【勝田班月報・7011】
《勝田報告》
 A)RLC-10株(正常ラッテ肝由来)の染色体数の推移
 (図を呈示)図のように培養37.5月では2nが多かったが、自然発癌した以後の54.5月、58.5月では染色体数が明らかに減少して行っている。ラッテに形成された腫瘍の再培養では、最下欄のように、さらに減少している(39本)。理由は不明。
 B)RLC-10株の凍結保存後の染色体数
 RLC-10株は継代の中途より(A)、(B)、(C)の3系列に分けられ、(B)は自然発癌したが、(C)は電気泳動的には最も正常に近い像であった。この(C)を、ドライアイス中で10月間凍結保存し、再び培養を開始したところ、3コの集落が形成された。それを夫々分離培養し、染色体数をしらべた結果(図を呈示)、Colony(1)は73本、(2)と(3)は42本、コロニーをとったあとの残り全部からの培養Mixedは41本であった。なお、これらの腫瘍性については、すでにラッテに復元接種し、観察中である。

《難波報告》
 N-29:培養内で4NQOによって癌化したラット肝由来クローン細胞(LC-10)の4NQOの耐性の有無(前月報7010 N-28の続き)
 使用した細胞はN-28に記載した4NQO未処理対照細胞と、培養内で3.3x10-6乗M 4NQO 1hr処理を2回行なって悪性化した細胞、及びこの悪性化した細胞を動物に復元して生じた腹水腫瘍を再培養した細胞である。実験方法は、それぞれの系の少数細胞を4NQOを含まぬ5mlの対照培地と、3.3x10-8乗Mの4NQOを含む実験培地とに植え込み(月報7010、N-28では10-8乗M 4NQO)共に1週間培養後、4NQOを含まぬ培地で培地を更新し、1週間培養を続けた。
 その結果は表に示すように、培養内で4NQO処理を受け、悪性化した細胞は、4NQO未処理細胞に比べ約2倍の耐性を示した(この結果は、月報7010 N-28に一致する)。しかし、肝心の腫瘍培養細胞では耐性はみられなかった。このことは、細胞の腫瘍化と細胞の4NQO耐性獲得との間に関係がないと結論される。
 今迄、しばしば4NQO耐性の問題をコロニーレベルで検討して来たが、以上の結論が得られたので、このあたりで別の悪性化の指標を検索しようと考えている(表を呈示)。
 ◇DABによる発癌実験
 3)DAB処理によって受ける細胞の増殖阻害はDAB処理時の細胞数に依存するか、どうか、及び、その時の培地中からのDAB消費について(以下の実験には全てクローン化したラット肝細胞(LC-2)を使用)(図を呈示)。
 図に示すように、DABの及ぼす細胞増殖阻害は、細胞数が少くても軽度である(この点は4NQOと異なる。月報7005参考)。
 同じ実験をもう一度行ったが同じ結果であった。そして、これらの2回の実験に於るDAB消費をまとめて次図に示した。この図ではDAB処理を受けた細胞数を横軸に、細胞1コあたりに取り込まれるDAB量を縦軸に示した。図から判ることは、この実験条件のもとで細胞あたりの培地内DAB量が増加するにつれ、細胞内にとり込まれるDAB量が増加することを示している。なお実験1.2.に使用した培地内のDAB濃度は図に示している。このDABを含む培地1.5mlを細胞の数をいろいろに変えて培養している試験管内に入れ、3日間培養後、その培地中に残存するDABを実験前の培地中のDAB量から差引いて、細胞によって消費されたDAB量をもとめた。
 4)培地中のDABの経時的消費
 以上の実験は、全てDAB培地を細胞に与えて、3日後に細胞によって消費されたDAB量を測定したが、DABが3日間でどのように消費されるか、経時的に調べた。その結果、DAB投与后、24hrぐらいでは、あまり培地中からDABが消費されてなく、DAB投与後2〜3日にかけて、急速に消費された。その間、細胞の増殖は続いているが、増殖率はDAB投与後2〜3日にかけて、やや低下している。


 《山田報告》
 癌学会に続いて病理学会があり、この所少し実験が遅れています。
 今回はまず、この癌学会に発表した成績を書きます。これまでの4NQOによるin vitro発癌過程におけるCell population analysisの総まとめの成績を報告します。全体としてみますと、4NQOを多数回接触させた系及び宿主に移植して出来た腫瘤からの再培養系の細胞群に、悪性化したと推定される細胞の頻度が多いと云う成績です。即ち典型的な良性及び悪性細胞系にみられた泳動的性格より考へて、未処理細胞群では平均より10%以上高い泳動度を示す細胞、ノイラミダーゼ処理細胞群ではこの処理により対象群の平均より10%以上低い細胞の頻度を写真記録式細胞泳動法により検索した結果です。このうちで悪性化したと推定される細胞の出現頻度の最も少い系はRLC-10A(自然悪性化株)であり、最も多いと思われるおはRLN-E7(2)(岡山株)です。
 RLC-10凍結株のE.P.M.:凍結してあったRLC-10が再び増殖し、また発癌実験に使用する前にその電気泳動的性格を充分しらべてみようと云うことになり検索を始めました。まだ始めたばかりではっきりした成績ではありませんが、RLC-10clone4とRLC-10clone3とは大部性質が違う様です。RLC-10Bは前回通りです。詳しくは次号に報告します。

《高木報告》
 1.腫瘍細胞と対照(正常)細胞との混合移植実験について(表を呈示):
 その後RG-18 100個とRL細胞0、100、10,000、1,000,000個混じた実験を行ったが、その結果は表の通りであった。すなわちここでもRL 100万個を混じた場合にtumorigenicityを促進する如き傾向がみられた。それに対してRLを100、10,000個混じたものでは、むしろRG-18だけ100個移植した場合より抑制の傾向がみられるのであろうか?。同様な傾向は月報7010のRG-18を10個とRLを混じた実験においてもうかがわれた。ただここで問題はRG-18はwistarratの胸腺由来細胞にNGを作用させて悪性化したものを、WKA ratに移植して生じたtumorの再培養、つまりWistar origin。RLはWKA rat肺originの細胞で、これらを混じてWKA ratに移植する場合、前者はhomotransplantation、後者はAutotransplanttionとなる。出来れば両方Autoになるようにした方が将来の解析を容易にすると考えられ、その方向でさらに実験の予定である。
 2.RT-10細胞のplating efficiencyにおよぼす培地の影響(表を呈示):
 今回の条件下ではいずれもPE 2.1%を示した。前回(月報7010)に比し1桁違うが、これが細胞の継代数の違いによるか、あるいはいずれかの培養条件の違いによるか、さらに検討せねばならない。いずれにせよこの条件下でcolony levelの実験は可能と考えている。

《梅田報告》
 (1)今迄報告してきたハムスター細胞は、長いものでは殆1年、短いものでも既に300日を越えるのに、Soft agar中でなかなかコロニーを形成せず、前回の班会議の折、やっとmicrocolony形成が認められる様になったと述べた。之等の系の一部を更にSoft agar中でコロニー形成率を調べた所今回は明らかなコロニー形成が認められた。即ちM#34J1に4NQOをかけたものは7.5%、J3に4NQOをかけたものは3.2%である。
 しかし次に述べる別の系でコントロールもきれいなコロニー形成が認められて了った。前回の班会議では私共の系ではなかなかtransformしないと述べたが、それも確かでなくなったわけです。いろいろ反省してみると、昨年から本年の始めにかけては、培地交新、植継を1週に2回の割で行ってきた。本年の4月頃より1週に3回即ち2〜3日毎に培地交新、植継を行い始めた。こんなことが影響しているのかも知れないと考えている。
 (2)今迄一度も報告しなかったが、4月13日に4HAQO 10-4.5乗Mを1回投与した系とそのコントロールを継代してきた(実験番号T#253F)。累積増殖カーブを画くと図の如くで、4HAQO投与后やや増殖は悪く、80日頃より恢復し現在に至っている(図を呈示)。コントロールは無処理K1、実験群と同じ1%DMSOsolventで処理したものK2とあるが、共に同じ様に増殖している。7月15日Soft agarでテストした結果はコロニー(-)、9月11日のテストではFとK2にmicrocolony形成が、10月5日のテストではFとK1がmicrocolony、K2は3.9%の立派なコロニー形成を示した。コントロールの培養170前後、でかくも立派なコロニーを作ったのでは、(1)に述べた細胞においておやである。目下新しいCulture、ラット肺の実験に切りかえて出来れば100日以内にtransformする系の確立に努力している。

《堀川報告》
 培養哺乳動物細胞のDNA障害と修復機構(27)
 前報で報告したようにX線照射や4-HAQO処理によって生じた細胞内DNAの一本鎖切断は照射又は処理後の細胞を37℃でincubateした時、同じスピードで再結合される。このことはX線と4-HAQOの作用するDNA上のsiteがある程度類似した部位にあることを暗示するものである。今回は1x10-4乗M 4-HAQOで30分間処理した時、あるいは5KRのX線を照射した時に生じたEhrlich細胞の一本鎖切断の再結合におよぼす各種代謝阻害剤の影響を、検討した結果を総括して報告する。
 周知のごとく生細胞内には、すでにDNA合成に関与する酵素系あるいはrepairDNA合成に関与する酵素系が含まれているので、X線や4-HAQOで処理した際に誘発されたDNA切断も、これら既存の修復酵素系によって修復される。従って照射又は処理後に各種代謝阻害剤を添加しても一本鎖切断の再結合は、もはや何らの影響も受けないと言うのが、これまでの多くの実験的事実である。従って今回は表に示すごとく、各種代謝阻害剤で前もって細胞を処理しておき、既存の修復酵素系を出来得るかぎり欠乏させた状態にしておいてから、細胞をX線あるいは4-HAQOで処理し、その後の再結合能をAlkaline sucrose gradient法で解析した結果を総括して表に示した。尚、表中3番目のカラム中にはこうした前処理につづくfinal 24時間中のnormal DNA合成能をH3-thymidineの取り込みで解析した結果をrateとして数値で示してある。(表を呈示)
この表からわかるように2.48mM hydroxyureaはnormal DNA合成を特異的に抑えるにもかかわらず、このような条件でX線、4-HAQOで誘発された一本鎖切断は、両者の場合ともに再結合される一方、10ng puromycin/mlでの前処理はnormal DNA合成能を、hydroxyureaほど抑えないにもかかわらず、X線、4-HAQOによって誘発された一本鎖切断の修復を完全に抑えていることがわかる。
 こうした結果は修復に関与する酵素系はnormal DNA合成に関与する酵素系とは異なったものであることを強力に示唆するものである。又同時に、両要因によって誘発されたDNAの一本鎖切断お再結合能が同じ代謝阻害剤に対して行動を共にすると言うことは、前報で報告した両要因によって誘発されたDNA切断の再結合が、殆ど同じスピードで進むと言う現象と考え合わせて、これら両者の作用部位が、ある程度類似していることを暗示していると思われる。これについての詳細な検討は、今後の解析をまたねばならない。
 尚、放射線感受性増強剤として知られるBUdRでの前処理は、X線、4-HAQOの両者によって誘発されたDNA一本鎖切断の再結合に、それ程大きな影響を示さないことも分った。

《安藤報告》
 (1)L・P3細胞DNAに対するRNaseの作用
 L・P3細胞のDNAがプロナーゼその他の蛋白分解作用によって低分子化する事からlinker protein(連結蛋白)を仮定して来たが、今回は一つのコントロール実験として改めて行ったRNaseに対する感受性のデータを記す。(図を呈示)図に見られるように牛膵臓のRNaseに対してはL・P3DNAは全く感受性を持たない。したがって、DNA分子をRNAがつなげているような事はない事は明らかである。又先月お目にかけた電顕写真からもlinker proteinの存在が強く示唆される。
 (2)目下計画中ないし検討中の問題
 現在の所我々が発見した上記のlinker proteinの役割に焦点をしぼって検討している。
 (1)S期におけるDNA合成の開始点とこの蛋白の関係の解明。
pulse label、density labelを組合せて調べる。
 (2)この蛋白が合成される時期は何時か。
synchronous cultureを行って、ラベルされたアミノ酸のこの蛋白へのとりこみがいつ起るかを調べる。
(3)4NQOがこの蛋白を切断するとすれば、蛋白のどこを切るかを化学的に解明する。又回復培養によって、再結合が起るが、どのような結合が再生されるかを検討する。等。
 いずれも困難な問題ですので、いまだお目にかけるようなデータはないが、まとまり次第報告します。 

編集後記


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