【勝田班月報・6502】
《勝田報告》
 A)発癌実験:
 (1)なぎさ培養による第4番目のMutant(RLH-4)
 1964-8-9:RLC-2より、なぎさ培養開始。9-4:RLH-1のCell homogenate添加。顕微鏡映画の撮影を開始。9-7:Mutant発生を示唆するような所見。9-8:カバーグラスを取除く。10-5:継代(平型回転管よりTD-15へ)。11-2:継代(TD-15よりTD-15へ)。12-25:新コロニー発見。映画撮影開始。その后順調に増殖をつづけているが、このMutantが果して何時ごろPopulationの中に生まれたものか、簡単には推測できない。
 RLH-4の染色体数:(図を呈示)13ケしかかぞえてありませんから、決定的なことは云えませんが、Hypertriploidのようです。RLH-3は63本がピークで頂度3nでした。
 (2)なぎさ培養細胞のフォスファターゼ染色
 Alkaline-phosphataseとacid phosphataseの2種について次の各種標本について染色を行ってみた。対照細胞のL・P3はよく染まったが、なぎさ細胞は(シート部も)何れも活性がよく認められなかった。これはさらに追試確認すると共に染色法自体も検討する必要を考えている。RLC-5:1964-12-3→1965-1-30(なぎさ培養58日)。1965-1-15→1-30(なぎさ培養15日)。1965-1-22→1-30(なぎさ培養8日)。RLC-6:1965-1-22→1-30(なぎさ培養8日)。
 (3)なぎさ培養へのlabelled cell homeogenateの添加
 RLC-5:1964-12-24:なぎさ培養開始。1965-1-12:H3-thymidine-labelled homogenate添加。添加1日、2日、3日、4日后に標本を固定してautoradiographyでしらべた。
 mitosisの細胞の染色体のどこか一部にgrainsが集中して認められないかどうかしらべたが、染色体にgrainのあるものは認められなかった。
或はもっと長期おいてからautoradiographyをおこなった方がよいのかも知れない。
 (4)Mutantsの復元接種試験
 (a)1964-12-12:雑系ラッテ生后24hrs以内のものに脳内接種。RLH-1、RLH-2、RLH-3(300万〜700万コ宛)・2匹宛。1965-1-5:RLH-1接種ラッテの1匹が死にかけたので剖検したところ、脳水腫と判明。腫瘍細胞の増殖した兆候なし。1-21:残りのラッテ全部を殺して剖検。RLH-3接種の内1匹が発育不良で脳水腫。他は全部健全。異常なし。
 (b)1965-1-22:生后1ケ月のハムスターのポーチへ次の如く接種。RLH-1、RLH-2、夫々に100万個/ハムスター。ハムスターは何れもCortisone0.1ml(2.5mg含有)を週2回接種。ポーチ内の腫瘤が大きくなったら、これをラッテへ移植してみる予定。
 B)その他の実験:
 (1)ラッテ胸腺細胞
 正常ラッテ胸腺より樹立した4種の株(RTM-1、-2、-3、-4)について、その細胞質内の特異顆粒の性状をしらべるため、DNase、RNaseをかけて、その后アクリジオンレンジで蛍光染色をおこなったが、特異顆粒がきわめて少かったため、この結果については信頼できない。(光らなかった。)
 なおこの特異顆粒中にγ-globulinが含まれているか否かを電気泳動法で証明するため、少し宛継代のたびに細胞をためて凍結貯蔵中である。
 (2)ウマ末梢血白血球の培養
 Cell countingをおこないながら、白血球、特に単球細胞の延命に好適な培地と培養法の検索につとめている。

《土井田報告》
 RLH-3の核型分析
 RLH-3の染色体数の分布は先に報告した通り、63本のところにpeakを有した。今回は核型分析の経過を報告する。(図を呈示)。2つのn=62の細胞では、telocentric chromosome(TCC)が共に42本で残り20本はmetacentric又はsubtelocentric chromosome(MCC or STC)である。これらの染色体の大きさは漸進的に変化していて、特長となるものはないが、最小の2本のMCCは他のものとは稍々目立つ程度に小さい。染色体数53本のものでは、同一細胞内に2ケのdicentric chromosome(DCC)を含む例がある。TCC以外の染色体数は22である。この例でも稍々小型の2本がみられる。
 64の例でTCC以外の染色体は19本で、1本の著るしい大型のSTCがある。
 この系統の細胞ではtelocentricでない染色体の総数は18〜22の間にある。
 RLH-1との比較
 著しい特長はTCCがRLH-1では15本前後で総体的に少ないが、RLH-3では逆にTCCが多くそれ以外の染色体数が20本前後と少なかった。
 同じ起源の細胞で、同様の処理を受けたと思はれるのに、核型構成の上に大きな変化が起り、非常に異なったものが生じたことは現象的に興味あることである。

《高井報告》
  )btk mouse embryo cells(第5代目)のgrowth curve
 10月2日より培養をつづけているControl群に、Actinomycinを作用させて見ようと考えていますので、まづそれに先立って、この細胞の増殖率を調べてみました。最初startする時、生の状態では細胞が見えにくく、又ある程度の細胞塊があり、極めて細胞数の算定が困難であったため、inoculum sizeが少なすぎました。従って、細胞数のバラツキもかなり大で、良い実験ではありませんが、lag phaseが相当長くて6日目になって漸く増殖の傾向が見えて来ました。このあと更に日を追って追求中ですが、何れにしても増殖は緩慢です。
  )mouse皮下そしきの培養。その後もくり返し、btk mouse(adult及びnew born)の皮下組織の培養を試みていますが、まだうまく行きません。又たとえうまく行ったとしても皮下そしきのみからでは極く少数の細胞しか得られないのではないかと思いますので、この方法は一応中止しようかと考えております。
 細胞に発癌剤を作用させて、腫瘍化させるのが一番大事な目的であるのに、その発癌剤を作用させるべき材料を得る段階に余りに大きな労力を費すことは、賢明とはいえないと思います。whole embryoでは得られる細胞が、色々の組織に由来することが不利だというので、皮下そしきのみを材料にしようと考えたわけですが、たとえmixed populationであっても、培養し易い材料をえらぶ方が実験の能率が上ると思います。又、発癌のmechanismがおそらくはDNA合成の何らかの過程と密接に関連していると考えられますので、DNA合成の盛んな、つまり増殖の速い細胞を材料とする方が有利と考えられます。この意味で上記I)の如き細胞は余り適当ではないと思いますので、株細胞も扱ってみようと考えています。  )btk mouse embryo cellsおActinomycinを作用させたものを、現在Actinomycin(-)の培地に戻して観察していますが、最近生残った細胞が少し増殖して来ましたので、今後更に追求して行く予定です。

《黒木報告》
 吉田肉腫の栄養要求(3)
 前報でセリンが有効との結果を得ましたが、その至適濃度の決定を行ったのがこの報告です(Exp.#248-2)。(表を呈示)すなはち、optimum conc.は0.2mMです。なお、pyruvateは本実験では2.0mMを用いていますが、その后のExp.で(Exp.#248-1)で0.5、1.0、2.0mMがほぼ同様の結果を得ました。
 血清濃度との関係は(表を呈示)表の通りです。SERINEが入っても5%ではNo growthです。5%WholeでGrowthさせるのを次の目的とします。なお、10%C.S.、1.0mM Pyr.、0.2mM SER.の条件におけるGrowthは6回測定しましたがバラツキが多く、23.0±5.9hrs.です。

《高木報告》
 in vivoの発癌実験を考えてみる時、私はOrrの仕事に興味を覚えます。彼はepidermal carcinomaを作る実験で、carcinogenをapplyした場所に隣接する部分のstromaが、この発癌に大いなる役割を果すらしい事を述べています。つまり彼はM.C.をマウスの右肩にapplyしてそこからepidermal graftをとって左肩に移植した場合にはtumorを生じないが、もとのgraftをきり出した処にはtumorを生ずると云う事・・・を行っております。
またこれは発癌実験ではないのですがGrobsteinのdifferentiationに関する興味ある仕事もあります。この場合彼はpancreatic rudimentのepitheliumからacinal differentiationmesenchymと共に培養した場合においてのみである事を述べております。・・・これらは1、2の例ですが、この様に考えて来ますと、differentiatinにせよ、dedifferentiationにせよ、これらの場合、実際に変化を被る細胞(組織)の外に上の例ではConnective tissue stroma、またはmesenchymと云ったtissueの存在、つまりこれらのtissue相互間のInteractionが大切な役割を果している様に思えます。もう一つin vivoの発癌で考慮されねばならないのは広い意味のCo-Carcinogenic factorであろうと思います。兎も角生体における発癌の過程をみる時、これは決してsimpleなものではありません。
今in vitroの発癌実験をふりかえってみると、今日までCell-medium-Carcinogenと云った比較的Simpleなsystemで実験が続けられて来ました。そして癌らしき細胞も出来るのですが、癌細胞のcriteriaがその細胞を復元して無規制な増殖を示すと云う事にあるため、その過程で今一歩と云う処かと思います。私共も、今日まで同様なsystemでStilbesterol−hamster腎を用いて仕事をして来た訳ですが、薬剤のえらび方か、臓器のえらび方か、或いはculture techniqueの問題かは知りませんが、先ずはっきりしたdataを出す事は出来ませんでした。勿論この様なsystemでも発癌する事は充分考えられますが、今后は新しいsystemで出発したいと考えています。つまりよりpotentなcarcinogenをよりorganizeされたtissueに作用させ、更にCo-Carcinogenic factorをも考慮して仕事を進めて行きたいと思い、その準備をしている訳です。

《佐藤報告》
 研究員の関係で1月は少しペースをおとしてので新しい研究はしていない。
DAB投与による発癌はDAB 10μgの投与をつづけているものにDAB消費度の減少を来たしたものが現われたので復元を準備中。
 3'-methyl-DABを投与すると投与日数によって染色体の移動3nがおこる様である。
 RLH-1:1965年1月5日、呑竜ラッテ新生児に1匹当り脳内27万、腹腔内90万、各々2匹宛注入したが、目下(-)。
 DAB飼育ラッテ肝からの肝腺腫様細胞の一部は増殖中で、なんとか株細胞にしDABの追加実験をして見たいと思っています。此の細胞をとるために一部のものはJTC-2或はラッテ肝細胞株のconditioned Mediumで培養している。
 AH-130動物株とJTC-2と比較
JTC-2は腫瘍性(復元性)は殆んどおちないが、悪性度(脳内における増殖態度が膨張性)は少くなっている。継代は可能で目下3代目。動物通過で悪性度が恢復するかは検討中。


編集後記


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