【勝田班月報・6409】
《勝田報告》
 A)発癌実験
 1.“なぎさ"地帯の細胞とシート内細胞とのDNA合成能の比較:
 この一端として、最も手をつけやすいH3-thymidineの、とり込み率をしらべた。詳しいcell countingはまだやってないが、標本をざっと眺めたとことでは、とり込み率には相違が認められないようである。どちらもとり込んでいる。添加時間は1hr.と24hr.の2種。 なお副次的なことであるが、ごく最近Kodakのemulsion液を手に入れてテストしてみたが、さくら製品よりは薄い膜ができるらしく、grainsが核からずれるという現象は全く見られなかった。またgiemusaによる共染もきわめて少い。但しBack groundはむしろ若干多い。これは輸送のためかも知れない。
 2.“なぎさ"細胞とシート内細胞とのPhagocytic activity及び消化能の比較:
 Crudeなchromosome suspensionを作って培養に添加し、その直后から顕微鏡映画をとりはじめ、“なぎさ"とシート部とを比較した。この実験は現在も継続中であるが、貪喰という点ではあまり差がなく、どちらもよく貪喰する。しかし、“なぎさ"部では消化が非常に悪い。つまりDNA-depolymeraseを含め色々な分解酵素の活性が低下、或は消失していることを示し、だんだん“なぎさ"理論が裏書きされてきた。
 B)武田肉腫の培養
 武田肉腫細胞の培養が仲々厄介だったのか、これまで培養の報告がない。大阪で医学会総会のあったときの病理学会の展示に北大・武田病理の若い人が色々の腹水腫瘍の培養を試みた報告を発表していたが、AH-130の他はすべて失敗し、“武田肉腫は、AH-13・・・その他と同様に、培養内では増殖できない細胞である"と結論していた。私が“AH-13はできますよ"と云ったら、びっくりしてあわてふためいていたが。
 さてその武田肉腫を、ラッテごと北大・武田病理から空輸してもらい、うちのラッテと培養にすぐ入れてみたところ、雑菌がわっと出てきてしまった。これは標本でしらべると細胞内に共棲していたゲルトネル菌が、抗生物質を加えてない環境になったので急にふえだしたものらしい。継代経過を次に記す。
 1964-3-6:ラッテ到着。培養→ゲルトネル菌発生→死滅。ラットへ移植。
 3-9:移植(1)50%HsS+DM-120→この培地の内(ペニシリン・ストマイ)添加の培養のみ細胞生存。(2)50%CS+DM-120、(3)20%CS+LD→この2種の培地では間もなく細胞は消失(ゲルトネルのみでなく、抗生物質を添加した群でも同様)。
3-22:Subculture→4-9:培地から抗生物質を除く(もはや雑菌共存せず)。
 4-23:ラッテへ移植→50万個→動物継代→各代5〜9日で死亡(ラッテ不足で切れ)。
 5-29:ラッテへ再移植→現在17代(各代4〜9日で死亡)。
    これを材料として各primary cultureで検討。
 TC(培養系)は、7月頃自然切れ(血清の影響と思われる)。
 上記のような経過をとってきたが、現在では勿論bacteria-freeになっている。これまでに判ったことは(7日間のSumplified replicate culture method):
 (1)牛血清より馬血清の方がよい。しかし馬血清のlotによって非常に差がある。
 (2)馬血清+DM-120の培地では、馬血清50%、20%、10%の内では50%与えないと増殖しない。20%、10%では細胞数が減少してしまう。
 (3)Pyruvateを0、0.01%、0.05%でしらべると、0.01%がoptimalで、2日、4日后のような初期の増殖を非常にaccelerateする。しかし7日后には無添加と余り差がなくなってしまう。 (4)細胞の形態は、初期は円形で硝子面に強くは附着しないが、2週間をすぎると附着するものが現われ、それは(図を呈示)極めて特徴のある細胞質突起を有している。
 (5)増殖率はまだ極めて低く、7日間に3〜5倍。さらに培地の改良を必要とする。
 C)その他
この夏に医学部の1年生が2人来て、microspectrophotometryと、JNCIの最近の号に出ていたRapid methodでcell speciesのoriginを決める方法をやって貰ったが、そのPreliminaryexp.では、JTC-8、9、10はウマではなくヒトらしいという結果が出た。

《土井田報告》
 RLH-1の染色体
 前月月報に報告した細胞(RLH-1)と7月11日に分与された細胞(RLH-1-3)について、それぞれ染色体数および核型分析を行なっている。標本はいづれも前号月報記載の通り、10-6乗Mコルヒチン液で4時間処理後、air dry法で作成した。
 染色体数の度数分布は(図を呈示)、いづれの系列においても69に最頻数を有した。hyper-69よりhypo-69を有する細胞がやや多い傾向を示すが、この理由は単にテクニカルな問題で生じるものだけでなく、染色体数が減少の方向にむかうような何か一般的な趨勢によるものかも知れない。此の点については正常人の末梢白血球培養で多くの人のデータから推察される。これ等の報告においてはいづれもhypo-diploid cellがhyper-diploid cellより高頻度にみられるという。しかしそのいづれであるか、又別の意味があるかについては、今の所不明である。多倍数性の細胞もかなりみられたが頻度は求めていない。
 核型分析は現在69の染色体を有する細胞について主として分析を進めている。その幾つかの例を図に示す。核型分析の結果、大部分の染色体はmeta-centric又はsub-metacentricであり、acrocentricやtelocentricのものは比較的少ない。又この細胞群を特長ずけるような特定の染色体はみられていない。dicentric chromosomeが幾つかの細胞で認められたが、この染色体を有する細胞は主として67あるいは68の染色体数を有しているように思はれる。
 chromosome-gap、chromatic-break、isochromatid breakなどの染色体異常がみられた。それ等の頻度を出すところまで分析が進んでいないので結論的なことは言えないが、頻度は決して高くないようである。
 核型の分析は猶現在進めているが、図のb、cはgrossな見方からは全く同型と思はれる。
《黒木報告》
 ハムスター・チークポーチ内移植法の基礎的検討
 (18)RLH-1、1,000−10,000cellsの移植 (Exp.237)
 月報6407、6408にRLH-1cellsを400万個、800万個移植した成績をレポートしました。
 御承知のように、Foley & Hardlerは10,000個の移植性をmalignancyの基準にしています。しかし、この成績はあくまでも、いくつかの問題点を残しています。すなわち(1)用いた細胞はestablish cell lineであること、現在の知識からするとestablished cell lineはnormal→malig.、malig→malig.の低下がみられる故、この成績がどれだけ細胞の性質を示しているかは、むしろHomo or Isoの移植成績との比較によって明らかにされるべきであろう。 (2)本当の意味での対照と云うべき“はっきりと分った"normal and malig.cellが用いられていないこと。(3)2/6以上をpositiveとする統計的根拠が不十分である。probit法その他によりLD50を算出し、その信頼限界を求め、又二直性の平行性の検定から有意性の検定にまですすむのがよいと思はれる(これについては次の月報に報告するつもりです)。
 とにかくRLH-1細胞についても、細胞量を変えて移植する必要のあることは明らかです。この成績の一部(移植后10日まで)は、前報に報告しましたが、今回はその後の成績をまとめて報告します。(表を呈示)無処置では10,000個、1,000個は陰性。コーチゾン処置では10万個6/8、10,000個7/8、1,000個1/6。一般に無処置のはtumorが赤く、コーチゾン処置のは白く硬い。

《奥村報告》
 A.ウサギ子宮内膜細胞のDNA合成
 内膜上皮細胞のplatingで形成されるコロニーは、そのsizeが時間と共に大きくなることは既知の事実である。しかしシャーレ内のコロニーを染めてみても分裂像(特に中期の核板)が殆んどみることが出来ない。分裂前期、末期らしい像はみることが出来る。又コロニーの成長も大小さまざまで2〜32ケの細胞期で止り、それ以上大きくならないコロニーも相当数ある。(この様な現象は内膜細胞だけにみられるのではなく、一般にprimary culturedcellsにみられる)。更にProgesterone、Estradiolのホルモンを与えるとplating efficiencyが高まるだけでなく、時には細胞の増殖がみられた。しかし、この増殖促進の現象はホルモンの直接的作用の結果であるか、どうかは全く判らず、現在いろいろの推測の段階に止まる。
今秋、H3-labelled Progest.及びEstradiolが入り次第、直ちにホルモンとして、その糸口をしらべてみる予定であるから、その前に内膜細胞のcell cycle(G1、S、G2の各plase)とホルモン投与実験の際に細胞の増殖がどの様に変るのか、を細胞数だけでなく、DNA合成能の面からも一応checkしておくことにした。H3-thymidineのuptakeをみると次の様な結果を得た。
 予備実験1.
 内膜細胞を1シャーレ当り10,000cellsを植え込みmodified199(合成培地)にcalf serum20%に添加して培養をはじめ3日后にH3-TDNを含む新しい培地に換えた。その后、a)は7日間、b)は14日間培養(途中2日毎にH3-TDN含有培地に更新)してsamplingした。
 0.5μC/mlのH3-TDNを添加した実験では、上記の方法と同じ投与方法(無処理の培養3日間)を用いた結果、2hrs.のlabelで5.4%、48hrs.おきに2回labelすると(1回のbelling time20分)3.5%であった。<この夏は猛暑の為かどうか判らないが全般に飼育動物が弱まり、とくに最近(ここ1ケ月)、ウサギが数匹次々に死亡してしまい実験一時中止>。

《伊藤報告》
 前回の連絡会の際の宿題になっていました発癌実験の際に添加するActinomycinの濃度決定の為のDataを得るべく実験して一応の結論を得ましたので報告致します。
 細胞:btkマウス胎児(13〜15日)のwhole EmbryoをTrypsinizeして得たもの。
    primary culture。
 培地:20%Calf Serum+80%L.E.
 実験法:Simplified Replicate T.C.methodにより培養→核数計測。
 結果:(図を呈示)。Exp.2は其后も続けて実験中ですので、より長期に亙っての濃度の影響が知り得る筈です。
 以上のDataより、一応発癌実験に使ふ添加濃度としては、0.01μg/ml及び0.002μg/mlの2種と云う事にして、現在添加后日数を追って形態学的変化を追求中です。

《佐藤報告》
 今月は残念ながら充分な研究結果がでていません。班研究の報告として癌学会へ
 組織培養による発癌機構の研究 第5報:
DAB及び3'-methyl-DAB培養内長期投与によるラッテ肝細胞の形態学的変化と培地内DABの消長について
以上のものは演説にして、DAB及び3'-methyl-DABによる細胞株の多型性の発現及び其れらの細胞がDAB(培地内)に与える影響を報告いたします。DABの細胞内とりこみについては手段をつくして準備中です。先日上京してH3-ThymidineのAutoradiographyを班長の所で勉強しました。目下はDAB*の入手について全力をあげています。
 次に示説として
 組織培養による発癌機構の研究 第6報:DAB飼育呑竜ラッテ肝の組織培養
 内容は月報に記載してまいりましたDAB発癌過程の呑竜系ラット肝の組織培養に対する細胞の状況を説明したものです。
 11月の癌学会までにやっておかねばならない事が非常に沢山あります。9、10月は大車輪でやる積りです。


編集後記


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