【勝田班月報・6709】
《勝田報告》
 A)ラッテ肝各分劃のDAB消費:
 ラッテ肝を潅流后、細切し、10mM MgCl入りの0.25M sucrose液中でテフロンホモゲナイザーでhomogenizeし、超遠心で核、ミトコンドリア、ミクロゾーム、上清と、4分劃に分け、反応液を加え、37℃1時間加温后に520μで吸光をしらべた(表を呈示)。結果は、分劃していないhomogenateでは代謝がみられるが、このなかには生細胞の混在している可能性もある。そして各分劃はほとんど似たような結果で、ミクロゾームとSupの混液がわずかに代謝しているかに見える。
今后は反応液の処方の検討と、分劃法の検討をおこなう予定で準備している。
 B)“なぎさ"変異細胞株RLH-1のラッテ復元試験:
 RLH-1を思切って大量にラッテへ復元するテストをおこなってみた。
 細胞数:2x1000万個/ラッテ。 ラッテ:JARx雑系のF3、生后約1ケ月。
 接種部位:皮下2匹、腹腔内2匹。
 結果:腹腔内接種では、第7日には腹水中に分裂細胞の存在が認められた。皮下接種では、7日に径1cm位のtumorが接種部位の皮下に認められ、第10日に1匹だけ腫瘤をとり出しメスで細切して3匹のラッテの皮下に再接種を試みた。これは第7日にtumorをふれたが、以后regressしてしまった。
 考察:ラッテのhistocompatibility gensはかなり強固なものらしい。だから純系動物細胞を用い、同系(しかも同じ親の子)に戻すことが必要。RLH-1はJARの純系にならぬ内の肝細胞が起源だが、純系化以后のJAR或いは雑系には戻りにくい。今回もどしたのは雑系と純系をかけ合わせたF3ということも遺伝的に面白い。

《藤井報告》
 組織培養でtransformationを来した細胞を、免疫学的に元の細胞と比較して異同をみつけられないものかどうか、がテーマである訳です。具体的にはtransformed cellsに元の細胞とは異なる抗原がみられるかどうか、あるいは元の細胞にあった抗原が減っているようなことがあるかどうかをみつけることです。
 こういう実験には、immunodiffusionが適する訳ですが、この方法は抗原あるいは抗体をみつける免疫学的方法としては最も感度の低い沈降反応に頼る訳で、自信はあまりありません。幸い勝田班長が渡米土産の一つに実物を持って帰られたMicrodiffusion methodのmicroplateがあり、これを使っていろいろ基礎実験をやっている段階です。これを使いますと、非常に微量の抗原、抗体で足り、感度はかなり良いようで少なくとも沈降反応の毛細管法の2〜3倍は行きそうです。抗原に使う細胞は50〜100万ケ位で一応1回分はありますので、組織培養レベルの仕事にも向くと思います。最終的には、cultured transformedcellsを検討する訳ですが、培養はamateurなので、変な細胞をつくり勝ちで危いから、これも勝田先生におんぶしてやって行きます。
 現在までにやったのは、抗原にマウス血清、抗血清に兎抗血清で、泳動の支持体にセルローズアセテート膜(PBS、pH 7.0)でやってうまく行き、次いでラット肝(抗原)と兎抗ラット肝細胞の系でみて、抗原のdiffusionが膜のmilliporeの大きさの関係でうまく行かず、結局agar1%にして5本の沈降線をはっきり認めています。
 次に、勝田先生の所で、AH-130に抵抗性となったラットがあり、その血清と、AH-130の細胞および正常ラット肝細胞(非培養)の間に、沈降線が現れるかどうかをみました。血清は5回AH-130を接種し、各回とも拒否反応を示したもので、最終接種后8日で採血してあります。-16℃保存、稀釋しないで使いました。抗原になるAH-130細胞は、6000万個/mlを凍結融解后、テフロンホモジナイザーで、破壊(氷冷中、60分間、PBSに浮游)しました。破壊后1%Na-Deoxycholate(DOC)の等量を加へ、再びホモジナイズし、lipopolysaccharide系の膜抗原の遊離を企図しました。この方がPBSで抗原抽出をおこなうより多くの沈降線が出ることをみています。支持体は1%agar(difco)、in 0.2%DOC、厚さは市販のビニールテープ(薄い方)2枚相当で極めてうすい。泳動はcold roomで3日間。泳動后、水洗1日。乾燥してAmid Blackで染色し顕微鏡下に検討します。(各well内液量は0.01ml位)
 抗血清−兎抗ラット肝血清 1/1。抗原にAH-130とラット肝細胞をおいたもの。
 抗血清にAH-130抵抗性ラットの血清、3xconc。抗原にAH-130と正常ラット肝細胞。
 抗血清にAH-130対抗性]らっとの血清1/1。抗原にAH-130のExtract in 0.5%DOC。
(夫々の図を呈示)このように、一応、iso-、homo-、の間で線が出ています。方法として抗γ-Gl抗体や蛍光ラベル抗体の利用や、沈降線と細胞分劃抗原との関係等がわかってくれば、transformed cellsの相手になれるかと思っています。

《高木報告》
 1)前報1)2)両実験とも4NQO処理後に生じたtransformed fociを、trypsinで処理して継代した処、継代1代目では実験群の細胞はcontrolの細胞に比し、細胞の境界が明瞭で核は比較的大きく、その中にはっきりした核小体が2〜3ケ認められた。しかし細胞がpile upして増殖する像はみられなかった。この様な細胞を更にsuckling ratへの移植を考えて継代した処(2代目)、倒立顕微鏡下では形態的にあまり差異が認められなくなった。目下染色体標本を作製中で、suckling ratの入手出来次第、移植を試みる予定である。
 2)Nitrosoguanidine(NG)の培養細胞(RT)に対する効果を観察すべく、まずその濃度を検討した。NG 5〜10mgを1mlのethanolにとかし、それをNaHCO3を加えないacidicなHanks液(pH6.3位)で稀釋して、500μg、250μg、100μg、50μg/ml濃度の液を作り、ControlとしてHnaks液にethanolをNG 500μgのものに相当する丈加えたものをおいた。
 MA-30培養瓶に培養したRT細胞に、2mlずつ各濃度の液を加えて、CO 2incubatorに2時間incubateし、その後4mlの培地(LT+Eagle's vitamin+10%calf serum)を加えて培養をつづけた。2日後には500μg、250μg加えた細胞は完全に死滅し、100μg、50μgでは細胞が丸くなり、短い突起で網状につながった様な形態を呈したので、NGを全く含まない培地で交換した。しかしこれらの細胞も2〜3日後には殆ど脱落してしまった。
 次いで50μg、10μg、1μg、0.1μg/mlの濃度につき検討を加えた。上記の実験と同様にして、ただ今回はNGをとかしたHanks液によるincubationを1時間とし、それに2倍容の培地を加えて経過を追っているが、4日目の今日、0.1μg、1μg処理群では殆どcontrolと変りなく、10μg、50μgでは細胞の変性がみられ、とくに50μgでは顕著である。refeedして観察をつづけると共に次回は10μg〜100μg/mlを中心に再度実験を繰返してみたいと思う。また純系ratのprimary cultureに対する効果も観察すべく準備中である。

《黒木報告》
 colony-levelのtransformationのtechnique上の見通しがついたので、7月になって、いくつかの実験をstartさせた。しかし、それが全部失敗に終った。P.E.が1/10程度におち、またsizeが小さく、colony-transformationも見られないようになった(血清のlotは同じ)。この原因がfeeder cellsのlot差によるものであることが最近になって分った。このためマウス胎児を培養したら、それをまずlotテストし、残りを凍結、よいlotをもどして使うSysemに最近きりかえたところである。
 9月末の班会議にはcolony-levelの仕事を多分報告出来ると思う。
 HA-15の移植
 15分間 10-4.5乗M 4HAQO treatmentでtransformした細胞が最近やっとtranspl.(+)となった。delayed malignizationにぞくするものかも知れない(表を呈示)。

《三宅報告》
 前回に引き続いてd.d.系マウスの胎生(17日)の皮膚をOrgan Cultureして、MCA 4μg/ml、4NQO 10-6乗Mを作用せしめた。両者共に7日間の間、同じ濃度のもとに放置し、後H3-TdR 1μc/mlを2時間incorporateしてAutoradiographyで追ったのである。L.I.はBasal layerとSupra basal layerについて600個の細胞について計算した処、MCAでは28.1%(対照24.5%)となり、前回を下廻る結果をえた。この前回31%のものが、下廻る数字をえた理由は、計算上の技術上の差があるかもしれない。というのは前回は、標本をすべてphotoに撮影した後の計算であったが、この度は顕微鏡の直下での計算であった。4NQOについては前回と同様にCell damageが強い。この理由は、判らない(写真を呈示)。
 ヒトの胎児皮膚(12〜14週)のCulture(MCA)をしたものを、dd系マウス及びハムスターのポーチに移したものについては、米粒大の腫瘤が残っているものがある。

《堀川報告》
 1)培養された骨髄細胞の移植によるマウス「骨髄死」の防護
   ならびにLeukemogenesisの試み(3)
 この実験は培養方法をかえたり4NQOの濃度、処理時間をmodifyして実験を進めている段階で、その結果については今月は特筆すべきものがないので次回にゆずることにする。従って今月は以下の問題について結果を簡単に報告する。
 2)培養哺乳動物細胞における紫外線障害回復の分子機構の研究(1)
 紫外線照射によるThymine dimerの形成、さらにはこれらの障害からの分子レベルでの回復機構はE.coliを中心とする微生物において次第に明らかにされてきているが、こうした微生物で見出される分子過程の回復機構が哺乳動物細胞にも存在するかどうかということは、生物の進化の過程の究明さらには臨床医学への直接的応用という面から最も重要かつ興味を呼ぶ問題である。
 こうした目的からわれわれはmouse L cells、Ehrlich ascites tumor cells、PS(ブタ腎細胞)を用いてCO2 incubatorによるコロニー形成法で、これら三種の細胞株のX線に対する線量−生存率関係(線量効果曲線)を調べた(表を呈示)。その結果は、三種の細胞ではX線感受性にまったく差のないことがわかった。
 しかるに一方紫外線に対する線量−生存率関係を調べた結果では(表を呈示)、三者でまったく異った感受性を示し、紫外線照射に対してPS細胞が最も感受性が高くEhrlich ascitestumor cellsは最も抵抗性細胞でL細胞はこれらの中間であることがわかった。
 このように細胞種によるX線感受性には大きな差異は存在しないが(耐性細胞は別問題、これはいつかの機会に報告する)、紫外線に対する感受性は起源を異にする細胞株の種類によって大きく異なることがわかる。こうした結果は発生学的見地から見た際、非常に重要な問題を提供し、同時にある特殊な細胞株では紫外線障害回復能あるいはまたこうした回復能では説明し得ない紫外線抵抗機構をもつものと推測される。
 つづいて紫外線照射線量に対するDNA内のthymine dimer生成率を三種の細胞株でみると(図を呈示)、照射線量の増加と共にthymine dimer生成量は増加し、しかも三種の細胞間にはまったく差異はなく始めの低線量域を除いて直線的に線量と共に増えることがわかった。こうした3種の細胞株で照射線量とともに生成するdimer量の間に大差がみられないことは、Schneider(1955)やChargaff(1955)の報告したMouse、Mouse ascites carcinoma、PigなどでのDNA塩基組成にそれほど大きな差異がないという結果からも一応うなずけられる。ではこのようにDNA中に紫外線照射によって生成するdimerの除去機構が3種の細胞間でどのようにおこなわれているか、ということが以後の大きな問題となってくる。

《奥村報告》
 SV40ウィルスによるハムスターfibroblastsの増殖誘導
 Spontaneous cell transformationの実験で、既に報告しましたシステムを用い、今度はtransforming agentとしてSV40ウィルスを組み合わせてみました。細胞はnewborn hamsterの皮下のfibroblastsです。初代はplaque bottleで培養、2代目にシャーレへ移し(1000〜5000/3ml/dish)、約2w后にsmall colonyをisolateして、再びplateする。従ってtransform-ationの実験には3代目のものを用いたことになります(培養通算日数は17〜20日)。agentsを加えるときのcolony数は実験シリーズによって異りますが、現在まで3回行った結果では20〜35ケ/dishです。SV40ウィルスは777strainをGMK(primary)でpassageしたもの、titerは10-7.5〜8.0乗 TCID-50/0.2。
 実験成績(1)3代目plateと同時にinfectさせた場合(m.o.i.50)と、実験成績(2)plate后5日にinf.(m.o.i.50)の結果表を呈示。なお、実験条件の詳細な検討は進行中です。


編集後記


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