【勝田班月報・7106】
《勝田報告》
 A)合成培地内継代JTC-21・P3(RLH-1・P3)株の癌化実験:
 細胞電気泳動像よりみて、JTC-25・P3(RLH-5・P3)は悪性型に近いが、JTC-21・P3はいわゆる“なぎさ"型で、正常と腫瘍の中間であると山田班員がかって指摘された。これまで報告してきたように、JTC-25・P3株は、かなりの回数4NQOで処理してもtakeされなかったので、今回はJTC-21株を用い、4NQO処理をおこなってみた。
 JTC-25・P3株と異なり、JTC-21・P3株は4NQOによる処理で細胞障害が激しいので、正常肝株なみの濃度の4NQOを用いた。
 1970-12-10:JTC-21・P3株を3.3x10-6乗Mの4NQOで30分間、1回のみ処理。
    12-22(12日後):細胞が高度にpile upするようになったことを発見。
 1971-5-14(155日後):復元接種。JAR-1、F40、生后5日のラットの腹腔内へ、300万個/ratで接種。現在観察中。
 B)早期復元接種の実験:
 発癌剤処理後、長期間培養してから復元接種するのでは、かえって生体にtakeされ難い細胞をselectしてしまうのではないか、むしろ早期に復元して動物体内でselectさせるとどうだろうか、という実験である。なお副産物として純系ラッテの肉腫を作り、これを腹水型化したいという狙いもある。
 1971-4-18:JAR-1系、F40、生后7日♀ラッテより、次のような各種臓器をとりだし、メスで細切(トリプシン処理せず)、TD-40瓶にて培養。培地は(20%CS+0.4%Lh+D)。肝、肺、胸腺、胃、皮下間葉。
  4-30(12日后):3.3x10-6乗M、4NQO、30分間1回処理。細胞は何れの培養に於いても、センイ芽細胞その他の混在状態。
5-23(35日后):4NQO処理より23日後にあたるが、JAR-1系、F40、生后12日のラッテの耳皮下及び背部皮下に復元接種した。細胞は、塊を作っているものが多かったので、接種細胞数は不明である。結果は現在観察中。

《高木報告》
 RRLC-11を腫瘍細胞として用いたisologousな移植系での実験:
 Isologousな移植系についてのみその後のdataを報告する。(表を呈示)表の如くRRLC-11細胞10,000、1,000及び500コでは有意と思われる差はみられないが、100、50コではRL細胞、100,000、1,000コ混合群ともにRRLC-11細胞だけの移植群にくらべてtumorigenicity低下の傾向がみられた。homologousな系で混合移植によりtumorigenicityの促進がみられ、iso-logousな系で低下がみられるちすれば、興味ある所見であるが、未だ断定できない。

《佐藤報告》
 ◇DAB発癌実験(RLN-B2)
 (各実験の図を呈示)先ず前回月報の最後に図示したもの(DAB系)と同様の方法で、3'-Me-DABについて、コロニアルに検索された増殖耐性の結果である。3'-Me-DAB(20μg/ml)1回処理のものが最も高く、他は処理回数の増加と共に増殖耐性あるいは変性阻止の増強が見られる。
 次図は短期間のDAB濃度影響を示したものであるが、16.4μg/ml程度で増強阻止があることを示している。
 次は、3'-Me-DAB、DAB、MAB及びABについて増殖率をみたものである。2系のDABの脱メチル化物質の増殖率低下は3'-Me-DABやDABより少ない。
 次は前号11号のDAB実験を再度行なったものでTD40を使用し、一定面積中(0.34平方mm)の細胞数を10カ所、写真でカウントしたものの平均値及び継続投与の細胞数を同様に測定したものである。図によると、短期実験と同様に連続投与の場合には39日にわたって細胞増減はみとめられない。

《難波報告》
 N-35:DABによるクローン化した培養肝細胞の培養内発癌
 従来、4NQOによる培養肝細胞の培養内癌化は屡々報告してきた。それらの報告の中でクローン化したPC-2系の培養肝細胞株は4NQOによって癌化し、その動物復元によって生じた腫瘍の組織像はminimal deviation hepatomaに類似していた(月報7010)。そこで、このクローン化した細胞は肝実質細胞と考えられるので、この細胞とDABの組み合せで、
 1)従来、動物レベルで行なわれていたDAB発癌の仕事が、培養内で、細胞レベルで、可能かどうか。
 2)もし、可能ならば、培養内で培養肝細胞のDABによる発癌実験のモデルを確立する条件を求められるかどうか。
 3)そのモデルを確立できれば非常に多くの動物レベルでのDABの仕事の結果を、培養内の細胞レベルの仕事と比較検討でき、DABの発癌機構を掘り下げることができるのではないか。などの目的で、DABによる培養肝細胞の癌化を試み、以下の成績を得たので、実験はまだ完全に終っていないが、まとめた(表を呈示)。
 実験方法:DABは5mg/mlにエタノールに溶き、20%牛血清+Eagle's MEM培地に終濃度5ng/mlにし、TD40に細胞がsemiconfluentに増えた時期にDAB投与を始めた。その後、3〜4日ごとに、このDABを含む培地で、培地を更新した。(3日後の培地内のDABはほぼ完全になくなっており、またこのDAB処理条件では、細胞の増殖阻止は殆んど認められない。月報7010)。表に記しているように、DABの処理が間歇的になっているのは、細胞の継代の前後の時期に、DABを含まぬ培地で培養を行なった為である。復元は、生後48hr以内のドンリュウ系ラットの腹腔内に行なった。使用した細胞数は500万個〜1,000万個。
 [結果]
 1.培養内でDAB処理によってPC-2系の肝細胞が癌化した。
 2.17日DAB連続処理後、悪性化した細胞の腫瘍の腫瘍性は非常に弱く、計53日DAB処理を受けた細胞の腫瘍性は増強している。これは、DAB処理の増加に原因するのか、培養日数が進んだことに原因するのか目下不明である。
 3.現在、同じ細胞系でDAB 20μg/ml処理群の実験系もあるが、今回の報告例の5μg/ml処理群のものに比べ、発癌率は低い。(このデータは、以後の月報に報告する予定)。従って、培養肝細胞のDABに依る発癌実験にはDABの至適濃度が存在するようである。

《安藤報告》
 連結蛋白質の再結合に対するDNA合成阻害剤の効果。(予報)
 月報No.7102において、蛋白合成阻害剤cycloheximideは、DNAを連結する蛋白質の再結合に影響を与えない事を述べた。今回は、DNA合成の阻害剤cytosine arabinoside(araC)を投与した時に、4NQOで切断された連結蛋白の再結合が起るか否かを調べる事を目的としたが、結論的なデータがまだ出ていないので、予報として、DNAに対するaraCの作用のみについて記す。
araCはかなり古くからDNA合成を特異的に抑制する事が知られていた。又最近はchromo-some breakageを起す事(Benedict et al)、DNA合成阻害様式は、DNAのdiscontinuous合成(岡崎モデル)の際のOkazaki pieceの合成は阻害しないが、それ等の連結が阻害される事(Graham & Whitmore)等の新たな知見が加えられている。
 さて、先ずFM3Aに対するaraCのDNA合成阻害作用は図1に見られる通りである。(夫々図を呈示)。1x10-7乗Mで24%、1x10-6乗Mで77%、3x10-6乗Mで90%の阻害を示した。(24時間後の値)。第2図にcell growthに対するaraCの作用を示した。10-5乗Mでも完全な阻害ではない。これはaraCがG2 cellに対しては分裂阻害が弱い事と一致する。 
 次に、araCがchromosome breakを起す事からDNAの分解も起すかもしれないと思って検討してみた所、案の掟、DNAの鎖切断も起すことがわかった。
 しかしこの分解誘導はaraC処理6時間後には観察されなかったが、24時間処理後には明らかであった(図を呈示)。
 このような長いlagの後の鎖切断は薬剤自身によるというよりは、薬剤処理により徐々に活性化された酵素によると考えた方がいと思われる。
いずれにせよ、表記の目的のためには数時間以内の実験ならば可能なわけである。又1x10-6乗Mでなら、24時間使用もさしつかえない事になる。この結果は次回に御報告出来るものと思う。

《堀川報告》
 培養哺乳動物細胞のDNA障害と修復機構(32)
 今回は少し話しの内容を変えて、以前の班会議の際に報告したHeLaS3原株細胞からUV(紫外線)抵抗性あるいは感受性株の分離実験の現況について述べたいと思います。
HeLaS3原株細胞を0.5μg/ml N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)を含む培地内で24時間培養後、100ergs/平方mmのUVを照射する。UV照射直後細胞を10-5乗M BUdRを含む培地内で48時間培養し、続いて30Wの蛍光灯で2時間exposeすることにより、UV抵抗性細胞を死滅させる。蛍光灯でexpose後、細胞を正常培地中で培養を続けることにより、出現するコロニーをisolateして増し、これをS-1M細胞と名づけた。
 第1図に示すように(図を呈示)、このようにしてisolateされたS-1M細胞はコロニー形成能で見るかぎり、原株細胞に対してより感受性を増大していることが分かる。つづいてこのS-1M細胞を前回と同様にMNNG処理し、UV照射後、BUdR培地内で培養後、可視光線exposeによるphotodynamic actionを利用して更に感受性細胞を分離した。(各種薬剤の濃度およびUV等の処理時間は第1回目と同じ。) このようにして得られた細胞株が、第1図に示すS-2M細胞である。図から分かるようにS-2M細胞はS-1M細胞に比して更にUV感受性を増していることが分かる。
 さて、このようにしてHeLaS3原株細胞から分離されてくるUV感受性株のTT除去能はどのようであろうか。ちなみに、種々のUV線量で照射された直後のHeLaS3原株細胞DNA中に形成されるthymine dimerの割合を第2図に示した。S-1M細胞およびS-2M細胞におけるTTの生成量はどのようであるか。あるいはこれらS-1M細胞、S-2M細胞のTT除去能はHeLaS3原株細胞に比べてどのようであるかの検討が今後の問題として残されている。さらに最も興味あるのは、このようにして得られたUV感受性株がX線や4-NQO等の処理に対してどのような反応を示すか、つまりTT除去能が直接4-NQOまたは4-HAQO処理により誘発される障害の修復に関与するか否かの解析が現在進められている。

《藤井報告》
 Mixed lymphocyte-tumor reaction(MLTR)による腫瘍抗原の検出:
 前回にひきつづき、JAR-1ラットの末梢リンパ系細胞と同系の培養内変異肝細胞間のMLTRをおこなってきました。
 反応細胞:JAR-1 末梢リンパ系細胞、50万個cells/0.5ml。
培養液:RPMI 1640、10%新鮮ラット血清、Pen.SM.。
 培養は37℃、CO2incubator中でおこない、1、3、5、7日培養后、H3-TdR 1μCi/0.02mlを加え、16時間おいて、反応細胞にとり込まれたH3-TdRを計測します。
 抗原細胞としてCulb-TC、RLC-10A、RLC-10・4、RLT-1A、Cule-TC等を試みました。いづれも、CO60で2,000r照射します。
 図1は、RLC-10Aのばあいで、反応のpeakは6日にあり、抗原刺戟細胞5万個が最も高く、以下2.5万個、1.25万個と細胞数が減少するづつ、peakは低くなります。このようなdose responseの関係は、試験したいづれの細胞にもみられます。
 今までの実験からわかったことは、1)抗原刺戟細胞は10〜2.5万個の範囲で、抗原細胞は多いほど、H3-TdRの反応細胞へのとり込みが高い、2)抗原刺戟細胞が少なくなると、H3-TdRとり込みのpeakがおくれ、まつ低くなる。3)反応細胞の供給元となるラットの年令などで、同じ抗原刺戟細胞に対して得られるH3-TdRのとり込み値が影響される。このため、刺戟細胞の抗原性の強さを比較するには、同一の反応細胞を同時に用いねばならない。
 最近のじっけんで、RLT-1A、RLC-10A、RLC-10・4、Cule-TCは、10万個、5万個、2.5万個cellsを用いたいづれのばあいでも、上記の順序で抗原刺激性の強いことが示された。いづれの実験でも、反応細胞、刺戟細胞単独では、H3-TdRのとり込みは極めて低い。cpmは大体100以下である。
 blast化細胞によるH3-TdRとり込みのautoradiogramniyoru観察は、現在施行中であるが、まだ成績を得ていない。(目下exposure中)。

《梅田報告》
 前回の班会議(月報7105)で報告したハムスター由来の細胞でmalignant transformationしたと思われる細胞系について再びDNA、RNA、Proteinを定量測定してみた。DNAはインドール法、RNAはオルシノール法、Proteinはフェノール法によった。(表を呈示)
今回も前回と同じ様に全体に低い値が出た。即ちHeLaS3についても定量してみたが、以前の私のデータでもDNA 20〜25ppg/cell、RNA 30〜40ppg/cell、protein〜250〜ppg/cellであった。又ばらつきもあるので早速repeatしてみる予定であるが、はっきり云えることは、u#691のK(コントロール)の細胞は、全体に細胞が大きくなっている様である。u#694のコントロールは、発癌剤処理群とあまり変らないが、このものは増殖がやや早くなっているのでspont.transf.していないことを確かめる必要がある。DNA量を“1"とした時のRNA、proteinの比(表中括弧内)からは特に何も云えそうにない。


編集後記


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