スクリーニング:
Screeningといっても、細胞が硝子面によく附着するか否かのテストです。佐々木研で毎週ラッテで植継ぎしたときもらってくるのですが、運び方などもずい分問題になるようです。(表を呈示)附着し増殖する系(+)はAH-66、7974、286、414。細胞の中に附着するのがあるが、果してそれが癌細胞かどうか判らぬのと、且増殖しないらしい系(±)はAH-63、408、602、149、173、62、272、423、318。附着しない系(-)はAH-66F、99、129、310、でした。
培地はすべて20%CS+0.4%Lh+Dです。
AH-286は附着してよくふえますが、細胞質に泡状のものが見られ、ウィルス・コンタミの可能性が考えられます。
《佐藤報告》
前号に引続きラット肝←DAB及びメチルDABの所見を染色体のパターンと一部核型を検索しています。復元もつづけていますが只今の処、動物内発癌は成功していません。今度の実験結果は私の予想に反して思わしくありませんが、事実ですから止むを得ないと思います。更に条件を仔細に検討いたします。
前号でC10D株にメチルDABを55日投与したとき染色体の分布が処置前及びDAB57日に比し著変した事を報告しました。そこでこの法則が他の株にも当嵌るものかどうかを試みてみました。前述の株に夫々メチルDAB74日、DAB68日投与後、染色体のパターンを検索しましたが、両者の間に現在の所差が見えていません。(以下夫々の分布図を呈示)
C8(対照)株の現在の染色体パターンと、同時期に検索したC8(対照)株←メチルDAB84日の場合にも前号報告の如きメチルDABによる染色体の強い変動はない。
更にC10(対照)株において同様の検索を行なったが、著変は認められなかった。上述の三組の実験において、私はメチルDAB群に染色体の移動を期待したが結果は−出会った。念のため前号報告のメチルDABによる染色体パターンの移動が間違いないか、22(メチルDAB12日)株で検索して見た。結果は依然として右遍があり比較的幅広く増殖している事が判明した。 上述の結果の意義づけについては考え得る事もあるが、復元の試みを待って論じたい。前からの宿題であるpoolされた♂ラット血清による撰択を開始している。C10D株とC10D株をラット血清20%+LDの中で49日間おいて増殖させ現在増殖中のもの、復元は今の処(-)、の染色体パターン図を呈示する。
ラット血清による撰択→増殖→復元はメチルDABによる移動株について更にC10D←DAB55日及びC22(メチルDAB12日)株に就て行っているが前者は比較的早く増殖しているが、後者は殆んど発育してこない。発癌実験において培養日数が長い事は不利な点が多いのでこの一連の実験の不足部を補ふと共に短期メチルDAB(量的)→復元の実験を再開する予定。現在C39実験、メチルDAB→Primary24日・1963-2-22のものが増殖中ですのでこの検討を始めます。
《杉 報告》
発癌実験:golden hamster kidneyのprimary
culture−diethylstilbestrol:
primary cultureで出てくる細胞は既報の如く、実験群と対照群でepithelialなcellが活発な増殖をしているという証明は残念乍ら出来ていません。
即ち培養10〜18日目頃に、対照群に比べ実験群でepithelialのcellが多く出てくるわけですが、そのまま培養を続けると大体30日位を経過した頃から段々と変性に傾き管壁から落ちる。この頃のを次代に継代しても勿論増殖を示さない。そこで培養18日目位でまだ細胞団が拡大しつつあり、変性に陥らない頃にrubber
cleanerを用いて継代すると、そのまま変性しないで細胞団は再び一寸拡がる。しかし継代後10日過ぎ、即ちprimary
cultureの最初から約30日を経過するとやはり変性に傾く。それを継代してもうまくいかない。復元については(age
46days、female、hamster)培養30日目のものを、cortisone処理hamsterのcheek
pouch(age25days、male、contisone acetate 2.5mg/day、2days/w)にかえしてみたが、現在のところtumorを作っていない。接種細胞数は約5万です(crystal
violetで染色して数えたが生死を判定しかねるのもあり不確実)。尤もこの細胞は接種時、培養30日を経過していたため稍変性しかけていた部分もあり、復元の時期としてはよくなかったと思います。
以上の如く静置培養では盛んな増殖が得られないので多少の不便を忍んで、以前使っていた中検の廻転培養器でやり始めました。まだ日が浅いのでもう少しやってみないと分りませんが、細胞の生え出しは確かに早いが上皮様細胞がどうもうまく生えてこない様です。 染色体については今度新しく研究室に入り、現在培養一般について練習中の岡田君にやって貰っていますが、technicが未だしでdataになっていません。
hamster−−stilbestrolの動物実験では,以前から種々の実験結果が出ていますが、
stilbestrolはestrogenic activityをもったhormoneであり、これを使った発癌実験というのは多くが種々の他のhormoneとの関係においてなされていて、これらの複雑な組合せの違いにより異った実験結果が出ているとも思われます。勿論tumor乃至はadenomaをつくったというのもありますが、大体一致した結果として出ているのはhyperplasieをおこすということです。我々のin
vitroでの実験で、盛んな増殖こそおこさないが、実験群と対照群とで違いが見られるというのは、何かin
vivoでの変化に似たものが現れているという可能性が考えられます。只動物実験では発癌するまでにかなりの長期間を要しているので、invitroではそれ程長期間を要しないにしてもかなりの期間を要することは考えられ、現在の如く30日を過ぎると変性に陥るというのは不都合かも知れません。そうすると如何にしてこの出てきた細胞を、より長くin
vitroで維持させるかということも目下の重要な課題となります。その様に稍長く細胞をin
vitroに維持出来る状態にもっていってstilbestrolをくり返し作用させるか、他の要因を組み合せて作用させるかして、対照よりも早く悪性化させることが出来るのではないかと思います。stilbestrolをくり返し作用させるということに関しては、培養開始時に一度作用させておいて暫く正常培地に戻し、あとで作用させるということを試みましたが、これまでの結果では2回作用させても大した影響はなく、培養開始当初に作用させたものの影響だけが残っているという印象をうけます。
その他、動物実験でhamster liverに発癌性を有するo-aminoazo-toluenをhamster
liverのprimary cultureに作用させていますが、まだ結果は出ていません。
《黒木報告》
吉田肉腫少数細胞の培養とEagleの培地(1)
吉田肉腫細胞の基礎培地としては、Earle's
B.S.S.50%、Lh 0.3%(final)、Bov.serum50%を用いていたのですが、栄養要求の仕事がすすむにつれ、培地条件としてより優れたもの、即ちdefinedなものを用いる必要性が生じて来ました。そこでLEをEagleにおきかえ、血清の量もへらし、更に透析血清にもっていきたいと考え、昨年の末より、少しづつ実験を行って来ました。
その結果、おどろいたことに、Eagle'med.(1959発表の処方)50%、whole
Bov.Serum50%(非働化)で、pyruvateなしでも、血液なしでも、20ケの細胞が非常によく増殖するのです。(勿論LE50%、B.S.50%の培地では20ケの細胞は全く増殖しません)。このLEとEagleの差は一体どこにあるのか、又少数細胞の栄養要求とはどう云う関係にあるのか。これらのことについては、これからいろいろ実験をして解明していきたいと思っております。
EagleとLEの差はEagleのAmino acidとVitaminと、Lactalb.hydroly.の差と云うことになります。用いたlact.hydroly.は、宇田川先生のときよりずっと同じLotのものです。LotNo.9457。この9457と云うのは調べてみましたところ勝田先生のところで“不良"の折紙をつけられたものと分りました。この9457とEagleのAmino
acidを比較してみますと、不足しているのはglutamineです。(9457にはglu+GluNH2
69mg/l、Eagleにはglutamine292mg/l、gulNH2は0)。しかし9457+glutamineのmad.でもgrowthはありません(glutamine
0.1〜0.4mM)。
問題は非常に複雑になってしまい、一寸困っております。現在、Eagleから一つづつAmino酸を抜いたmed.を作りexp.をおこなっております。又pyruvateの効果もみておりますので、7月の班会議までには、いくらか分って来ると思います。(なお、これらの現象は3月末には掴んでいたのですが、大阪では、問題を余り複雑しないように、わざと伏せておいたものです。不悪ず、御了承下さい)
《堀川報告》
5月の岡山での組織培養学会にそなえて大量のネズミを使ってしまったのがたたって遂に仕事はストップされ、つい最近三島の国立遺伝学研究所を訪ねて森脇氏から種用のネズミをゆずりうけて持ち帰り、大急ぎで繁殖させているところなので、今月は発癌実験に関する仕事は出来ずに終ってしまいました。
その間の実験としてX線2000γで照射したL細胞の回復に関する仕事に主力を注いで来ました。現在の段階では放射線で照射されたL細胞の回復に働くのは正常L細胞から抽出した蛋白様の物質らしいことが分っております。勿論更にDNA、RNAをpurifyして実験を進めている段階です。
一方、Spleen細胞を喰い込んだL細胞が分裂何代目まで、そのSpleen細胞のantigenic
characterを維持し続けていくかを決定するためにこれまでAgarの沈降反応あるいはTest
tube法などを使って追求して来ましたが、この方法では全L細胞のうち何個がantigeic
characterを維持し続けるかをtestすることは不可能で、そのためLatex
particle methodをかりてこの種の仕事を展開させております。
この実験の結果と発癌実験(主として細胞成分と放射線)に関する結果は7月の班会議から少しづつ発表出来るものと思います。
《山田報告》
1.組織培養における物質の消費に関する細胞生活単位(Cell
Life Unit)について( )*James,T.W.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,90:550-564,1960による数式を呈示
編集後記