【勝田班月報・6406】
《勝田報告》
A.ラッテ肝細胞の初代培養:
発癌実験に初代あるいは第2代辺りの培養を用いたいことは兼々話している所であるが、そのころの増殖が悪いので、Exp.に使える時期がどうしてもおそくなってしまう。そこで初代の増殖をもう少しまともに出来ないものか、と色々な培地でごくラフなスクリーニングを試み、染色標本で優劣を判定しながら培養し、現在までに次のような結果を得た。
[細胞浮游液の作成]
すべてトリプシン消化を用いた。肝をそのままメスで細切し、モチダ・トリプシン2,000u/ml液で、約15〜20分間室温で作用させた。これを1,500rpmで5分遠沈后、その沈渣を再浮游させて培養に用いた。
Exp.#1:1964-4-10開始。RatF20・生后4日。培地馬血清50%+DM-120。
1964-4-23継代。
#2: 5-8開始。ratF20・生后6日。培地馬血清50%+DM-120、仔牛血清20%+0.4Lh。
#3: 5-12開始。ratF20・生后10日。培地馬血清50%+DM-120、馬血清50%+0.4Lh。
Exp.#1と#2は小角瓶使用。 #3は平型回転管使用。
[結果]
Exp.#1:初代に於ては実質様細胞のシートとfibroblast様(内被細胞?)細胞のシートと夫々相半ば位に混合していた。第2代に入ると、后者の方が多くなった。これにDAB;0、1、10、50μg/ml加えて細胞の形態をしらべた。
1μg:TC第10日の標本でも無添加群とほとんど変りがない。
10μg:第10日標本でみると、細胞の変性有り。核が細かく断裂した像もかなりはっきりと認められた。
50μg:細胞変性が強く第2日の標本ですでに細胞がほとんど見られなくなってしまった。 Exp.#2:Exp.#1よりも后者型の細胞の存在率がずっと高い。馬血清培地では細胞シートができるが仔牛血清+Lh+D培地では第2日では、殆んどの細胞が変性を示し、第4日以后所々に小さなコロニーが出来はじめた。
Exp.#3:ほとんどが内被様細胞から成る。シートを形成せず、コロニー状に増殖。ラクトアルブミン培地よりも、DM-120培地の方が、コロニー数も細胞増殖も少し良好であった。
[現在までに判明した至適条件]
1.Ratはageの若い方がよい。これまで若すぎるとfib.様細胞が多くでてきて困ると考えていたが、実際は6日ratよりも4日ratの方が実質細胞がはるかに多く培養内に認められる。 2.培地は現在迄の所では(馬血清50%+合成培地DM-120、50%)が最も増殖が良好である。[今后の予定]
1.さらに培地を検討する。たとえば馬血清の至適濃度など。
2.DABの各種濃度、特に10μg〜50μg/mlの間を調べることと、長期添加の影響も調べる。
B.NAGISA作戦:
Exp.CN#1〜#4は全部1964-5-8に継代した。
無継代も5週間以上おくと、細胞増殖がみられなくなるので、適当なところで継代する方が反って良さそうである。
Exp.CN#5:1964-4-23開始。カバーグラスなし。RLC-1株、RLC-2株夫々平回転管2本。
Exp.CN#6:1964-5-23開始。RLC-1株、RLC-2株、RLC-3株、RLC-4株、RLC-5株、夫々平回転管2本。カバーグラス入り。なぎさ状態で加温。
その他:この実験は貪喰実験に用いるためで、貪喰材料にはRLH-1の染色体浮游液を用い、なぎさ部とシート内との貪喰率の比較の第2対照として用意した。:RLC-1株、RLC-2株、RLC-3株、RLC-5株夫々TD-7培養管2本。カバーグラスなし。平らに保持(なぎさを作らない)。
《佐藤報告》
◇培地中の細胞によるDABの消耗(つづき)
前号に1個の細胞が1時間に消耗する培地中のDAB量を棒グラフで記載しました。前号以外に行なった細胞の同じ時間におけるDABの消耗の図を呈示します。横軸は0時間から24時間迄の間における1個1時間のDAB量の消耗を示しています。JTC-2では最初の24時間に2.0x10-8乗μgのDABを、次の24時間には1個の細胞は1時間に平均5x10-8乗μgを消耗していることを示しています。訂正:前号JTC-2はJTC-1の誤りです。
次に現在まで行なったDAB消耗の夫々の細胞について、縦軸に培地中におけるDAB(1ml中1μg)を100%として横軸に夫々の細胞がDABを消耗するために必要な細胞数を記載しました(図を呈示)。この図によるとJTC-1及びJTC-2は培地中におけるDABの消耗が最も少い。次いでその動物株であるAH-130になります。RLN8及びRLN10は消耗能力が強くRLD10はRLN10に比してやや少い様です。RLN21(箒星状細胞)は他の対照のものよりやや多く消耗する様です。RLD-M-LD即ちRLD株をメチルDAB
10μgで耐性にした後LD(0μg)で培養したものではDABの消耗が期待したほど下っていません。併しそれの対照として拵えられたRLD-Tw10x即ちRLD株をTweenの10倍量で耐性?にしたものと比較するとかなり消耗度がおちています。又メチルDAB耐性とDAB耐性とが平行するかどうかにも疑問があります。DABの消耗の率の下降が発癌に関係するとすれば更に強く耐性?にする必要があろう。次に上述の細胞の実験時における増殖率の図を呈示する。
◇DAB発癌過程における動物(呑竜ラット)肝臓組織の組織培養上の態度
生后53日目の同種ラットにDABを試食させて、44日目=Exp.52、57日目=Exp.53、72日目=Exp.57、79日目=Exp.58に脱血して型の通り肝を細切してLD+20%牛血清で回転培養した所、44日投与のものでは細胞増殖はおこらなかったが、57日間投与のもので3/5、72日間投与のもので5/14、79日間投与のもので7/14の細胞増殖を見た。細胞の性状其の他については次回の班会議に発表の予定。
《杉 報告》
[golden hamster kidney−stilbestrol]
stilbestrolの繰返し作用:
生後24days♂。stilbestrol 10μg/mlを3日間作用。
培養14日目第2代へsubculture、3+3日間作用。培養10日目第3代へ、28日間作用。
第2代までstilbestrol群は増殖良好、第3代では増殖落ちcontrolと差なし。
stilbestrol群の他にtestosterone作用群を設け(testosteroneをethanolにとかしTyrode液で稀釋。これはstilbestrolのとかし方と同一。controlにも同じ割合でethanol、Tyrode液を入れている)。stilbestrol群、control群との比較を試みている。
生後6days。sex不明。stilbestrol群、testosterone群共10μg/ml。7+3+28日間。
stilbestrol群、control群共に増殖悪く、testosterone群のみ優勢。
生後9days。♀。stilbestrol、testosterone群共10μg/ml。4+3+21日間。
stilbestrol群が優勢。
trypsinizationによる定量的実験は成功していない。
[mice skin−4-NQO]
4-NQOはethanolにとかしTyrode液で稀釋。即ちstilbestrolやtestosteroneと同一方法でとかし得る。このところ研究室の人手不足でstilbestrol、testosteroneの拮抗作用の問題、4-NQOの実験など新しい実験のstartが出来ず進展していません。
《黒木報告》
マウス腹水肝癌MH129Pの培養 in vivo継代によるin
vitro増殖性の変化
月報6310においてマウス腹水肝癌MH134、129P、129F(CCl4により作られたC3H/HeNマウスの肝癌の腹水系。1956)の試験管内株化について報告しました。一旦株化した細胞をin
vivo継代するとき株細胞としての機能、すなわちin
vitroの増殖性がどのように変化するかについて興味をもち、二三の実験をつづけています。増殖性の変化がみられるとき、もとの腹水細胞のようにin
vitroの増殖性を失うものか、又それに伴い他のphenotypeも腹水型に近ずく(back-mutation?)ものか、更に、その増殖性の変化がgradualに起るとしたら、lag-phaseの増加又はdiploid細胞のようにinitial
fallの形で表れるのかをみてみたいと思っています。又animal
paasageによる腫瘍性の回復と表裏の関係にあるのかどうかも問題となります。
文献的には、佐藤二郎先生が、株化したEhrlichが95日5Gのin
vivo継代后も培養における増殖性を維持していることを報告しています(月報6404)。又、高井氏はactinomycin肉腫の株化細胞JTC-14が、in
vivoで27G(ddO mouse)及び22G(C3H mouse)継代后もin
vitro増殖性を保有していることを記載しています。Todaroはpolyoma
virus腫瘍を株化したとき、株細胞はin vitroにおいて少数細胞による増殖能を獲得することを明らかにしました。更にanimal
passage(1代)後も、この少数細胞レベルにおける増殖性の維持されていることを示しました。
動物継代に用いた細胞はMH129P、22代で215日in
vitro継代の細胞です。C3H/HeN or C3Hfを使用し10〜15日間隔で移植し、同時に10,000ケ/mlを培養に移しGrowthをみます。
Growthの測定は、Generation timeを厳密にとるため、時間単位で測定しました。細胞はtrypan
blueを染色生細胞のみをcountしました。又、logarithmic
growth phaseから直線を下に伸ばしinoculum
sizeと交る点を求めlag phaseの時間を計算して出しました。
結果は(表を呈示)、7G、108日迄の成績ではlag
phaseの延長の傾向がみられます。0-24hrs.とあるのは謂ば第1日のcountですので、0-27hrs.の成績も含んでいます。
なおin vitro継代細胞のGeneration timeは大体15時間前后ですので、logarithmic
phaseに関する限りでは、in vivoでtransferの細胞と同じであると云ってよいと思います。
《土井田報告》
NH系マウスの性質: 此の系統のマウスの腫瘍発生頻度は低いが、老齢になると肝癌が30〜40%発生するという。放射線に対する感受性は調べられていないが、雄の生殖腺に600γ局所照射を行なうと繁殖力が著るしくおちるようである。
復元実験の経過: 生後第1日(7/ )のNH系マウス(3匹)に1,460万個のL細胞を腹腔内に注入し、経過をみたが腫瘍発生をみなかったので、2ケ月后(5/ )同腹の対照2個体とともに改めて1,740万個のL細胞を背部皮下に注入した。現在すべての個体において腫瘤形成を認めていない。之等の個体については猶暫時経過を追うて見るつもりである。一方今後も此の種の実験を多少改良した方法のもとに反覆する。
Primary culture: NH系マウスの肝臓および皮質部を主体とした腎臓をとりだし、メスにて細切し、50mlの角瓶にて培養している。培地は20%仔牛血清(又は牛血清)を含むLH塩液で、37℃で静置培養している。
[腎臓] 血清の種類に関係なくfibroblast状の細胞が集落をなして増殖して来ている。最初瓶当り接種した細胞数は調べられていないので、形成されて来る集落について記すことは意味がないが、現在のところ牛血清の方が少し能率よくコロニーを形成するように思われる。
[肝臓] どの様な細胞が増殖しては生残しているのか見当がつかない。この点はっきりするためにはカバーグラスを培養瓶中に入れるのも一法であろう。
肝あるいは腎由来の細胞について幾つかの系を増殖させ、これに放射線照射を行ない、その後、再増殖してくる細胞について腫瘍性変異の有無を調べようと考えている。
マウスにおいては自然発生的に生ずる腎癌は殆んど皆無であるが、ある種の条件でX線照射を行なうと高頻度に腎癌の発生が(in
vivoで)みられたという。この事は我々に極めて興味深い事柄を示唆するようである。
《山田報告》
細胞増殖サイクル中のRNA合成度の推移について
動物細胞の増殖サイクル中に、DNA合成をを行なう一時期(S)があることは御存知の通りですが、この間DNAおよび蛋白質がどのように合成されているかあまり知られていません。今丁度RNA合成度の推移をHeLa細胞について調べておりますので、予報的な結果ですが、ここに紹介してみました。サイクルをひろげて、シェーマでRNA、蛋白質の合成時期を図で示します。もっとも蛋白質は分裂中も合成されるという報告があります。
そこでRNAについて少しくわしく調べてみますと、Interphaseではズーと合成が行なわれ、分裂期では一部RNH合成を行なわない時期があるという結果になります。すなわち15分程度の短いH3-Uridineのとりこみ時間では、MetaphaseおよびAnaphaseの細胞の銀粒子数はbackgroundと同じになります。(表を呈示)。6μc/mlのH3-Uridine、15分とりこみの結果をみますと、1枚のスライドで数多く数えたInterphaseおよびMetaphaseの銀粒子数を比較しますと、前者のCytoplasmの銀粒子はbackgroundと数えてよく(これまでの成績から)、核および核小体の和は約40程度ですが、Metaphaseの染色体上にはbackgroundと考えられる2.6個しかでてまいりません。しかしCytoplasmには17.5個でており、これはMetaphaseではCytoplasmでRNA合成が行われると考えるより、15分間の前半でprophaseの時期に核内(染色体上?)で行われたRNA合成の結果が、核膜消失により細胞質へ放出されたと考えた方が考えやすいと思います。Prophase、Anaphaseはまだ数がたりないので参考データ程度ですが、Prophaseでなお合成が行われること、そしてその程度はInterphaseより高いかも知れないことが推定されます。AnaphaseはMetaphaseと同様の数字です。ここで問題となるのはMetaphase、Anaphaseの持続時間で、これが15分以上あるとすればどちらかの時期でわずかながら合成が行われるというデータになります。最後にTelophaseですが、この時期の粒子の分布には3種類あり、細胞質内のみに見られるもの、核内にわずか合成がはじまっているもの、さらに核内で非常に粒子数の多いものが見られます。これらはTelophaseの後半でRNA合成が再びさかんになることを示していると思います。以上は分裂各期のRNA合成度についての話ですが、現在Interphaseで、どのようにRNA合成の変動があるかについて映画をオートラジオグラフィーの併用で調べております。
《奥村報告》
C)Estradiolの添加実験(Normal rabbit uterus
endometrium)
前報でprogesterone添加実験の成績を報告しましたが、colony
countの方法では0.1μg/mlの濃度が至適であることが判りました。今回は、次いでEstradiolを各濃度に添加して至適濃度を検討してみました。(Primary
culture)Basal mediumにはNo.199(Progesterone添加実験に用いたものと同一lot)。血清はcalf
serum(C)を20%に加え、NaHCO3の最終濃度0.20%。結果は0.01μg/mlが至適(表を呈示)。
D)ProgesteroneとEstradiolの混合投与実験
Progesterone及びestradiolの夫々の至適濃度は0.1μg/mlと0.01μg/mlである事が明かになったので、次に此らのhormoneを各濃度で混ぜた時にどうなるかを調べる実験に着手した。
D-1)Preliminarry exp.1. 恐らく両者のhormoneを高濃度に混ぜても細胞の増殖(又はコロニー形成率)に望ましい効果を示さないだろうと考えたが一応テストする事にした。(多くの細胞数を一度に採取する事が難かしいので実験を分割)。培養液は199+calf
serum(final concent.20%)。(表を呈示)未完。