【勝田班月報・6711】
 §4NQO類処理による変異細胞系の染色体数:
 これまでラッテのセンイ芽細胞に、4HAQO(Exp.CQ#4のみ)或は4NQOを作用させて、各種のmutant linesを作ってきたが、最近その染色体数をしらべてみた。
 標本はいずれも同じ日(1967-7-25)に作製したものであり、従って実験番号の古いものほど4NQO処理后の日数が長くなっている(図を呈示)。
 図で、右肩に実験No.、カッコ内に原株名(RLGはラット肺センイ芽細胞、RSCはラット皮下センイ芽細胞)、その下に薬剤名と濃度、カッコ内は処理時間、図の中央附近に処理后から標本を作った日までの培養日数が示されている。
 図を通算して判ることは、染色体数の最頻値が、2n=42を保っている系が非常に多いということである。それから、処理后の日数の長いものほど、最頻値数が変り、また4n或は低4n周辺のばらつきが多くなっていることである。
 CQ#14は、他の系と異なり、頂度4倍体にあたる84本が最頻値となっており、2nはきわめて少ない。
 2nを維持している細胞が、核型においても正常か否か、最近の吉田班員のデータを思返しても、非常に興味のあるところであるが、どうもセンイ芽細胞のmetaphasesは硝子面に拡がり難く、核型を分析できるような標本がまだできていない。
 これらの系は4NQOを3.3x10-6乗M・30分処理に切換える以前の実験群から得られた系で、Exp.CQ#4以外の実験ではすべてラッテ皮下組織からのセンイ芽細胞であり、これらについて、かって月報に[collagenを作らぬ]とかいたが、その后の検索によると、これは誤りで、継代せずに1月近くおくと、きれいに銀染色でそまるfiberが培養内のいたるところに形成されている。従って大手を振って“センイ芽細胞"と呼べるわけである。
今后の計画としては、やはり純系ラッテからのセンイ芽細胞を、できればcloningして、実験材料に用いたいと思っている。

《佐藤報告》
 癌学会報告の培養内発癌のデータを記録しておきます。(細胞歴の表を呈示)
 RLN-21は箒星状の細胞株、他はいづれも上皮様細胞株。 培養内のmorphlogical trans-formationは徐々におこる。株細胞の継代は2週間前后に行われた。
 (Tumor-producing capacity of each strainの表を呈示)記載の通り長期肝組織培養株は6/7Tumor-producing capacityを持った。腫瘍の組織像はRLN-21のSarcoma以外すべて癌成分を明瞭に認めた。Carcinosarcomaの組織像が認められるのは上皮性肝実質細胞の培養株の中に非上皮性の細胞が混在するためであろうか。又癌細胞部の異型性や多形性は極めて強い。この事実は培養細胞のpopulationの中で多発的に癌化がおこった事を示すようである。形態学的転換がおこった後、Tumor-producing capacityを獲得するように思える。
(各系の培養細胞を50〜100万個腹腔内接種されたラッテの腫瘍死までの日数の表、及び現在の各系の増殖率の図表を呈示)。

《高木報告》
 (1)4NQO及び4HAQO
 1)RTcellsに対する4NQO添加実験の経過について:
 月報No.6708に続いて4NQOを10-6乗M/ml添加後出現したtransformed fociを継代6代目でOSAMA rat一腹6匹(生後24時間以内)へ、それぞれ100万個あての細胞を皮下へ移植した。
 現在4週間経過したが、腫瘤は触知できない。尚controlとして無処置のRT cellsを培養開始後約400日で同様にOSAMA rat生后24時間以内の一腹7匹へ100万個の細胞を皮下へ移植した。現在1週間経過している。
 2)Wister King A系rat thymus cellsに対する4HAQO添加実験について:
 8月28日Wister King系rat生后4日目のthymusを使用してprimary cultureを開始した。
 Explant法でCO2インキュベーターを使用、Med.はLHにEBMのvitamin stockを1%加えたものに10% heated C.S.、PC 100u/ml、SM 50μg/mlを添加したものを使用した。
 4HAQOはこの細胞の2代目に添加した(図を呈示)。
 4HAQOの添加は黒木氏の方法に準じたが、初回はfinal 10-6乗M/mlとなる様に添加したところ殆ど変化を認めなかったので2回目にはfinal 10-5乗M/mlとなる様に添加した。
 2回目の添加後約15日で肉眼的にも明瞭なfociを認め位相差による観察ではpile upしたfociの周辺部には特異な多核巨細胞を認めた。現在継代中で、移植実験を準備している。 (2)N-Methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(NG)添加実験
 1)RT cellsに対するNG添加実験の経過について:
 現在まで3実験を行ったが、そのうちNG 25μg/mlを1時間作用させたものを継代1、3代目であるがtransformationは認められない。
 2)Wister King A系rat thymus cellsに対するNG添加実験について:
 現在までに継代3代目及び5代目の細胞を使用して3実験を行った。
 NG-4(WKA-T 3代目)(図を呈示)。
NGは使用直前に5mgを1mlのエタノールに溶解し、millipore filterにて濾過して使用した。acidic Hanks(pH 6.3)にて10μg/ml、25μg/mlへ稀釋したもの2mlを2時間incubate後、Med.4ml追加して6時間放置した。NG作用後約1ケ月で10μg/ml添加のものを継代したがfociは認められない。25μg/ml添加では1ケ月観察したが細胞がはえてこないのでdiscardした。 NG-5(WKA-T 3代目)(図を呈示)。
No.1ではNG 25μg/2mlで2時間incubate后、Med.4ml追加して2日後にMed.を交換したもの、No.2ではNG 25μg/ml 2時間incubate後すててPBSで洗浄後Med.5mlを加えたものであるが、両者共細胞は殆ど全部CPを起して現在まで再生してこない。尚NG-4、NG-5では対照にも同一期間NG 25μg/mlに相当するエタノールを加えてincubateした。
 NG-6(WKA-T 5代目)(図を呈示)。
今までの実験では、この細胞に関してはNG 25μg/mlでは毒性が強すぎる様だし、又NGは非常に不安定だと考えていたが、incubationの時間が長い程細胞に与える毒性も強い様なので、今回は添加方法を変更して、それぞれの10倍液を作成し4HAQO添加と同様の方法を用いてMed.3.6mlをあらかじめ培養びんに入れておき、0.4mlの10倍NG液を滴下する方法をとった。48時間incubateしPBSで洗浄後Med.を交換した。この方法ではCPは前2法に比し、少ない様である。
 尚NG-4、5、6は実験番号で、NG-1、2、3は月報No.6710に於て報告した。RTcellsに対するNG添加実験をさす。

《黒木報告》
 BHK-21細胞の寒天内コロニー形成能、特にBacto-peptone(Difco)との関係について:
 BHK-21細胞は、Polyoma、Rous、Adeno、PPLOなどでtransformしないかぎり、softagar中でcolonyを作らないことになっています。しかし、M.FriedがProc.NAS 53,486 1965に記しているようにtransformせずともagar中でコロニーを作ることがあり、またunpublishですが、NIHのBlack及び仏のMontagnierのところでも“normal"BHK.21/C13がagar中でコロニーを作るとしています(MacPhersonのpaperに引用されている)。MacPhersonは、これらはmutanrtではなくPPLOのcontaminat.であろうと書いています(Nature 210,1343.1966)。
 我々のところでも4HAQO/BHK-21transformationのSystemのassayにsoft agar techniqueを応用しようとしたところ“normal"のwild BHK-21がsoft agar中で高率にcolonyを作ることが分りました。そこでwild BHK-21からcylinder法でcloneをとったところ、これも同じようにagar中でcolonyを作ります。そこで考えられるのは、(1)Fried、Black、Montagnierと同じようなmutant、(2)Soft agar中でコロニーを作らないのはMacPhersonらの用いているBHK-21/C13というcloneだけ、(3)PPLO、polyomaのcontaminat.、(4)技術のちがい、が考えられたのですが、(3)のPPLOはnegativeであり、(4)の技術的差に注目、培地中のBacto-peptoneを除いたところ、驚くことにコロニーは全く作られずBacto-peptone.dependencyが明らかになりました。上記のFriedのpaperも、triptose phosphate brothを10%に加えているので、Bacto-tryptoseのためと思っています。詳細は班会議のときに報告します。
《三宅報告》
 ヒトの胎児(およそ妊娠5ケ月)の四肢の皮膚を細切して、トリプシン処理后(培養Eagle'sMed.+30%Calf serum)3日目に再び0.05トリプシンにて処理、Subcultureして(細胞数30万個/ml)みた。4日后に4NQOを作用させた(図を呈示)。
 Controlでは細胞はMonolayerを作りあげ、形質中に顆粒が多い(写真を呈示)。5x10-6乗Mを1日作用させたものでは、細胞は変性して、すべて壊死に陥った。4NQO 2.5x10-6乗Mを4日間作用させたものでは、細胞は硝子面に十数個のColonyを作りあげて残った。その1個のものに細胞はCris Crossの状態で多層となっているものが認められる。細胞は少しく小型となり、形質中の顆粒は、対照に比して少い(写真を呈示)。培養后2週間余、4NQO作用后、1週余である。形態学的なtransformationを云々するまでには、今后のこの細胞の態度を、詳らかに観察する必要がある。ヒトの細胞であるからには、一方に興味が持てても、これを、どのように処理してゆくかという方法については、慎重でなくてはならない。染色体を数へ、Karyotypeを検索し、その上、移植をしたいと考えている。
 (写真を呈示)こうした相重ったColonyの周辺の細胞である。大型で顆粒に乏しい。
 前の報告でのべたOrgan Culture后に分散をこころみた皮膚の細胞は、増殖がゆるやかである。またMonolayerの発育をして、決して相重った発展をみせていない。

《堀川報告》
 培養哺乳動物細胞における紫外線障害回復の分子機構の研究(3)
 酵素レベルで検討した範囲では紫外線照射によってDNA中に生成されたチミンダイマーの除去機構(つまり暗回復能)はマウスL細胞や、ブタPS細胞には存在しないが、Ehrlich腹水腫瘍細胞には完全ではないがダイマー除去機構の存在することが分った。つまりEhrlich細胞は400ergs/平方mmで照射した際、生成されるダイマーの30%までを照射後24時間以内に自体のDNAから切り出し、酸溶性分劃に放出する能力のあることを前回までに2報に分けて報告して来た。
 ここでは暗回復機構を特異的に阻害する薬剤について報告する。こうした暗回復酵素合成または作用を特異的に阻害する物質を発見することは、今後のcell levelにおけるUV障害回復機構の動力学的解析等にも応用できる訳で、先づ手はじめに蛋白合成の特異的障害剤であるPuromycinと、DNA依存性RNA合成の特異的阻害剤であるActinomycinS3について検討がなされた。
 つまりUV照射されたEhrlich細胞を0.1μg、0.2μg Puromycin/ml mediumの存在下あるいは0.000125μg、0.00025μg、0.000375μg ActinomycinS3/ml mediumの存在下で培養しても暗回復能にはまったく影響がみられない。一方CaffeineはEhrlich細胞の暗回復能を特異的に阻害する。すなわちUV照射されたEhrlich細胞を0.5〜2.0mM caffeineの存在下で培養するとEhrlich細胞の暗回復能は完全に阻止される。だが現在の段階ではcaffeineの作用機序はまったく分かっておらず、DNA分子からダイマーを除去することがcaffeineによって阻害されているのか、それとも回復酵素のactive centerのような所にcaffeineがくっついて酵素活性を低下させているなど推論されるが、色々の結果から綜合するとどうも後者の機序を考える方が正しいようである。


編集後記


 Click [X] after reading.