【勝田班月報:6710:Transformationを来した細胞の抗原性の変化】
A.4NQO発癌実験:
4NQOによる実験は主としてRatのfibroblastsを用い(実験一覧表を呈示)、最近の実験で4NQOの濃度を3.3x10-6乗Mにあげてみたところ、これまで変異細胞の集落の発現するのに約1月要したのが、きわめて短縮され、たとえばExp.CQ#23の実験では処理後8日目に1本の培養管の中に5コの集落が発見された(その経過の映画供覧)。仮にこの集落に、A、B、C、D、Eと略名を与えたが(顕微鏡写真を呈示)、増殖細胞Cは小型で、細胞質顆粒に富んでいる。Dはやはり小型の顆粒の多い細胞が見られる。これらの集落が夫々別個に発生したものか、或は一コの集落から飛火したものか、これは現在のところでは不明である。
復元接種試験は、この最近のexpt.の細胞はまだ接種していないが、その前のものは今日までのところでは何れも陰性の結果となっている。
しかし、このように短期間で変異細胞(?)が現われるようになったので、映画でその全過程を追うにしても、これまでの4倍の能率を上げることができるようになり、うまく視野内で変異をcatchできる可能性が一段と強くなった。今後は当分この3.3x10-6乗M・30分処理でやって行きたいと思っている。
B.“なぎさ”培養によって生じたラッテ肝細胞の変異株RLH-5:
Exp.series“CN"#43でRLC-9系からRLH-5が得られた。その形態は(顕微鏡写真を呈示)肝癌AH-130に似ており、活発な運動性を示す。この変異株で面白いのは、はじめに使った細胞がRLC-9であり、これはJAR系ラッテのF29の雌の肝で、完全な純系材料を出発点としていることである。従って現在、復元の準備を進めているが、“take"される可能性がきわめて高い。
RLH-5の染色体のmodeは(図を呈示)63本と66本にピークがある。(64本が谷になっているのは、technical
failureによるものか否か、未だ不明)3倍体〜高3倍体で、その意味からも“take"されそうな感じがする。
C.正常ラッテ肝ホモジネートによるDAB代謝:
これまでrat肝をhomogenateにすると、どうもDABを代謝してくれないので困っていたが、反応液の処方を変えることによって、今回はじめて旨く行くようになった(処方を呈示)。この前の処方はMillerらのものであるが今度は安藤班員の新しく考案した処方である。
測定結果は、homogenateの作り方を、普通のWaring
blender、テフロンのホモジナイザー、フレンチプレスと3種採用して活性を比較してみた。また作ってすぐ測定したのと、4℃で2日間おいてから測ったのと、2種のデータをとった。
作って当日の測定(37℃、30分の加温)では、フレンチプレスによるhomogenateが最高の活性を示しているが、2日保存するとWaring
blenderの方が最高の活性を示している。どういう理由か、確かなことは未だ云えないが、保存中にenzymesが液中に遊離してくるためかも知れない。
D.なぎさ変異肝細胞RLH-1の復元接種:
RLH-1はこれまで何回復元しても腫瘍を作らなかったが、最近雑系ラッテとJARを交配して作っている第2系のJARのF3の生後1月のラッテに、皮下に2匹、腹腔内に2匹、2,000万個位宛入れたところ、皮下の方が2匹とも約1週後に小指大の腫瘤を作った。これは一部histology、他を培養と再接種(3匹)に用いたが次代のラッテでは腫瘤は形成せず消失してしまった。I.P.された2匹は未だ生存している。
:質疑応答:
[黒木]4NQO類による変異細胞は一般に顆粒が目立ちますね。
[吉田]復元にはF1のラッテを使う方が良いですよ。
[永井]DAB用のhomogenateを作るのにdeoxycholateを使ってみましたか。
[高岡]まだです。目下計画中です。
[黒木]4NQOは、特に細胞数が少いと毒性が強いですね。あのcolonyは少し立体的すぎる感じですね。Subcultureすると次代の形態はどうですか。
[高岡]継代しましたが形態はまだ見ていません。
[勝田]さっきお話したようにell sheetが流れて丸まったものではないかと思っています。Coloniesができたところで、早目に復元することを考えていますが、女はケチだから・・・。
[吉田]丸まったシートの中で、何かこわれた細胞から取って変異細胞が出来てくるのでしょうかね。なぎさ理論のように・・・。
[黒木]私はFull sheetになる1日前に薬剤をかけるようにしています。
[梅田]Heidelbergerの仕事では、あるcell
lineで変異株がとれても、他のでは駄目ですね。
[黒木]Colony levelの仕事に持込まなくてはなりませんね。今の所の“変異”のマーカーは?
[勝田]この場合はColony毎に性質がちがうかも知れません。マーカーとしては、いまのところは、coloniesが出来たということと、その細胞の増殖が早いということ、この二つだけcheckしています。
[吉田]悪性ということは、ネズミにつくかつかないか、だけではcheckできにくいですね。
[堀川]無処理のcell lineでも染色体の乱れはありますか。
[吉田]動物によってちがいます。マウスは変り易いですが、ラッテは維持しやすいですね。
[藤井]癌研の宇多小路氏の言によると、臓器によって染色体(数?)がちがうとのことですが、本当でしょうか。
[吉田]昔はちがうとも云われましたが、それは技術的エラーの結果で、現在ではちがわないとされています。
[梅田]4NQOの作用機序は判っていますか。
[黒木]4NQOそのものについては、どう変化するかはしらべられています。
[堀川]8アザグアニン作用後にでも、DNAに結合するということは云われています。
[黒木]杉村氏などは、蛋白への結合をいま問題にしているようですね。
[勝田]そのようなレベルの仕事は、今後培養で解明して行くべきですね。
《黒木報告》
4NQO/ハムスター胎児の組合せによるin vitro
transformationの仕事も、ようやくむつかしい段階に達し、単にin
vitroで癌を作るだけではなく、癌化の機構にせまるように内容を飛躍させねばならない段になった。
今までの技術を使ってtransformation stageのphenotypeを詳細に追いかけることも必要であるが、さらに技術を発展させるために次の三つの方針を定めた。
(1)colony-levelでtransformationを判定し、定量的にtransformationを考える
(2)synchronous culture・systemによるtransformat.からcarcinogenと生体高分子とのinteractionの問題に入る
(3)established cell lineによるtransformationの系を新たに開発する
I.Colony-levelのtransformation
びわ湖の班会議のときに報告したように、carcinogen
treated cultureを発癌剤を除いてcolonyを作らせると、total
colonyの6.0%前後に“transformed colony"がみられる。されに7月の班会議には、hamster胎児細胞をfeeder
cellsの上にまき、24時間後に4HAQOを加えると“transformed
colony"が2.0%にみられたことを報告した。そこで問題は
(1)reproducibility
(2)“transformed colony"と考えたものはun-treated
cultureには検索した範囲では、1度も発見されないものであるが、それが本当に→transformation→malignizationに連なるものか
(3)soft-agar法との関連性である。
(1)Reproducibility
feeder cells、Bov.serumのLot差の問題などのため、しばらくcolonyがうまくできないことがつづき、実験は予定よりかなりおくれてしまった。(実験結果を表で呈示)
以上今までのexp.を失敗も含めてすべてならべてみたが、dataにばらつきの大きいこと、率が前のexp.と比べると低いことがはっきりした。株細胞(HeLaなど)のplatingと異り、feeder
layerを用いるembryoのsystemは技術的にはまだ不安定で、ときには原因が分らずに低いPEを示す。PEが低いとtransformed
colonyの出現率が0となる・・・
ここで云うtransformed colonyが無処置及びnon-carcinogenic
derivativeの中には見当らないとしても、本当にtransformation→malignizationに連なるものかどうかは自信がない。目下、一つのtransf.の経過の各時期を追いかけて、colonyの形態をかんさつ中である。
なお、Sachsらのいうtransformed colonyは原著の写真をよく検討してみたところ、我々のexp.では無処置にみられるものもtransformedとして扱はれているようである。
soft agarのcolonyも平行してすすめている。現在の段階では、non-treatedのhamster胎児も、Bact-peptone
0.1%添加soft agar中では500/100,000程度に小さい(30ケ前後のcellから成る)コロニーを作ることが分った。目下exp.が進行中である。
II.Synchronous culture系
excess TdR(2mM)法で、3代目のハムスター胎児の同調培養を試みた。細胞の増殖曲線からみると、ある程度の同調は得られたようである。目下autoradiographyでDNA合成MIなどをみているところである(同時にlife
cycleの分析もおこなったがまだ結果は出ていない)。
III.BHK-21を用いたtransformation
初代培養を用いたtransformationは、正常→悪性への変化をみるのにはよいが、定量的にtransformationの機序を解析するためには不利である。
virusではBHK-21/polyoma、3T3/SV-40のような優れたsystemが開発されており、「悪性」はぬきにして、transformationの問題が解析されている。
chemical carcinogenesisでもそれと同じような系がどうしてもほしい訳で、最初に3T3/4NQOを試みた。月報6703に報告したように、giant
cellsなどの異常は確かに起こるのだが、目的とするpiled
upはおこっても不安定でgeneticな変化かどうかは確実ではなかった。また、colony-levelでanalysisにもっていけなかった。
そこでBHK-21を用いてみた。BHK-21は御承知のように、polyoma
virusで配列が乱れ、pile-upする他、mycoplasma、Rous
virus、adenovirusでもtransformすることが知られている。
最初にwildのBHK-21に10-5乗M4HAQOでtreatmentしたところ、以下に示すようなcolony
levelのtransformationを得ることができた。
cells:山根研由来のBHK-21 uncloned
Media:10%B.S. or C.S. Eagle MEM Kanamycin
30mg/lを含む
colony:20%C.S. Eagle、Falcon Petridish(60mm)
carcinogen:10-5.0乗M 4HAQO for 9days
BHK-21のcolonyはよく知られているように、規則的な配列を示す典型的な繊維芽細胞のそれである。その他に、treated
cultureには、規則的な配列を示さない中心部が厚くもり上ったcolonyが沢山みられる。このコロニーは中心部が非常にpile
upするので剥れやすく、10日以上incubateすると沢山のdaughter
colonyを作る傾向がある。これはcontact inhibitionのlossと関係あると考え、一応、transformed
colonyとして扱うと(表を呈示)、P.E.はtreatment直後はcarcinogenのcytotoxic
actionのためか、かなり低い(無処置は20%程度)が、継代とともにP.E.は上昇し、transformed
cellsの出現率も6.3→35.6→71.5→85.0と急速に上昇する。non-transformed
colonyは14.2→53.0→19.9→0と多少の消長はあるが55日後には非常に少なくなった(55日にnon-transformedが1ケみつかったが、cloningでとってしまった)。Small
unclassifiedとは小さいcolonyで細胞がパラパラと散在しているもの、transformedともuntransformedとも云えない。処理直後に多く次第に減少していくことから十分の大きさのcolonyを形成できない程度にcarcinogenでdamageを受けた細胞とも考えられる(X線照射のあとによくみられる)。このようなtransformed
colonyの増加が、(1)selective overgrowth、(2)delayed
transformation、(3)transforming agent(?)のtransmissionのいずれによるかは今後の分析によらねばなるまい。(1)のselectionと考えるときには、treated
cultureのP.E.の増加が一つのevidenceとなる。しかし、mass-cultureのgrowth
curveでは両者の間に差がない。
次の問題は、このようなコロニーの形態上の差が、geneticな変化か否かである。これをみるためにtreated
cultureからtransformed colony(Exp.#1〜#5)及びnon-transformed
colony(#6)をとり、そのprogenyを観察した(colonyをpick
up後直ちにdilutionしplateする)55daysに行った(表を呈示)。#5の例を除けばtransformedのprogenyはすべてtransformedであり、non-transformedのprogenyの93.6%はoriginalと同様の形態である。少数の例外はcolonial
cloneにつきもののcontaminantとして考えてよい(特にtransformed
colonyは剥がれやすいので、non-transf.にcontaminateする率は高い)。
この後の問題として
(1)reproducibility
(2)cloned populationの使用などである。目下、二回連続してとったcolonial
cloneを用いてexp.を開始している。また
(3)mycoplasma、virusのcontaminationの可能性も十分に否定する必要がある。
いずれにしても3T3/4NQOよりははるかに有望である。今後は、このsystemの開発に力を入れたいと思っている。
:質疑応答:
[吉田]全胎児を材料にしている場合には、当然色々な細胞のコロニーが出来ることが考えられますね。そろそろ胎児を卒業して特定の臓器を使うべきではないでしょうか。
[勝田]薬剤の処理時間を変えるとどうなるかということと、同調培養で薬剤を作用させた時の結果をにらみ合わせてみたいですね。
[堀川]Celll cycleによる発癌性の問題ということですね。
[勝田]我々としてすぐやってみるべき実験は、矢張り、同調培養で4NQOを作用させてみることです。そうすると変異率がぐっと上るはずですね。我々のdataと黒木班員のdataから想像出来ることは、cell
cycleの中での非常に短い期間に作用しているのではないかということです。
[黒木]三田氏のdataではテトラヒメナを同調培養しておいて、4NQOを作用させるとG2期にきくということです。
[堀川]放射線関係のdataでも、変異に関係のあるのはG2期といわれています。
[勝田]G2期に作用するならば、すぐDNAにむすびつくわけですね。
[吉田]そうですね。そしてすぐ染色体異常をおこすわけです。
[勝田]今度使い始めたBHK-21という株は悪性ではありませんか。悪性だとすると異常分裂が多いから、変異率が高いのではないでしょうか。
[黒木]それは考えられることです。cloneをとって凍結保存をしておいて、あまり継代せずに使うつもりです。
[安村]いくらcloneをとっても、継代を重ねるとすぐ乱れますからね。それからcolonial
cloneの場合は少なくとも2回はくり返してcloningするべきです。
[勝田]2回ぐらいやってもcloneにはならないと思います。映画で観察していると、1ケだけにされた細胞は殆ど死ぬようです。それが2ケだと割合に順調に増え出します。cloneと言うからには、矢張り1ケ釣りをしないと駄目だと思います。
[安村]1ケ釣りからふやしても、populationとして実験に供することが出来るようになる頃には、矢張り乱れてしまうのではないでしょうか。始めに吉田氏の言われた全胎児というような均一でない材料から出発すると、当然色々な細胞のcolonyが出てきて変異か、selectionかわからなくなるから、全胎児は材料として不適当と思われるということについて、私はむしろその均一でない材料を生かして、処理前にcloneをひろって、それから4NQOを各cloneに作用させてみれば、どの種類の細胞が4NQOで変異するかがわかると思いますがね。2代目で5%のP.E.ならcloneは充分ひろえるはずです。
[勝田]cloneのカミサマのお話を少しききましょう。
[堀川]確立されたcloneで分化の度合と変異の関係をしらべられそうですね。
[安村]要するに一般に言われている「培養細胞が機能を持たない」というのは、目指す細胞をひろっていないからです。機能を持たない、或は失われたかに見える時は、機能を有する細胞がselect
outされた結果にすぎないように思われます。自分の経験によれば、ステロイド産生細胞はその機能を維持し得ますが、それはcloningをしてステロイド産生細胞の系としてcloneをひろった場合です。
それからfibroblastsはcloningしやすいのですが、上皮系の細胞はむつかしいですね。
《佐藤報告》
ラット細胞←4NQO復元動物
4NQO→ラッテ培養細胞→新生児ラッテ復元(68匹)の一覧表を呈示
総括
細胞はDonryu系ラッテ全胎児より5系、同系胎児肺より2系、同系胎児肝細胞株2系。
培地:20%BS+LD及び20%BS+YLE・YLEの方が4NQO処理後の回復が早い。
4NQO:5x10-7乗Mは数日より最高62日処理。10-6乗Mは数時間、最高19回処理。10-5乗Mは数分間、最高4回処理。
対照としてDMSO処理を行った。
接種細胞数は50万個から500万個。
接種部位は脳内、腹腔内、皮下及び前眼房内。(接種細胞の顕微鏡写真を呈示)
結果:現在まで腫瘍は発見されていない。
:質疑応答:
[勝田]今の写真の肝細胞はあまり変異しているように見えませんね。無処置の肝実質細胞系でもよく見られる像です。細胞の大小はspaceの問題だと思われます。私の所で肝実質細胞に4NQOを作用させたら、cell
sheetにすき間が出来たような像がみられました。
[堀川]一つ一つの細胞がちぢんでしまったのですか。
[勝田]よくはわかりませんが、細胞表面が変るのではないかと思われます。
[黒木]ラッテ胎児肺からは、どんな細胞が培養されましたか。
[佐藤]fibroblastsと上皮様のものと両方出てきます。4NQOを作用させるとfibroblastsが残るようです。
[安村]変異しているらしく見えるものをcloningすれば、−本当に変異しているcloneがひろえた−ということも考えられませんか。
[佐藤]どうでしょうか。ハムスターの細胞は作用をうけてから、あとはひとりでに悪性化の方向へ進むように思われますが、ラッテの場合はそう簡単にゆかないようです。
[吉田]4NQOは製品による効果のちがいが大きいようですね。
[永井]毒性がちがうのですか。
[吉田]そうです。
[黒木]しかし細胞の側からみても、随分デリケートだと思います。同じ製品でも同じcell
lineでも培養のtubeによって(個体差)異なる時があります。それから毒性のことでは、feederを使うと無処置群は抵抗性を増します。
[安村]4NQO変異株には4NQO耐性があるのですか。
[黒木]釜洞氏の所のdataでは一応あるということになっていましたがあまりはっきりしないようです。私の所でもしらべてみましたが、はっきり耐性があるとは言えません。
[吉田]耐性と悪性というのは、全く別の問題だろうと思います。
[勝田]薬剤の製品むらについて一言。DABも製品によって可成り不純物の混合比がちがうようです。寺山氏から教えられて精製して使い始めました所、dataが変ってきて以前の濃度では細胞が死んでしまって困っています。
《藤井報告》
“なぎさ”培養によりtransformationを来した細胞の抗原性の変化について。
“なぎさ”培養によりtransformationをおこした細胞、RLH-5とtransformationをおこしていない対照細胞、RLC-9(何れも医科研癌細胞研のもの)について、前回の月報に記したmicrodiffusion法により抗原を比較した。
実験091367:
RLH-5、20万個を0.5%Na-Deoxycholate-PBS.・0.05mlに浮遊させ、ガラスホモジナイザーにて(30分間、氷冷して)破壊、そのホモジネートを使用。
RLC-9、40万個は同様に(0.1mlに浮遊)してホモジェネートを作る。
沈降資料:(1)(6)はRLC-9,50万個per well。(7)はnormal
rat liver tissue,50万個per well。(3)(4)はRLH-5,50万個per
well。(2)はAnti-rat liver tissue rabbit antiser.(FR51)。(5)はAnti-rat
liver tissue rabbit antiser.(FR56)。(図を呈示)する。
結果は(2)と(7)の間にみられる沈降線の中“a”が(1)と(2)の間にみられる“a'”と融合するようであるが、“a'”が(1)の周のlipoproteinに由る暈輪とはっきり区別し難い。(2)とtransformed
cellsの(3)の間に“a'”に相当する沈降線はみられない。この関係は抗血清(5)に対しても同様であるが、FR56血清(5)はFR51(2)より抗体値は低い。
この成績からRLH-5細胞は、RLC-9細胞が正常ラット肝組織と共通抗原としてもつ抗原を持っていないようにみえる。
実験092567:
(1)(6)はRLC-9,50万個per well。(7)はRLH-5,50万個per
well。(3)(4)はRLH-5,150万個per well。(2)はFR51。(5)はAnti-rat
ascites tumor(AH-13)rabbit ser.。
この実験では各細胞のホモジェネートを遠心し(2,000rpm,10min.)上清を使用した。
結果は(1)と(2)の間に明確な沈降線がみられるが、これは(2)とtransformed
cells(3)(7)の間にはみられない。(6)と(5)すなわち抗ラット腫瘍(AH-13)の間には沈降線はないが、(4)transformed
cellsと(5)との間には明快ではないが確かに沈降線がみられている。
この成績は“なぎさ”培養によるtransformed
cellsが、対照の正常培養RLC細胞の有つ抗原を失い、ラット肝癌(AH-13)と共通な抗原を獲得(?)していることを示しているようである。tumor抗原のことは、なおこの程度の沈降線では確言出来ないけれども。
(Exp.092567の写真を呈示)
:質疑応答:
[勝田]化学発癌の場合、各例性質の違うものが出来ると言われていますが、本当にそうか、抗原の点で共通のものでも持っていはしないか、ということもねらいの一つです。
[吉田]ホモの場合に沈降線は出ますか。
[藤井]大抵出ませんね。抗AH-13 rat血清と抗ラッテ肝組織Rabbit血清との間の新しい沈降線は何を意味しているのでしょうか。
[黒木]AH-13は樹立されてから、もう随分たっている肝癌ですから、現在では抗原抗体反応の系としては不適当ではないでしょうか。
[吉田]L株細胞でもまだ種特異抗原をもっている位ですから、種特異抗原のようなものは案外長くもっているのではないかと思います。
[黒木]私も4NQO肉腫を抗原にして、同種の動物で抗血清を作ろうとしているのですが、なかなか出来ないものですね。
《三宅報告》
先般来皮フのOrgan cultureをしたものに4NQOを作用させると、2週間後の形態学的観察では、変性、ヱ死が極めて著明であったことは、のべた。それで組織片が変性し始める前に、これをCell-Cultureのlevelに移しかえると、細胞のViabilityが元に戻るというWorking
Hypothesisの上に立って、Organ Cultureを4NQO作用後、Trypsinization(これ以後に、Pronaseに代える予定)及び、単にレザーによる細切をこころみ、平型試験管に移しかえてみた。Organ
Cultureとしての培養期間は7日間、このうち4NQO作用日数は4日間である。Cell
cultureに移すと、4NQO作用群は、初めでは細胞数は減少をつづけるが、5〜6日目頃から、コロニーを作り始めている、が一方対照群では増殖力は変化していない。これについてはCell-countはまだ行っていない。同様の4NQOを作用後に分散を1日早く行った群でも、その結果は同様であった。
細胞個々の形態学的な変化は著明なものはない。Piling
upとみられる像も、もちろんまだ著明なものを得ていない。
今後かかる実験をマウスやハムスターの胎児皮膚で行い、Organ
Culture→Cell Cultureという方法と皮膚の最初からCell
Cultureを行った上での実験を続けたい。
:質疑応答:
[安村]ヒトの皮膚から上皮様のcelll lineはなかなか出来ないものですね。
[吉田]この班では、ヒトの材料を扱う人がないのは何故ですか。
[勝田]ヒトの材料を扱った場合、悪性化しても復元接種して悪性化を確かめることが出来ないから困るのです。
《高木報告》
1)4NQOを作用せしめたRT株細胞について、その後も経過を観察中であるが、transformed
fociがみつかってから約2ケ月を経た今日、処理細胞のpile
upする性質も一部の培養を除き継代中に次第に消失してしまった感がする。これらの細胞の形態をスライドで供覧する。第2回目に行った実験群で、4NQO
10-6乗Mで処理した細胞については、近日中に王様ラットが出産の予定であるので100万個の細胞を復元の予定である。
2)Nitrosoguanidine(NG)のRT細胞及びWister
King A rat胸腺細胞に対する効果
RT細胞を用いて: i)まずNG 500μg、250μg、100μg、50μg/mlの各濃度の液を作り、acidicなHanksにて稀釋し、これで細胞を2時間incubateした後2倍容の培地を加えて培養を続けたところ、2日後には500μg、250μg/mlでは細胞は完全に死滅し、4〜5日後にはすべての濃度において細胞はガラス壁から脱落した。ii)次により稀い濃度50μg、10μg、1μg、0.1μg/mlにつき検討したが、この場合incubationの時間は1時間とし、その後2倍容の培地を加えて培養をつづけた。4日後には0.1μg、1μgはcontrolと変りなく、10μg、50μgではやや細胞の変化が認められたが、その後50μgでは殆どの細胞が変性し、10μgでは対照と区別つかぬまでに細胞の増殖をみた。
従って用いるべき濃度は10μg〜50μg/mlの間が適当と思われる。
iii)次いで10μg、25μg、50μg/mlの各濃度につき、1時間incubation後、薬液を捨てて、新しい培地と交換して観察した。この場合には前回の実験と異り、25μg、50μg/mlでも細胞の軽度の変性がみられるに止り、50μg/mlはその後事故のため失ったが、25μgg/mlでは細胞の変性と共に10日目頃から細胞の異型性がつよく現れ、培養19日目の現在、多核細胞、巨核細胞の出現、contact
inhibitionの消失などの像がみられている。これらの像がreversibleかirreversibleか追求したい。
W.K.A rat胸腺細胞を用いて: 純系ratの胸腺細胞の培養を8月28日に開始し、fibroblasticな細胞をえた。これを用いて25μg、10μg/mlの濃度につき検討中である。今回もNGにincubationする時間は2時間とし、これに2倍容の培地を加えて4日間おいて観察中である。現在の処、25μg/mlの約半数の細胞が変性した像がみられる。
なおWKAratの胸腺及び胃を250μg/mlのNGで約1時間incubateし、その後25μg/ml含む培地上に8日間organ
cultureして、それをcell cultureに移す試みを行ったが、はじめに処理したNGの濃度が濃すぎた為か、或いは培養の期間が長すぎたためか、細胞のoutgrowthを認めることが出来ない。更に条件を検討中である。
:質疑応答:
[勝田]この系(RT細胞)はコラーゲンを産生していますか。
[高木]染色してみていないので、わかりません。
[吉田]ニトロソグアニジンの添加実験について、濃度を高くすると、変異細胞の出現頻度が多くなりますか。
[高木]25μg/mlの群からしか、変異細胞を得ていませんので、まだわかりません。これから追試してみたいと思っています。
《堀川報告》
1)培養された骨髄細胞の移植によるマウス「骨髄死」の防護ならびにLeukemogenesisの試み(4)
月報No,6708号までにマウス骨髄細胞の培養ならびに4NQO処理によるLeukemogenesisの試みについてこれまでに行った(実験1)から(実験6)までについて大要を紹介してきた。以来今日まで(実験9)まで進めて来ているが、未だ発表出来る段階に達していない。今回のこれら3実験は、班会議の際に問題とされた点、つまり「骨髄死」の防護実験とLeukemogenesisの実験を特に区別して進め、また4NQOで処理する時の骨髄細胞の培養条件(細胞のage及びcondition)を考慮してやっており、また取り出したばかりの新鮮な骨髄細胞が培養時間とともに種類の上からも更には形態面からも移り変っていく動態を各種染色法とアイソトープの取り込みで追っている。いづれこれらは或程度、物が言える段階に来た時に紹介する。
2)培養哺乳動物細胞における紫外線障害回復の分子機構の研究(2)
Thymine dimerの生成量は紫外線照射線量と共に増加し、しかも三種の細胞(PS細胞、mouseL細胞、Ehrlich
ascites細胞)の間にはまったく差異はなく始めの低線量域を除いて直線的に線量と共に増加することを前報で報告した。では生成されたdimerの除外機構がこれらの細胞間でどの様になっているかを知る必要がある。つまりここではDark
reactivationの機序が存在するかどうかを知る必要が生じて来た。
紫外線照射後、時間経過を追ってDNA中に存在するdimer量を測定した結果、MouseL細胞は紫外線400ergs/平方mm照射後120時間までにはDNA中のdimerを除去する能力がない。つまりDark
reactivation enzymeを保持していないか、あるいは持っていてもごく微量であると推定される。次いでEhrlich
Ascites tumorでは照射後24時間において約30%のdimerがDNAから除去されることがわかった。つまりDark
reactivation enzymeを不完全ながら(100%除去出来ない)保持していることがわかる。このことは、DNAから除去されたdimerが酸可溶性分劃に放出されてくる状態をみれば、更に確固たる裏付けとなる訳で、そういう意味から紫外線照射後の時間経過に従って、Ehrlich細胞の酸可溶性分劃内のdimerの増加を調べ、Dimer/Thymine(%)は0時間1.23%、24時間36.31%、48時間71.88%、120時間104.08%と意義深い結果を得た。(夫々表を呈示)
以上の結果を総合すると400ergs/平方mm紫外線で照射された場合、mouseL細胞にはDNA中に生成したdimerを除去する能力は殆ど無いが、一方Ehrlich細胞ではDNA中に生成したdimerを約24時間後には、その一部約30%をDNAから除去し、酸可溶性分劃に放出する能力があるということである。すなわちEhrlich細胞には部分的な回復能をもっているということがわかる。では残りの50〜60%のdimerはchromosome上に残っているのか、そしてこのようなdimer残存の条件下でDNA複製を可能にさせている高等動物細胞の染色体という高次構造はどのようになっているのかという問題が生じて来る。従って当然細胞周期をめぐる動力的解析が必要となってくるであろう。
:質疑応答:
[安藤]Dark reactivationはどうやって行いますか。
[堀川]暗室で培養するわけです。カッティングエンザイム、ポリメレースが同一のものであるかどうかが問題点だと思っています。又UVと4NQOの作用の仕方に共通点があるのに興味をもっています。
[吉田]4NQO処理でdimerが出来るという論文を読んだ事があります。
[堀川]抗dimerを作ってミトコンドリアの酵素assayをしてみたいと思っています。細胞全体としてのdimerをみるのでなく、細胞の各分劃のdimerをみたいわけです。
[永井]修復促進剤はありませんか。又蛋白合成rateと修復との間にparallelな関係はありますか。
[堀川]修復促進剤は今の所見つかっていません。蛋白合成rateと修復とは関係なく行われます。
[吉田]この実験は三つの系統を使ってみている事が、複雑な結果をもたらしているのではないでしょうか。
[堀川]将来は勿論一つの系統で、耐性株と原株との比較をとりたいと考えています。
[吉田]その酵素は遺伝に関与していると考えていますか。
[堀川]そう考えています。一つの染色体をポンと入れると修復されるという、そういう染色体を見つけたいものです。