【勝田班月報・6608】
(勝田班長はアメリカへ出張・《巻頭言》にアメリカ便)
《佐藤報告》
RLD-10細胞については既に度々報告しました様に自然癌化があります。3'-Me-DABを投与すると200日位で復元の陽性率が上り、及びラテ生存日数が短縮されます。
RLN-10細胞はRLD-10細胞の起源のラッテと同じ肝臓からDABに全く関係なくつくられた株細胞です。この細胞に対する3'-Me-DAB投与実験は図を呈示します。現在までの所Tumorを形成したものは有りません。
従って現在までの所RLN-10細胞には3'-Me-DABは発癌?という機転については作用していない。併し形態学的にはかなり強いtransformationをおこしている。然しtransformationの形はいづれの系統でもよく似ている。したがってRLN-10細胞では3'-Me-DABで癌化の一段階までには達するが完全な癌化にはいたらないとも考えられる。
《高木報告》
人胎児の皮フを用いた2〜3の実験について報告する。
1)約5ケ月と思われる人胎児背部の皮フを切り取り、P.C.1000u/ml、S.M.2000μg/ml、fungizon5mg/20mlを含むHanks液に約3時間浸して後、3x5mm似細切してPlasma
clot及び液体培地を用いて5%CO2gas含有空気よりなるCO2incubator中で培養した。
実験群はPlasmaclotを用いたものでは、a)4NQO
10-5乗Molを含むHanks液を2/w、表面より塗布したもの、b)control、液体培地を用いたものでは、c)75%199+20%B.S. d)75%199+5%C.E.E.+20%C.S.よりなるもの、以上4群とした。
結果:培養前野組織では表皮は大体3層で角化層は認められず、一層の規則正しく配列した基底細胞層をみる。培養3日目、a)b)両群とも表皮は4〜5層に肥厚し、その上に薄い(1〜2層)錯角層を伴う角質層を認める。基底細胞層の配列も整然として両群間に特記すべき差異を認めない。12日目に至ると表皮は5〜6層と更に幾分厚さを増し、4NQO添加群では対照に比べ角化層形成がかなり抑えられている。この時期までnecrosisも殆んどなく、組織は健常に保たれているが、先般のものに見られた程のmitosisはなく全体に少い。c)d)群では3日目まではPlasma
clotによるものと殆んど同程度に保たれており、C.S.、B.S.使用により特別の差を見ないが、9日目のものでは両群共全くnecroticであり途中incubatorの温度が上りすぎるという事故はあったが概して液体培地はよくないと思われる。この実験で初めてfungizonを用いたが特別toxicでもなく好結果であったと思う。
2)無菌的に取り出された約5ケ月目の人胎児の皮フを1)と同様な方法で培養した。この場合fungizonは用いず実験群は、a)4NQO
10-5乗Mol in Hnaks塗布群及び、b)対照群とし長期培養を目指した。培養前の組織は時期的にも、組織学的にも、1)のものと殆んど同様である。培養4日目、両群共表皮は5〜6層と幾分厚くなり薄い角化層(1〜2層)を認める。4NQO添加群では基底細胞層の配列が不規則でこの点、対照と著しく異なるが両群同様に健常である。8日目表皮は6〜7層と幾分厚くなり2層程度の薄い錯角化を伴う角化層を同様に認める。この時期のものでは基底層は正しく配列しており、4日目のものであの様な乱れを生じたのは偶然か有意なのか俄かに断じ難い。今後の検討にまちたい。この1)2)を通じて云えることは前の同様な実験に比べてmitosisが非常に少ないことである。培養条件で変った点と云えば、O2gasを空気に変えただけなので、高O2濃度が分裂を促進したのではないかと考えている。尚目下、継続培養中である。
《黒木報告》
Hamster Whole Embryo細胞への4NQO及び4HAQOの作用(5)
(1)移植実験
ついにハムスターが「腫瘍死」を遂げました。死んだハムスターは先月の月報に写真をのせた新生児皮下100万個移植群で現在6匹中3匹が死にました。生存日数は74日、80日、80日です。残りの3匹もかなり弱っていますので間もなく死ぬと思います。
腫瘤は非常に大きく最大のものは50x40x50mm、小さいものでも35x25x20mm位あります。このようなのが3〜4ケあるのですから、恐らくハムスターの体重よりもTumorの方が重いと思います(両方合せて140g)。
転移は肝に小さい白色結節が1つみつかっています(組織像はまだ)。又腹腔内、胸腔内にも腫瘤は浸潤性に入り、肝、腎などに癒着しています。これらの所見から考えてこの腫瘍が悪性であることは間違いがないことと思っています。
その他の群、例えばadultの皮下、ch.P.移植群はまだ死ぬ気配はみられません。(tumor自身はどんどん大きくなっている)。
(2)新たに始めた実験について
4NQO及び4HAQOのtransformationの再現性をみるため、及び4HAQOの最少必要量をみるために、次の三組の実験をstartしました。
1)Exp.345(Zen-2、NQ-4、HA-3)(図を呈示)。
この実験は前回の4NQO、4HAQOの実験のそのままのくり返しです。4NQOは、NQ-2と同様にmorphological
transformationがおきたのですが、これまたNQ-2と同様に動物にtumorを作ることは出来ません(現在培養117日)。増殖は活発です(10x/w)。
4HAQOは最初からcrisscrossのpatternがみえず、現在までだらだらと継代されています。最近growthがよくなって来たので移植したのですがtumorは出来ませんでした。この4HAQOによるtransformationのreproducibilityの失敗は、4HAQOのstock
soln.として前に作り、-20にて保存したのを、その度thawingして用いたことにあると思われます。
2)exp.378(図を呈示)
前回のHA-3にこりて、少し面倒でも4HAQOは実験の直前に作り、保存したものは用いないことにしました。また1回実験する度に残ったcarcinogenを光電比色計にかけ、その吸収度曲線を記録として残すことを励行しました。
実験の目的は4HAQOの必要量を知ることにあります。もし1回の処置でtransformationがおこるのなら、発癌機構の分析は非常にし易くなるはずです。
carcinogen処置後2日目には、一部に細胞の配列の乱れがみえて来ました。この所見は、carcinogenを取った後もつづき10日目頃には、transformed
focusらしきものがあちこちにみえるようになって来、有望のようです。これに対して4HAQOを4回8回とかけた群(AH-6、HA-8)は、細胞のdamageがひどく現在に到るも継代出来ない状態です。
3)Exp.403(図を呈示)
この実験の目的は二つあります。一つには4HAQOの作用時間を思いきって短くし、10分間あるいは1時間とすること。他はnon-carcinogenic
carcinogenである4-amino quinoline-N-Oxideの作用をみることです。
4HAQOは非常に不安定で培養液中では10分間位しかもたないだろうという遠藤英也先生の意見にもとずき、4HAQO
10-5乗M添加後10分及び1時間後にcarcinogenを除きました。(除き方は前にも記したようにPBS
3回、medium 1回で洗います)。まだ培養後僅かしかたっていませんが、初期のmorphologicalな変化(criss
cross、multilayer)はHA-8、HA-9のいずれにもみられました。今後が期待されるところです。
4AQO(図を呈示)はreduceされるときのproductで、発癌性はないといはれています。この4AQOを杉村先生にお願いして分けて頂きtransformationの有無を調べています。途中、吸収度曲線のとり方のエラー(pHのadjustの忘れ)から癌センターに問合せたりして、連続投与は出来ませんでした。4HAQOとは異るようですが、morphological
transformationはおきているようです。10月までにはある程度わかることと思います。
いずれの実験でも継代の度毎にコロニーの形成を試みています。