【勝田班月報・6509】
《勝田報告》
 A)“なぎさ"→DAB処理細胞の所見
 先般の班会議に於て“なぎさ"培養した細胞を継代してすぐDABを高濃度に与えると、DABを代謝しないような細胞が高頻度に得られる、と報告したが、これらの細胞のその后の形態学的特徴を記載する。(主に1μg/ml、58〜102日間処理)。A系:形のそろった小型細胞が密集のシート。B系:やや小型、形不揃、殆んど一杯のシート。C系:中型不揃、顆粒多、集落中心部厚し。D系:小型割に揃、集落形成、分裂多し。E系:死滅。F系:小型、揃、密集シート全面。G系:中型ほとんど一杯のシート、センイ芽細胞様細胞も混。H系:小型、割に揃、殆んど一杯のシート。I系:中型、不揃、顆粒多、集落形成。J、K、L系:円形回転管にて回転培養中、観察不能。M系:中型、薄、不揃、ほとんど一杯のシート。N系:中型、不揃、顆粒多、ほとんど一杯のシート。O系:やや小型、顆粒多、不揃、小さな集落。P系:円形回転管(静置)ほとんど死滅。Q系:小型、揃、密集シート全面。
その后の観察、H系:シート上に立体的集落なし、顆粒余り目立たず、動きまわりそうな細胞は見当らず。I系:顆粒の多い細胞あり(特に大きく拡がった細胞に)小型細胞群もあり(空胞なし)。R系:小型の細胞に空胞あり、シート上に塊はあるが生死は不明、異型性少し、大型少し、黒ぽい細胞質顆粒の目立つ小型細胞多し。(表を呈示) 上記の内、特にCとDは有望なので、復元接種を試みるべく、細胞の増えるのを待って居る。特にDは顕微鏡映画撮影によると、運動性がかなり活発で3極分裂のような異常分裂やEndomitosisなども記録された。 B)“なぎさ"細胞の復元接種試験
 各種の可能性を考慮した結果、純系ラッテを用いずに(JAR♂x呑竜♀)のF1を作り(65'-8-6夕方出産、11匹)65'-8-7午すぎ、腹腔内に1000~2000万個/rat宛接種した。その后各仔とも発育しているが[10日后の観察]他の無処置の家族に比べ、全般的に見て発育が良くなく、痩せて居る。そのためが腹部が大きく見えるが、腹水は採取できない。(RLH-1・2匹、RLH-2・3匹、RLH-3・3匹、RLH-4・3匹)。やっと1000万個の細胞を揃えて、F1に、24時間以内に接種してみた理想的な実験なので、少くとも6月以上は観察する予定で個室アパートも用意して、時の経つのを待っている。
 C)DAB耐性度試験
 DABに対する耐性度を細胞の側から定量的に表現するため1種の“Dose response curve"のようなものを描くために、まず対照としてRLC-5株(無処理、肝)を用いて6日間に渉りDABを3種濃度に添加して増殖曲線をとったが(図を呈示)、何の理由か不明であるが、無添加群でも増殖率が悪くデータとしては使えないような結果になってしまった。
どうして増殖が悪かったかであるが、この頃どうも一般に当室ではその傾向があるので、培地成分、特にラクトアルブミン水解物の陳旧化に因るのではないかと考慮し、新しい製品によるテストを準備中である。なお血清は春期採取の凍結保存材料を用いた。

《佐藤報告》
 (表を呈示)表は前号に記載されたものに、其の後腫瘍が発見されたものを追加しました。最上列には肝細胞株名を記載してある。その株の由来は矢張り前号に系図を書いてあります。RLD-10のみ例外的に左に書いてありますが、他のものは株の系図と同じ順序で並べてあります。この結果から見ると64'-9-5にRLD-10株より3'-Me-DABを与へたものは65'-3-4にRLD-10(10〜20μg)からpipettingによって分離されたものを除いて、すべて腹水肝癌を生じたことになります。肉眼的に脳内水腫のみでTumorをみとめられない例で全脳をすりつぶして1ケ月程度のラッテ腹腔へ動物継代したとき明かに腹水肝癌を生じて死亡した例がC85の実験のRLD-10(10〜20μg)株例に認められました。この事は先に脳水腫とTumorを同時に認めた例と併せて、脳水腫とTumorとが密接な関係にある事を示しています。脳内水腫による死亡日数は腹腔内腫瘍死に比較して約1/2ですから、明らかなTumor形成(腹水癌発生)のsignal signとなる。
 復元して出来たTumorはC86例、C91例、C96例及びC97例については動物継代及び再培養を行い比較検討中である。今の所これらの細胞の間にかなり相異がみられるやうであるから、最初の発癌剤のときより新しい癌細胞が培地中でできつつあると考えたい。現在までの復元陽性成績から考えると、RLD-10(10〜20μg)及びRLD-10(10-L2)が復元陽性の筈出、最近65'7-7 C114:i.c.3例、i.p.4例、subc.3例。65'-7-24 C125:i.c.4例、i.p.4例を追加復元した。現在までの所Tumorの発生は見られない。
 (表を呈示)C53、C60、C61、C74、C82、C84はDABをfeedingして後、株化された肝細胞名です。
C74即ちDABを191日与えられてから培養された株は、C82(DAB-feeding236日)に比して腫瘍性が弱い。 C84は復元后、日が浅いので未だ結論は出せない。
下半分は現在判明した対照株の復元成績ですべて陰性です。
再現実験は目下色々の方法ですすめていますが、未だ成功したものはありません。

《土井田報告》
 RLH各系の細胞遺伝学的研究  
 前月月報に続いてRLHの4系の染色体数の分布および核型分析の結果を報告する。
 (図を呈示)第1図はRLH-1、-2、-3、-4系細胞の染色体数の分布を示す。これらの細胞は1965-6-16に標本を作成したものである。モードの染色体数は69、78、58、69であり、月報6508号の報告とちがっていない。
 第2図はRLH-3の染色体数およびその分布を経日的に調べた結果である。標本6501は月報6501に報告したものである。此の時染色体数のモードは63にあった。染色体数は左にひずんだ分布を示している。標本283は第1図に示した結果と同じである。染色体数は58で、分布は均等で正規分布に近い型を示している。標本作成日は上記1965-6-17である。核型分析を行なう程よい標本でなかったので、1965-7-13に高岡さんの方で標本(air dry法)を作ってもらい、観察した結果が標本285に示されている。僅か1ケ月で染色体数のモードは55に移り、標本283より更に3本減少した。核分析の方が充分に進んでいないので、どの様な変化が起っているか不明であるが、極めて興味ある現象と思はれる。染色体数の違った細胞間のviabilityに差がるにしても、何故このように徐々に変化するのか。RLH-1の染色体数が安定しているのと極めて対照的であり、変異性の原因について更に考えてみたい。
 第3図はRLH-4細胞の核型である。此の細胞は染色体数69で、13本のtelo-centric染色体を有している。他はMeta-、submeta-染色体である。RLH-1は14〜15本のtelocentric染色体を有しているが、相対的に極めて核型は類似している。厳密な更に多数の細胞の核型を調べた上で検討したいと考えている。

《高井報告》
 以前から期待していたbEIは、その後増殖が極めて悪くなり、むしろ死滅する細胞が多くなって殆ど絶滅、bE の一部とbEVは雑菌感染で絶滅してしまい、結局7月末から新たに再出発の形となりました。
 1)btk mouse embryoの皮下組織の培養(bE 及びbE )
 以前からembryoを用いることの不利と、更に全胎児を材料とすることの不利を指摘されておりましたので、今回はembryoではありますが、その皮下組織のみを材料として7月30日培養開始。方法は次の通り。btk mouse embryo 7(出産直前位)。頭、手足、尾を除いてから、ピンセットで皮膚をつまんで、ちょうど服をぬがせる様にしてむきとる。
bE =この皮膚片→皮下組織(筋肉も一部入って来る)をむしりとり、トリプシン液を加え、30分間室温でstirrerにかける→1,200rpm10分間遠沈→20%CS・YLHにsuspendして、TD40 3本へ(約15万cells/ml)。bE =この皮膚片をトリプシン液中で30分間stirrerにかける→遠沈→TD40 3本へ(約15万cells/ml)。
bE の場合も、この程度のトリプシン処理では皮膚の上皮細胞はバラバラにならず膜状に残っています。得られた培養細胞は、以前よりは均一な紡錘形のもので、殆どfibroblastsと思われます。8月6日より、これらの細胞の一部に0.01μg/mlのActinomycinSの持続的な処理を行っています。
 2)bE (8月18日培養開始)
 妊娠16〜19日目のembryoを用いて、bE と同じ方法で培養開始。この時はbE の時よりembryoが小さかったので皮膚を剥がすのがやや困難でした。今後は妊娠20日位の出産間近のembryoを用いる必要があると思います。何れにしても、whole embryoを使うよりは良いと思われますので、今後はこの方法でやって行くつもりです。
 3)mouse embryo fibroblastsに対する高濃度Actinomycin短時間佐用の影響
 Actinomycin高濃度短時間の間歇的処理による発癌実験に対する予備実験として、bE 初代(3日目)の細胞を用いてActinomycinS 1μg/ml及び0.5μg/mlの15分間処理の影響をしらべてみました。(図を呈示) 分注してから、3日目にActinomycin処理を行ったのは、今迄このcellのgrowth curveを画いた時、lag phaseが割合長いことが多かった為、わざと遅らせてみたのですが、今回の実験ではlagは殆どなく(primary culture後3日目に実験した為か?)。こんなに遅くする必要はなかったと反省しています。尚、Actinomycin 15分処理後、1回Hanks液2mlで洗ってから、Ac(-)のmediumに変えました。
何れにしても、0.5〜1μg/mlの濃度では、15分間の処理で、0.01μg/ml持続作用に匹敵する位の影響があることが明かになりました。又、この場合、持続作用の時とは異り、4日目に一度減少した後、6日目で又増加していることが注目されます。しかし乍ら、週2回短時間処理で発癌をねらうためには、これではまだ少し作用が強すぎるかとも思われます。作用時間を15分間以下にすることは技術的に困難と考えられますので、今後もう少し低濃度で15分間処理の影響をしらべてみたいと考えています。

《黒木報告》
ラット胎児細胞(肺及び皮膚)への4NQの添加(1)
 細胞が発癌剤により癌化するとき、発癌剤はどのように働いているのか、この機作を研究するのが我々の目的である訳ですが、そのための作業仮説(手がかり)がうまく出来ないため、4NQの添加をのばしてきました。
 しかし、佐藤二郎先生、勝田先生の考え、成績から見て、発癌剤による細胞のdamage、それを通しての細胞の耐性かく得を一つの道標とすることができるのではないかと考えるに至り、ここにやっと4NQを添加することにこぎつけた訳です。又、2倍体細胞に関する山田先生の仕事からみても、transferするとき、死んでしまうcellが可成りあることと考え、subcultureはなるべくさける方針にしました。
 (1)RES-13(Rat embryonal Skin)
 Donryu Rat embryoのSkinをexplant outgrowth法でcultureしたものです。(図を呈示)
 Skinは1匹分を剥し、メスで細切后explant outgrowth法でcultureしました。初代はきれいなfibroblastのsheetでしたが、2代目からLungと同様の細胞質のうすい拡がった形態を示すようになってきました。
 ☆RES-13-NQ-1は10-7乗M添加后、full sheetとなったためtransferし、失敗した例です。このとき、10-7乗MではGrowthに殆んど影響のないことをMitotic index(計算法を呈示)を計算して確認しました。
 ☆そこで10-6乗Mに一度に高い濃度を加えてみたのですが(RES-13-NQ-2)、これはほとんど全メツに近く細胞がやられてしまったと云う結果に終りました。
 (2)REL-130(図を呈示)
 REL-130は6匹分のRat embryo lungsをまとめて0.1%pronase digestionにより始めたものです。培地は最初の4日間、一部にBov.alb.を1.0%添加しましたが、toxicのことが明らかになったため、それを抜き、CS 10%、Eagle MEM(GLY+.SER.、PRO.、Pyruvateを添加、CYSは4xに濃度を上げる)を用いています。細胞の形態、Growthは前報の通りです。
 ☆REL-130-NQ-1
7月29日より添加開始。はじめは10-7乗Mでしたが以后、10-6.5乗、10-6乗、10-5.5乗Mと濃度をあげて来ましたが、cell damageの様子はなく、困っています。今后更に-5.0乗までもって行く積りです。
細胞は4NQ添加にも拘らず、Growthをつづけ、full sheet−multilayerになっている状態です。形態はmultilayerのためかspindle状、格子模様がみられます。
 ☆REL-130-NQ-2
8月2日より3日間、一度に10-6.0乗Mの4NQを加えたところ、sheetの3/4位が剥れ落ちてしまい、残ったところに島状のcell sheetをみるだけになりました。4NQの添加は三日間で打ちきり現在は普通の培地で細胞をgrowthさせています。
 このように高濃度の4NQに対して耐性のかく得(又は先天的な耐性)は今までの報告になく興味ある現象ですので、今后注意していきたいと思っています。
 なお、L細胞のPE50は(50%のplating aff.を起させる濃度)は、約10-8乗Mと云う成績が出ています。遠藤英也氏のDataによると、Chang Liver cellは10-5乗Mでほとんどmitosisがみられなくなるとのことです。
《高木報告》
 梅雨以降無菌室の状態が全く不良で、moldになやまし続けられたが、8月中旬にcoolerをつけたので大分よくなり、これからの仕事に励まうとしている処です。従って仕事の方は大した進歩がなくて申訳なく思いますが、以下moldになやまされず行い得た実験についてのみ記載します。
 Exp.3 rat submandibular gland(8day old rat)
 培地80%modified Eagle+10%CEE+10%BS。
組織片をsupportするのにteflon ringに不足を来した為、Spongelを用いた。即ちSpongelの上にlens paperをおき、その上に3〜4片のsubmandibular glandをおいた。培地交換は3日毎に行い、5日毎に固定してH&E染色を行い検鏡した。
その結果、培養5日目にしてcentral necrosisがみられ、10日目に至ると実質細胞の変性がましたが導出管腔壁の細胞は割に良い状態に保たれ、これは15日目まで同様であった。なお管腔内に小円形でpicnoticな核を有する細胞塊を認めた。培養20日になると組織は殆ど壊死におちいった。全期間を通じてmitosisの像はみられず、培養と共に壊死におちいる傾向が強くなった。
 Exp.4 rat skin(4day old rat)←4NQO
 培地modified Eagle+10%CEE+10%BS。
teflon ring、lens paperを使用した。3つの群をおいた。1)Control。2)4NQO 10-6乗mol。3)agar mediaに組織片をおく。
培養5日目になると角質が大体2〜3倍に厚くなり、その後は変化がみられず、むしろ15日目になると角質は表皮からはがれて来る。表皮は一般に5日目までに幾分厚くなり、その后は厚さに変化を来さない。核の大きさは培養と共に一部のものにおいて増し、大小不同の傾向がややみられる。mitosisの像は本実験ではみられなかった。毛嚢の構造は5〜10日目で次第に失われる。10日目以後になると全実験群に壊死の像がつよくなったが、その程度は4NQO添加群においてやや強い様に思われた。
agarを用いたsolid mediaとliquid mediaとの間に明らかな差は認められないが、liquid mediaがやや良い様にも思われた。これから培地条件につき検討を加えてみる予定である。
《堀 報告》
 前報の終りに書いた事に従って、今月はin vitroにおけるenzyme inductionをシロネズミ肝細胞の培養初期に試みることにして、その手始めとして次のことをやってみました。 (1)G6Pdehydrogenaseについて:このenzymeはシロネズミを3日間絶食させ、続いて[30%casein、60%glucose、2%Yeast,4%植物油、4%粗製塩]よりなる餌を2〜3日与えると、無処理の肝では極めてうすくしか染色されなかったものが、非常に濃く染まる様になり、簡単にinductionを証明出来ます。処が、in vitroでは同じ方法がつかえないので(inductionのために)、まず上記の処理をしたネズミの血清、各種臓器をとり出し、その抽出物を作って、色々なdoseで無処理のネズミの腹腔に注入し、その肝を染色してinductionが起っているかどうかを調べてみました。もし、有効抽出物が得られたら、それを培養細胞に適用しようというわけです。処がどんなことをしてもさっぱりその有効成分を分離出来ず、この試みは目下の処失敗です。
 (2)G6Paseについて:ネズミにcortisoneを投与すると肝のG6Pase活性が3倍位上昇すること、この上昇はenzymeがinduceされたためであることが知られています。そこで、培養肝細胞のcortisone処理を行い、G6Paseの染色を試みました(培養するとG6Paseが染らなくなることは前に報告しました)。1μg/mlから上のdoseで色々やってみましたが、10μg/ml以上では短期間に細胞がやられてしまうので、結局1μg/mlで1日〜1週間処理をしてみたのですが、結局これでもenzyme inductionは不成功でした。目下、in vitroでのenzymeinductionを如何にやったらよいか困って居ります。
 上の実験とは関係ないのですが、phytohemagglutininの培養肝細胞に及ぼす影響を調べて居りますが、目下の処顕著な増殖促進効果はみられて居りません。





編集後記


 Click [X] after reading.