【勝田班月報・7109】
《勝田報告》
 ラッテ肝癌AH-7974細胞の毒性代謝物質:
 これまで肝癌培地をイオン交換樹脂で分析してきたが、再現性のある分劃法が得られず、苦労してきた。このたびSephadexG25→Dowex50(H+)の分劃法で再現性が初めて得られるようになった。2度の実験での分劃収量(乾燥重量)は、肝癌培地低分子凍結乾燥全重量:4g、4.7g。Sephadexによる分劃B:3.1、2.5。続いてのDowexによる各分劃・Fraction 1(H2O溶出):4.25mg、6.3mg。Fraction 2:159.4、81.6。Fraction 3-1(4N・NH4OH溶出):307.4、346.2。Fraction 3-2:9.7。Fraction 4:5.1、3.1。であった。
 培養試験の結果は、細胞:(RLC-10-4株・ラッテにtakeされず)。培地:CS 20%+LD 75%・25%Dに分劃を溶解ミリポア濾過滅菌したものを含む、対照はDのみ25%)。培養は平型回転培養管(タンザク入)培養2、4日后にメタノール固定、ギムザ染色により判定。
 結果は3-2及び4に阻害効果があった。この実験はなお続行中である。

《高木報告》
 混合移植実験
 1)homologousな移植系(RG-18−RFL細胞→WKA)この実験に用いた腫瘍細胞RG-18は、実験中途で腫瘍性が低下したことはすでに述べた。すなわち、はじめは100ケまでは全部腫瘍をつくり、10ケでも3/5につくっていたものが、現在ではTPD50は500ケか1、000ケの辺りにある。月報No.7107ではこれまでのdataすべてをまとめてみたが、腫瘍性の異った細胞を用いたdataを一緒にすることは問題である。今回は、腫瘍性の低下した時点におけるRG-18細胞を用いたdataだけをまとめてみた。ラットの疋数が少ないが現在観察中のものが各群3−4疋ずつあり、これは記載していない(表を呈示)。RG-18 1,000ケではRFL 100万ケ混ずることによりやや促進、500ケでは対照でもすべて腫瘍をつくっているので判定出来ないが、100ケ、50ケ、10ケではすべてRFLを混じたことにより促進の傾向がみられる。また、腫瘍の発現をみたラットについてその後の経過は、腫瘍死したラットについては表の如くであるが、それ以外は1疋の事故死、1疋の観察期間中生存をのぞき、他の23疋の腫瘍はすべてregressした。isologousなRRLC-11細胞を用いた実験では、腫瘍死したラットの外に腫瘍のregressしたラットは7疋にすぎない。このちがいについてRG-18細胞の腫瘍性が低いこと、RG-18細胞が移植するラットに対しhomologousであることなどの可能性が考えられる。
 2)isologousな移植系(RRLC-11−RFL細胞→WKAラット)
 これはNo.7107についてその後の結果である(表を呈示)。
RRLC-11細胞50ケまではすべて腫瘍をつくっており、RFL 100万個混じた場合にRRLC-11 100ケ、50ケでやや抑制しているようにみえる。しかしRLC-11 10ケの場合には有意の差がないようで、isologousな系ではRFL細胞を混ずることによる影響はないと思われる。腫瘍細胞数の多い程腫瘍死が多くみられた。
 
《安藤報告》
 “連結蛋白"分離の試み(1):C14-アミノ酸による標識
 従来私共が追究して来た“連結蛋白"なるものが、一体実体として存在するものか否かをもう少し客観性を持ったdataとして示されなければ世人を納得させる事は出来ない事を痛感しますので、本号ではC14-アミノ酸で標識する事が出来るか否かを検討した。
 先ず非必須アミノ酸による標識を試みた。MEMで培養された、L・P3(中期or後期対数期)にserine、alanineを各1μCi/ml、glutamic acidを0.1μCi/mlに加え2日間培養した。C14-ラベル細胞とH3-チミジンによりDNAをラベルした細胞を各7万個、3万個を混合し、SW25.1用遠心管中の密度勾配上のSDS層にのせ遠心した(20,000rpm 90min)。(図を呈示)、図(a)に見られるようにDNAピークにわずかのC14カウントが入っているように見える。しかしカウントが少な過ぎてあまりはっきりした事はわからない。そこで次に必須アミノ酸で標識してみた。細胞を(MEM+non ess.+Nucleoside mixture:E2N)に培養し、くっつき合った所で、E2N-tyr-phe培地に移し、10時間後に1/20量のtyrとpheを加え更にC14-try 0.1μCi/ml、C14-pheを0.05μCi/mlとして加えた。3日後にharvest、C14-cellとH3-cellを混合し、(a)と同様に分析した。(b)図にあるようにDNAピークにわずかのC14-aaに由来するカウントが見られた。このカウントが目的とする連結蛋白質に由来するものであるか否かは更に検討されなければならない。

《梅田報告》
 HeLaS3細胞DNAのSingle strandに及ぼす各種mycotoxinの作用について、寺島法により報告してきた(月報7012、7108)。今回はNeutral suctose gradient法によるAflatoxinB1以外の他のmycotoxin投与による結果について報告する。
 (1)Penicillic acid:single strandの検索(7012)では、1mg/ml投与でbottomより5から13本目に、320μ/ml投与では1〜10本目にradioactivityが認められた。1mg/ml投与后の、recovery incubationではrecoveryは認められなかった。今回のneutral sucroseの検索の結果は、1mg/ml投与では14本目に、320μg/ml投与では3本目にsingle peakとして、radio-activityが証明された。又、10μg/ml(細胞増殖は抑えるがsublethalの程度)投与24時間作用ではbottomにpeakがあり、breakは全く認められなかった。
 以上の結果からすると、penicillic acidでDNA strand breakを起している時は、既に細胞にとってlethalである。裏をかえせば、penicillic acidは、致死的な濃度で始めてDNA strand breakを惹起させると云える。
(2)patulin:Single strandの検索で32μg/ml投与では、radioactivityは全体に散っていた。32μg/ml1時間投与后のrecovery incubationの結果、breakがrepairされるどころか更にbreakが進行した結果を得ていた。今回のneutral sucroseによる結果は32μg/ml投与で、11本目にsingle peakとしてradioactivityの山が現れた。3.2μg/mlの細胞にとってsublethalの濃度で24時間作用させた時は、3本目にradioactivityのpeakが現れた。
 (3)Luteoskyrin、rubratoxinB、fusarenonXについて、超大量で1時間処理、比較的大量(3日間連続に投与しつづけると致死的になる)投与で24時間処理した材料では、いずれもbottomにradioactivityが証明され、single-strandの結果を同じくneutral sucroseでも、breakは認められなかった。

《佐藤・難波報告》
 前報に引き続いて、RLN-B cellでの悪性化実験中のaggregateの大きさの変動をみた。
control medium及び溶媒のみを含むmedium中でのaggregateの大きさは平均直径が、0.04〜0.05mm前後である。変化の強いのはDAB及び3'-Me-DABの10μg/ml即ち比較的低濃度の処理でaggregateが大きくなっている。aggregateの大きさの増大が悪性化に比例するという研究から考えると今後の検討を要する。(以下夫々に表を呈示)
 ☆DABと細胞内タンパク質との結合
 資料細胞:PC-2(総培養日数917−952日)、TD40、40本、300万個/TDにまきこみ,2日後、DABmediumに替え、3日間培養。
 DAB:10μg/ml Eagle's MEM+20%BS、総消費量 2.2mg。
表示の方法により細胞内タンパク質と結合したDABの量を測定した。520nmの分子吸光計数を4x10の4乗として計算すると、2.3mμmoleとなった。全タンパク量は130mgであった。in vitroでのDAB投与も培養肝細胞内のタンパク質と何らかの結合をしていると考えられる。
他のデータと比較するためにtissue中のタンパク量を約1/6と考えて換算すると、in vivoでliver cellに結合する量の約1/4の量が結合している。参考までに、E.C.MillerのデータとH.Terayamaのデータを合わせて呈示する。
N-41:培地中のDABの溶存状態
 DABを100%EtOHに5mg/mlに溶きEagle'sMEM(無血清)に終濃度20μg/mlになるように稀釋すると、DANの沈澱が生じ完全に溶けない。この溶液を3000rpm 10分遠沈後、上清に溶けているDAB濃度は8μg/mlであった。そこで、DABによる発癌実験を培養内で企てる場合、DABを終濃度15〜20μg/mlになるよう溶かすとき、どうしても蛋白を含む培地を使用する必要がある。即ち20%牛血清加Eagle'sMEM培地には20μg/mlの濃度でDABが完全に溶ける。
 そこで、蛋白を含む培地中に、DABがどのような状態で溶けているかを検討してみた。
 実験方法
 20%BS+Eagle'sMEM中にDABを約20μg/mlに溶かした物(DAB培地)を分析の対象にした。
 実験(1)1mlのDAB培地に1mlの10%TCAを加え遠沈後、上清中と沈澱中とからトルエンでDABを抽出し、両者のDAB分布をみた。DAB培地では35.4μg/ml、沈澱では25.2(71%)、上清では11.9(33%)であった。
 実験(2)DAB培地をセロファンバック中に入れ、PBSで一晩透析すると、DAB培地透析前は15.8μg/ml、内液は13.5(85%)、外液は0であった。
 実験(3)1mlのDAB培地に4mlのトルエンでトルエン層に抽出されるDABは、蛋白に結合しているかどうか検討した。DABを含むトルエンを蒸発させ残渣を水に溶かし、O.D.280でみると吸収なし。O.D.440にはDABの吸収が認められる。この溶液にTCAを加えても、沈澱はみられなかった。
 実験(4)DAB培地1mlを、Sephadex G100で流した。カラムの大きさは1.2x42cm、緩衝液は0.1M Tris-HC、lM NaCl、pH8.0、流出速度0.4ml/min.。結果は蛋白分劃中にDABが溶出し、2相性の山を示す(図を呈示)。このことは(1)DABが不純なのか、(2)DABが結合する蛋白が異なるかの、いづれかであろう。この実験では、血清中のどの蛋白にDABが結合しているのか、判らなかったが、アルブミンらしいものが推定される。
 実験(5)牛血清アルブミンを1%に含むMEMにDABを溶き、実験(4)と同じ条件で分析すると、アルブミンの流出分劃に一致してDABも流出した。
 以上のことから結論されることは
 1.血清を含む培地中に溶かされたDABの殆どは蛋白に結合して溶解している。
 2.この蛋白結合DABは、トルエン抽出操作によって容易に解離し、トルエン中には遊離のDABとして存在する。
3.血清中のどの蛋白と結合しているか、現在の実験では断言できないが、少くともアルブミンにDABが結合していることが判る。

《山田報告》
 引続いて、4NQO(3x10-6乗M)一回処理後のラット肝細胞RLC-10-C、clony#2の電気泳動的変化を検索しました。今回は4NQO処理後51日目の細胞を通常の円型管を用いて測定しましたが、その結果を図に示します(以下実験毎に図を呈示)。前回報告した36日目の成績と殆んど同じです。若干平均泳動度が増加している程度です。即ちノイラミニダーゼ処理により平均泳動度が対照にくらべて減少していますが、10%以上の低下は認められません。この株は処理後14日目に著しくノイラミニダーゼ感受性が高まりましたが、その後減少し、その状態が続いています。先きに行ったCQ63の実験成績と似ています。
 またこの用いたRLC-10-C-clony#2は実験当初より、その細胞形態も電気泳動的にも均一ですが、4NQO処理をしても、やはり比較的細胞構成は揃っている様です。
 このRLC-10、C#2の泳動的変化を写真記録式泳動装置にて分析した結果を図に示します。対照の細胞は全体に均一な形態を示し、若干の小型細胞が混在しています。平均泳動値より10%以上ノイラミニダーゼ処理により低下した細胞はこの対照群には発見出来ません。これに対し、4NQO処理細胞群では、やや大型な細胞が増加し、ノイラミニダーゼ処理後平均泳動値より10%以上の減少を示す細胞の多くは、この大型細胞であることが判明しました。これはRLT-1〜5株に認めた中型の変異細胞と類似していますので、悪性化(この株の)の可能性は大きいと考へます。
 なほ免疫学的検索も併行して行っていますが次号に書きます。

《藤井報告》
 リンパ球−腫瘍細胞混合培養反応における刺戟細胞の量および刺戟細胞の分劃の検討
 この実験では、Culb-TC−JAR-1末梢リンパ球混合培養反応で、抗原刺戟細胞のほかに、その不溶性分劃と溶性分劃にも、抗原刺戟作用があるか否かを検討した。抗原刺戟に照射(4,000〜8,000r)しただけの腫瘍細胞を用いると、培養初期にはH3-TdRのとり込みがあり、反応リンパ球のH3-TdRのとり込みとの区別が困難なばあいのあること、また臨床癌の培養がかならずしも容易でないことから、癌組織抽出物でもMLTRができれば便利である点からも必要な検討である。
 刺戟細胞Culb-TCはCO60で4,000r照射したのち、超音波処理し、そのあと超遠心(40,000rpm、30分間)で、その沈渣と上清に分け、沈渣はRPMI 1640液に浮游させ、Teflonホモジナイザーで浮游物を細かく均等にし、これを膜成分とした。
 結局、用いた抗原は、A)照射Culb-TC、B)照射、超音波処理細胞、C)照射、超音波処理不溶分劃(膜成分)、D)照射、超音波処理溶性成分の4つで、それぞれ処理前の細胞濃度に合して、50万個、25万個、12.5万個、6.3万個をJAR-1末梢リンパ球(白血球として50万個)と混じ、CO2恒温器中で培養した。
 成績:照射Culb-TC細胞を刺戟細胞としたばあいがリンパ球刺戟作用がもっともつよく、6日目のH3-TdRのとり込みは(夫々図を呈示)図Aのように、25万個細胞に対してcpm11,100に達した。刺戟細胞がさらに多くなるとcpmがけって減少する。しかも、刺戟細胞が多くなると腫瘍細胞によるH3-TdRのとり込みが増してくることも図A)の対照からもうかがえる。この成績および既報の成績から、MLTRには1〜10万個の刺戟細胞が適当と思われる。
 超音波破壊処理したばあいの成績は、図B、C、Dにみられるように、そのリンパ球幼若化刺戟効果が激減する。
図B)は、照射−超音波処理しただけのものを刺戟抗原としたもので、抗原量が多い程、cpmは高いが、50万個相当の抗原量で、624cpmにすぎない。
 図C)は膜成分、図D)は溶性分劃に対するMLTRで、いづれもcpmの最高は300以下となっている。破壊細胞が、リンパ球刺戟作用をうしなうのは、おそらくlysozome enzymeによる抗原の変性が原因と思われる。この点について細胞の加熱処理、EDTA加液中での抗原刺戟細胞の破壊を計画している。
 今までMLTRに用いてきた腫瘍細胞は、すべて培養細胞であった。そこで、in vivoのがん細胞がautochthonous lymphoid cellsと反応するか否かが問題となる。この目的で、現在、JAR-1ラットにCulb-TCの復元を試みている。
マウスで行った実験では、C57BL系マウスの末梢リンパ球は、同系腫瘍FA/C/2(医科研制癌、小高助教授が発癌させたerythroblastoma)と反応するが、そのさい、ascitesからとってすぐ混合培養するよりも、3日間、RPMI 1640(20%にfetal calf ser.をふくむ)中で培養してから混合培養にもって行った方が、MLTRが数倍高く出ている。これは、ascites tumoreでは、in vivoで腫瘍細胞が、宿主反応による物質、例へばγ-globulinおそらく抗体、その他で被覆され、刺戟基(site)がblockされているのではなかろうか。

《堀川報告》
 DNA鎖中にresidual proteinが本当に存在するか否かを決定するのは非常に困難出ある。今回はLettら(1970)が示唆した如く、DNA一本鎖の状態でもresidual proteinの存在が暗示されるという実験結果を別の立場からconfirmするため以下のような実験を行った。
まず、mouse L細胞をH3-TdR培地(10μgCi/ml)で3、5、8分と培養してpulse labelした細胞をalkaline sucrose gradientのtop layerにのせて遠心すると第1図(夫々図を呈示)に示すようなほぼ30〜35S程度の所謂Okazaki fragmentに該当する、新しく合成された低分子のDNAが検出される。つづいて、このように5分間pulse labelされた細胞を、直ちにH3-TdRを含まない、ただしcold TdRを含む培地(10μg/ml)に移して、10分間、30分間、60分間と37℃でChaseする。Chase直後にそれぞれ細胞を集めて、Alkaline sucrose gradientにかけて超遠心すると、第2図に示すごとくfragmented DNAはchaseの時間と共に次第に大きくなり、60分間のchaseで殆んどのradioactivityはbulk DNAに移ってしまうことが分かる。ここでもしchaseの過程にlabeledアミノ酸が存在すれば、このlabeledアミノ酸は一本鎖DNAの高分子化と共にDNA中に取り込まれて行くか否か、をみるのが本実験の主目的である。そこでH3-TdRを含む培地(10μgCi/ml)中で5分間pulse labelした細胞を直ちにC14-L-lysine(3μgCi/ml)とcold TdR(10μg/ml)を含む培地に移して37℃でchaseした。それらの結果を第3図に示す。これらの図から分かるように大部分のC14-L-lysineはchase timeと共に蛋白分劃にincorporateするが、同時に次第に大きくなってゆくDNA中にも非常に僅かではあるが取り込まれることが分かる。特にchase 60分に於いてみられるbulk DNA中のC14の活性は、peakに一致して存在する。(ここで使用したvialsは総て新しいものを使い、count前に一回backgrundを測定してあるので、たとえ、取り込まれたC14のactivityが低いとはいえ、有意差はあると思われる。)
 これらの結果はLettが示唆したような一本鎖DNAの状態でも、アルカリに不安定な何か特殊なsiteがあるということを別の面からsupportするものであり、一本鎖DNAの状態でみた場合にもgrowing DNAの中にlabeled amino acidがincorporateする可能性のあることを示している。勿論、これらのlabeled amino acidがどの様なstructureの蛋白内に入っているかは、依然として疑問のまま残されているが。尚、こうしたC14-L-lysineが単にbulk DNAにcontaminateして検出されているのではないという可能性は、cycloheximideをchaseの、過程に入れておくとfragmented DNAのgrowthは途中でstopされ、その際、C14-L-lysineはunlabeledのbulk DNAのpeakには検出されない。つまり既存の高分子DNAの中にはアミノ酸はincorporateしないという別の実験からも確認された。 

編集後記


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