【勝田班月報・7104】
《勝田報告》
A)最近の復元接種試験の成績:
RLC-10株(ラッテ肝)は4NQOによる癌化実験の対照で、継代中に自然癌化をおこしたが、これをドライアイス内で凍結保存後、TD-40瓶にまいたところ、細胞のcolonyが3コできた。これをふやして復元接種してみた。#1〜3はそれぞれクローン#4は残りを集めた混合で、接種数は300〜500万個/ラッテで、68〜103日観察後どの系も0/2であった。4NQO処理後悪性化した系から軟寒天法で拾ったRLT-1Aは500万個接種で71日には腫瘍形成2/2であった。接種部位はI.P.である。
B)上記の諸系の染色体像:
RLC-10#1は73本、RLC-10#2、#3は42本、RLC-10#4(Mix)とRLT-1Aは41本であった。核型からみると、42本のものも正二倍体ではない。また各系とも特徴がなく、正二倍体の核型からあまり変化した染色体はみられない。
C)若干株のPPLO試験:
千葉血清の橋爪氏におねがいして、若干種の細胞株について、PPLOの存在をしらべて頂いた。RLC-10#4(ラッテ肝)(血清培地継代)とJTC-12・P3(サル腎)(合成培地継代)は−であった。JTC-20・P3(ラッテ胸腺細網細胞)(合成培地継代)は+++。JTC-25・P3(ラッテ肝)(合成培地継代)は+〜++。JTC-20・P3はあまりPPLOが多いので、PPLO退治のテスト材料に好適といわれてしまった。RLC-10は(-)なので、発癌実験にPPLOが関与したという可能性は否定してよいと思われる。
《安藤報告》
4NQO処理FM3A細胞の増殖能の回復と連結蛋白の関連
L・P3細胞については、4NQO 1x10-5乗Mによって細胞DNAは、pronase処理対照DNAと同程度にS値の低下を示した。そして中性蔗糖密度勾配遠心法による限り、4NQOにより切断される結合はDNAの連結蛋白部分である事を報告してきた(図を呈示)。又、この連結蛋白の切断は容易に再結合されると同時に細胞は増殖能を回復した(月報7103)。
今回はL・P3よりも使い易いsuspension cultureされているマウスFM3A細胞を使って、この点を確認すると同時に、更に4NQO高濃度によって更に大きく切断した場合、DNA
levelで再結合が起るか否か、増殖能の回復が起るか否かを調べた。30万個cells/mlの細胞濃度を用いた場合、FM3A細胞はL・P3よりも4NQOに対し感受性が高く(図を呈示)、ほぼ1x10-6乗MにおいてL・P3に対する1x10-5乗Mに比較さるべき切断を示した。3x10-6M以上では更に大きな切断が見られた。これ等のそれぞれの濃度で30分処理された細胞を新鮮培地中で24時間処理後に同様に分析した所、1x10-6乗Mの場合はほぼ完全に再結合が起っていたが、3x10-6乗M以上では不完全であり再結合される部分とされない部分に分れ、1x10-5乗M以上では大部分が回復されなかった。この実験から4NQOによるDNA障害のうち、修復可能な部分と不能な部分がある事がわかった。次にこれ等の障害が、先にL・P3において示された連結蛋白といかなる関係にあるかを調べた(図を呈示)。図に見られるように4NQOの1x10-6乗M迄は、4NQOの障害は連結蛋白に限られていた(一重鎖切断はすでにDNA上に起っている)。しかし4NQO
1x10-5乗Mにおいては、4NQO連結蛋白切断+α切断を起していた。この場合αはDNA部部の二重鎖切断だと思われる。この事実は先に述べた修復可能な障害は連結蛋白の切断に相当し、不能な部分はDNA部分の二重鎖切断に相当する事が強く示唆される(図を呈示)。
これ等のDNA levelにおける修復加納、不能障害に対応して、細胞の増殖の能力の回復を調べた。(図を呈示)図に見られるようにDNAレベルで回復が起る場合には、すなわち障害が連結蛋白部分に限られている場合には、増殖能は完全に回復していた(1x10-6乗M
4NQO)。しかしながら、DNA部部の切断を起す3x10-6乗M以上の4NQOによってはDNA
levelの回復も起らないと同時に増殖能の回復も起らなかった。
以上の実験から、次のように結論する事が出来ると思われる。
4NQOによる細胞DNAの障害は、DNAの連結蛋白部分の切断よる二重鎖レベルの鎖切断である限り、分子レベルに於て修復が起ると同時に細胞レベルにおいても増殖能の回復となる。一方、DNA部分の二重鎖切断が起った場合には、もはや分子レベルにおいても細胞レベルにおいても回復は起らなかった。
《堀川報告》
培養哺乳動物細胞のDNA障害と修復機構(31)
DNA鎖中に存在するらしいResidual protein部分(pronase
sensitive site)を4-HAQOもX線も共にattackするようだが、その作用機構は基本的な点において両者間でわずかに異なるのではないかということを示唆する実験結果が得られた。これらについては前報で報告したが、今回はpronase、4-HAQO処理、あるいはX線照射によって誘起されるDNAの最大の二本鎖切断数はどのようであるかを比較検討した予備結果を報告する。
5〜20%のsucrose gradient partに0.5mg pronase/mlになるようにpronaseを加え、top
layerに5mg pronase/mlを加えて、その上からmouse
L細胞をのせ、lysisさせ、15分間種々の温度でincubateした後に超遠心にかけ、sedimentation
profileからDNA molecule当たりの二本鎖切断数を計算した(図を呈示)。
ここには2つの実験結果を示してある。これらの図から分かるようにpronaseのoptimum
temp.は50℃周辺にあり、2つの実験で違いはあるがDNA
mlecule当たり600以上の切断が入ることがわかる。
一方、種々の濃度の4-NQOを含む培地中で30分間培養したL細胞を処理直後に正常sucrosegradient
centrifugationにかけ分析した結果を図に示す。培地中の4-NQOの濃度が1x10-5乗Mに達するまでは、4-NQOの濃度に依存して二本鎖切断数は増加するが、それ以上の濃度では変化がない。この点での最大切断数はDNA
molecule当たり36個である。また5x10-4乗M〜1x10-3乗M
4-NQOになると、細胞内DNAの二本鎖切断数が減少してくるように思われる。これは4-NQOのhydration等が起きたためなのか、あるいはそれ以上のfactorが関与するのか、現時点では推測の域を脱しない。しかしこの点は発癌実験とも関連して非常に重要な問題を提起するものである。いずれにしても、4-NQOで細胞処理した際に誘起される二本鎖切断は、pronase処理で誘起される切断の一部分にしか該当しないということは非常に興味がある。つづいてX線によるDNAの最大二本鎖切断数を検討しようと計画中である。
《山田報告》
引続きラット肝細胞RLC-10のコロニー株の細胞電気泳動的分析を写真記録式泳動法により行ってみました。方法及びその計算法は前号に報告したものと全く同じです。
RLC-10の三コロニー株#1、2、3を分析した所、表に示します様に(表を呈示)、やはりコロニー#2が最も平均泳動度が低くノイラミニダーゼ処理により殆んど平均泳動度は低下せず、しかも細胞構成分析でも、推定変異細胞出現率は綜合すると2.3となりました。自然癌化株のうちで、最も推定変異細胞出現率が少いと思われたRLC-10-A株の値は3.0ですから、まずまず自然癌化細胞はこのRLC-10のコロニー#2には含まれていないと云って良いものと思います。しかしRLC-10のOriginal株のごとく典型的な良性肝細胞の泳動パターンは示しておりません。この株の細胞形態は写真に示すごとく(以下夫々写真を呈示)、揃っており中小型細胞が大部分であり、大型の異型細胞は全くみられませんでした。
これに対しコロニー#1は、ノイラミニダーゼ処理により平均泳動度は7%の減少しか示しませんが、綜合推定変異細胞出現率は3.9となりRLC-10-Aのそれより高く、自然癌化細胞の混入も考えられます。その細胞形態も写真に示すごとく、大小不同が目立ち、やや大型細胞も出現しています。しかしこの大型細胞はRLT-1〜5の系に出現した様な大きなものではなく、むしろ中型細胞です。
コロニー3は前二者の中間の性質を示し、癌化細胞の混入も必ずしも否定出来ません。
これで一応発癌実験のControl細胞の分析は終りましたが、残念ながらRLC-10
Originalにみられた様な典型的な泳動パターンはいずれの系にもみられず、その意味では多少問題が残ります。今の所、RLT-1のコロニー(前回報告)及びこのRLC-10のコロニー#2が、発癌のための実験にも最も適していると云う結論です。
《高木報告》
1.混合移植実験
(1)RG-18を腫瘍細胞として用いたhomologousな移植系での実験:
RG-18細胞が、腫瘍性が低下したように思われることは先の月報で述べた。この実験は現時点の細胞を用い、近い間隔で行われたものである。RG-18
50ケ、10ケの実験も行っているが未だ腫瘤の形成をみていないので紙面の都合もあり今回ははぶいた。
これだけのdataでは未だ推測の域を出ないが、先の実験で(No.7102)RG-18細胞500ケとRL細胞1,000ケまたは100ケ混じたとき出来た腫瘤がregressしたことを報告したが、今回の実験でもRG-18細胞500ケとRL細胞1,000ケを混じたとき、未だ1/3しか腫瘤の発生をみず、すなわちtumorigenicityがよわいように思われる。RL-18、1,000ケでは移植したratが死亡したため疋数が少くなったが追加実験を行っている。両方の細胞を同数程度混じたときtumor-igenicityが低下するのかも知れない。
(2)RRLC-11を腫瘍細胞として用いたisologousな移植系での実験:
RRLC-11細胞のみについての移植成績は、表に示す通りで(表を呈示)ある。細胞数の減少と共に腫瘍発現までの日数、腫瘍死までの日数が次第に延長し、100ケになると未だ1/3に、しかも63日かかって腫瘤の発生をみている。当然のことではあるが、細胞数とこれら日数の間には、はっきりした相関関係が成立っている。従ってこの細胞を用いた混合移植実験は細胞数100〜1,000ケを中心に行ってみる予定である。
2.Colony levelでのNG発癌実験
RL細胞(WKA rat肺由来)を用いてcolony levelでの実験を行い、3実験系についてNG
10-5乗M作用せしめた後経時的にcolony形成能、piling-up
colonyの出現率などを検討しているが、一定のdataが出ていない。いろいろな原因が考えられるが、やはり一番の問題点は、mixed
populationの細胞を用いていることと思う。RL細胞のcolonyをみると、少くとも2-3種類の細胞より成るものがあることは先に述べたが、その各々を拾ってさらにcolony形成を2-3回繰返し、現在、2系の比較的純粋と思われる細胞がとれた。この細胞をふやして実験にかかる予定である。
九大では今年度の大学院学生の採用も終り、きびしく講義(セミナー)を行うことになっていますが、その病理系学生(全体を生理系、病理系に分けて)の前期の講義に“組織培養による発癌実験"のテーマも加わることになりました。
《梅田報告》
ハムスター胎児細胞の2代細胞に、mycotoxinであるペニシリン酸(PA)及びパトリン(Pat)とトリプトファン代謝産物お3-hydroxyanthranilic
acid(3HOA)を投与して、長期継代した例を述べる。
(1)PAは10μg/ml濃度の培地で1日間処理し後継代した。ここで2系列にわけ、1回処理そのままのものと、更に2代、3代目で同じ処理を繰り返したものを作った。後者は増殖が悪く、8代目で増殖が止って了った。前者は10代目培養110日をすぎてから増殖が盛んになり、形態的にもtransformを思わせた。12代目にsoft
agar中でmicrocolonyを作る様になった。30代目200日頃より更に良好な増殖を示し(1週間で10倍以上)、形態的にはcriss-cross、piling
upの著しい像を呈する様になった。
(2)Pat 2μg/ml濃度の培地で1日間処理後継代したが、増殖悪く3代で切れて了った。因みにHeLa細胞での増殖カーブ実験で1μg/mlでは、一日間の横這いでその后増殖がresumeする。他のラット肺、肝培養も殆同じ感受性を示しているので、2μg/mlがそれ程高い濃度と思わなかった。所謂毒素なので濃度が少し上っただけで、この様な長期継代には耐え得ないのかも知れないと解釈している。
(3)3HOA 10-3.5乗M培地投与1日后control培地に戻して長期継代した。これも数回処理群を作ったが、切れて了った。(1)のPA処理と非常に似た増殖を示し、9代目110日頃より形態的transformを示し、24〜25代目180日頃より更に良い増殖を示し、4〜5日で10倍以上の増殖を示している。criss-cross、piling
upも著明になった。(図を呈示)
どうしてももっと早くtransformする系を作らないと実験にならないと痛感している。