【勝田班月報・7004】
《勝田報告》
 A)4NQO処理を受けた若い培養系の形態:
 Exp.CQ#64の対照(JAR-2ラッテF11の肝)。 Exp.CQ64の処理系(小円形細胞の、piled up colonies)。 Exp.CQ#65の対照(JAR-2・F11の肝)。 Exp.CQ#65の処理系。(写真を呈示)。
Exp.#64は、R2LC-1株を用い、4NQOで1回処理。処理、、5.5月に増殖コロニー3コ発見(1970-3月下旬)。目下復元接種の準備中。
Exp.CQ#65は、R2LC-1株を用い、同様に1回処理。写真は処理后5.5月であるが、この場合は増殖コロニーは見当らない。しかし細胞間の密着性が低下し、細胞の形態、核小体などに変化が見られる。目下復元接種の準備中。
 B)RLT-1株及びCulaTC系の染色体数:
 RLT-1はExp.CQ#42で4NQOによりできた変異株であり、CulaTCは、それをラッテに復元してできた腹水腫瘍を再培養して継代している系である。(染色体数の表を呈示)
 RLT-1株の染色体数のmodeはかっては40本であったのが41本に移行した。核型は、検索中であるが、正常ラッテ染色体の核型をかなり維持している。
 CulaTC系は染色体数のmodeがその後41本から74本に移行した。核型はやはりラッテらしく大型のmetacentricなどは見当らない。
 RLT-2、CulbTC、RLT-5、CuleTCなどについては、目下検索中である。
 以上の所見は、初めは染色体数にわずかな変化しか起らないが、やがて癌細胞特有の異常分裂の頻発によって大きな変化を示すことを示唆する。

《高木報告》
 1.腫瘍(悪性化)細胞と正常(無処理対照)細胞を混じた移植実験:
 RG18-1:NG-18(T-1)を復元して生じたtumorの再培養細胞。
 NG-19K:WKArat胸腺の培養細胞。
 RG18-1細胞を腫瘍細胞とし、NG-19K細胞を正常細胞として表の如く混じ、WKAnewborn ratの皮下に移植してその結果をみた。なお36G、32G、・・・・とあるのは細胞のin vitroでの継代数である。一番上の欄では10万個levelで調べてみたが、25日目の観察でRG18-1を10万個とNG-19Kを100万個混じた場合に1/2にtumorを生じた外はすべてにtumorを生じた。次の欄は1万個levelで実験を行った。RG-18-1のみ1万個接種した実験で50日目の判定で1/2にtumorを生じたが、その間2疋死亡しており、この死亡した2疋の観察が不充分であるため1/2とした訳である。混合群では3/4にtumorを生じた。
次の欄はRG18-1 1000個levelで実験を行ったものであるが、未だ接種後日が浅く結果は出ていない。なおNG-19K細胞だけ100万個、33G、41Gにおいて接種したが、これは各々95日、40日後にtumorを生じていない。
 2.NG-18(T-1)細胞の動物継代:
 昨年10月28日以来この細胞の動物による継代を試みているが、現在まで7代にわたり継代に成功している。詳しくは班会議において報告の予定である。

《難波報告》
 N-16:4NQOによって悪性化した細胞のマーカーを探す試み−旋回培養について(続)−
 月報7002に、旋回培養について報告した。その報告の概要はラット肝細胞が悪性変化すると、旋回培養で大きな細胞塊を形成すると云うことであった。今回は7002の月報に述べたと同じラット肝細胞を用い、その4NQO非処理対照細胞、4NQO処理によって試験管内で悪性化した細胞、この細胞の動物復元で生じた腫瘍の再培養細胞を、旋回培養で培養し続けた。培養は、最初300万個の細胞を20%BS+Eagle's MEMの培地3mlに植え込み、以後2日おきにこの細胞浮游液(細胞塊を含む)1.5mlを新しい培地1.5mlに入れ継代した。そして、継代時ごとに浮游細胞数を数えた。一方腫瘍再培養細胞では浮游状態で増殖が維持されていることが判った。試験管内で4NQOによって悪性化した細胞は、対照細胞と同じ減少傾向を示すが、浮游細胞数は対照細胞より多かった。
 以上のことから、この実験系では腫瘍細胞は浮游状態で増殖可能なので、4NQO処理細胞が浮游状態で培養可能な傾向を示すようになれば一応悪性変異したことのマーカーになり得るのではないかと考えられる。又、現在試験管内で4NQO処理をした細胞を浮游状態で培養維持しその後、浮游細胞をもう一度試験管で増し、復元てその造腫瘍性を検討しようと考えている。なお、腫瘍再培養細胞の浮游細胞塊をパラフィン切片にして染色後観察すると、月報6911に報告した腹水腫瘍細胞の島の切片に非常に類似していた。
 N-17:クローン化した肝細胞での発癌実験
 月報7001に述べたごとく現在、LC-2、LC-9、LC-10の3系で発癌実験を行っている。現在動物に“Take"される段階に至っていないが、この実験の経過は以下のごとくである(表を呈示)。動物復元は生後48時間目の新生児の腹腔に500〜1000万個の細胞を接種している。
N-18:若い培養の肝細胞のクローニング
 現在まだpure cloneはできてないが、クローニングの為の基礎的データを集めて居る。細胞は細切肝組織を回転培養し、継代1代のものを使用しPEを求めた。その結果PEは0.2〜3.2%(細胞のまき込みは100〜2000/plt)で、培地の比較では、TC199(日水)、Eagle'S MEM、Eagle'S MEM+Fetuin(20μg/100ml)に20%のBSを含むものではEagleが良かった。Fetuinの添加はあまり効果はみられないようである。

《堀川報告》
 培養哺乳動物細胞のDNA障害と修復機構(20)
 4-NQOと4-HAQOのうち、4-HAQOが第一義的に細胞内のDNA鎖切断を誘起するであろうことは、温度処理された細胞を4-HAQOで更に処理した場合、4-NQO処理の場合に比べて顕著に二本鎖切断を誘起するという実験的事実から暗示されたが、今回はこのように45℃で30分間温度処理した細胞、つまり生存能を失った細胞を4-HAQOで処理してDNAの一本鎖切断を誘起させ、その切断された一本鎖DNAが再結合して高分子DNAにもどって行くか否か、を検討した結果を示す。(図を呈示)第1図はそれらの結果を示すものであって、温度処理した細胞を更に1x10-4乗M 4-HAQOで30分間処理して生じたDNAの一本鎖切断は、正常細胞を4-HAQOで処理して生じたDNAの一本鎖切断と殆ど同様に、処理後の細胞を37℃でincubateすると徐々に再結合してもとの大きさのDNAにもどって行くことが分かる。ここで問題になるのは、この様に温度処理によって生存能を失った細胞ではDNA合成に関与するenzyme systemが完全に失活されているか、それともまだ部分的に残存しているかという疑問が生じてくる。つまりもしDNA合成に関与する酵素系が完全に失活された状態下で、この様な切断DNAの再結合が起こるとすれば、それは修復酵素系の関与を抜きにした切断DNAのまったく別の重合化を考慮しなくてはならないわけである。従ってこの点を検討するため、4-HAQO処理した直後のEhrlich細胞、さらには温度処理後、直ちに4-HAQO処理した直後のEhrlich細胞内へのH3-leucine、H3-uridine、H3-thymidineの取り込み能を解析した。結果は(図を呈示)第2図に示すごとくであって、4-HAQO処理細胞あるいは温度処理と4-HAQO処理細胞内への各種前駆物質取り込み能は対照区(ここではCPMスケールの都合上はぶいてある。班会議の際明示する)のそれに比して顕著に抑えられることがわかった。またここで注目すべきは4-HAQO単独処理群に比べて温度処理プラス4-HAQO処理群のH3-leucine、H3-uridine、H3-thymidineの取り込み能は極度に抑えられているとはいうものの、少くとも処理後24時間以内は非常に低い活性ではあるが、これら前駆体の取り込み能は残存していることがわかる。またこうした結果から、温度処理プラス4-HAQO処理後に細胞内に残存する僅かのDNA合成酵素系を含くむ生物活性が、切断された一本鎖DNAの再結合にとって充分であることを示唆しているように思われる。

《山田報告》
 先月より免疫の基礎実験、HQ系細胞、岡大のExp7-2細胞株の写真記録式細胞電気泳動法による分析、その他の仕事が重なり、大忙しです。
 同種移植抗血清の腫瘍細胞表面における反応;今回はまず本法(細胞電気泳動法)による測定可能限界と、反応する抗血清の濃度との関係を検索しました。AH62F(ラット腹水肝癌)をドンリューラットの腹腔内移植後18日目に抗血清採取。この抗血清中よりbovine serumalbumin-antiserum Complexにより補体を吸収、改めて一定量の補体(各0.1ml)を加へる。
この抗血清とAH62Fの反応を検索しました。すべての細胞電気泳動度測定には、ヴェロナール緩衝液に10mM濃度の塩化カルシウムを加へたメヂウムを用いて測定。即ちカルシウムの細胞表面への吸着性の変化を細胞電気泳動法により測定したわけです。用いた抗血清量と泳動度の変化は図に示します。これは前記血清0.5〜0.05mlに対し、AH62Fを200万個加へ37℃10分間反応させた後生食で二回洗って測定したものです。対照としては同一条件の血清をそれぞれ反応前に56℃30分加温することにより、その補体を比活性化したものを用いました。図に示すごとく、対照の電気泳動度と反応させた細胞のそれとの差は、加へた抗血清量に比例し、その測定可能限界は、血清量0.05ml(200倍稀釋)程度であることが判明。勿論正常血清を用いた場合は両者に殆んど差がありません。この抗血清を、0.5ml用いて反応させたAH62Fについて、トリパンブルーによるintoxication testを行った所、全く色素に細胞は染まりません。従ってこの細胞電気泳動府により検出して居る変化は細胞膜のごく表面のものと考へられます。またこの反応と、I.A.(Immunoadherence)反応との関係をしらべてもらった所、この実験条件では殆んど反応がキャッチされないとのことです。しかしラットの血清中には人赤血球が附着することを妨げる物質があるさうですので、モルモットの補体を使って再度検索してもらう予定です。
 また異種抗血清を用いて反応を検索した所、通常の細胞電気泳動法による測定法よりも、このカルシウム吸着性による変化を同法で検索する方が、約10倍の感度があることも判明しました。(Ehrlich癌細胞をラットに移植して得た抗血清を用いました。)
 なほ、この検出方法を用いて腫瘍細胞と脾細胞(リンパ球)との直接免疫反応を定量的に測定する実験も行っています。良い結果が出さうです。
 岡大株Exp7-2系細胞の構成分析;これまでin vitroに於ける4NQOによる悪性化に伴う細胞表面の変化を種々の細胞系について検索してみましたが、それらを大別すると、
 1)4NQO一回接触させた後に、経過を観察した医科研株CQ系の細胞にみられるごとく、宿主へ復元して初めて悪性化が証明される時点では、その細胞群の平均電気泳動度が悪性型のパターンを示さないもの。
 2)4NQOをくりかえし20回或いはそれ以上接触させた岡大株Exp7にみられるごとく、悪性化の証明される時点で既にその細胞群全体として悪性型の電気泳動パターンを示すもの。
があることを認め、前者の場合を写真記録式細胞電気泳動法により細胞構成分析した所、細胞群のうちで、比較的少数の細胞が悪性化するのではないかと云う推定が得られたことを既に幾度か報告しました。この論理でゆくと、2)の場合では、悪性化の時点で既に多数の細胞が悪性化して居るのではないかという考へが生れます。そこで今回はExp7-2の株についてCQ系と同様に写真記録式細胞電気泳動法により分析してみました。その結果を図にまとめて示します(図を呈示)。
 まずcontrolのラット肝細胞培養株ですが、今回初めてシアリダーゼ感受性が出て来ました。所がこの株の細胞像(写真を呈示)をみますと、約40%は繊維芽細胞と思われる細胞が混在しています。(RLC-10では全くこの様な細胞は認められません)。従って或いはこのシアリダーゼ感受性の増加は繊維芽様細胞の性質によるものかもしれないと思い、円形細胞と繊維芽様細胞を分けてヒストグラムを作ってみますと、図に示すごとく円形細胞もシアリダーゼに対する感受性がある様です。従って細胞電気泳動度の上からみると、悪性化が否定出来ません。
 次にくりかへし4NQOを作用させて悪性化したExp7-2transformed株ですが、繊維芽様細胞は全く混在せず、かなりの細胞が悪性化の泳動パターンを示し、その頻度はCQ42(RLT-1)より更に多い結果を示しました。しかし悪性化の泳動パターンを高頻度に示す細胞はむしろ大型細胞で(CQ42の場合は中型細胞)あることも判明しました。
 再培養株Ex7-2RTCでは再び20%前後に繊維芽様細胞が混在していますが、この株が最高に悪性型の泳動パターンを示す細胞が存在して居ました。ラットに復元すると悪性細胞がセレクトされる可能性が、この泳動的な成績からも支持されます。
 HQ系のその後の変化;
 RLH-5・P3に4NQOを接触させてから168日の細胞について、まず従来通り写真記録式細胞泳動法により検索した所、特にHQ1B(2回4NQOを作用させた細胞群)に著明な変化が認められました。(図を呈示)図に示すごとく、この株のなかで特に中型細胞が高頻度で悪性型の泳動パターンを示しました。
そこで前号(No.7003)に報告しました様にこの細胞株の抗原性の変化を分析してみました。その結果を図に示します。即ちRLH-5・P3細胞をラット(JAR2)に移植して18日目に採取した抗血清(0.5ml)をHQ1Bに反応させた後に、10mMのカルシウム添加メヂウム内で泳動させた状態を室温で記録したわけです。対照は全く同じ条件ですが反応前に56℃30分間比活性化したものです。図に示すごとく大型細胞及び小型細胞では、抗血清により平均泳動度が0.120及び0.133(μ/sec/v/cm)低下してゐますが中型細胞はその約半分以下0.053(μ/sec/v/cm)のみしか低下して居ません。この知見は、HQ1B細胞群のうち中型細胞が特に抗原性が変化して居る可能性を示し、図で示したシアリダーゼ感受性増加がやはり中型細胞に特に多いことと一致した所見と考へます。

《藤井報告》
 1.吸収抗Culb血清による変異細胞抗原の検討
 Culb細胞をWKAラットに注射して得た同種抗Culb血清(Fr16,021370,pooled)を、Culb細胞およびラット肝(JAR-2)で吸収し、吸収および非吸収抗血清についてmixed hemadsorptionを施行した。
 抗血清の吸収:凍結Culb細胞およびラット肝(JAR-2ラットを脱血後、門脈より生食水をinfusionして血液をできるだけ除いた)をテフロン・ホモジナイザーで破壊し、40,000rpm 60分間の遠心沈渣を、さらに2回洗滌(生食水で)して吸収抗原とした。吸収は抗血清を等容量の吸収抗原(packed)と混じ、0℃、60分間反応させたのち、40,000rpm 60分間の遠心でおこなった。非吸収および吸収血清について、既報の方法でmixed hemadsorptionをおこなって得た成績を示す(表を呈示)。
 被検抗血清は月報の前号に報告したものより、さらに追加免疫をおこなって得たものであるが、targetのCulb-TC、RLTおよびRLC-10のいづれに対しても>128を示しend pointを逃してしまった。Culb抗原で吸収した血清ではCulb-TCに対してはもちろん、RLT、RLC-10に対する抗体も消失している。一方、正常ラット肝抗原で吸収したばあいに、Culb-TCとRLC-10への反応が消失し、RLTに対する抗体がなお残っていることは意外であった。すなわち、抗Culb血清にはRLTに反応し、Culb-TCには反応しない抗体があり、抗体の側からみると、RLTに変異抗原があり、Culb-TCはむしろ変異前のRLC-10に近いということになる。
 この成績の説明として、抗Culb血清の作製に用いたCulb細胞が、かなり以前に凍結保存されていたもので、変異抗原をもっていたが、Culb-TCは継代培養過程でその抗原を失い、正常ラット肝抗原にちかづくか、あるいはマイナスになっている可能性があげられる。この成績はmixed hemadsorptionと他の方法でも再検討してみる予定です。
 2.動物の遺伝的均一度と皮膚移植テスト
 私の課題とは話がはづれますが、最近、実験動物談話会のシンポジウムで、上のような表題で話をまとめる機会がありましたので、御参考になればと一部を書いてみます。
 (表を呈示)表はGraffらの論文(1966)の中の表のさらに一部ですが、マウスでの組織適合抗原のうち、strong antigenといわれるH-2抗原以外について、それぞれの抗原だけが異なったとき、皮膚グラフトがどのくらい生着するかを示したものです。単一な組織適合抗原のみが異なる(このばあいC57BLに対して)Congenic resistant strainをつくり、さらに皮膚移植テストをおこなうといった仕事は、純系動物について長年の基礎をもった上でも、しかも大変なことだと思われます。ふつうH-2抗原が異なると、皮膚グラフトは10日位で脱落しますが、H-2が同じでも、H-1、H-3、H-7、H-8、H-13などが異なると、それぞれ25日、21日、23日、32日、38日のmedian survival timeで脱落することが、示されております。H-4、H-12、H-9などは弱く、120日、259日、>300日のMSTです。このような成績からみても、皮膚移植テストで何日間生着したかという成績から、動物の均一度を検定することは、むしろ不可能のように見えます。
 (表を呈示)この表は、自検例と、北大病理・相沢教授の発表されているものから引用したものです。医科研癌細胞研究部のラット・JAR-1(1967)は、同性同腹移植で4匹だけですが、>150日以上生着で、実際には>20月、>29月、>24月、>27月で死亡時なお生着していた由です。Toma-ratは23代〜28代兄妹交配を経たもので、一応90日以上の生着率をとってみると同腹同性間移植で92%ですが、異腹同性間移植では72%と下ります。相沢教授の成績は、<5日以内のtechnical failureと思われるのも入っているようですが、一応銘柄(お酒みたいですが)の系統でも必づしも100%とはいかぬようです。いろいろ問題はありますが、100日以上のグラフト生着を許すようなweak antigenが、問題にならぬような実験ならこの動物は先づ大丈夫といったことが、皮膚移植テストから云えそうです。癌の実験も動物次第でいろいろな成績が出る可能性ありです。

《梅田報告》
 前回の班会議で報告した長期継代例以外に更に増殖が盛んとなった2系列及びSoft agar法の結果(失敗に終っている)について記する。
 (1)(実験番号N#34j)ハムスター胎児細胞培養に、昨年12月3日に10-4.0乗Mの3HOAを投与し、更に12月5日同濃度の3HOA培地で交新し、12月8日コントロール培地に戻して後長期継代している。継代初期の増殖は非常に良く形態的に、3HOA培地により、criss crossが見られた。培養65日目頃に培地作製にミスがあり、やや増殖がおちたが、培養80日目に旺盛な繊維芽細胞の増生が認められ、このものは以后コンスタントに良好な増生を続けている。
コントロールは60日目頃より殆んど増殖しなくなった。興味あることは、前回報告したN#29実験(7003-4)も、本実験も、tryptophan代謝産物としてのKy、KA、XA、3HOK、3HOAの5種類について夫々に適当と思われる濃度について長期継代を続けたもので、2回共に3HOA処理細胞のみが良好な増生を示していることである。他の細胞系はここではしめしていないが、コントロールと同じ運命を辿っている。3HOAがtryptophan代謝産物の内で、一番proximateなcarcinogenと考えられている点と考え合せこの点を再検してみたい。
 (2)(実験番号T#217) この系列はハムスターの新生児肺の培養細胞に、N-OH-AAFを投与した。即ち12月22日より7日間N-OH-AAF 10-4.5乗M培地を3回交新した後、培地をコントロール培地に戻して、長期継代を続けている。始め主にpolygonalの細胞とまれにspindle shapedの細胞が認められていた。本例はpassageの時の記載を怠っていたため、累積カーブは画けないが、実験群が50日目頃より、コントロールのカーブより急になっている。形態的には丁度その頃より細長い細胞によって占められ、細胞質の屈折率も高まった様に感じられる。
 (3)上記の細胞系について通常のplating efficiencyと、Soft agar法を用いたコロニー形成能をチェックした。我々のtechniqueでもAH-7974で約6.5%のPEの結果を得た。

《安藤報告》
 (1)4NQOによるDNA一重鎖切断に対するDicoumarol(DC)の効果
 4NQOは細胞内に入って4HAQOに還元されて働く。杉村等によれば、この還元酵素は細胞上清にあり、NADH又はNADPHをCofactorとして要求する。そしてある程度精製された酵素はDCにより強く阻害される。そこで4NQOを細胞に与える時に同時にあるいは予め細胞をDCで処理しておいてから4NQOを投与したら、DNAの鎖切断はどうなるであろうか。もしもDCが細胞にとりこまれ、reductaseを阻害するならばDNA切断が起らない事が期待されるはずである。結果は図にみられるように、DC.10-6乗Mで10分、30分前処理をした後に4NQOを加えてもDCの効果は見られず、いずれの場合にも同程度の分解を示していた。次にDC濃度を10倍とし、同時あるいは5分前に加えてから4NQO処理をしてみたが、結果は同じで、DCは4NQOによるDNAの一重鎖切断を阻止しなかった。この結果はnegative dataであるが、その理由は不明である。DCが細胞にとりこまれないのか、とりこまれても直ちに不活性化されてしまうのではないだろうか。(図を呈示)
 (2)寺島法による中性蔗糖密度勾配遠心法によるDNAピークの酵素感受性
 中性での、DNAの二重鎖切断を分析する際に使用している方法の検討の一つとして、このDNAピークの酵素感受性を調べてみた。すなわちこのDNAピークが100%DNAより成り、蛋白、RNA等のものは含まないとしたら、DNaseのみにsensitiveであって、pronase、RNase等にはinsensitiveである筈である。そこで先ず、pronaseの効果を調べてみた。方法はSDSを含むtop layerと蔗糖の勾配層にそれぞれ1.5、0.5mg/mlとなるようにpronaseを加え、その上に細胞をのせ遠心する。結果は図に見られるようにcontrolが殆ど底に沈む条件下にpronase処理を受けた場合には、DNAピークは小さくなり中間に来ている。しかも同一処理をした二本の管(2、3)が同位置にピークを与えている事からもtube間の誤差でもない。したがって、この方法で得られるDNAピークにはpronase sensitiveな箇所が含まれていると思われる。
しかしこの実験において使用したpronaseにDNase活性が含まれていない事を示さなければならない。そこで使用するpronaseに人為的にDNaseを加えて、それが働くか否かを調べてみた。pronase原液(5mg/ml)にDNaseを100μg/mlに加え、37℃、2hrs preincubateする。その後にDNaseなしのpronaseと同様にgradientに加え細胞を遠心してみた。結果は図に見られるようにDNaseはpronaseにより全く失活している事がわかった。従って、このpronaseの効果はcontaminateしているDNaseによるのではない事が明らかである。
次にRNaseの効果を調べた。この場合top layerにはpronaseを加え、gradient layerにRNaseを50μg/mlとDNaseを20μg/mlを加えた密度勾配をつくり、この上に細胞をのせ遠心した。結果は図のようにDNaseによってはピークが小さくなると同時にtubeのtopの方に移動しているのでDNAが分解した事を示している。RNaseの効果はややあいまいであった。(夫々に図を呈示)。第6図も同様な結果であり、明確な結論は今の所出せない状態である。したがってこの点は更に検討を続けようと思う。


編集後記


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