【勝田班月報・6501】
《勝田報告》
 A)なぎさ作戦
 RLH-4が誕生しました。前に班会議で映画をお目にかけた?印の2番目からです。経過はCN#14の実験群で、RLC-2由来です。1968-8-19にNagisa cultureをはじめ、9-4日にRLH-1のhomogenateを加えています。9-8にcoverslipだけとり出し、新しいtubeに上下逆にして入れました。初めより約1.5月后、どうもmutantができたらしいのでTD-15に継代しましたが、目指すのが仲々ふえてこないので、そのままrenewalをつづけていたところ、2.5月后になって新生coloniesを見付けました。小型円形の細胞で大小不同は余り目立ちません。固いaggregate様のcoloniesを作るのが特徴です。以后は着実に増えていますので遠からず復元接種も試みられるでしょう。
 “なぎさ"の細胞にH3-TdRでラベルしたRLH-1のcell homogenateを喰わせる実験はその后もつづけています。狙いは染色体や静止核の一部に集中してgrainの見られるような細胞を見付けることですが、今までのところでは、homogenate添加后3日、7日(3日后にrenewal)后の標本では、未だそのような細胞は見付かりません。今后はもっと細かく日を追ってしらべてみるつもりです。これがつかまえられればNagisa theorieの一つの裏書になりますから。 B)復元接種試験
 JARが仲々仔を生まないので、遂に思切って雑系ラッテを買ってnew bornの生后24時間のに2匹宛、RLH-1(500万宛)、RLH-2(700万宛)、RLH-3(300万宛)と脳内接種しました。接種日は64-12-12、その后、乳児はすくすくと成長し、がっかりしていました。所が年が明けてから、RLH-1接種の2匹のうち1匹が弱りはじめ、65-1-5に遂に死亡しました。期待に胸をふくらませ乍ら、ふくれた脳を開いてみましたら、中から水がどっとあふれ出し、診断は脳水腫、組織学的診断では腫瘍細胞の増殖は見当たらずがっかりしています。

《黒木報告》
 吉田肉腫の栄養要求(2)アミノ酸の検討
 吉田肉腫はEhrlichと並んで、もっともpopularな腹水腫瘍の一つであり、各方面の研究に使はれています。従って吉田肉腫が完全合成培地で培養出来れば、その応用面は更に広くなるものと思はれます。この仕事は最終目的としては、完全合成培地を目ざし、少しづつ、ひまをみては続けている実験です。
 月報6308に、Eagle MEM+1.0mM Pyruvate+20%B.S.が、もっともよいGrowth(primary cultureで)を示した。その后α-keto acid、aminoacidについて検討を加えSerineが有効との結果を得ました。
 なお、基本となっている考え方はpopulation and serum dependent nutrientsです。
 Basal medium:EagleMEM・1.0mMpyr.・10%CS(lot#4514)(表を呈示)表でみるようにSerineが有効という結果が出ました。

《土井田報告》
 RLH-3の染色体数
 (図を呈示)RLH-3細胞の染色体数の分布を調べた。
 最頻数の染色体数は63であった。染色体数のばらつきが、左に大きくかたよっているが、一部technicalなlossによるものが含まれているからかも知れない。しかし高倍数性の細胞が125前後に染色体数を有することにより、RLH-3の細胞集団は63に最頻数を有するものと考えてもよいと思う。
 Fragmentを有する細胞が3細胞(62、63、107)でみられた。これらの細胞はfragmentを除いた染色体数でもって図中に入れてある。
 Dicentric chromosomeも4細胞で5個認めた。
 Fragment & decentric chromosomeの出現頻度は、普通にみられる細胞集団(白血球培養や植物の根端細胞など)での頻度に比してかなり高いが、このことは、このRLH-3がなお、可成り不安定な状態にあることを示唆するものかも知れない。
 猶この細胞の標本は勝田先生より頂いたもので、明らかに染色体数がtechnicalに減っていると思はれる細胞は除き、全部観察した。観察細胞数が足りない点は今後、細胞を頂くなりして更に観察する予定である。
 RLH-3の核型分析
 RLH-3の核型分析は目下進行中である。

《高木報告》
 1965年の新年を迎え、皆様も心機一転大いにこの年へのplanを練っておられることと思います。私も長くて短かった2年間の滞米生活をおえて研究室の方も何とか準備されて来た処です。班の仕事とは全くはなれた2年間でしたけれども、この間に得た経験はこれから先の癌研究に充分役立つものと信じています。
 先の班会議の時にも申しました様に、あちらでは主に“正常細胞"のfunctionを出来る丈長くin vitroで維持し、またこのfateを追求して行く仕事をして来ました。その一部(?)としてpancreasをいじくって来た訳ですが、この問題はTissue Culturistとして非常に大切なことで、裏を返せばまたin vitroの発癌の問題にも関聯して来る事です。云い換えるならば発癌の仕事と裏表の関係にあるのではないかと思います。つまりin vitroで癌細胞とは何かと云う問題ととりくむのに、では一体正常細胞とはどんなものかと云う事を考えるのにもあたると思います。
 さて静かな正月を利用して過去一年皆様が歩んで来られた道を月報を通してふりかえらせて頂き、また癌に関する文献もよんでみたりしています。我々の班が出来てから5年目を迎えますが班員各位の御努力によって数々の興味あるdataが出つつあると思います。しかしながら、かのEarleが長年月を打込んでなおかつその念願を果し得なかったin vitroのchemical Carcinogenesisの問題は、とても一筋、二筋縄で片付く様な手合とは思われません。私共もこれまでstilbesterolとhamster kidney系を使って仕事をして来ましたが、残念ながらまず成果なしと云った処だと思います。今后は従来の方法によるこの系の仕事は打切る積りです。そして発癌実験の方法、癌細胞(発癌)のcriteria、それに我々がどれ丈の間in vitroで“正常細胞"を培養出来るかと云う事を再検討の上(この問題は5年前スタートの時皆で考えたと思いますが)取組んでみたいものだと思っています。特にin vitroにおける癌細胞のcriteriaですが、私はTCsystemでのmorphologyはあくまでも“参考"であってこれで物を云う事は危険であると考えます。一応現段階ではautoまたはinbred animalにもどしてtumorを作るか否かで判定することになるでせうが、それもtumorを作る細胞=癌細胞と考えた場合であって、若しそうでない様な事もおこるとすると全く面倒なことになります。兎も角今年班員の一人として再出発するにあたり、どの様なsystemで如何に仕事を進めて行くか検討している処です。

《高井報告》
 I)btk mouse embryo cellsの継代培養
 前回の月報に記載しましたように、control群、実験群共に増殖がかなり遅くなって来ました。特に、実験群(Actinomycin S 0.01μg/mlを含む培地)は、増殖が悪く、11月16日の継代后、1本は細胞が消滅してしまい、残り1本は12月1日以后、Actinomycinを含まない培地にかえて培養していますが、殆んどふえていない様です。control群の方は、遅いながら少しづつはふえています。細胞の形態は、control群では繊維状の突起が非常に多い細胞が全く無秩序に重なり合っており、初代培養の頃の様な紡錘形に近い細胞が方向性をもって配列している様な状態とは全然様相を異にして来ました。これに対し、Actinomycin群の方は長い突起は少い様で、膜状に広がった細胞質を、もった細胞が多い様です。
 その後の復元はまだ必要な細胞数が得られないので行っておりません。
  )bik(adult)皮下fibroblastの培養
 1)前報の母親mouseからの培養が、漸次増殖して来ました。形態は上記embryo cellsのcontrol群とよく似ています。目下第1回の継代をしたところですが、継代がうまく行けば、その一部にAcatinomycinを作用させるつもりです。
 2)プロナーゼによるadult btk mouse皮下組織の分散。12月にはbik mouseのnew bornが得られず、止むなくadult(♀経産)の皮下組織を0.05%プロナーゼ、室温、30分でやってみました。充分な細胞は得られませんでしたが、一応培養中です。(顕微鏡写真を呈示)



《佐藤報告》
 皆さんお目出たうございます。本年も頑張ってなんとか仕事の完成を祝いたいものです。新年の第1報はDAB飼育呑竜ラッテ肝の組織培養についてラッテ肝が発癌に近づき少しばかり面白い成績が出ましたので報告します。
 前号6412号に記載した◇C74(DAB投与日数192日)は、開腹に際して腫瘍らしい結節(microscopic=adenoma)を発見したので、結節部と非結節部に分けて原発動物肝の細切濾過細胞をnew bornのラッテ脳内に接種した。現在までに48日経過したがTumor(-):更に結節部の培養試験管から培養日数12日目の細胞をnew born脳内に接種。現在36日経過Tumor(-):
(写真を呈示)。写真の様に肝細胞に大小不同があり、重なり合って増殖している。核分裂末期のものも認められる。最初培養管中に多数の此等細胞を認めたとき癌細胞と考えたが、上記の様に移植性はなかった。腺腫と考えている。写真B1は非粘膜部に現われる肝細胞であり、Aに比して大きく核仁が著明である。大小不同もかなり著明である。多くの標本から考えて見るとこの細胞はDAB投与による再生結節の肝細胞と考えられる。
写真B2は同様非結節部の肝及び箒星細胞である。混合することはない。肝細胞が段階的に悪性化するとすれば、B2→B1→Aとなると推定できる。Aは此の写真のみでは明かでないが、増殖する場合索状(模式図を呈示)になって行くことが特徴であり、このものが更に悪性化すれば散在性或は瀰漫性の増殖をおこすと考えたい。
写真Cは◇C68(DAB投与149日)に認められたものであるが(勿論肉眼的、顕微鏡的に未だ癌発生はないラッテ)箒星状細胞に囲まれた中央部にB2に類似する肝細胞が認められる。細胞にかなり大小不同があり、時には異型のものも見られる。
写真DはC65(DAB投与121日)より作られた株細胞である。以上の経過から形態学的な移行がLD+20%牛血清培地でうまくとりだされたと考えれば、D→C→B1→B2→Aとなる。A細胞群の行きつくところ、即ち移植性のある肝癌細胞AHの発見のため(勝田班長からの電話によれば、佐々木研での原発肝癌からの移植率は50%)続けて実験をおこなった。
 ◇C76(DAB投与192日)以后普通食9日。64:11-28
前例同様結節部と非結節部に分けてnew bornラッテ脳内に1匹当り大凡30万細胞を接種した。現在までに38日経過したがTumor(-)。
組織培養に現われる肝細胞は74実験と略同様である。
 ◇C78(DAB投与192日)以后普通食14日。64:12-3
この例は結節部が小さかったので復元は行なっていない。細胞像は同じである。
 ◇C80(DAB投与192日)以后普通食21日。64:12-10
この例には結節は発見されなかった。第27日検索において2/10陽性である。但し箒星状細胞はかなり多く認められる。陽性例の1本にはB1〜B2の像がみ見られる。他の一本は従来DAB飼食呑竜ラッテ肝から株細胞が出きた始めの細胞である。後者の発生は従来記載した様に尚発生時期がのこっているので陽性率は未だ上昇する可能性がある。
 詳細な討論については班会議で行いたいが、C細胞が出来るまでにかなり長い年月が必要である。ある時期が来ると殆どB1〜B2細胞になる。この細胞の存在下にA細胞が現われると思われる。
 又LD+20%牛血清培地で肝癌細胞の移植性がどの様になるかを、AH-130より勝田・高岡によってつくられたJTC-2細胞でラッテnew born脳内接種実験を行っている。第2回第3回実験は未だ検索中であるが、第1の実験では10,000、1,000、100の細胞(JTC-2)脳内接種で10,000(16日、18日) 1,000(18日、19日) 100(24日、25日)で夫々死期をむかえた。屠殺后の鏡検で明かにTumorの増殖を認めた。したがってAH-130の場合、培養で其れほど移植性はおちないといえる。

《奥村報告》
 謹しみて新春の御慶びを申し上げます。
 皆様、昨年中はいろいろ御世話になりました。どうも有難度ございました。本年もよろしく御指導、御鞭撻の程をお願い申し上げます。毎年、正月には“ことしこそは"と思うのですが、なかなか予定通りの成果をあげることが出来ずに年を越してしまいます。しかし1964年までかかって一応最初の計画通りの研究室を作ることができました。1965年からは、これまでの基礎の上にどしどし成果を築いてみたいと思い、4日からスタートを切りました。どうぞ、よろしく御導き下さい!! 本報では新年の御挨拶旁々現況の概略を報告いたします。 A.HmLu細胞の無蛋白培地へのAdaptation
 過去9ケ月にわたりHmLu細胞をserum-free培地(NO.199)にadaptさせるべく努力してまいりましたが、今月4日になって、ようやく1%(calf serum)で増殖させるところまで到達いたしました。今后は、Glucose、Pyruvate、Glutamineなど主な成分を検討して、3月頃までには完全にprotein-freeにもってゆきたいと考えています。
 B.JTC-4細胞のchromosomal DNAの合成解析
 Bender & Prescottらの行った方法と似た方法を用い、JTC-4-Y(染色体数分布:30〜35)の各染色体のDNA合成をH3-TdRのautoradiographで分析をはじめています。これは昨年10月頃から行い、現在ではかなりfineなgrainを染色体上につくることが出来るようになりました。 C.ウサギ子宮内膜上皮細胞に関する研究
 昨年12月からH3でラベルしたProgesterone、Estradiolを用い内膜細胞への取り込み実験を計画、実施中です。当面しらべたいことは、1)ホルモンが細胞内に入るかどうか、2)取り込まれる場合にはcytoplasmか、又は核内まで入るがどうか、そしてその取り込まれ方の時間的推移、3)現在cotrolの細胞としてJTC-4細胞を用いているが、はたしてホルモンに対する細胞の感受性とホルモンの取り込まれ方に何らかの関係が存在するかどうか。
 以上の諸点を検討したのち、cellの増殖(ホルモンによっての)との関係など詳細に分析していくべく計画中です。
編集後記


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